黄金に輝く世界で最初の空間、至高天。
かつて造化の三神によって造られた世界で最も神聖な場所。
そんな煌びやかな肩書を持つ至高天に胡坐をかいて煎餅を齧る少女が一人。
「で、今回は何が何で何を何するのよ」
神聖な床に寝そべり頬杖をかく少女の問いに、限り無い装飾が施された玉座に座る女性が答える。
「何処の何方の仕業かは存じ上げませんが、地上で凄まじい量の妖力が撒き散らされた様なのです」
「どこの誰かしらねー」
煎餅を齧り、お茶を啜りながら知らんぷりを続ける少女。
「そこから悪しき者共がウジャウジャ湧いている様なので洗浄をお願いしたいのですよ」
「ブハッ!!!悪しき者共がウジャウジャ!?あそこの土地主は幽香よ!どうなってるのよ!」
飲みかけのお茶を噴き出し、玉座に座る女性に掴みかかる少女。
「幽香?ああ、風見幽香ですか、大妖怪の」
忘れていたものを思い出したかの様に女性が手を叩く。
「そうよ!そんな残骸から生まれる様な雑魚が何万万憶と群れても幽香なら一掃出来るでしょ、一体全体どうしたってのよ」
「彼女なら一向に途切れない雑魚妖怪の群れに苛立ち、あの土地を手放したそうですよ」
しばらくの沈黙の後、
「マジで?」
「マジで」
「はぁ、全く面倒な事になったわね」
小岩に腰掛けながら広がる海を眺め、愚痴を垂らす少女。
「妖力が染みついた土地を洗浄する事は並大抵の事では無理、じゃあ、並大抵じゃない事をすれば良いのね」
そう言いながら少女は暫く頭を抱えて考え込む。
そしてついに顔を上げ、
「で、並大抵じゃない事ってなんなのよ」
何も思いつかなかった様だ。
「ま、困った時はタカミムスビよ、大抵の事はタカミムスビに聞けば一発解決よ」
そう独りごちるとタカミムスビに念話を飛ばす。
『ちょっと今、良いかしら?』
『ん?丁度暇してたとこだが・・・』
傍から見れば、虚空を見つめながら行き成り笑顔になる、変人の少女。
『実はね、たった今、カミムスビから妖力が染みついた土地の洗浄を依頼されたのよ。けど私じゃ如何すれば良いか分からなくてね、如何すれば良いの?』
『妖力の染みついた土地の洗浄か・・・そうだな、穢れた土地を丸ごと吹き飛ばすってのは論外として、水で洗い流せば良いんじゃないか?』
『水?』
『ああ、だが妖術や魔法、神力で引き出した様な紛い物の水では駄目だ、そこにはもう既に要らんモノが多量に溶け込んでいるからな』
『じゃあ如何すればいいのよ?』
『天然の水を使うのさ、海の水を引っ張って大洪水を起こせば良い。勿論、術式や力を使わずにな』
『そんなの無理に決まってるじゃない、何よ、海を叩き割って津波でも起こせって言うの?』
『俺がお前にそんな無茶苦茶させるわけ無いだろ?海の底の龍宮城に潮の満ち引きを司る宝具があるからそれを使え』
『成程!自然の生み出した奇跡の産物なら何者の力も感知出来ない、完全透明って訳ね!』
『ご明察、じゃ、切るぞ』
『ありがとうね、おかげで助かったわ』
『じゃあ今度、飯でも奢ってくれ』
『勿論!今度は一緒に月の都のご飯を食べましょう』
『それは良いな、月の飯は天上界のより遥かに旨い』
『決まりね!楽しみにしてるわ』
『ああ、じゃあな』
虚空を見つめながら終始満面の笑みを浮かべていた少女は立ちあがり、
「ふふふ、やっぱりタカミムスビに聞いて正解だったわね」
笑顔で独りごちた。
久方ぶりの造化三神