(全く以て冗談じゃないですわね・・・)
最強の妖怪、八雲紫は心の中で愚痴る、それもこれも全ては楽しそうに空中で剣を振り回す少女が原因だ。
(幻想郷計画を手伝わせるつもりがどうしてこんな事に・・・)
迫り来る猛烈な剣閃をひらりと躱し、カウンターに妖力弾を数発放つが握りつぶされてしまう。
(ああ、帰って布団でぐっすり眠りたい、上等なお酒でも飲みながらぐっすり眠りたいわ・・・)
ますます激しさを増すばかりの少女の攻撃を躱しながら、現実逃避を始める大妖怪八雲紫。
空には結界の一種だろうか、呪詛がみっちり詰まった半球状の壁の所為でスキマでも脱出は出来ない。
つまり逃げる事は不可能で、自分は死ぬか、目の前の少女が飽きるまでこの飽和状態の猛烈な攻撃を避け続けなければいけないのだ。
どう足掻いても絶望。一応カウンターに小中妖怪なら余裕で屠れる程度の威力のホーミング妖力弾を放っているのだが――――
(まぁ無駄ですわね、向こうは仮にも最高位の神、そして妖怪の祖ですもの)
小さな弾は握りつぶされたり、相手の剣閃に巻き込まれて消滅してしまう。
自分の頼りない弾幕と対象に、相手側の攻撃は激烈を極めた攻撃だ。
神力の塊の様なとんでもない剣から放たれる剣閃は、妖怪の自分が喰らえば消滅は確定で――――しかも光速で近づいてくるから予備動作で避けるしかない。
(スキマが使えなければ詰んでたわね)
少女の剣閃をスキマで受け止め、適当な森に排出する。
膨大な神力を存分に浴びた木々が神格化している様な気がするが、気にしない。
さて、少女は剣閃では意味がないと悟ったのか、魔法を行使し始める。
(うわぁ、流石にコレは私でも引くわ)
空を見上げるとそこには所狭しと並べ慣れた、数える事すら億劫に成る程の膨大な量の魔法陣が光っている。
(これもスキマが無ければ詰んでいたわね)
鋭く尖った氷の矢が砕け散りながら降り注ぐ、一つ一つの速度は音速程度と比較的避けやすい速度だが、無数の氷の矢はお互いにぶつかり合い、砕けたり、跳ねかえったり、合体しながら降下してゆくので軌道計算が非常に面倒くさい、まぁそもそも人一人分の隙間が存在するのかは分からないが。
これもスキマを傘代わりにし、そこらに捨てて置く、氷が融けた時は大変な事になるだろうが、気にしない。
「随分と能力の使い方が上手いじゃない!」
「お褒めに戴いて光栄ですわ」
「弾幕が効かないなら接近戦はどうかしら?」
「接近ッ・・・!?」
突如少女は加速し、紫に特攻する。
それを紫は驚異的な反射で持って寸で躱し、そのままの勢いで地面へと衝突した少女の姿を確認すべく振りかえる。
妖怪の眼力を持って、朦朦と土煙りが上がる大地を睨むとそこには十里は下らない大きさの大穴が空いていた。
(もし避けられず当たっていたら・・・)
思わず身震いしてしまうが、ビビッている場合ではない。
窪みの中心地で輝く魔法陣の燐光を確認したからだ。
(次は何が来るのかしら、こうなったらもう自棄よ!全部避けきってアイツの背中を椅子にしながら月見酒とでも洒落込みましょう)
時間軸が気になる人もいると思うので、一応
今の時間はオオクニヌシがまだ生まれていない程の昔、つまり最低でも180万年前。
でも妖怪や人間、国津神はいる程度に時間は進んでいます。
これからは紫や幽香、てゐや神奈子、諏訪子を中心に東方に古事記や日本書紀、その他歴史書を絡ませて話を進めていきます。