月の暗空に一筋の光がピカリ、すると瞬く間に光は仲間を増やし月の空を赤く染め上げた。
遠くから見れば幻想的な光景だっただろう、だが逆説近くの者から見ればそれは、
「永琳、あれは何かしら?」
「流れ星‥‥‥ではなさそうね」
月の頭脳、八意永琳は愛用の弓を手繰り寄せる、その表情は強張っており彼女が最大の警戒を寄せているのが見て取れる。
対して月の姫、蓬莱山輝夜は落ちついた雰囲気ながらも表情は好奇心を隠せてはいない。
月面の人草や獣共も各々の反応を顔や手足に浮かべ、ざわついていた。
30秒程だっただろうか、人草を殺めぬよう最大の手心を加えられた初撃が月に降り注ぐ。
月面に大穴を空けながら、黒と赤に包まれた少女は手を空へ突き刺す。
一瞬、瞬きよりも短い時間だけ魔法陣が現れ、月の大気が爆炎に包まれた。
光が晴れた直後、内より現れた異型の怪物が全人類、全月兎に刃や魔法陣を突き付け、目で自身の主の方角を向く様に指示する。
全ての生き物の視線が一点に集中したその時、少女は口を開く。
「私の名前はルーミア、夜の王、闇を操る程度の能力の持ち主よ。お前達の王は誰かしら?」
少女の視線に当てられた人は体が硬直し、まともに口も利けなくなる。
頭の中は恐怖で染め上がり、自分の首に突き付けられた刃の事などとうの昔に忘れてしまっていた。
「わ、私がこの者達の王です、ご用事は何かしら?」
震えながら少女に応対するのは、月の王ツクヨミ
光の女王、カミムスビの気まぐれで作られた人間の王。
「そう、あなたがツクヨミね。中々綺麗な顔をしているじゃない?」
闇の少女は一歩も動けずにいる光の眷属の少女に歩み寄り、唇を奪う。
「う、っぁ‥‥‥」
少女達の唇に透明な橋が出来上がり、すぐに途切れる。
「ふふ、キスは初めてかしら?」
「ぁ、ぁぅぁ」
限界に達した恐怖にほんの僅かな官能が混ざる事で金の髪と純白の羽を持つ少女の思考は停止し、ほんの僅かに傾いた。
それを闇と赤に包まれた金の髪を持つ少女が受け止め、一言。
「どうかしら、お前の嫌う妖怪の味は?」
うろたえる彼女には子供がいるのだが、神故にその方法はまともな生殖ではなく、物に自らの魂を分け与えるという方法だった。
その為、性器の交わりはおろか唇での交わりすら経験した事がない。
清水の純潔を保ち続けた少女には限界を超える恐怖と常時発動型のチャームによる少女のキスは重すぎた。
普段ならどのような状況にも軽く対応出来る筈の光の少女はこの時ばかりは幼い子供の様な対応しか出来なかった、それ故の零れてしまった本音。
「悪くないです‥‥‥」
少女の頬は朱に染まり、大人の階段に片足を乗せた。