「すまぬが、お主たち二人にはこの城から出て行ってもらう」
王さまのその言葉を俺たちは黙って聞いていた。
そんな俺と白の周りには俺ら二人と共に呼ばれたクラスの奴らに桃花が囲んでおり、王女さまは王さまの後ろに控えていた。
クラスの奴らは王さまのその言葉を聞きある者は哀れみを、またある者は蔑みをその表情に浮かべて俺らを見ていた。
王女さまは目を見開き驚いていることからこの事は知らされていなかったのだろう。それは桃花も同様だ。
「……王さま、失礼ながらお聞きしますが、何故でしょうか?我々は何もしていない筈なのですが?」
「……ふん。何もしていない事が問題なのだ。こちらの都合ではあったがお主達を呼ぶのにどれだけの手間をかけたと思っているのだ、全く」
俺の問いに王さまは鼻で笑うと不機嫌そうな態度を隠す事無くそう言った。
その態度に白は表情を険しくするが、一度深呼吸をすると口を開く。
「……確かにこの一ヶ月私たちは他の人たちがやっているような戦闘訓練などはしていません。ですが、それは仕方がないのではありませんか?だって私たちは【村人】ですよ?」
「たとえそうであったとしても、一ヶ月何もせずにただ図書館にずっといるお主たちをこの城に住まわせる程の余裕は今この国には無い」
「……図書館を使う事を許可したのは王様だった筈では?」
白がそう言うと王さまは眉間に皺を寄せこちらを睨みつける。
「……だからと言ってずっと図書館にこもる事など許可していない。
それに、最初の頃は我らのために何か敵について調べているのかと目を瞑っていたが、どうもお主たちはこの国やこの世界の歴史について調べておるらしいな。そんなものを調べていったいどうすると言うのだ?」
そこまで言って王さまはさらに眉間の皺を濃くし、俺たちを睨みつける視線を強くする。
「……さては、お主たちは魔王の配下なのではないか?」
「そんな!?」
王さまのその言葉に俺たちよりも早く反応し、声を出す奴がいた。その声がする方にチラリと視線だけを向けると桃花が驚いた表情で王さまを見ていた。
「ま、待ってください、王さま!兄さんは確かに向こうの世界にいました。それならこちらの世界の存在である筈の魔王の配下であるなどおかしくはないですか!?」
「桃花殿。もしかしたらその記憶は後で植え付けられた記憶かもしれんぞ?あの姑息な奴らならそれくらいの事はやりかねん」
「そ、そんな……」
桃花はそう言うと信じられないと言った顔を俺に向ける。……いやいやいや、そこで心が揺れないでくれ妹よ。お兄ちゃん悲しくて泣くぞ。
「そうとなれば、出て行ってもらうのも些か困るな。……ふむ。お主たちは暫くこの城の牢に入っていてもらうとするか」
「……流石に横暴が過ぎませんか、王さま?全て貴方の憶測ではないですか」
こめかみをひくつかせ、声を震わせながら白がそう言う。
「可能性は少しでもあれば用心するべきであろう?」
「それなら私たちの他にも怪しく感じられる者はたくさんおるじゃろっ……でしょう?そんな憶測だけで捕えられたらこっちは堪ったもんじゃないんですが?」
とうとう白の奴は王さまを睨みつけ、素が出そうになる。流石にまずいかと思い俺も口を開こうとした時だった。
「……おい。何のつもりだ?」
「……王へのこの女の態度、不敬である。故に少々痛い目にあってもらおうかと」
「少々?はっ。
俺がとっさに組み伏せたそいつの手には刃物が握られており、少しでも力を緩めていたらその刃は白へと振り下ろされていただろう。あまりに突然の出来事にクラスの奴らや桃花、王女さまは驚いた顔で俺たちの方を見ている。……やっちまった。
「その者の私への忠誠心は特に強くてなぁ。私に対するほんの少しの敵意にも反応するのよ。……で?今の状況をどう言い訳する?白とやら」
「……何のことでしょうか?」
「はっ!この期に及んでそれか?分からないのなら言ってやろう。
ただの【村人】である筈のお主の連れが何故【
そこまで言われてクラスの奴らも気づいたのだろう。本来【村人】は戦闘が出来る職業ではない。スキルにしたって普通なら<農業>や<牧畜>などのほのぼのとした非戦闘系スキルしか使うことが出来ない。
そんな【村人】である筈の俺が手を抜かれていたとは言え【暗殺者】の攻撃を止めたのだ。これほどおかしな事も無いだろう。クラスの奴らの驚きの視線は次第に疑惑の眼差しへと変わっていく。
「……ちっ。謀りおったな」
「はて?何のことかな?たまたま家臣がお主に攻撃をし、たまたまお主の連れがそれを止めた。そしてたまたまこの場に集めていた勇者たちが見ていた。ただそれだけの事であろう?」
「……はっ。嘘が下手すぎるのでは無いか?このクソ狸」
白の嫌味に王さまは顔を真っ赤にさせる。
「ふざけるなよっ!女ぁ!我が家臣よ、そなたの忠義を我に示せ!」
「……え?」
「どうした!?早くせよ!」
「……我が、王のために」
そいつがそう言うと、そいつを中心に俺と白を包んで魔法陣が描かれる。
「なんだ、これ?」
「ふはは!それは家臣が我へと忠義を示す魔法よ!その者の命を代価に我らの敵を滅ぼすのだ!」
なるほど。自爆魔法って所か。それにしても素直にそれを言うとか思ってたよりも馬鹿なのかあの王さま。もう既に勝ったような顔で笑ってるし。
「……白?」
「もうやった」
「はははは!……は?」
王さまは余裕そうに笑っていたが、その光景を見て信じられないものを見たかのような驚きの表情になる。
「な、何をした!?」
「別にどうと言うことはしておらんよ。ただ今の術式を解析して書き換えただけじゃ」
「はぁ?」
「あんな雑な術式を目に見えるほど大きく展開しておるのだ。解析してくださいと言っておるようなものじゃろ」
「今のほんの少しの時間でそんなことをしたと言うのか!?ありえん!」
「ふん。……この程度出来なくては魔王などと呼ばれはせんよ」
白が小声で言ったその言葉は王さまに聞かれることはなかったが、近くにいる俺や俺が押さえつけている奴にはしっかりと聞こえていた。
「な、に?お前は……、いや、お前たちはいったい」
「さぁのう。それより逃げるぞ、空」
白がそう言うと新たに俺たちを囲むように魔法陣が現れ、光り始める。
「そういやぁ、さっきのやつを書き換えたとか言ってたな」
「おうさ。一度発動した魔法陣は消すのが大変だからのう」
「で?どう書き換えたんだ?」
「まぁ、あんまり時間も無かったからのう。これは……」
「何を勝手に話を進めておるのだ!逃さんぞ!」
王さまがそう言うと後ろの扉から兵士たちが入ってくる。
クラスの奴らを見れば各々が自分の武器を構える。
「これで貴様らは終わり……」
『ちょっと黙れ』
白が一言そう言うと王さまは口を閉じ静かになる。突然の事に驚きやがら、必死に口を開こうとしているようだが暫く開くことは出来ないだろう。
「で?続きは?」
「うむ。あんまり時間もなかったのでな」
そこで魔法陣の光が一層強くなり、俺たちを包み込み、視界が光に覆われた。
そして光が収まり周りを見てみると、俺と白がこの一ヶ月お世話になっている図書館だった。
そこで白が先ほどの続きを口にする。
「あまり魔力を使わず、私が行ったことのある場所で一番近く、馴染みのある場所に転移するようにした」
そう言ってドヤ顔をする白の頭にチョップをした俺は悪くないだろう。
なんでよりにもよってこんな近場にするんだよ、この馬鹿は!?
今回は特になし。
強いて言うなら明日投稿できるかわかりません。ごめんなさい!
いや、本当に!