全てが退屈だった。
始めは何もない大草原の中心地で根を張る小さな植物だった。
やがて数え切れない程の年月を得た事により、自我を持つようになり、流れ行く雲を眺める日々が続いた。
更に年月が経ち、大草原は大森林へと姿を変えていった。
その森で静かに暮らしていた私はついに一人の人間に見つかった。
薬草を摘みに来ていた女だ。
動く事すら出来ない私は為す術も無く、薬草摘みの女に摘み取られてしまった。
やがて私は加工され、漢方薬としてその姿を変えさせられた。
乾燥、粉断、すり潰し、と言った加工手順は私に地獄を見せてくれた。
今思えば、これだけの事をしても死ななかったのは、何千万年もの間、太陽の力を溜めこみ続けたお陰なのでしょうね。
そして暫くタンスの奥深くに大事にしまわれていた私であったが、ついに使われる時が来た。
相手は風邪を拗らせた女だ。
その時ばかりはいよいよもって私の長い命も終りなのね、っと覚悟を決め込んでいたのだが・・・結局、胃の中でさえ私は死ねず、逆に女の体を奪い取ってしまった。
その時に黒かった女の髪は緑色に変色してしまった。
生まれて初めて自由に動ける体を手に入れた事で私の気分は有頂天にも達し、漢方にされた恨み妬みを一時は忘れてはしゃぎ回った。
やがて落ち着き、村人に復讐するべく、目に付く端から人間を殺しまわった。
良く覚えていないけど、その時に黒かった瞳が赤くなったのだと思うわ、人を殺した事により長年隠れていた妖怪の血が覚醒したのでしょうね。
村を跡形も無く焼き払った後はふらふらと森を彷徨い歩いていた。
幸いにも、私は植物出身の妖怪なので光さえあれば人間が居なくても生きる事が出来た。
そしてまたもや途方も無い程の時間が過ぎ去り、森は時に攫われ、再び大地は大草原へと姿を変えていた。
ずっと何もすることが無く、私は退屈に暇を重ねていた。
そこで私は暇つぶしに自身の能力を使い、地平線の彼方まで大草原を花で埋める事に決めた。
一日一本、丁寧に植えられた向日葵はたとえ冬でも枯れる事は無く、順調にその数を増やしていた。
やがて結構な花畑が出来あがったところに一人の来訪者が現れた。
その少女は金の髪に赤い瞳を持ち、闇色の衣を纏う姿は人形の様な美しさがあった。
暫く遠くから見惚れていると、いきなり何かを呟き、空に極大のビームを放った。
その時私は心底驚いていたのだろう。
この世に私と互角に戦えそうな存在を見つけたからだ。
ドクドクと長年の孤独で錆付いた妖怪の闘争本能に火が灯るのを感じた。
私は本能の赴くままに理性を手放し、自身の手綱を凶暴な獣に握らせた。
狂った私はもはや神にさえ押さえられない。
頭を支配する圧倒的背徳感と全能感に包まれ、自身は最強なのだと、絶対に無敵なのだと強く感じられる時間が流れて行く、もはや負ける事など頭に無く、思考は眼前の美しい少女をどう犯し尽すかで埋め尽くされていた。
しかし相手は私の理解の及ばぬところの存在だったようだ。
血潮が煮えたぎり、心臓が飛び出し、脳が焼き爛れる程の全力を出したのにも関わらず、相手は軽々とその先を平気で飛び越える。
悔しくてたまらなかった。
いつの間にか闘争本能から来る獣の様な狂気は、嫉妬と怒りからなる狂気へと変貌を遂げていた。
握り潰したい!アイツの頭を!
千切りたい!アイツの腕を!
蹴り飛ばしたい!アイツの腹を!
犯し尽したい!アイツの陰部を!
圧し折りたい!アイツの足を!
私の思考はそこで潰えた。