芸術家は焔に嗤う 作:しじる
人は、どんな死に方をするのが普通なのだろうか。老衰か、心停止か、癌か、交通事故か、殺人か?少なくとも僕のはどれでもない。
僕の場合は、焼死だ。
あぁ、火に焼かれるというのはこういう感覚か。熱いのではなく痛い、ビリビリと感覚が消えていく。体が溶けて、焦げて、炭になっていく。毛が、皮膚が、細胞が死んでいく。それなのに思考はハッキリとしている。自分が苦痛に溺れ、絶叫を奏でる管楽器になっているにも関わらず、冷静に考えられている。きっと僕がおかしいからだろう。
僕は生まれた時は普通だった。でも、あの火事の日。あの日から僕は炎の奏でる音とその美しさの虜になった。紅蓮が命を燃やし、燃やされた命が奏でる音楽は、どんな楽器でも再現できやしない。絶命の苦痛に溺れるあの悲鳴だけは。でも誰もその良さに気づかない。
僕は気づけば1人だった、誰も僕の芸術を分かってくれない。僕は世界に必要とされていない。それでも作り続けた、芸術を。それが100を超える時に僕は思った。【かけている】、粘土や石では僕の求めたものは再現できない。人間でないと、材料は人間でないと!
チャイコフスキーの弦楽セレナーデ、僕のお気に入り、それを流しながら今日も刹那の芸術を作り、カメラに保存する。我ながら完璧だ、そう思ってた時、僕は警察に芸術を作ってるところを見られ、捕まりそうになった。だから、ガソリンを浴びた。
結果的に僕は捕まらない、僕は死ぬから。僕は僕の最高傑作となって、この世界に名を残して消えるから。
燃えながら僕は叫んだ、あぁ掠れて焼けて潰れた喉だが叫ぶことが出来た。今この瞬間、僕は…
「誰よりも…美しい!」
そうして僕は死んだはずだ。あの痛みが嘘だったとは思えない。なのに僕はなぜが生きていた。いや、生きているとは言い難いか?真っ白な空間に僕はいた。そこには1人のワンピースを着た少女が立っていた。少女はやがて僕に語りかけてきた。
「ラムダ・ペンドラゴン、45歳にて自殺した自称芸術家兼シリアルキラーの女。12歳の時に火事で半身を大火傷するも奇跡的に生還、しかしそれ以降性格が歪む。合ってるかな?」
不気味な笑みを浮かべて少女は僕に聞いた。なんで僕のことを知っているかとか、普通はそう思うだろうが、僕はそれ以上にこの空間に興味を持ってた。ここまで真っ白で何も無い場所などそうそうない。ここで芸術が作れるならさぞ捗りそうだと考えてた。
「まぁ、会ってるよ…で、僕に何か?」
とりあえず答えておこう、黙ったままだとろくなことにならない気がする、そう僕の直感が訴えていた。そうして僕が口を開くと、少女は笑顔で答えた。
「人生、やり直さない?」