タカside
「ぎぃやああぁぁぁぁ!キモい、キモいです!」
「おい、落ち着けシリカ!ただの蟻んこだろが!!」
「ケイタ、スイッチだ!」
「OK!」
十二月十九日の今日。俺達は今、最前線から三つ下の層である第四十六層にあるアリ谷でレベリングをしているところだ。ここは今発見されてる狩場の中じゃ一番効率の良い場所なんだそうだ。普段、俺達はケイタに合わせてもうちょっと下の層でレベリングをしているんだが………とある情報を今となっては攻略組きっての有名ギルドである"風林火山"のリーダー、クラインから得たからだ
ケイタに合わせてとは、ケイタは未だ俺達のレベルまで至ってなかったからだ
半年前のあの日、《生命の碑》から戻って来たケイタは俺達にケイタ自身からギルドに入ってくれと頼んで来た。勿論それを俺達は承諾したわけだが
それからケイタを含めた俺達四人は一旦最前線から離れ、ケイタのレベリングやらスキル熟練度を上げたりなど色々してたわけだ
半年も掛かったのは、そりゃあ半年もあれば攻略はドンドン進んで行く。下の方にいた俺達は勿論置いていかれるわけで、それに追い付くのに今の今まで躍起になってる、ってわけだ
「ふぅ……そろそろ時間だ。皆走れ!」
我らがリーダー、ケイタが叫んだ。それを聞いて俺は目の前の蟻んこにトドメを指す
「行くぞシリカ」
「わわわ!まだ一杯出てきますよ!!」
「逃げるんだよぉぉぉぉぉ!!」
俺達四人はアリ谷を疾走する。そして狭い出口から四人で縦になるように一斉に跳び出た
「だぁっ!疲れた!」
「あ、次の人達どうぞ」
俺とダイチは大袈裟に寝転ぶ。シリカは座り込み、ケイタは次に待っていたパーティに声を掛ける
このアリ谷は効率が良いから沢山のパーティがここに来る。あまりにも来すぎるもんだから時間制で皆で仲良く狩りましょう、っつーことだ
「…………ダイチ。キリトはいるか?」
「今日はいないみたいだ。毎日来てると思ったんだけどな………クラインの情報は確かなのかよ?」
「そりゃあ………そうなんだろうよ。クラインが嘘言うとは思えねぇし」
クラインから得た情報、それはキリトの目撃情報だった。最近、だいたい一週間とちょっと前からくらいだが、キリトが無茶なレベリングを続けているらしい
半年前のこともあってキリトとは偶に、つい最近第四十三層へとお引越しが完了したギルドホームに来たりしていたが………そんな様子は見られなかった。て言っても来たのは一回だけなんだが………しかも三ヶ月前。ケイタとは鉢合わせてないがな
更に言えばその理由が何とも無茶しすぎなんだ
「時間帯が悪かったんですかね。………それにしても、《年一》の大物フラグMobをキリトさん、本当に倒すつもりなんでしょうか?」
シリカの言う《年一》の大物フラグMob、どうやらクリスマスボスとやららしいが、キリトはそいつがドロップすると噂されている《蘇生アイテム》が目当てらしい
「取り敢えずギルドホームに戻ろうぜ。今日のノルマは達成だ」
俺が言うと全員立ち上がり歩き出す
「クラインが言うことにはキリトの狙いは《蘇生アイテム》で間違いねぇ。ここ最近の無茶なレベリングはクリスマスボスを一人で倒す為だ、っつーことはわかった」
「…………キリトは、もしかして黒猫団の皆を」
「そうだろうな。タカ、どうする?俺は止めた方が良いと思うが」
「一人でなんて無茶すぎます。止めることは出来なくても、協力するべきです!」
ふむ……《蘇生アイテム》か
「なあ、それってペットとかも蘇生出来るのかな」
「っ!タカ………お前」
「?………それはわからない。けど、ペットの蘇生なら四十七層の《プネウマの花》があったはずだけど」
《プネウマの花》…………ああ、あれか
「あれは駄目だ。三日以内に蘇生させないと駄目なんだとよ」
「あれ?いつの間に採って来たんだい?」
「ちょっと暇な時にな」
俺は自分の武器に付いている青い宝玉を見る。ふと、たった数時間だけだった、ダイチとは違うもう一人の………いや、一匹の相棒の姿がチラついた
あれをGETした時は喜びに震えたが、その後の無情な真実を知った時は思わず花を叩きつけて踏み潰したりなんかしたものだ
「タカさん………」
「ま、何にせよキリトとは一度話をする必要があるな。ボスの出る場所もわからんし、ちょっくら情報集めに行ってくるわ!」
「おい待て、タカ!」
ダイチの静止の声が聞こえたが俺は構わず走り出した。まずはアルゴに聞いてみるか
俺は手早くアルゴメッセージを送る。待ち合わせは四十七層の花が咲き誇る広場
転移門の前へ来た瞬間、俺はとある人物の姿を確認した
「………キリト」
「タカ、久し振りだな」
本当に久し振りだ。そして、三ヶ月前に会った時とは明らかに違っている
「(こいつ………前よりも、重い物を背負ってんな。いや、自分で重くしてんのか……)
随分と無茶してるみてぇじゃねえか。蟻共を倒しすぎて蟻マニアにでもなっちまったか?」
「…………理由、知ってるんじゃないのか」
「ちょっくらそこのカフェで話そうか」
「そんな時間はない。………俺はもう行くぞ」
キリトはそう言って俺の横を通り過ぎる
「おいキリト」
「………なんだ?」
「もしクリスマスボスから落ちる《蘇生アイテム》。あれがペットも蘇生出来るって言うんなら………それ、俺が貰うぜ」
「っ!…………」
実際見てるわけじゃないが、キリトが睨んでいるのがわかる
女々しいとか言われるかもしれないが………そんなこと幾らでも言わせればいい。俺の気持ちをわからない奴には絶対にわからないからな
「んじゃ、俺はアルゴとの約束があるからよ。ちなみに、今の冗談とかそんなんじゃねえぜ?俺は本気だ」
俺はキリトに背中越しに手を振って別れる
「転移《フローリア》」
そして俺はアルゴとの待ち合わせ場所へと向かった
遅れてすみませんでした!
今回から赤鼻のトナカイへ入っていきます