元勇者と元魔王の気ままな旅路   作:鬱ケロ

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新たな始まり

 目を覚ます。

 久しぶりに見た昔の夢に少しだけ嬉しく思いながら、布団から出て学校に行く準備を始める。

 

 俺の名前は桜木(さくらぎ) (そら)

 前世の記憶がある事以外は普通の高校生……の筈だ。うん。身内にたまに化け物を見るような目で見られる事があるけど普通の筈。

 そんな俺が前世の事を思い出したのは俺が五歳になった日。夢で前世の俺の一生を見た。いや、思い出したと言った方がいいのかもな。

 でも、それからは大変だった。人一人分の一生を数時間足らずで見たせいなのか俺は高熱を出し救急車で病院に運ばれたため、両親と妹には心配をかけた。しかもそのあとそれまでと違った雰囲気と喋り方をする我が子を見た両親の反応は、まぁ推して知るべしと言うやつだろう。それでも、それまでと変わらずに接してくれた両親と妹には感謝してもしきれない。

 

「兄さん、まだ寝てるの?遅刻するよー」

「おーう。今行くー」

 

 俺を呼ぶ声にそう答え、階段を降りてリビングに向かうと長い黒髪を腰まで伸ばした、俺と同じ制服を身につけている少女が先にご飯を食べていた。

 

「おはよう、桃花(とうか)

「うん。おはよう、兄さん」

 

 そう言って俺に笑顔を向けるのは妹の桜木 桃花。俺の一つ下の妹だ。桃花は容姿端麗、文武両道を絵に描いたような完璧超人である。

 正直俺にはもったいないほどできた妹で兄である俺の立つ瀬がない。

 ちなみに両親は今外国にいる。親父が外国に出張で母さんはその付き添いだ。

 

「どうしたの兄さん。そんな所でボケっとして。早く座りなよ」

「あぁ、悪い。ちょっと考え事してた」

 

 俺は桃花の前の椅子に座り朝食を食べ始めようとして大事な事を思い出した。

 

「そうだ。桃花」

「ん?どうしたの?」

「改めて、入学おめでとう」

「……ありがとう」

 

 そう言うと桃花は少し頰を染めてそっぽを向いた。

 いやー、思い出せてよかった。そうして今度こそ朝飯を食べようと口を開く。

 

「ところで兄さん」

「ん?」

「今日って二、三年は私たち新入生より早めに行かないといけないんじゃなかったっけ?」

「……あ」

 

 桃花にそう言われ時計を見てみると、急いで出ないと遅刻する時間だった。

 

「うっそだろ、おい!?」

「やっぱりやばかったんだ」

 

 分かっていたならもっと早く言って欲しかったぞ、妹よ !

 朝食を急いで食べた俺は近くに置いてあったカバンを手に取り、玄関をへ向かう。

 

「忘れ物ないよね?」

「おう。多分無い、筈」

「……心配だなぁ」

「まぁ、大丈夫だろ。始業式しかないし」

「まぁ、それもそっか」

 

 そこで桃花は何かを思い出したのか、あっと小さな声を出す。

 

「どうした?」

「……あー、うん。えっと」

「なんだよ」

「帰ってきたら一戦やりたいなって」

 

 そう言って桃花は恥ずかしそうに顔を伏せる。

 桃花の言う一戦とは木刀を使った試合だ。これだけが唯一俺が桃花に勝てるものだったりする。他のもの?完敗ですけど何か?

 

「いいぞ。どうせ今日も俺が勝つけど」

「ムッ。今日こそ私が勝つもん」

 

 普段見せないむすっとした顔でそう言う桃花に自然と笑みがこぼれる。

 

「そうだといいな。じゃあ、行くわ」

「うん。いってらっしゃい。また、あとでね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あの後、なんとかギリギリ遅刻せずに学校に着くことができ、その後も特に問題もなく始業式が行われ今は帰りの連絡の時間……の筈なのだが担任が来ない。もう十分ほど経つのだがどうしたのだろうか?

 

「兄さん」

 

 あまりにも暇だったので窓の外をぼうっと眺めていると、聞き覚えのある声がした。

 声のした方を見ると思った通り桃花がカバンを持ってそこに立っていた。

 

「おう。桃花か。どうした?」

「どうした?じゃないよ。ずっと待ってるのに全然来ないんだもん。だから私の方から来ちゃった」

「あー、悪い。まだ帰りの連絡が終わってなくてな」

「終わってない?先生いないじゃん」

「帰って来てないんだよ。だから待ってる」

 

 連絡聞かずに帰ると大事な事を聞きそびれる可能性もあるので、帰るに帰れない。

 と、そこまで話したところで担任が教室に入ってくる。

 

「いやー、ごめんねぇ。ちょっといろいろと手間取っちゃって遅くなっちゃったぁ」

 

 笑いながらそう言う彼女。いい先生ではあるんだが、こういう所少し適当なのがなぁ。まぁ、それも一つの良さではあるんだが。

 そんな事を思っていると担任はこちらを、正確には俺の横にいる桃花に視線を向ける。

 

「あれぇ?あなた見ない子だけど誰ぇ?」

「あ、えっと今年新しく入学しました。桜木 桃花です。いつも兄がお世話になってます」

 

 そう言って桃花は頭を下げる。なんてできた妹なんだろうか。

 

「桜木?あぁ。空くんの妹さん。これはこれはご丁寧にどうもぉ。でもなんでこのクラスにぃ?」

「えっと、兄と一緒に帰る約束をしてまして。それでなかなか来ないのでこのクラスに様子を見に来たんです」

「あぁ。そっかぁ。ごめんねぇ。私が遅くなっちゃったからぁ」

「い、いえ!そんな事ないです!それじゃあ兄さん。廊下で待ってるね」

 

 そう言うと桃花は小走りで教室を出て行った。

先生は今度は俺も見て申し訳なさそうに眉を八の字にしていた。

 

「ごめんねぇ、空くん。すぐ終わらせるからぁ」

「いえ。お気になさらず」

 

 俺がそう言うと先生はホッとしたように息をついた後黒板の前に立った。

 

「えっとぉ、実は今日から転入生がこの教室に入ってきますぅ。始業式とかはちょっといろいろあって間に合わなかったんだけど、さっき来たから挨拶だけさせようと思って連れて来たんだぁ」

 

 入ってきてぇ。と、先生が言うと教室の前の扉が開かれる。

 そうして入ってきた女の姿を見て俺は目を見開く。

 光を反射する美しい銀髪を腰まで伸ばし、あらゆるものを見通すような澄んだ瞳。その歩きは堂々としており、ただ歩いているだけなのに不思議と惹きつけられる。現に数分前まで騒がしかった教室は静まり返り、彼女に視線が釘付けになっている。

 

 

 

 考えなかったわけじゃない。俺がこうして転生しているんだ。もしかしたら彼女もなんて幾度となく考えた。だけど、自分の出来るあらゆる手を使って調べたが見つけることは出来なかった。

 だけど、まさか、まさか、彼女は!!

 そんな期待を込めて彼女を見ていると、彼女は口を開く。

 

「はじめまして!永夜(えいや) (しろ)と言います!これから皆さんと楽しい時間を過ごせたらと考えています!よろしくお願いします!」

 

 俺の内心の驚きをよそにそう笑顔で言って彼女は頭を下げる。その姿に周りから暖かい拍手が送られる。

 しかし、俺の心には冷たい風が吹いていた。

 

……違う。俺の知るあいつは……、

 

 

 

 

 

 

 あんな人当たりが良さそうな超絶美少女じゃない!

 俺の知るあいつは超自己中だし、あんな元気いっぱいな奴じゃなかった!

 コミュ障で阿呆で中二病で根暗なあいつがあんな風になるわけが……。

 

 ヒュン!!

 

 そこまで考えた所で俺の顔の真横を何かが通り過ぎて行った。後ろを見ると白いチョークが壁に当たり粉々になっていた。前を向くと永夜と名乗った転校生が手を振り抜いていた。その姿に先ほどまで拍手をしていたクラスメイト達も手を止め驚いた顔で転校生を見ている。

 その転校生はこめかみをヒクつかせながら笑みを浮かべている。

 

「……ごめんなさい。なんだかとても失礼な事を言われたような気がしたから」

 

 ……はて?さっぱり心当たりがない。

 しかし、見ず知らずの相手にいきなりチョークを投げてきたのだ。ここは一言言ってやるべきだろう。

 そう思い、口を開こうとした時だった。

 

 

 

 ……突然教室全体が光に包まれた。

 

「な!?これは!」

「……なぜこの術式が?」

 

 俺と転校生の声は突然の事に騒ぎ始めたクラスメイトの声にかき消される。

 その光はどんどん強くなっていく。それに比例して教室の声も大きくなっていく。

 そして光が視界全てを覆い尽くしそうになった時だった。

 

「兄さん!何が起こって」

 

 その言葉を最後に俺は、いや、俺を含むあの教室にいた者達は全員その世界から姿を消した。




せめて、せめてあらすじのところまでは書きたい。
あと書くのが久しぶりでこれでいいのか不安。

読んでくれてありがとうございます。
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