ちょっといろいろとありまして一月は全く更新が出来ない状態になっていました。ごめんなさい!
これからは更新を再開しますので、よろしくお願いいたします。
再開一発目から文章長いですけど許してください。
あと前回の話の最後の部分を少し直しました。そちらの方もお願いします。
兄さんがこの城を出て行って早二週間。
私、桜木 桃花は王城の図書館で『忘れられた英雄』を読んでいた。
二週間前のあの出来事から私は
ちなみに私のカノン呼びは向こうから頼まれた。友達なのに王女さまは他人行儀で嫌らしい。そのかわり私も名前を呼び捨てで言うように約束させたんだけど。
現在図書館には私以外人はおらず、ただ私が絵本のページをめくる音だけが木霊する。
それにしても本当にこの絵本に書かれた英雄が兄さんなのかな?私の知る兄さんは誰かを恨むような性格じゃないし、英雄と言われるほどしっかりしてもいない筈なんだけどなぁ。
私が本を読んでいてそんな事を考えていると図書館のドアが大きな音を立てて開かれた。
「もう!どうしてお父さまはあれほどまでに頑固なのでしょうか!本当に、頭にきます!」
「……あはは。その様子だとまた駄目だったみたいだね」
苦笑いを浮かべながら私が彼女にそう声をかけると彼女は頰を膨らませた。
「聞いてくださいよ、
「まぁ、それだけカノンを大切に思っているとも取れるけど……」
私がそう言うとカノンはその表情を曇らせる。
「……確かに、それなら私もまだ納得はできるんです。でも、お父さまのあの表情や物言いは、恐らく」
「……何かを隠してる?」
「……はい」
カノンが表情を暗くしながらそう言う。兄さんたちに言われてからカノンは王さまの表情をよく見るようになった。それからは今日みたいに暗い表情をすることが増えたように思う。
「大丈夫?」
「えぇ。空さんと白さんから聞いていた通りなのでそんなに辛くはありませんよ」
そう言って微笑む彼女を見て少し安心してホッと息を吐く。
友達には笑顔でいて欲しいからね。
「さて!それではもう一度あの本を調べてみましょう!白さんが言ってくれたのです。きっと私たちが見落としているだけで何処かに国の名前が書かれているに違いありません!」
「うん、そうだね。……でも」
私はそう言って改めて手元にある絵本。『忘れられた英雄』に視線を戻す。
そう。あれから二週間。白さんが言った事を聞きこの本を何度も読んでみたが国の名前が一切書かれていなかったのだ。一応念のために透かして見たり、何かの暗号が書かれているのかもと探してみたりもした。しかし、私たちは何も発見できずにいたのだ。
「はぁ。一体どこに国の名前が書いてあるのよ」
私は一度本から目を離し天井を仰ぐ。天窓から漏れる月の光は神秘的で心が癒される。
「……昔はその名前だったけど今は違うとか無いかなぁ」
「いえ、その可能性は無いかと。空さんと白さんはこの図書館の歴史書はだいたい読み終えたらしいので、もしそうならそう言うでしょうし。それに確か二百年前から現在まで存在し続けている国は全て名前を変えていなかった筈です」
「……歴史書って確かあの辺りの本棚だよね」
「はい」
「まじかー」
そう言って私が目を向けた先には二階ぐらいの高さの本棚。それが横にずらっと並んでいた。見た感じニ百冊以上は余裕であるだろうそれをあの二人は一ヶ月で読んだのか。うわぁ。
そんな気持ちが顔に出ていたのだろう。私の顔を見たカノンは苦笑を浮かべていた。
「その辺りも普通じゃ無いですよねぇ」
「それが本当ならあの二人は本当に化け物だよ」
そう言って私たちは互いに笑い合う。うん。さっきよりもカノンの表情も良いし、これはこれで良かったかな。
「少し、休憩にしましょうか」
「うん。そうしよっか」
そう言って私がカノンの側に行こうと席を立った時だった。
図書館の扉が開き、珍しく私たち以外の人がやってきた。
「あぁ!桃花さん、ここにいたんだぁ。探しましたよぉ」
彼女はそう言うとゆっくりとした足取りで私の方へ歩いてきた。
「貴女は、確か……」
「あ、あんまり話したことないですよねぇ。私、空くんのクラスの担任をしてますぅ。
そう言われて思い出した。そうだ。召喚されたあの日に遅れて教室に入ってきた先生だ。
「あ、すみません。えっと、改めまして桜木 空の妹の桜木 桃花です。兄がいつもお世話になってました」
そう言って私が頭を下げようとすると天先生はそれを手で制した。
「頭なんて下げなくて良いよぉ。私の方が彼に助けられてたからぁ」
「いえ、でも……」
「それより、最近全然姿を見かけないから心配したよぉ。たまには顔を見せてねぇ?」
「す、すみません」
そう言って本当に心配そうな顔をする天先生を見て反射的に謝っていた。
この人の雰囲気が子を見守るお母さんに似ているからかもしれない。
話してみる限りとても良い人そうだし、これからはなるべく顔を見せるようにしようかな。
「うふふ。わかってくれればいいのよぉ。……あら?」
優しい笑みでそう言う天先生は何かに気づいたかのような顔をする。
「……その本はぁ?」
「え?あぁ。これですか?ただの絵本ですよ」
私がそう言って本を掲げると天先生は私に近づいてきてその本へ手を触れた。すると天先生の視線が少し鋭くなった。
「……ふぅん」
「えっと、どうしたんですか?」
「うん?あぁ。ちょっとねぇ」
その視線が気になり私が声をかけると先生は視線を元に戻して私に微笑んだ。
「この本。ただの絵本のはずなのに魔法がかけられてるのよぉ。だから少し気になってねぇ」
「それは本当ですか!?」
先生のその言葉を聞きカノンがものすごい勢いで先生に近づく。その勢いに流石の先生も数歩だけ後ずさる。
「え、えぇ」
「でも私は何にも感じませんでしたよ」
「その魔法かなり緻密に作られてるから多分【賢者】の桃花ちゃんじゃわからなかったんじゃ無いかなぁ」
「……そう、ですか」
「うん。本来【賢者】は魔法面じゃなくて知識面に優れているらしいからねぇ。分からないのも無理ないよぉ」
「でもどうして先生には分かったんですか?」
私が思ったその疑問に答えたのはカノンだった。
「それは恐らく神堕さまが【魔女】だからではないでしょうか」
「多分そうだと思うよぉ。【魔女】は魔法面に優れてるからぁ」
「それよりも神堕さま。この絵本にかけられた魔法を解くことは出来ますか?」
「はい、出来ますよぉ。そもそも、この魔法は見つけるのが難しいだけで解くのは簡単に出来るようになってますからぁ。桃花ちゃんその本貸してくれるぅ?」
「は、はい」
そうして私から渡された本を先生は机に置き本に向けて手を伸ばすと何かを呟いた。
すると絵本が光り始めたがすぐにその光は消えていった。
「はい、おしまい。これで魔法は解けてると思うよぉ」
その言葉を聞いたカノンがすぐに本を手に取ると本を読み始めた。
その間私と先生は黙ってカノンを見ていたが、突然カノンが本から視線を外し私を見た。
「桃花」
「な、何かわかった?」
「はい。行くべき場所も。何を調べるべきなのかもわかりました」
「一体どこへ行けば?」
「はい。私たちが行くべき場所。それは、人族の大国『アスタリスク』です!」
そう言うカノンはどこか興奮したようにその口に笑みを浮かべている。
その顔を見て私も嬉しくなる。やっとカノンが行くべき道を見つけられたのだ。友達としてこれほど嬉しいことはない。
「ねぇ、ねぇ。なんの話ぃ?」
その声で私とカノンはこの場にもう一人人がいることを思い出した。
「あ、えっと、その」
「……もしかしてだけど、桃花ちゃんも何処かに行っちゃうのぉ?」
「……はい」
私がそう言うと先生は見るからに悲しそうな顔をする。
思い返してみれば兄さんがこの城から出て行った事を兄さんのクラスの人たちに話した時もこの人だけは悲しそうな顔をしてくれていた気がする。
「うん。しょうがないかぁ。これが血は争えないってやつなのかなぁ」
「……先生。その」
「大丈夫だよぉ」
「え?」
「うふふ。頑張ってきてねぇ。応援するよぉ。空くんの妹さんだもん。空くんがいない今、私は絶対貴女の味方になるからぁ」
「……ありがとう、ございます」
その言葉に少し泣きそうになってしまう。
あぁ。なんて優しい人だろう。私もこの人の生徒になりたいと今本気で思ってしまうくらい良い人だ。
「……そうと決まれば急いで城を出ましょう!時間がありません」
「え?でも、カノン。確か王さまから許可が」
「あれだけ言って無理なら一生許可はおりません。だったら何も言わずに出て行ってやります。家出です」
「え、えぇ!?ちょっ、それはまずいんじゃ」
「別に問題ありません。バレなければ良いんですから」
「いや、でも出るにしたって準備が」
私がそう言うとカノンは悪い笑みを浮かべる。
「ふっふーん。こんなこともあろうかと!」
そう言って近くの本棚まで近づくと一冊の本を抜き取った。
するとその本棚が横にずれていく。その後ろには小さな穴があり、カノンがそこに手を突っ込んで何かが入った袋を取り出した。
「ここに私たちの旅に必要最低限必要な物を準備しておきました!」
「嘘でしょ」
「うわぁ。すっごーい」
なんとなくだけど私と先生の驚いているところは違うんだろうなぁ。なんて動く本棚を見て驚いている先生を見て、そんな場違いな事を考えてしまうくらいには今私の頭は混乱していた。
「さぁ!急いで隠し通路から外に出てしまいましょう!あそこは普段兵士がいないので出ていくならあそこが一番です!」
「う、うん」
カノンはそう言うや否や隠し通路を隠している本棚を動かし始めた。
私はカノンから受け取った袋を背中に背負うと一度先生を見る。
「先生、その」
「うん。気をつけてねぇ。あまり先生らしい事は出来なかったけど、また出会える事を願ってるわぁ」
「はい!ありがとうございました!」
そう言って私は先生に頭を下げる。本当に短い時間だったけどこの先生にはもう一度会える事を私も願おう。
「桃花!準備ができました!行きましょう!」
「うん!わかった!それじゃあ、先生、いってきます!」
「うん!いってらっしゃい!」
「……さて、と」
桃花もカノンもいなくなった図書館。そこには人影が一つ。
その人影は、誰もいない筈のその場所で口を開く。
「いますよねぇ。隠れてないで、出てきたらいかがですかぁ?」
彼女がそう言うと誰もいなかった筈の彼女の周りに人影が五つ。姿は黒装束に包まれておりその手にはナイフや先の鋭い針が握られていた。
その中の一人が声を出す。
「……よく気づいたな。驚いたぞ」
「うふふ。そんなお粗末な気配遮断で隠れているつもりですかぁ?だとしたら貴方たちは【暗殺者】に向いてませんよぉ」
「……ふん。口は回るようだがそんな安い挑発には乗らん。大方時間稼ぎでもするつもりなのだろうが、隠し通路の出口には私たちの仲間がいる。姫は捕まり、その付き人の勇者は死んで終わりだ。そして、貴様もな」
「……ふ、ふふふ。うふふふふ」
黒装束が言い終わると囲まれている女は突然笑い出した。その笑い声は本当に楽しそうで、面白そうで、愉快そうであった。しかし、だからこそ女を囲んでいる五人は言いようのない恐ろしさを感じたのだった。
「何がおかしい」
「あぁ、いえ。別に。ただ、貴方たちは幸せだなぁ、と」
「何?」
「もしもこの場に
「なにを言っている」
「あぁ、それとぉ、貴方たちのお仲間さん?でしたっけ。入り口で待っているって言う」
「それがどうし……」
「それってこの方たちですかぁ?」
「……は?」
それまで落ち着いていた黒装束全員からそんな声が漏れた。
しかしそれも無理ないだろう。突然彼女の隣の空間が歪んだと思ったらそこから隠し通路の出口にいる筈の仲間たちが出てきたのだから。
……頭だけの状態で。
「あぁ。良いですね。その表情。やはり人間はそういう表情が一番似合いますよぉ」
「これは、一体?どうして」
「うん?あぁ。なんか出口に集まっていて邪魔なので駆除したんですよぉ。せっかく彼の妹とお姫さまが歩く場所なのに、こんなのがいたら嫌でしょう?」
「き、貴様ぁ!」
そう言うのと同時に女を囲んでいる五人は一斉に女に飛びかかる。
しかし女はそんなこと関係ないと言うように話し続ける。
「っと。いけない、いけない。無駄話が過ぎましたね。私もそろそろ動かないと。彼女たちに追いつけなくなっちゃいます」
女はそう言うと今にも自身に刃を振り下ろそうとする黒装束に笑みを向ける。それはもう、とびきりの、十人中十人が見惚れそうな程美しい笑みを。
「それでは皆さま、
さようなら」
その図書館には人影が一つ。
しかし先ほどと違う点がいくつか。
まずその人影の目の前に積み上がった無数の人間の頭。
そしてその人影の後ろに置かれた首から上の無い五つの体。
そして……、
「さて、私も行きましょうかねぇ。……はぁ。暫く会えませんねぇ。早く会いたいものです。
英雄。そして魔王」
黒い羽を背中から生やし、血に濡れた鎌を担いだ女が一人、天窓から降り注ぐ月の光に照らされていた。
注)ここから先は作品にあまり関係のない作者の愚痴です。見なくても良いよ!
本当に久し振りに文章書いた。ところどころ絶対おかしい。
この一ヶ月はろくにハーメルンもなろうも漁ってなくてもうしんどかった。ユーチューブもろくに見れてないし。と、言うわけでこれからユーチューブでユーチューバーの方々の配信見てきます!
以上!……再開してこれは酷いわ。うん。