ソードアート・オンライン〜空と大地〜   作:クラッカーV

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馬鹿野郎が

ダイチside

 

「………」

 

「タカ、元気出せよ」

 

宿へ戻ってきた俺達は部屋に集まっていた

 

タカはベッドに腰掛け、下を俯いている。俺達も椅子に座りタカを心配そうに見つめる

 

あの後、元来た二つの洞窟から出た瞬間俺とタカの前にクエストクリアログが出てきた。その時にタカは歯を食いしばっていたのを俺は見た

 

きっと、タカはあのドラゴンに、言い方が悪いかもしれないが……感情移入してしまったのだろう。タカは昔はゲームをしなかったが、俺が誘いゲームをしだしてからは感情移入が激しくなった。まあ、それは俺も同じだが

 

「………」

 

シリカちゃんも心配している。何しろタカのこんな表情を見るのは初めてだからだろう

 

「少し………ほっといてくれ」

 

「タカさん、でも……」

 

「ほっといてくれ!」

 

タカが怒鳴った

 

………それはないだろ

 

「おい、タカ。シリカちゃんもお前を心配してるんだぞ」

 

なのに、お前はそれを無下にするのか?

 

「なあ、タカ。お前は少し感情移入しずきたんだ………、俺もよくあるけどさ」

 

俺はタカの肩に手を置いて諭すように言う

 

「…………じゃ( )……えよ( )

 

「ん?」

 

「感情移入なんかじゃない!」

 

「っ!?」

 

タカが俺の腕を振り払った。そして立ち上がる

 

「感情移入なんかじゃない!!この世界は………ここは、もう仮想なんかじゃない!」

 

「タ、タカ?」

 

いったいどうしたっていうんだ……!?

 

「この世界で、俺も……お前も、シリカも生きてるんだ!ブルーだって生きてたんだ!例えポリゴンの塊だったとしても、ここに在るということに変わりはないんだよ!?なんでそれがダイチにはわからないんだよ!!」

 

タカが俺の目を見て怒鳴る

 

…………何を、言ってるんだよ

 

「これはゲームだろ!?ここは、現実じゃない!確かに普通のゲームとは違うけど、それでも現実じゃないということに変わりはない!!」

 

「違う!ここはもう一つの現実なんだ!この世界で生きている、俺達プレイヤーも、NPCも、モンスターも全部、全部命なんだよ!」

 

「…………お前、いったいどうしたんだよ」

 

「俺は………、俺は、もうここをゲームだと思うことが出来ない………。だってよ、あんなに………ブルーはあんなに暖かかったんだ。あれを………仮想?ふざけんなよ!そんなこと、思えるわけないだろ………!!」

 

「タカ………」

 

俺を睨みつけながら言うタカ。頬には涙が流れている

 

俺には理解が出来なかった。なんでタカは泣いてるんだ?あのドラゴン、タカはブルーと呼んでるが、そいつがこのゲームにとっての"死"を迎えてしまったからか?

 

……………なんで、そんなにも泣くんだ。これはさっきも言ったが、ゲームだろう?

 

それにタカの口調、素に戻っている。元々今のタカは何処かあの人の真似をしているところがあるが、昔は違った。時々感情が高ぶった時は昔に戻ることがあったが………今のタカは激情していることがわかる

 

「今ここにいる俺は………()であって、()じゃない。俺はタカ(・・)という、この世界に生きる一人の人間なんだ」

 

タカは自分の胸に手を置き、言った

 

「……………ごめん、わからないよな。俺、POT買ってくる。さっき尽きたし」

 

そう言ってタカは部屋から出て行ってしまった

 

残された俺とシリカちゃんは何も言えず、俯いていた

 

ダイチside out

 

 

 

 

 

 

「…………無事に、彼らの元に渡ったか」

 

とある部屋に一人、ベッドに寝転がりヘッドギアの様なゲーム機、『ナーヴギア』を装着している男はそう呟いた

 

そして『ナーヴギア』を外し、ベッドから起き上がる

 

ガチャッ

 

男がベッドに腰掛けると同時に、部屋の扉が開いた

 

「…………よう、随分と久しぶりじゃねえか。あぁ?茅場ぁ(・・・)

 

「貴方には必ず見つかると思ってましたよ。十六夜さん(・・・・・)

 

入って来たのは茶髪で癖っ気のある髪の、見た目20代後半であろう赤いパーカーを着た男、白いイヤホンを耳にしている

 

「やっと見つけ出したぜ」

 

「ええ、少し遅かったですね……。メールが来ていたから見つかるとは思ってましたが、諦めたのかと思った時もありました。まあ貴方はそんなことはしないでしょうけど」

 

「吐いた唾を飲み込むなんざカッコ悪いからな」

 

十六夜と呼ばれた男は茅場の前まで歩いていく

 

「メールの内容に書かれてた内容、しっかりやったんだろうな?」

 

「ええ、つい先程彼らに渡りましたよ。全く、貴方も人使いが荒い人だ。大まかな設定だけをメールに書いて後は私に丸投げとは」

 

「知るか、そもそもてめぇがSAOをデスゲームなんかにしなけりゃ良かったんじゃねえか。ったく、俺もしようと思ってたのによ」

 

イラついたように言う十六夜に茅場は少し苦笑いをする

 

「…………もし、あいつらが死んだら、俺はてめぇを殺すからな。覚悟しとけよ」

 

十六夜は茅場を睨む。十六夜の目はその言葉が嘘などではないと言っていた

 

「それはわかりません。ここからはあの二人次第です」

 

「てめぇ………、てめぇも忘れたわけじゃねえだろ。あの二人が誰の子供なのかを……!」

 

「ええ、わかっています、だからですよ。あの人達の子供なら、必ずこのゲームをクリアするはずです。…………英雄に、なるはずです」

 

「……………チッ、一発ぐらいブン殴ってやろうかと思ったが、まあいい」

 

十六夜は踵を返す

 

「もう帰るのですか?」

 

「ああ、なに心配するな。警察にチクりはしねえよ」

 

「そんなことは心配してませんよ」

 

「…………そうかよ」

 

そして十六夜がドアノブに手をかける

 

「………十六夜さん、そのイヤホンをしだしたのは何時からでしたか」

 

茅場が話しかける。十六夜はドアノブから手を離し振り向いた

 

「なんだ?聞きてえのか」

 

「ええ、もう会うことはないと思うので」

 

「そうか…………。そうだな、あいつがどっか行った時からだな」

 

「あいつ?…………あのiPodのですか?」

 

「ああ、そいつだ」

 

十六夜は懐かしむ様な顔を作り、近くにあった椅子を引いて座る

 

「このイヤホンはな、あとこのパーカー。竜ヶ峰 弥生《りゅうがみね やよい》と竜ヶ崎 康太《りゅうがざき こうた》の遺品であり、イヤホンは要 弥生《かなめ やよい》からのオススメだ」

 

「…要……弥生?」

 

聞きなれない名前に眉を寄せる

 

「お前の言うiPodのだよ」

 

「…………偶然にしては驚かされますね。まさか弥生さんと同じ名前とは」

 

「そしてこれを付け始めたのは弥生がいなくなってからだから、5年前だな。要の方の」

 

「いなくなった………、彼はどこに?」

 

「……………さぁな、今頃どっかで馬鹿やってんだろ」

 

「…………」

 

茅場は何かを考えるように黙る

 

「…………じゃあな、茅場。俺は帰るぜ」

 

十六夜は腰を上げて扉へとつま先を向ける

 

「………さようなら、十六夜さん」

 

ガチャ

 

十六夜は扉を開いて外に出る、そして閉める瞬間、茅場は言った

 

「先に、皆さんの元へ行ってます」

 

バタン

 

そして完全に扉は閉じる

 

「…………馬鹿野郎が」

 

十六夜はパーカーのポケットに手を突っ込み、そう呟いた

 




十六夜、わかる人はわかる

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