原初の大妖ルーミアの旅   作:小鳥

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対八雲紫Ⅴ

「なんでも?」

 

「ええ、なんでも」

 

死ぬ気で挑んだこの遊び、意外な事にこの私が勝ってしまいましたわ。

 

実際の殺し合いなら私は抵抗する事すら出来ず惨殺されていたでしょうけど、相手が勝ちと言っているのだから胸を張って勝利を誇っても良いでしょう。

 

うふふふふ、今、我が身を廻る快楽はもう二度と得られるモノではないでしょうね・・・いや、私の至上目的を果たしたその時こそ、その時こそ天上突破でしょうね。

 

その為にも、しっかり詰めていかないといけませんわ!

 

勝利の余韻に浸るのは後にして、私は厚かましくも少女に勝者の特権を要求しました。

 

相手側の少女はこれを快諾、私は少女からなんでも一つだけ願いを叶えて貰う権利を手に入れました。

 

これは又と無い千載一遇の機会。これを生かさぬ手は無い。

 

直接我が幻想郷計画への全面協力を要求しても良いのだけど、今の世界に幻想郷は要らない。ならば――――

 

「では私に永続的な妖力の補充をお願いします」

 

――――自らの力を高めて千害万災に備える。これぞ最善の一手。

 

「これはまた意外なお願いね、紫程の大妖怪が一体どうして?」

 

「貴女ほどの実力者には分からないでしょうが、私もまた、唯の一妖怪。何をするにも力が足りない・・・」

 

予め用意していたセリフを吐く。こうでもしないと彼女には舌戦では勝てません・・・舌戦ではね。

 

「紫の妖力で片付かない事なんて早々無いでしょう?」

 

「・・・・・・」

 

どうしてここまで突っかかって来るのか、それは分からないけど、私には返す言葉が無くなってしまった。

 

いわゆる、手詰まりだ。

 

「ま、どうでも良いわ。さあ、妖力のラインを繋いだわよ、これで何時でも私から妖力を受け取る事が出来るわ」

 

「ありがとうございます。では私はこれで・・・」

 

引き際は心得ている。余計な気を起こされる前にとっとと退散しよう。

 

「まあ待ちなさい。お互い長き時を生きる身、折角だし、もっと親交を深めましょう。」

 

「?」

 

「こんなにも月が綺麗なのよ?月見酒と洒落込みましょう」

 

少女は時空魔法を使い、酒と団子を取りだす。

 

「まさに技術の無駄遣いですわね」

 

「こらそこ!有効活用と言いなさい」

 

暫く見つめ合い、そしてお互いに笑いだす。

 

「アハハ、やっぱり・・・良いものでしょう?」

 

「そうですわね、今まで戦いとは相手を屈服させる為だけのモノだと思っていました・・・私が間違っていましたのね」

 

紫は月を見上げ、酒を零しながらポッと呟く。

 

「そりゃそうよ!戦いとは酒のうまみ!そして神魔人妖の潤滑油!紫の言う、殺し合いとは似ても似つかぬってモノよ!」

 

酔いが回ってきたのか、ふらふらしながら地面を踏み鳴らす少女。

 

「流石ですわね、私の知らない世界を知っている・・・」

 

「おうよ!困った事があったら何でも私に言いなさ――――」

 

そこまで言って少女は倒れる。

 

どうやら完全に酔いが回ってしまったようだ、体が小さい所為か、まだ濡らす程度しか飲んでいないのに・・・

 

「随分と無防備な事ですわね・・・」

 

「うへへ~紫~困ったら何でも言いなさいー」

 

随分と酔っている。

 

酒の匂いが碌にしない酔っ払いと言うのも珍しいですわね。

 

・・・今なら簡単に彼女を殺せる。

 

将来、私は絶対に幻想郷を築く。

 

幻想郷は世界の流れに反逆する為の最後の手段。

 

将来必ず、必ず我ら幻想は世界に生きる事が出来なくなる時が訪れる。

 

ならばこそ、一見、妖怪の神である彼女は味方と成る様に思えるかもしれない。

 

だが、幻想郷と言えば聞こえが良いが、言い変えれば只の避難所。

 

それは幻想の・・・妖怪の絶対的敗北を意味する。

 

だからこそ多くの誇り高き神や妖怪は幻想郷計画に反発するだろう。

 

そして、妖怪の最高神たる彼女は最大の障壁。

 

反対されたらそれだけで幻想郷は潰れてしまう。

 

だからこそ、だからこそ今ここで殺すべきなのだろう。

 

「何でもやってあげるわよ~」

 

私の膝に頭を乗せ、寝転がる彼女。

 

どうする?どうする?どうする?どうする?どうする?

 

胸の鼓動が加速するのを感じる、瞳孔が開くのを感じる、体が熱くなるのを感じる。

 

その柔らかい首筋を切り飛ばせば私の目的はより確実なモノとなる。

 

どうする?どうする?どうする?どうする?どうする?

 

息が荒くなるのを感じる、血が滾るのが感じる。

 

「紫~」

 

猫の様な仕草で私に甘え始める彼女。

 

どうする?どうする?どうする?どうする?どうする?

 

眼から涙が溢れるのを感じる。涙?

 

ああっ、私は私が思う以上に愚か者だったようだ。

 

ただ一人の少女の命を殺める事すら出来ない。

 

ただ少し甘い世界を見せられただけでこの様だ。

 

甘ったれ、臆病者、意気地なし、そして大罪人。

 

今の行動の裏に死する命は数え切れない。

 

もはや幻想郷は確実なモノではなくなった、幻想郷が生れぬ世界では妖怪は生きていけない。

 

だが構うものか、私は私のやりたい様にやる、誰にも邪魔させはしない。

 




ル「別に地上の妖怪がどうなろうと私は構わないわよ?」

紫「え」
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