島々が空に浮かぶ世界の覇権を賭けた争いに用いられた兵器。星の民と呼ばれる人々の手により、主に空の世界の生物、事象、概念等をベースにして作られた。
その形態や能力は元になった存在により様々で、人とそう変わらない姿のものから、名状しがたき異形のものまで存在する。
星晶獣は何らかの要因で力を失うなどすると、星晶と呼ばれる結晶状の姿に変化し休眠する。星晶獣と呼ばれる所以である。
見渡す限り下層植生の繁茂した広葉樹林の真っただ中、陽は既に沈みかけ、ただ何ともつかない影と、虫の声ばかりが目立っている。
そんな夜を待つざわめきに満ちた森を、落ち葉を踏みしめるか細い音がかき分けた。
「うう……おとーさん、おかーさん……どこー……?」
女の子が一人、とぼとぼと歩いていた。
小さな麦わら帽子。
キャラクターのプリントがされたリュック。
そんな装備の彼女はおおよそ日暮れ時の森を行くのに相応しい存在ではなく――有り体に言えば、迷子だった。
家族とはぐれてから、それなりに長い時間が経ったのだろう。薄手の服は土で汚れ、露出した肌にはいくつもの擦り傷がついている。
迷子の不安に耐え切れず、早々に泣きながらうずくまりでもしていたら、女の子の運命はまた違っていたかもしれない。だが、幸か不幸か、彼女は幼いながらも努力家だった。
刻々と夜の迫る森に本能的な恐怖を抱きつつも、女の子は両親の姿を求めて必死に彷徨った。ぬかるみに足をとられ、張り出した木の根に躓いても、彼女は決して挫けなかった。
けれど、やがて陽が地平の陰に姿を消し、瞬く星々が顔を出し始めた頃。行く先を微かに照らしていた光も届かなくなり、長い時間悪路を歩き続きた疲労と相まって、とうとう女の子は一歩も動けなくなってしまった。
歩くのを止めた途端、今まで抑えつけていた不安が一気に押し寄せてくる。今にも泣きそうな顔をした女の子は、僅かな明るさを求めて天を仰いだ。
深い藍色に染まる空に、黄金色の光球が忽然と現れたのは、まさにその時のことだった。
夜空の星よりずっと明るい光球が、ゆっくりと夕闇に沈む森へと降りていく。
その様子は、まるでおとぎ話の妖精が舞い降りるかのようで。女の子は現実を忘れて眼前の不思議な光景に見入ってしまう。
気が付けば、光球は女の子のいる場所のすぐ近くまでやって来ていた。
暗く不気味だった森は、光球の放つ暖かな光に照らし出され、今や幻想の世界へと様変わりしていた。
女の子が一歩足を踏み出す度に光の粒子が無数に舞い上がり、彼女を鼓舞するかのように煌く。いつしか彼女の心に巣食っていた不安は消え去り、言い知れぬ高揚感で満たされるようになっていた。
そしてついに、光球は女の子の目の前でふわりと地に降り立った。彼女はその輝きの中心に向かって、殆ど無意識のうちに手を伸ばし、
――――たすけて――――
囁くような声がして、黄金色の光が弾けた。
光球から洪水のような激しい光の奔流が溢れ、女の子を飲み込んでいく。
何もかもが白く染め上げられる世界で、ひとしずく。
零れ落ちた星の子の涙が、彼女の頬を優しく打った。
『……次のニュースです。昨日、××県●●市で、家族とハイキングに来て、行方のわからなくなっていた小学生の女の子が、無事保護されました。警察によりますと、保護されたのは、東京都に住む小学生の浪野栄子ちゃん6歳で、昨日正午過ぎ頃、ハイキングの途中で家族とはぐれ、そのまま行方がわからなくなっていましたが、今朝9時頃、コースから南東に3キロメートルほど離れた地点で、木陰で眠っていた栄子ちゃんを捜索隊が発見し、無事保護しました……』