氷川紗夜 × 青葉モカ   作:lily_black

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今日はバレンタインですね()

違うんですよ、別に昨日投稿するのを忘れてたわけではないんです。だってほら、今日バレンタイン当日ですから。2/14日39時ですから!

……ハイ、すみませんでした


想いを伝える贈り物

 バレンタイン当日、私は絶賛片想い中である青葉さんにバレンタインの品を渡すための準備をしていた。

 

 机上に置いてあるラッピングされた小さな箱とリボンで口を縛った袋を見やる。「本命にはチョコレートとは別にもう一つ用意すべき」と言う今井さんにのせられるままに2つも用意してしまった。

 

 箱の中にはチョコレートが、袋の方にはマカロンがそれぞれ入っている。どちらも今井さんに作り方を教えてもらいながら作ったもので、我ながらそれなりにうまくできたと思う。味についても、自分で食べてみて美味しかったし、一緒に試食した今井さんからのお墨付きももらっているので問題はないはずだ。

 

 そうこう考えているうちに準備が終わった。後は青葉さんのバイト終わりに偶然を装って出くわし渡すだけだ。時計を見てみると、今井さんに教えてもらったバイトの終了時刻まで30分を切っていた。思いのほか準備に手間取ってしまったらしい、移動の時間も考えるとそろそろ出た方がいいだろう。

 

 プレゼントをバッグに入れ、部屋を後にする。玄関で靴を履いているとちょうど日菜がリビングから出てきた。

 

「あれ、おねーちゃんでかけるの?」

 

「ええ、ちょっとそこまでね。いってきます」

 

 玄関を開けて外に出る。日菜の間延びしたいってらっしゃいが聞こえた。ひとつ、大きく息を吸いこむと、一歩目を踏み出した。

 

 

 

「いってらっしゃーい。……あんなに気合い入った格好して、ちょっとそこまでは無理があるでしょ、おねーちゃん」

 コンビニに入ると、しゃーせーとレジに立っていた青葉さんが挨拶してきた。いざ彼女を目にすると緊張してきた。それでもここで逃げ帰ることなどできない。緊張を悟られないよう、なるたけ自然に話しかける。

 

「あ、青葉さん。き、今日バイトだったんですね」

 

「紗夜さんじゃないですかー。そうですよ~、モカちゃん働きものなんで~」

 

「その割にはのんびりしているように見えますが」

 

「時に力を抜くのも必要なんですよー。それにもう特にやることありませんしー?」

 

 彼女と話していると緊張がほぐれてきた。そろそろ本題に入ろう。

 

「そうでした。青葉さんに渡したいものがあるんでした」

 

「あたしにですか~?それならちょっと待っててもらえます?もうバイト終わるんで~」

 

「ええ。わかりました」

 

 そこで一度会話を切り、適当な飲み物を買ってから外に出て待つ。青葉さんはすぐに出てきた。

 

「お待たせしました~。それで、渡したいものって何ですか?」

 

 ついに彼女に渡すと思うとまた緊張してきた。こんな調子でちゃんと渡せるだろうか、いや、何度もシミュレーションしたし、声に出して練習もした。きっと大丈夫だ。

 

「こ、これです!」

 

「……?えーっと、渡したいものってこの香水ですか?」

 

「え、あ、す、すみません!間違えました」

 

「あはは、焦ってる紗夜さんってなんか珍しいですねー。ゆっくりでいいですよ~」

 

 やってしまった。焦って香水(開封済)を出してしまった。彼女があまり気にしてなさそうなのが救いだ。香水をしまって今度こそしっかりとプレゼントを差し出す。

 

「ば、バレンタインなので作ってみましたっ!よければ受け取ってください!」

 

「おー!ありがとうございます。でも2つもですか?」

 

「ええ、もしかして迷惑でしたか……?」

 

「いえいえ、すっごく嬉しいですよー。それじゃあありがたく貰いますねー」

 

 プレゼントを受け取った青葉さんが、本当に嬉しそうに笑ってくれたから、それだけで頑張ったかいがあったと思える。もう少し彼女と話していたいけど、用事も済んだのにいつまでも引きとめるのは悪いのでそろそろ帰ろう。

 

「では、私はそろそろ……」

 

「これ、開けてもいいですか?」

 

「え、ええ。どうぞ」

 

 私の言葉にかぶせるように聞いてきた彼女に了承すると、彼女はまずマカロンが入った袋のリボンを解き、中をのぞき込むとなぜか固まってしまった。もしかしてマカロンは嫌いだっただろうか。

 

「マカロン……」

 

「すみません、マカロン苦手でしたか……?」

 

「あ、いえ、そんなことないですよ~。マカロン好きです。つかぬことお聞きしますが、他の人にもマカロン渡してたりします?」

 

「?いえ、青葉さんだけです」

 

「そ、そうなんですか~」

 

 マカロンをひとつ取り出して、それを見つめる彼女。心なしか顔が赤いような気がする。マカロンを口に運んだ彼女は、ゆっくりと咀嚼していく。

 

「んく。紗夜さん、とっても美味しいです」

 

「!?……そ、そうですか。それは良かったです」

 

 マカロンを飲みこんだ青葉さんがとても可愛く微笑んでくれて、思わず見惚れてしまった。その間に青葉さんは箱のラッピングをキレイに剥がし、箱を開けると再び固まってしまった。

 

 ……そういえば渡してすぐに帰るつもりでチョコレートはハート型にしたんでした。……もしかして引かれてしまったのでは!?そう……ですよね、付き合ってもいないのにハートのチョコだなんて、引かれて当然です……。今井さんの口車に乗ってしまった昔の自分を怒りたい。

 

「……ハートのチョコに、マカロンって、そういうこと……ですよね?」

 

「そ、その、それは……」

 

「別に誤魔化さなくてもいいですよ~。そうだ、あたしもバレンタインのチョコあげますね~」

 

 私が言い訳をしようとすると、彼女はそれを遮り私に小さいけれど高級そうな箱を渡してきた。

 

「駅前のチョコ専門店知ってます?そこのバレンタインチョコです」

 

「あ、ありがとうございます。……!?」

 

 箱から視線を外し顔をあげると、青葉さんが私の耳元に顔を寄せてきた。びっくりして後ろに下がろうとするけれど、いつの間にか腕を掴まれていてできない。そして

 

「最高のチョコありがとうございます。とっても嬉しいです。紗夜さんの気持ちは充分伝わったので、ホワイトデーはとびっきりのお返し用意しますね。楽しみにしててください」

 

 耳元でそうささやき、離れた彼女は「じゃあ、あたしはもう帰りますね、残りは家で大事にいただきます~」といって早足に歩きだした青葉さんを私は見送ることしかできない。別れ際に見えた彼女の横顔は間違いなく赤くなっていた。

 

 彼女が見えなくなってから、私も帰ろうと歩きだす。彼女にもらったチョコをひとつ取り出し口に含んでみると、それは初恋の味がした。

 

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