芸術家は焔に嗤う   作:しじる

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1 新しい人生

前の中学生の時、僕は何をしていただろうか。思い出せないまま学校に通う。あの後、僕はあの少女によって転生させられた。あの少女はいわゆる神様だったそうだ。新しい人生と好きな能力をくれてやるから私の暇つぶしに付き合えだそうだ。なんと傲慢で気ままなのだろうか。だが人のことを言えない僕はなすがままに、あったら良かったなという力を手にして、こうして2度目の人生を送っている。ここは僕がまえいた世界と違う世界らしいが、違いがわからない。今のところは。

この世界に来てます直ぐにわかったことは、なぜか中学一年生の体にされていたことと、親が既に他界してる扱いなのと、家がマンションであることくらいだ。それなりに高級なのだろうか、防音性は抜群で、隣の音が聞こえてこない。そういう意味では都合がよかった。部屋の中で、貰った力の練習を常々していたからだ。

僕が貰った力、それは2つ。一つは炎。僕の芸術に欠けてはならない最大の材料。僕は炎を自在に操る力を貰った。それこそその気になれば自分自身を炎に変えて、攻撃を無効化するなんてことも出来るが、僕は争いが嫌いだから、そんなことになるのはまずないだろう。そもそも戦う世界ではないと思いたいし。次に貰ったのは時間だ。正確には、カメラを使った時間操作だ。僕がカメラを使って撮影したものは、時間を静止することが出来る。撮影したした写真が破られない限り、その止まった時間は永遠である。これは刹那でしか持つことが出来なかった僕の作品を、永遠に終わらない彫刻でさせるのにとても有難い能力だった。それに写真撮影は僕の趣味でもあったし、能力の発動のためとはいえ、最初から一眼レフカメラを持てたのは最高だった。1番あの神に感謝したいことでもあった。

練習内容は簡単だ、炎を出したり仕舞ったり。または鉛筆を3本立て、そのうち1本だけを燃やしたり。とにかく精密性を鍛えていた。炎を操れるということは、今まで作りたくても作れなかった新たな作品の想像も可能という事だ。ならそれを確実に作る為には、機械のような精密性がひつようだった。その為か、カメラは案外おざなりになってたりする。ほとんど趣味として使うことはあっても、能力を使用することは無い。能力が強く、精密もクソもないから練習の必要性がないというのもあるかもしれないが。

そんなこんな考えていれば学校にたどり着き、自身の席である窓際へと座る。僕は誰よりも早く登校してる。その理由は単純、勉学するためだ。僕は自身の作品もそうだが、何事にも全力を尽くす主義だ。前の世界でもそうだったが妥協は許さない。自身の持てる全てを持って挑む。たとえそれがくだらない小、中学の勉強であったとしても。

ちなみに僕は目立つのは嫌いだ。目立てば僕の作品が人目に付く可能性がある。芸術家である以上、そりゃあ作品を見て欲しいが、僕の作品はどうも凡才共から見れば異常らしく、警察に突き出されてしまう。その危険性を避けるため、目立つのを避けたいのだが、この根っからの主義は変えられない。常にテストで満点、授業態度も最高とくれば目立たないわけがない。上辺だけの友人が増えるのも時間の問題で、こうして早く登校してる理由の一つでもある。

たまには妥協するのもいいかもしれないと、この世界に来てからは思うことが強くなった。それでも気付けば全力を尽くしている自身がいる。嫌になってくるね。

そんな僕は今日も勉学をする、目立つとわかっていて。あぁ、早く作品を作りたい。まだ僕は作品を作れずにいた。当たり前だが足がついてしまうのはまずい。それに素材は厳選したい。僕は自身の持つ創作欲求とは裏腹に、全く見つからない素晴らしい素材。焦らされてるようでイライラするが、まあ仕方ないと割り切るしか無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後、普通なら部活動のあるこの時間帯。帰宅部の僕には関係なく、さっさと家に帰って能力の訓練でもしようかと思ってた時だった。

声が聞こえた。

助けを呼ぶような声だったと思う。しかし興味などなかった。そんな面倒事僕は真っ平御免だ。情けは人の為ならず。このことわざは情けをかければそれはやがて自分の幸運になって帰ってくる、だから情けをかけなさいというものだった気がするが、僕はそれを否定しよう。人を助けてもろくな目に遭わない。情けをかければ足元を掬われ、頭を叩きわられる。情けは人の為ならず、そして自分のためにもならず。優しい人間は損をする。得なぞない。首など突っ込んでたまるか。

そういう考えで、急に聞こえてきた助けを呼ぶ声を無視して、僕は帰路に着いた。そうして家にたどり着けば奇妙なことであった。

少女がいた、僕の部屋の隣の部屋に入ろうと。確かそこは空き部屋だったはずだ。となると新入居者か?少女の姿は金の髪をツインテールに括り、赤い目が特徴的な子であった。身長は僕より少し小さいくらいか、年齢は小学生ほどとも言えるが、実際はどうか聞いてみないとわからない。

なんにしても隣同士、こういう時はお互いに挨拶が大切だ。嫌な奴と思われたらしつこく係わってくる。そうなると作品がばれる確率が上がる。そんな面倒を増やしたくない。挨拶してそれだけの関係で終わらすため、最初の挨拶が肝心だ。

「初めまして、新入居さん?」

まずは気さくに言葉を投げかけてみる。すると少女は少し驚いた顔をして、しばらくすると言葉を返してくれた。

「はい、フェイト・テスタロッサと言います……」

「僕はラムダ・ペンドラゴン、君の隣に住んでるよ。親御さん、中にいるかな?」

さすがに小学生ほどの女の子に一人暮らしさせる親はいない。となると親が部屋にいると考えていい。こういうのは子供が厄介だが、親が絡まなくなると子も絡まなくなっていく。親に軛を打っておきたかった。しかしそんな僕の予想とは大きく違う返答が帰ってきた。

「いえ、1人で暮らしてます」

なんと一人暮らしだった。見た目以上に歳を食ってるのか?この疑問を晴らすため、僕は次なる言葉をかける。

「へぇ小学生くらいに見えるけど、偉いねぇ。いくつ?」

「きゅ、9歳です」

9、つまり小学三年生くらいか。そんな子供に一人暮らしさせるとは、随分と酷く感じる親だ。まあ僕には理解できない教育方針でもあるのだろう。深く考えないでおこう。

「そう、まあ何かあったら頼って。いつでも相手になるから」

口先だけのお約束を吐き、僕は自分の部屋へ戻る。そして扉を閉めたら荷物を部屋に放り投げた。なんて面倒なことになったのだろうか。一番端の、非常階段のそばの部屋故に誰とも隣にならないという最高の状態だったのに、人が来てしまった。これからはベランダでの訓練は控えた方がいいだろう。見られてしまったらこれまた面倒事になる。

落ち着け、こういう時はどうすればいいか知ってるだろう。そう自分に言い聞かせ、明日の放課後は自分のお気に入りの喫茶店に向かうことにした。

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