落第騎士に転生した話 【完結】   作:VISP

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落第騎士になった話リトライ その3

 暁学園による破軍学園襲撃当日。

 出張で遠方にいた新宮寺理事長と西京教師の二人は、何とか学園まで後10kmと言う地点に辿り着いていた。

 

 「おっし、もうちょいだ!へばんなよ黒!」

 「誰に言ってる誰に!それと重力加速はもうちょい加減できなかったのか!?」

 「あたしの制御知ってんだろ!あれ以上は無理だ!」

 

 事前の工作により空港で足止めを食らっていた二人だが、西京の重力操作によって二人の体を打ち上げ→大体の方向の目星をつけて加速と言う荒業で学園から30kmの地点へと墜落する事に成功したのだ。

 そう、墜落である。

 生憎と広範囲を適当にぶっ潰すだけなら兎も角、自分ともう一人を重力障壁で守りつつ、同じ所まで飛ばすには寧音の制御能力では足りない所の話じゃなかったのだ。

 幸い、国外から戻ってきた寧音が改めて修行を重ねた故にここまで無事だったが、もししていなかったら新宮寺は途中でミンチになっていた可能性があった。

 

 「全く、鈍っていた私よりもお前の方が鍛えるべきじゃないのか!?」

 「絶賛再修業中だって…止まれ!」

 

 学園目指して全力で駆けていた所を、不意に寧音が制止の声を上げる。

 その顔は何か信じられないものを見つけたと言う様に引き攣っていた。

 直後、急停止した二人の目の前を、何かが通った。

 

 次の瞬間、二人の眼前に広がる森が「斬れた」。

 

 その斬撃は丁度二人の眼前で停止し、届く事は無かった。

 しかし、斬り拓かれた森の先、一人佇む作務衣姿の少年を目にした時、二人の総身が粟立ち、全身からどっと汗が噴き出てくる。

 気配は薄く、殺気は感じられない。

 町中で出会えば特に注目する事もなく素通りしていただろう。

 だが伐刀者としてだけでなく、戦闘者としても優秀であるが故に新宮寺は理解した。

 あの少年の形をした怪物は、自分達とは全く異なる領域の存在であり、本当なら今の一撃で死んでいたのだと言う事を。

 そしてもう一人は(何やってんだあの馬鹿ー!?会いたかったけどこんな形じゃねーよ!)と内心で絶叫していた。

 

 「黒、お前が先に行け。」

 「ロリ!?」

 

 寧音の言葉に新宮寺が驚いてつい昔の仇名が出てしまう。

 しかし今は一人だけでも学園に行くべきだった。

 

 「その呼び方懐かしーなおい。足止めは私がするから、お前だけでも先に行きなよリア充。」

 「……死ぬなよ。」

 

 そして、新宮寺はその場から全速で離脱した。

 既に己が『手負い』である事も知らずに。

 

 「さってと、待たせたな。」

 「いや、構わないよ。」

 

 そして、残った二人はと言うと、旧来の友人の様に普通に話し始めていた。

 

 「今回のは短期の仕事か?」

 「いや、かなり長期。少なくとも、寝返るつもりは無いよ。」

 「マジかー。」

 

 元々この一輝(偽)を勧誘するために接触して共に何年も過ごしてきた寧音は、この男がどんな思考回路で動いているかは把握している。

 基本的に、趣味が絡まなければちょっと酒に弱いだけの気の良い普通の少年だ。

 そして、己から誰かを裏切るような真似は(趣味が絡まなければ)しない。

 故に、このエーデルワイスと同等かそれ以上の近接戦闘のプロであるこの少年は、今回もまた決して寧音達からの勧誘に応えないという事だ。

 

 「……なんで、私を置いてったんだ?」

 「寧音は連盟の騎士だ。お師匠さんとも仲が良いのだし、連れてく訳には行かなかった。」

 

 西京寧音は連盟に所属する日本では三人しかいない魔人の一人だ。

 世界各国に大体数人ずついる魔人だが、その存在は伐刀者を軍事力の要とする現代において機密中の機密であり、その保有数は伐刀者のそれ以上に重要視される。

 その一人を引き抜いたとなれば、それは大騒ぎになる事は必定だ。

 また、彼女は自身の師匠を敬愛しており、決して裏切る事は無いだろう。

 故にこそ、多少未練はあれども一輝(偽)は彼女を勧誘する事は無かった。

 してしまえば、彼女に苦悩を齎すと分かっていたから。

 

 「だとしても誘ってほしかった。」

 「ごめん。」

 

 俯く寧音に、短くも確かに謝罪する一輝(偽)。

 互いに極普通なんて置いてきた生き方しかできないが、それでも確かに思いを交わしたのは事実で、互いが大事なのも本当だった。

 ただ、それ以上に優先すべきものを互いに持っているというだけで。

 

 「取り敢えず聞くけどさ、今日の仕事は何なんだよ?」

 「デモンストレーション目的での破軍学園の襲撃。死人は一人も出してない。オレの役目は予想よりも早く来た二人の足止め。」

 

 一輝(偽)に触発されてか、寧音もまた更に成長を重ねていた。

 原作通りだったのなら、とてもではないが重力操作による長距離移動など出来なかっただろう。

 

 「そっか、足止めか。なら、暫く時間はあるよな?」

 「? あるけど。」

 

 にっこりと、明らかに作った笑みで尋ねてくる寧音に、素直に返答してしまう一輝(偽)。

 何するつもりかな?と一輝(偽)は思うが、何をした所でこの距離ならば確実に殺せるため、特にどうする事も無い。

 

 「よっと。」

 

 寧音が霊装である鉄扇を振るうと、二人を中心に50m程の範囲が黒い球体に覆われ、可視化する程の重力の歪みが発生し、周辺とこの場を物理的にはほぼ完全に断絶させる。

 そして、一輝(偽)にゆっくりと歩み寄りながら、普段から着崩している着物を更に崩し…どころか帯を解き、着物を地面に落とす事も構わず脱ぎ始めていく。

 

 「おい おい。」

 「半年ぶりなんだ。野暮な事言うなよ。」

 「でもなぁ…。」

 「馬鹿。嫌じゃないなら文句言うな。」

 

 やがて二人の距離がゼロになると、本格的に好いた男女同士の逢瀬が始まった。

 暁学園から連絡の入る三時間後まで、誰の目もない場所でゆっくりと、だが熱烈で情熱的な時を過ごした。

 

 

 ……………

 

 

 (くそ、何なんだあれは!?)

 

 必死に森の中を走り続けながら、新宮寺黒乃は思考を巡らせる。

 急ごうにも先程から妙に魔力の巡りが悪く、お得意の時間操作による加速も出来ていない。

 それもこれも、先程受けてしまった肩への斬撃のせいだった。

 殿にと残った寧音は疎か、黒乃自身にすら暫くの間気付かせなかった遠当の斬撃。

 それは肩を僅かに斬っただけのものだが、その斬撃はまるで毒の様に黒乃の体内の魔力の流れを乱し、その使用を妨害していた。

 

 (これは、間に合わんか…。)

 

 ゆっくりとだが、魔力の乱れは回復しつつある。

 しかし、完全に回復するには半日はかかるだろう。

 今は体内時間の加速により、所要時間の短縮に努めているが、効果が出るまで今暫くはかかる。

 これでは現在進行形で窮地にあるだろう学園に到着した所で戦力になる事は出来ない。

 

 「頼むから無事でいろよガキ共…!」

 

 それでも教師として、先達として、戦士として、母として、未来ある若者達のために黒乃は走り続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 自分の腐れ縁の親友が男とイチャコラしてるとは露知らず。

 

 

 ……………

 

 

 暁学園開設記念の宴会後

 

 「一輝君、どうしてそんなやつれてるんだい?」

 「周辺被害が出かねなかったんで、二人を気絶させて『夜戦』して主導権を握りました…。」

 「Oh…。」

 

 ゴッド、この子が何をしましたか? ← ナニをしました。

 確かにやらかす系の子ですが、決して悪ではないというのに…。 ← 前世で万単位で暗殺。

 どうかこの子に祝福のあらん事を。 ← 可愛い子にモテてるよ!やったね!

 月影首相は義息の未来を思って、自業自得である事を理解しつつも祈る事しか出来なかった。

 

 (流石に寧音に絞られてから二人相手はきつかった…。)

 

 なんて内心を知ったら流石に説教不可避だったが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「あぁ、やっと会えましたね…。」

 

 その陰で、最後のヒロインがアップをしていた。

 




Q あれ?一番ヒロインしてるのって…
A それ以上いけない

Q 最後のヒロインって…
A バランスの素晴らしい美人で独身の人って言ったらね?
  なおフラグは一周目で立てた模様。
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