暗闇の中で一人考える。
俺に取れる選択肢を。
浮かんでは消える、まとまりのない思考。
別に急ぎで考えることではないはずだけど、それが余計に俺を駆り立てる。一刻でも早く、と。
あれじゃない、これじゃないと考えているうちに、俺はいつしか眠ってしまっていた。
次の日の朝、目を覚ますといつもよりも眠気が取れにくかった。俺はそれ程までに夜中まで起きていたのだろうか。いつしか時計を見ることさえ忘れていて何時に寝たのかさえわからない。
外は雨は降っていないながらも生憎の曇天模様。この頃、こういう天気が多いな……。まぁ冬らしいといえば冬らしいけど。
あまり考えすぎても良い考えは浮かばないかもしれないな。でも、今の俺には雪ノ下と由比ヶ浜が居る。
自然とあの二人に相談をしてみようと思うあたり、俺も変わってしまったのかな。変わらないことをよしとした昔と違う今のこの考えは成長と言えるのだろうか。
でも、俺が求め続けていた形のない本物の切れ端を、掴み続けている気がした。
☆ ☆ ☆
放課後の部室。
授業が終わり、部活の時間が来る頃には日が沈み始めているため薄暗い。
夏には十九時近くまで明るいのに冬は十七時にはもうすでに暗い。その移り変わりを感じ、あー冬だなぁとなる。
しかし、高校二年の冬はやけに時間が経つのが遅く感じる。具体的に言うと二年生を二年くらい過ごしてる感じがする。あとプラス一年かもしれない。
奉仕部の部室は暖かく、温かいから余計にそう感じるのかもな。うそ、普通に物理的に長い。俺が卒業するのはまだですか?
卒業をして、無事に受験が終わったら大学に上がる。あの雪ノ下陽乃と同じ大学に。
「なぁ、ちょっと相談いいか」
「あー!やっと言ったし!」
「は?」
「なんかあったみたいな顔ずっとしてたもん。ねーゆきのん!」
「そうね。いつ言ってくれるのかと思ったわ」
俺の表情まで読み取って、俺が言い出すまで待ってくれる。
今までこう言う感情を持ったことがない俺にはこの感情を上手く言語化出来ないけれど、ただひたすらに感謝という気持ちが生まれる。
陽乃さんにもこう言う人達は居るのだろうか。もし、もしいないならそれはどれだけ寂しいのだろう。
昔の自分には居なかっただけに、今振り返ってみるとそれはきっと寂しいと言えると思う。
自分では自覚できないだろうけど、周りから見たらすぐわかるそれを少しでも埋めたら何か変わるんだろうか。
否、変わる。だって俺がそうだから。
「雪ノ下の姉ちゃんのことなんだが……」
こうして、つい先日あったことを雪ノ下と由比ヶ浜に伝える。
俺はこれからどうするべきだろうかと、どうすれば間違えないで済むのだろうかと。
答えはないかもしれないけれど、この二人はきっと導いてくれる。
「ヒッキーの考えはどんな感じ?」
「現状、手詰まりなんだよな」
「姉さんの場合、人にあれこれ言われたりするよりも自分で最適解を出してしまうから難しい問題ね……」
「なら、その最適解よりも良い解を出すしかねーな」
「姉さん、雪ノ下陽乃より良い答えを見つけるのね」
「3人集まれば真珠の知恵って言うし!」
「文殊な文殊」
三人だけのブレインストーミングが始まる。
ブレインストーミングは相手の意見を否定しないんだ。だから由比ヶ浜、お前のその意見は却下。
所々、こうやってふざけながらも意見を交わす。
しかし、これといった答えは出なかった。
「きっと、このままでは堂々巡りになってしまうわ」
「やっぱ、詰むよな」
「姉さんもある種の理性の塊と言えるのだから、それを崩すには感情論で行くしかないんじゃないかしら」
「ヒッキーの言葉ってやけに響くもん!まずはヒッキーがどうしたいか考えてみて?きっとそれが本物だよ」
「……ちょっと、帰りながら考えてみるわ。まぁ、なんつーの?さんきゅ」
畏まってお礼を言うのはまだちょっと照れ臭くって、面と向かってではなく明後日の方向を向きながら軽いお礼を言う。
そんな俺の姿を温かい目で見てくる二人は、笑っていた。
暖かかった部屋を出て寒く冷たい廊下を歩いて外へと出る。
ここからは自分への自問自答だ。
ぼっちは元来、自問自答が得意。ソースは俺。
下手すれば誰とも会話しないで終わることがあるかもしれない日々を、自分の中で自分に問いかけたりね!えっ普通だよね……?
考えるのはもちろん雪ノ下陽乃について、雪ノ下陽乃はどうすれば自由になるのか。そして……、自分の感情について。
自分の感情を自分で気付くには冷静になる時間が必要だ。
これまで幾度となく自分の感情を抑え、考え、律してきた俺ならきっとわかる。
ブツブツと呟く怪しい人物に変身しながら帰路に着く。
不思議と朝から続いていた眠気は消えていて、視界は朝より晴れやかだった。まさに光明が差すというやつだな。
その日の帰り道はいつもと同じ猫背なのに、猫のように足取りが軽く感じた。
☆ ☆ ☆
後日、土曜の昼間に本を買いに行くために外へ出る。
気を紛らわそうかと少し遠めのいつもはあまり行かない、けれど品揃えは良い駅前の書店。
どんどん街中の書店は減ってると聞いたことがある。でも、今から行く書店は大型ショッピングモールの中に入ってるだけあって余程のことがない限りは無くならないと思われるからそこは安心出来る。
あそこにあった駄菓子屋も今はなく、あそこにあったコンビニは駐車場に。いつかそこにあったという事実も人の記憶から消えて忘れられてしまうのだろう。
いつのまにか幼い頃とは変わってしまった街並みを眺めながら目的地へと歩いて行った。
書店に着き、一般文芸作品をそこそこにライトノベルコーナーへ向かう。
某文庫会社の青い背表紙を手に取る。最近のイチオシのこれは是非とも発売日に欲しくて、それが手に入ったことに安堵とワクワクが募る。
書店を後にしてプラプラとショッピングモール内を歩いてると、一階の隅の方にカフェを見つけた。
少しばかり気になって中を覗くと、見覚えのあるショートカットヘアーとロングスカートの美人が居た。
珈琲を嗜みながら本を読んでいる姿は少し雪ノ下に似ている。どちらも甲乙つけがたいが、どちらも絵になる。
外からは長く眺めても居られないし、冷やかそうと中に入る決意を固めた。
カフェオレを注文してさりげなくその人物の横へとそろりそろりと近づいてみることにする。
「やあ比企谷くん、買い物?」
「……そんなところです」
俺のステルスヒッキーさえ看破して先に声をかけて来る陽乃さん。
ですよね、わかってたよね……。だって陽乃さんだもん……。
「こんなところで会うなんて奇遇だね」
「何処にでも居ますね雪ノ下さん」
「比企谷くん居るところにわたし有り!だよ」
「ちょっと心当たりが多いので勘弁してください……」
割とその辺でよく会うから信憑性がありすぎて怖い。
なんなの?大学生って暇なの?
しかも今のタイミングで会うとか神様茶目っ気出しすぎじゃない?
「なんか楽しそうっすね」
「誰かさんがこの前トキメクようなこと言ってたからね」
「ぐぬぬ……。雪ノ下さんがトキメクことなんてあるんですかねぇ」
「もちろん。わたしだって今をトキメク女子大生だもの」
「ワーソレハヨカッタ」
照れが大いに混じった俺と、それをからかうような陽乃さんの会話は少しだけ白々しく、だけどきっと本当のことしか話していない。
雪ノ下陽乃は物語の中から出てきたような人と思いがちだけど、ちゃんとした地に足が着いた女性なのだ。
そう思うと、急激に女性として意識してしまうからやめてほしい。
ただでさえ美人のお姉さんなんて言うスペックを持っているんだ、その充分すぎる武器が俺に牙を剥いてきそう。
この何にも囚われなく、捉えづらい性格こそが陽乃さんらしい。やっぱりこの人はこのままで居て欲しい。
それは俺の単なる身勝手かもしれない。本当はそんなこと望んでないのかもしれない。ハッキリ言ってしまえば俺のエゴだ。
昔から人に迷惑をかけるなと教えられてきた。けれど、人に自分のエゴをぶつけることこそが本当の関係になれるのではないだろうか。嫌なら拒否すればいい。それだけの話。
だから俺は仕事したくないです。上司がエゴぶつけてくるのとか絶対耐えられないわ。で、これなんの話?
「君ってもしかしていつもあんなこと言ってるんじゃないでしょうね?」
「まさか」
「そうよね、それだったら彼女の一人や二人今まで出来てるよね」
「何故今まで居ないって決めつけるんですかねこの人は……」
「居たの?」
「居ないですけど」
過去のアレコレが一気にフラッシュバックして辛くなったのはきっと気のせいじゃない。なんで俺が連絡先聞くとみんな携帯の電池ないの?
そういう陽乃さんだって今まで居なそう。めちゃくちゃモテるだろうけどそれとは別。だってこの人絶対人の嫌なところ最初に見るでしょ。知らんけど。
「雪ノ下さんの好きなタイプとかってあるんですか?」
「うーん、面白い人かな。飽きさせないで居てくれる人」
「ちょっとだけ納得しました」
「比企谷くんは、わたしを飽きさせないでね」
「それはどういう……」
聞き返すと陽乃さんは少しだけ笑って言葉には出さなかった。
はぁ、こういう風に男を弄ぶようなことばっかりしてるんだろうなこの人……。
そう考えるなんだかちょっと、良い気はしない。
でも良い評価っぽいからね!もう!男って本当単純!
「さて、そろそろ行こうかな」
「じゃあまた」
「何言ってるのよ、比企谷くんも一緒によ」
「雪ノ下さんこと何言ってるんですかね……」
「ほら、わたしって今暇じゃない?だからお姉さんとデートしよっか」
デートという言葉の魔力に思わず頷きそうになる。もはや、気付いたら頷いてた。流石魔王。魔力が尋常じゃない。
まぁ、暇だから良いけど。新刊は帰ってからゆっくりと……。
土曜日の午後、俺と陽乃さんのデート(仮)は突然幕をあげた。
☆ ☆ ☆
夕方、陽乃さんと別れて家に戻る。
意外。というべきなのだろうか、陽乃さんは思ったよりエネルギーがあって圧倒されてしまっていた。
服屋に入っては一瞥して違う店に。気に入りそうな服がありそうなところだけ吟味。効率的ではあるが、なんとまぁ多くの店を回った。
ショッピングモール内にある太鼓のゲームも二人で叩いたり、クレーンゲームにも興じてみたりも……。
子供みたいにそれはそれはハシャギながら。
何時も見せる顔とは違っていた気がするのは気のせいなのかそれとも……。
雪ノ下陽乃、完璧超人、笑顔を振りまき、為すべきことを為す。そんな人だったのに今日はくしゃくしゃの笑顔を俺に向けていた。
あれまで装っていた顔というのであれば、それはとても恐ろしいことだが違うと願いたい。
何故、俺は違うと思いたいのだろう。
ずっと燻っていた答えがそこにありそうなのに、その答えに未だ俺はたどり着けない。
前に、平塚先生に言われたことがある。計算して計算して、計算出来ずに残った答え、それが人の気持ちだと。
俺はどこで計算を間違えたのだろう、どうやっても計算が合わない。
なら、計算が合うまで計算するしかないだろうが……。
☆ ☆ ☆
週が明け、夕方から夜にかけて雨予報が出ているために歩いて学校へと向かった。
そしてまた放課後、雪ノ下と由比ヶ浜と話し合う。
俺は今どう思っているのか、どう感じているのかを。
「どうだ?」
「ヒッキーそれ……」
「比企谷くん……」
「どうかしたか?」
「それは大事な大事な今のヒッキーの気持ちなんだよね?」
「……そうだ」
「答えはもう出ていたのね。後は貴方と姉さんの問題だわ」
俺の言葉から何かを察したらしい二人は俺がたどり着けなかった答えを導き出した。
今一つ俺には理解し難い反応を見せる俺に対し、二人は穏やかな顔をしていた。
まるで、我が子の成長を見守るような慈母のような表情で。
なんだよ、その妙に暖かい顔やめて。やめてください。
「ヒッキーが今思ってること陽乃さんに全部言った?」
「いや、なんも」
「じゃあ全部言ってきなさい。後は姉さん次第よ」
「いや、ちょ、待てよ」
「いいから!頑張れヒッキー!」
「頑張って比企谷くん」
半ば無理矢理部室を締め出され、場所のアテもないままに俺は歩き出す。
どうしたもんかと考えながらも足だけを進めて正門前にたどり着くと……。
「やぁ比企谷、ちょっといいか?」
「……葉山」
葉山隼人がそこには立っていた。
部活の最中だったのだろうか、練習着であるユニフォーム姿のままだが妙に決まっているのがまた腹立つな……。
葉山の後についていくと俺が昼飯を食べる場所、俺のベストプレイスに着いた。
なんでこいつここ知ってんだよ……。
「陽乃さんを探してるんだって?」
「なんでお前が……って由比ヶ浜か」
「結衣が比企谷の力になってくれって頼んで来たんだ」
「お前の力を借りるのはいけ好かないが、正直困ってる。力を貸してくれ」
背に腹はかえられぬ。俺がどれだけコイツとウマが合わなくても、どれだけ嫌いでも、由比ヶ浜が頼んでくれた顔を潰すわけにはいかない。
葉山なら、葉山隼人ならきっとなんとかする。コイツはそういうやつだ。
「驚いた、君がそこまでするのか」
「俺だけの事情じゃないんでな。やれることは全てやる。お前に頼むのなんて屁でもない」
「それはそれでちょっとはこっちのことも考えてくれ」
苦笑いをする葉山。別に時間が決まっているわけでもないのに今か今かと、俺の中で焦燥感が生まれる。
居ても立っても居られないこの状況はなんなのだろう。
「俺が陽乃さんを呼ぶよ」
「出来るのか?」
「言ったろ、これでも一応幼馴染なんだよあの姉妹とは」
「うっせ、んじゃ早くしろ」
「君はもう少し気を使うことを覚えろ」
そう言った後に離れた場所で葉山が電話をかけ始めた。
全然どうなるかわからないこの状況で何をすべきなのか今更になって考えてしまう。
何が最善手で何が間違いなのか、それさえもわからない。
「……とりあえずは、来てくれるらしい」
「そうか、よかった」
「ただ、時間はあまり取れないそうだから急げよ。場所は……」
「……くそっ、ちょっと遠いな。だが、助かった。借りはそのうち返す」
時間はあまりない。それがどれほどなのかわかってはいないけど、早く着くにこした事はない。……走るか。
軽い準備運動をして走る準備を整えているところに葉山から声がかかった。
「比企谷、お前が何をしようとしているのか、状況を俺は何も知らない。けどお前なら出来るよ。俺と反対で、俺が嫌いなお前ならきっと。やってやれ比企谷」
「……うっせ、恥ずかしいことばっか言うなつーの。けどまぁ、さんきゅな」
それだけ言うと、俺は走り出した。
雪ノ下陽乃の元へと。
☆ ☆ ☆
走る。走る。走る。
呼吸は既に乱れている。顎は既に上がりきっている。
どんなに不器用な形でも目的地へと足だけは進める。
体は既に満身創痍なのに、思考だけはやけにハッキリとしていた。
何故俺が陽乃さんにここまで執着するのか、陽乃さんが何故この前俺とデートしたのか、今ならその答えにたどりつけそうだ。
雪ノ下と由比ヶ浜に勇気をもらった。
葉山隼人にキッカケをもらった。
もらってばかりの俺は自分では何一つ出来ていないのかもしれない。
けれど、確かなものが一つ俺の心の中にある。それを伝えに行く。
それだけのために、俺は走り続けた。
雪ノ下家の近くにある小さな公園のベンチ。
そこに陽乃さんは座っていた。
居てくれた安堵感が俺を包むと同時に、俺は膝から崩れ落ちた。
「え?ちょ、ちょっと比企谷くん?」
「……どうも、お待たせしました」
「流石のお姉さんでも状況把握出来ないからとりあえず座ろ。歩ける?」
「……ちょっと待って貰えると助かるかなーって」
「仕方ない、肩貸してあげる」
陽乃さんに肩を借り、よろけながらベンチに倒れこむように座る。
こんな状況だけど、陽乃さんの肩は細く、柔らかかったです(小並感)
少し頬を赤くして、困ったような顔をした陽乃さん。ちょっとしくじったかな……。
「それで、どうしたって言うの?隼人は?」
「葉山は来ません。俺が呼んでもらったんで」
「んー?どういうこと?」
「雪ノ下さんと、話をしようと思いまして」
ここから始まるのは俺の感情の放流だ。
最近ずっと溜めて、燻っていた俺の感情を陽乃さんにぶつける時が来た。
上手く言葉になるだろうか、上手く伝わるだろうか、理性の塊とも言われた俺が感情を露わにすることは少なかった。だけど、もう止められない。
「雪ノ下陽乃さん、好きです」
ここに来るまでにたどり着いた答え。
この答えはいつから俺の中にあったかなんてわからない。でも確かに俺の中にあったのだ。
いつしか葉山に言われた、人を本気で好きになったことがない。その通りだ。だからこの感情に、この答えにたどり着くまでに時間がかかってしまった。
「ごめんなさい」
けれど、返ってきた返事は拒絶。
もうこれ以上踏み込んで来るなと明確に示してくる。
でも、もう陽乃さんどうこうじゃなくこれは俺の問題になってしまっている。
「……俺じゃダメですか?」
「君だからダメなんだよ」
「俺が貴方の隣に居てはダメなんですか?」
「……ダメ」
あの日、デートをした日、陽乃さんはずっと試していた。俺が雪ノ下陽乃の隣に立つとどうなるのかと。
答えはあの日にもう出ている。
「楽しかった。楽だった。でもそれでいっぱいになっちゃダメなのよ。わたしは、雪ノ下陽乃だから」
「それじゃ雪ノ下さんの、陽乃さんの気持ちはどうなるんですか?」
「君が人の気持ちを語るの?君はわたしと同類。人の気持ちも計算して答えをだしてしまう人間だよ」
「それは俺と雪ノ下さんが不器用すぎるんです。普通の人は何の計算もなく、人と接する。俺たちはそれが苦手だから計算して補うんです何も悪いことじゃない」
俺と雪ノ下さんは同類。そうであってそうじゃない。
だって、雪ノ下陽乃は意外にも普通の女の子だってもう知っているから。
雪ノ下陽乃は魅力に溢れた人だと知っているから。
人の気持ちは計算出来ない。それはもう知ってるはずだ俺も陽乃さんも。不器用な俺たちは少しずつ進んでお互いを補うしかないと俺はもう心に決めている。
「わたし、めんどくさいよ?」
「俺もめんどくさいんで同じですね」
「全部わたしが一番じゃなきゃ満足出来ないかも」
「力ずくで一番にしてくるくせに」
「わたし、自由が好きなの」
「俺も自由な雪ノ下さんが好きです」
「飽きたら比企谷くんのこと捨てるかもよ?」
「雪ノ下さんの愛が重たいことはずっと前から知ってるんできっと大丈夫です」
「君が思ってるよりずっとずっと君のことが好きなわたしでも良い?」
「望むところです」
「結婚、してくれる?」
「もちろん」
雪ノ下陽乃が自由で居るために俺が、比企谷八幡が剣になって盾になる。
一先ず、結婚相手を見つけるという雪ノ下家のルールを守れば陽乃さんは自由になれる。
俺の感情を守って、雪ノ下家のルールを守って、陽乃さんの自由も守れる。これが最善手だ。
きっとあの日、雪ノ下さんの夢を聞いた時に俺は落ちたのだろう。
だって、泣いてるように見えたその顔は凄く儚くて、綺麗だったから。
朝から続く曇天、雨予想とされていた天気を覆し、雪が降ってきた。
雪の下で二人、頬を赤く染めて陽乃さんの手を握った。どんなにこれからの道が険しくても手を離さないようにと。
十二月二十四日、クリスマス。
雪が降る中で全てが終わり、始まった。
エピローグは終わり、次の物語が始まる。
そして俺と歳上との青春ラブコメが今、始まる。
了
そのうちafterも上げますが一先ず完結です。
感想などもらえたら幸いです。