優がクラスメイト達の元へ戻ると雪達が近づいてきた。
「優君! かっこよかったよ!」
「さすが私の優ちゃんね!」
「優さんお疲れ様です。 初めて命を奪った感想はどうですか?」
「別に特には何も。 まあ止めは胡桃が刺したわけだしな」
「そうですか。 ならいいんです」
「そういうお前はどうなんだ?」
「私も特に何も感じませんでしたね。 それよりも胡桃さんと勝手にパーティーを組んだことについて私は未だに許していないのですが?」
「ま、 まあ今はそんなことは置いといて副団長様の話を聞こうぜ」
シアは優のそんな態度に不服の意味を込めて優の事をジト目で見てきたが優は、 之を無視し続けた。
「さて皆様には次にこの国の騎士と演習をしてもらいます。 演習の際のルールとしましては、 武器は木製のものを使ってもらいます。 また演習を行う方は前衛職の方のみでお願いします。 支援型や魔法型の人につきましては、 別の場所を用意しましたので案内の者をこの後よこしますのでその方の案内の元お願いします」
「胡桃とシアは向こうだな」
「そうですね」
「そう言えば雪はどうするんだ? お前って確か魔法もかなり使えたよな?」
「私は騎士団の人に稽古をつけてもらおうかな。 それに私の武器これだし」
ユキは自身の腰にさしてあるレイピアを指さした。
「では魔法型と支援型の皆様! 案内の者が来ましたのでこちらに来てください!」
「それじゃあお兄ちゃんまた後でね!」
「優さんまた部屋で」
「ああ」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「それでは今から演習を始めようと思います。 皆様の正面に立っている人が、 皆さんの対戦相手です。 今から五分待ちますので、 その間に互いに準備を終わらせてください」
「さてやるか」
優が対戦前に軽くストレッチをしていると全身フルプレートで覆われている長身の男性が話しかけてきた。
「君が私の対戦相手かな?」
その声は少々しゃがれており、 声だけで判断するにかなり六十代は越えているようであった。
「どうやらそうみたいだな。 俺の名前は時坂優だ。 よろしく頼む」
「こちらこそよろしく頼む。 私はジークという者です。 まず初めに君みたいな子供達をこちらの身勝手な都合で呼んでしまったことを心からお詫びします」
ジークは謝罪の意味を込めて深く頭を下げた。
その様子に優は少々動揺していた。
「そのお詫びと言えはしれないかもしれませんが君たちの命は私達の命に代えても守りましょう。 そして演習についても私の持てるすべての技術を君に伝えましょう」
その言葉に嘘偽りは何一つなかった。
優もそんなジークの真摯な態度をとても好感触を抱いていた。
「別に気にしなくていい。 それよりも準備しなくていいのか?」
「これは失礼いたしました」
するとジークは右手には直剣。 左手には盾を握った。
「私はこれで準備は完了です」
「そうか。 それじゃあ……」
優は先ほどのゴブリン戦とは違い、 全力で相手をするつもりであり、 短剣を左右に一本ずつ握った。
「それじゃあやるとするか!」
「ちょっとお待ちください」
「なんだよ?」
「優様はこの演習のルールを知っていらっしゃいますか?」
「そう言えば知らないな」
「それならご説明させていただきます。 まず初めにこの演習では基本魔法は禁止です。 ただし相手にダメージを負わせないような魔法のみは使用可能です」
「なるほど」
「皆様五分経ちました! それでは始めてください!」
シリウスの試合開始の合図がなされた。
優はそれと同時に自身の魔眼を発動させ、 闇の初級魔法であり、 周囲に煙を発生させ、 視界を奪うことが目的の魔法スモークを発動した。
「これは中々……」
ジークは優が初めから目つぶしを目的とした魔法を使うことに驚きの声を漏らした。
ー驚くのはまだ早いぜ!
優の速さは間違いなくクラス一と言えるであろう。
その為ジークとの間の距離など数秒で詰めることが可能だ。
だが優は白昼堂々自分の姿を見せることはリスクが高すぎると判断したため、 スモークを使ったのだ。
「これで終わりだ!」
優は自身の速さを活かした攻撃をジーク背中に周り、 首目掛けて放った。
だが流石にその程度でやられるほどジークは甘くはなかった。
「ふん!」
ジークは優が後ろにいることを風の音だけで理解し、 剣を優の腹めがけて放った。
優はジークに気づかれるとは思ってもみず、 驚きのあまり目を見開いた。
「お、重い! これがレベルの差か!」
ジークの攻撃は優の放った物より遥かに早かった。
優はそれに気づくと両手に握っている短剣を使って攻撃を受け流したのだ。
ただそれでも完全に勢いを殺し切れたわけではなく、 手は痺れていた。
「どうやらスモークの効果は切れたようですね」
「……そうみたいだな」
「それにしても今の作戦なかなかに面白かったですよ。 ですがやはり動きがまだまだ武器に慣れていない感じですな」
「なんせこっちは今まで平和な世界で暮らしていたもんでな。 その辺は、 勘弁して欲しいな」
「それもそうですな。 では無駄話は一旦ここまでとさせてもらいましょう」
そう言い放つとジークは優に向かって真っすぐ突っ込んできた。
ジークのスピードはお世辞にも早いとは言えない。
-それでも突っ込んでくるとは余程自身の防御力に自身があるということ。
優の持つ手の中にジークを打開しうる手段は一つしかなかった。
その手段とは真っ向からジークを迎えうち、 相手の一撃うわ回る力で一撃を加え、 ジークの剣を破壊するといったものだ。
「行くぞ! おっさん! これが今の俺の全力だ!」
優は今自身の持てる限りの力を使い、 ジークに向かって走った。
この時点で優の剣の破壊力はかなりの物になるのは確実ではあった。
ーまだだ! ジークを打ち破るにはあと一歩足りない!
「アクセル!」
時魔法の初級魔法アクセルは自身の速さを五秒間だけ二倍にするといった魔法だ。
優はそれをジークと接触する五秒前に使い、 今持てる最大の速さを乗せた一撃ををジークにはなった。
「甘い!」
ジークには長年培った経験がある。
その為優が自身の武器を狙っていることがわかっていたのだ。
ジークは優から自身の武器を守るために盾を使い優の攻撃を防ごうとした。
「な!」
「ふん!」
ジークは優の動きを防ぎ切った。
「これで終わりですぞ!」
ジークは優の腹めがけて全力の一撃を放った。
優は自身の攻撃を防がれたことに動揺し反応が遅れ、 回避行動すらする間もなく強烈な一撃が腹を直撃し、 壁まで吹っ飛ばされた。
「ゲホッ……」
ジークの攻撃に優の骨は何本かいき、 臓器は深刻なダメージを受けいた。
その為口からは血を吐き、 立ち上がることすらできなかった。
「……俺の負けだ」
「どうやら私の勝ちのようですな」
優の剣はジークが盾とぶつかりあった瞬間粉々に砕け散った。
ただジークの盾も短剣の威力を完全に殺し切れず、 ひびが入っていた。
「それにしてもまさかレベル一で私にここまで食らいついてくる人間がいるとは思いませんでしたよ」
「……結果は負けだがな」
優は自身の怪我は特に気にしてはいなかった。
ただただジークに負けたことが悔しかった。
「優君!」
雪はケガをしている優に一目散に近づくと回復魔法をかけた。
すると優の怪我は嘘のように消えていった。
「優様立てますかな? 立てないようなら手を貸しますが……」
「そんなことより答えてくれ。 俺は強くなることはできるか?」
「ええ。 その点に関しては、 間違いなく優様は強くなることができます。 それに今回の勝利は主に私のレベルが優様より高かっただけのもの。 もし優様が私と同じレベルでしたら結果は異なっていたでしょう」
「なぁおっさん。 さっきから思っていたんだがあんたの強さほかの騎士に比べてちょっと違いすぎじゃないか? クラスの連中をみるとこの国の騎士に勝ったやつもいるみたいだし」
「それは私の方から説明しましょう」
シリウスはいつの間にか優たちの元に近づいていた。
「この方は、 剣神ジーク・シュタイン様です」
「剣神ってなんだ?」
「剣神とは、 全人類中最強の剣使いの方に与えられる名です」
「へぇ。 それでなんでそんなすごい人がこんなところにいるんだ?」
「私は、 剣神と言ってももう大分年でして、 今はこうやって若者に剣を指導するのが私の日課になっているのです」
「ふん。 まあいいか。 とにかくあんたが強いことはわかった。 なら改めてお願いする俺の事を鍛えてくれ。 俺は、 もっと強くなりたい。 ならなくちゃいけない」
「なぜ優様はそこまで力を求めるのですか?」
ジークは優の真意を見抜くような眼差しで優の事を見つめた。
「それは俺にとって大事な人全員を守るためだ」
優はジークとの戦いで自分がまだまだ弱いと痛感させられていた。
ーこのままでは雪達を守れない。
そう思った優はもっと強くなりたかったのだ。
「なら私も次からは本気で優様を相手し、 鍛えましょう!」
ジークは優の言葉に満足していたようで、 満足そうな表情でそう言った。
「お、 お手柔らかに頼むよ」
-あれでまだ手加減していたのかよ……
優の表情は自然と凍り付いていた。
「優君。 一応怪我人だからあっちで休もう?」
「分かったよ。 そう言えば雪の対戦相手はどうしたんだ?」
「ん? それならあそこで伸びてるよ?」
「そ、 そうか。 それじゃあジーク明日からまた頼む」
「承知しました」
雪は優を怪我したジークの事をあまり心地よく思っていなかった。
その為優と仲よさそうに話すジークの事を優の見ていない間敵意の視線を向けていた。
そこから優たちはシア達と合流し、 昼食を一緒に取った後昼には図書館へと向かった。
そんな生活を優たちは一か月過ごし、 あっという間にダンジョン攻略の日がやってきた。