沸騰した血の雨が降り、死の太陽が穢れ切った大地を焦がす地獄の最恐国、第六層『悪魔の国』。
無数に犇めく悪魔共を束ね、導く地獄最恐の王――――魔王
化の姿はいかにもそれらしく、黒々とした剣や鎧をどす黒い瘴気がすっぽりと覆い尽くしている。
そんな並々ならぬ威圧感をメラメラと燃やす魔王の目の前の玉座に深々と座りこむ男が一人。
魔王の威圧を涼しげに受け流しながら男は語る。
「・・・と言う訳で、今回の悪党は世界史上でも最高にヤバいから気を付けて置いて欲しいんだよ」
「具体的には何をすれば宜しいのでしょうか・・・?」
全身黒づくめの荒々しい姿の魔王の口から驚くほど澄んだ高い声が響く。
「無間の闇の死守と、お前自身の警護だな」
「無間の闇は分かりますが・・・私ですか・・・?何故・・・?」
「お前の中には多少なりとも主神の力が残っているのだよ。あの力は強力だから今後数億世紀は消えずに残るだろうしな」
・・・まぁこの件をきっかけにでもして、驕らずに身辺は堅めとけよ!
そう言い残し、法の神、タカミムスビは崩れるようにして地獄を去った。
「驕らずに・・・か。良し!上級悪魔以上の実力を持つ者を城に集めろ!タカミムスビ様のお言葉を軸に作戦会議を行うぞ!」
賑やかで楽しげな悪魔達の声がこだました。
神々の思考網をくぐり抜け、超越した科学技術を手に入れた月人の全てを束ね、導く月の・・・否、人間の王ツクヨミ
神々しい神気を放つ彼女は普段はその威光を存分に発揮し、人々を力強く導く良きリーダーであるが、今は一人の女性の膝の元に抱えられている。まるで只の平凡な少女の様に。
「それで、今回の敵はかなり危険ですから貴方も気を付けて下さいね」
ツクヨミの金色に光る髪を指でとかしながら光の神、カミムスビは話を続ける
「特に貴女は私の力を強く受け継いでいるのですからね」
目を閉じながら非常にリラックスしてカミムスビの話を聞いていたツクヨミはその言葉を聞いて少々悲しそうな声で、
「それだけですか・・・」
「私の中に渦巻く感情は極個人的なモノですので」
そう言いながら膝の上に座るツクヨミを抱き寄せるカミムスビ。
「意地悪・・・」
「結構」
今の自分達の姿を無二の親友が見ていたら両方の意味で嫉妬するだろうなー、等の下らない事を考えながらカミムスビは割と普段通りにのんびりとした時を過ごす。
混沌極まる世界の外側、そこに寝ぼけ眼を擦りながら世界の全て――――それこそ過去と未来の可能性全てを具に観察していく神が一柱。
「ほうほう、我が眠っている間に随分と世界は発展していたのだなぁ・・・」
「お!人間と妖怪の全面戦争か!元凶はあの娘か、全く、昔も今も変わらずに面白い事を考える娘だ」
「ん?人間と妖怪、どちらも生き延びたか・・・そして全面戦争がきっかけで世界に穢れが出始めたか、まあ仕方が無い事だわな」
「タカミムスビは苦労しているなぁ・・・まぁ、残りの神が自由極まりないのだからそのしわ寄せが残り一柱に押し寄せるのはある意味道理だな。まぁ今度埋め合わせでもしておくか・・・」
「地獄や天国、その他世界のシステムがようやく完成したのか。こんなに掛るなら初めから我が全て造っておいた方が良かったかな?」
「無の領域かー・・・あれは面倒だなぁ、今度消しておくか・・・って逆に無の領域をゴミ捨て場として活用したのか、良いアイデアだなぁ、流石だ」
「前にもチラッとは見たが魔王は相変わらず物騒な姿をしているなぁ、まぁ悪魔を統括するにはあれぐらいでちょうど良いんだろうな」
「あの娘は地上の雑魚相手でもちゃんと手加減出来ているな、偉い偉い!」
「おっと、とんでもない化物が出て来たな。成程、時間加速の魔法を使い、努力にモノを言わせたのか、中々見上げた精神だな!」
「こ~れはあの娘も苦戦するだろうな、なにせ得意の闇が使えないし、魔力にモノを言わせた大威力魔法も周囲の被害を考えると使えないし、やられちゃうかな?」
「お!おお!おおお!あの娘、ついに気まで習得したのか!本物の光の障壁ならまだしも、欠片の力で展開された様な残念な壁では話にも成りはせんわな」
「うわぁ、我の力の破片すら回収済みだったのか・・・我の力があの娘を痛めていると考えると少々胸が痛くなって来たな・・・」
「混沌の力まで使うか!始めは存在ごと消滅させる気だったが、止めだ止め!これほどの者を彼方の果てに葬るのは惜しい!」
過去世界の情勢を閲覧しながら、一人で延々と駄弁っていたアメノミナカヌシ之神は最後に一つ、有言実行!っと喜色の混じった声を上げ、混沌の世界から消えた。