原初の大妖ルーミアの旅   作:小鳥

40 / 47
龍宮城Ⅷ

水の枯れた深海に楽しげに笑い合う神が二柱。

 

お互いに遊びとも本気とも思える様な一手を交わし合いながら雑談へと洒落込む。

 

「どう?本気の私は中々面倒臭いでしょう?」

 

「ああ!だが、闇神の真髄は此処にはないのだろう?」

 

「さぁね!知らないわ!」

 

うねる炎龍が海底を焼き、逆巻く激流がマグマを押し流し、雨の様な落雷が少女の表皮を滑り落ちる。

 

青白い殺光線が結界を軽々とぶち破り、黒線が時や空間を蝕み、世界に穴を空ける。

 

「さぁ、今こそ貴方の溜めこんだ智識を見せびらかす時よ!本気で来なさい!でなきゃ死ぬわよ!」

 

枯れた海底が一瞬赤く光り、次の瞬間、突然現れた魔方陣から巨大な青白い熱光線が放出される。

 

「横は地平線の遥か彼方まで、縦は遥か宇宙の彼方まで、逃げ場無しの絶望魔法!さぁその英知で絶望を希望へと変換して見せなさい!」

 

対する老人は簡単な呪文を唱えてから杖を軽く振る。

 

それだけで魔力を徹底的に吸い上げる疑似結界の様なものが彼の周りに構築される。

 

魔力という根本的な力の源を枯渇するまで吸い取られた熱線は結界に触れた部分だけ奇麗に消え失せた。

 

「余裕、かな?」

 

老人は反撃とばかりに魔法神術を組み上げて行く。

 

「相手にとって不足なし!お互いにね!」

 

少女は老人の術式を一瞬の内に解析し、対抗術式と追撃術式を組み上げる。

 

「電子の精よ、奴を焼き尽くせ!」

 

「地底の奥底に眠る闇の者達よ、好きなだけ魔力をやるからさっさと来いッ!」

 

天から雨よ霰よと降り注ぐ落雷の豪雨。

 

地底から湧きあがる瞑界に巣喰う死に誘う瞑雷。

 

地表を我がもの顔で荒らし回る電子の波。

 

そしてそれに対抗するべく呼び出された異形の化物が六四三柱。

 

久々に召喚された異形の化物共は張り切り、少女の命を訊く前に自ら動く。

 

うねる肉塊が弾け、汁を飛ばしながら主人を守るべく化物共は自らの体を盾とする。

 

超耐久・超再生の化物共が少女を守るべく奮闘するが、無限に襲いかかる雷勢に押し負け、遂にただ一片の肉塊すら残さずに蒸発してしまう。

 

だが、自らの召喚獣がやられたにも関わらず少女は涼しい顔で次の一手を繰り出す。

 

「禁忌『パンドラの箱』」

 

少女の宣言と共に、海底に大きな亀裂が走り、亀裂の底から覗く闇が一気にあふれ出る。

 

海底の亀裂からあふれ出る闇は瞬く間に空を覆い尽くし、あたりは一寸先も見えぬ暗闇に包まれた。

 

「喰らい尽くせ、『ありとあらゆるものを喰う程度の能力』」

 

その瞬間―――世界の一部はプツリと切り取られた。

 

少女の闇が空間も時間も、世界軸も次元も、光も物質も、魂でさえも全て喰らい尽くし、限りの無い空虚に満たされてしまったからだ。

 

視界の全てが闇に包まれた事を確認した少女はため息を吐きながら虚空を睨む。

 

「手応えはあった筈なのだけど?」

 

「世界単位での喰害攻撃、実に見事!だが詰めが甘かったね、僕は遠い場所にバックアップを取っているから単純な破壊攻撃では滅びないのだよ」

 

再生されてゆく世界の中で楽しそうに笑う老人が姿を現した。

 

「ふーん、凄いわね」

 

「どうにも反応が薄いね・・・奥の手を隠しているのかい?」

 

「試してみる?」

 

睨み合いは途切れ、再び戦火が海底を焼く。

 

少女は即席時空門から数十本の鈍く輝く銀色の槍を取り出し、雑な動作で空中にそれらを放り投げる。

 

「神滅『悪魔神殿』」

 

宙を舞う無数の槍は粉々に分解され、その破片が広範囲にばら撒かれる。

 

「見た事の無い術式・・・造化の秘術かい?」

 

「さぁね、知らないわ!」

 

少女は深く息を吸い込み、ゆっくりと吐く息にその身に宿る膨大な魔力の"全て"を乗せる。

 

「奥の手・・・って訳だね、面白い!」

 

老人は様々な防御、回避、追撃用術式を組み上げ、少女の一手に備える。

 

「色々手を尽している様だけど、無駄よ」

 

圧倒的な密度を誇る少女の魔力は凄まじい勢いで拡散され、視界は再び黒一色に染まりあがる。

 

「視界が奪われたか――――それでどうするのかい?」

 

「私自身が行うアプローチは此処まで、後は只の自然現象よ」

 

魔力の黒に塗り潰されている為今は見る事が敵わないが、少し前までは確かに銀色に輝いていた破片が魔力を猛烈な勢いで吸い上げる。

 

限りある魔力は吸い上げるだけ薄まってゆく、あれほどあった魔力は簡単に底を尽き、視界が晴れる。

 

「・・・?一体何が起こるというのだ?」

 

老人は念には念をっと要塞の様な多層結界を強化してゆく。

 

「まあせいぜい足掻きなさい、無駄だけど」

 

少女の言葉を無視し、結界の強化を続ける老人であったが、すぐにその表情に変化が現れる。

 

「これは・・・魔力、否、全ての力が漏れ出している?」

 

「大当たりよ、さぁ精々足掻くといいわ」

 

少女と老人の体から七色の光が漏れだし、銀色の破片にその全てを回収される。

 

「僕を枯渇させるつもりか!」

 

「その通り!さぁ根比べといきましょう!」

 

少女は激痛に耐えるべく片目をきつく閉じ、ふらつきながら挑戦的な笑みを刺し向ける。

 

「冗談ではない!」

 

凄まじい勢いで加速されてゆく吸い上げに老人は諸手を上げて逃げだす。

 

「逃げても・・・無駄よ。一度発動したら逃げ場は無い。あらゆる障壁を乗り越えて、あなたから何もかもを奪い去るわ」

 

「ッならば・・・耐えきるのみ!」

 

老人は地面に手を着き、世界から力を吸い上げる為の術式を組み上げる。

 

「だか・・・ら、無駄・・・よ・・・」

 

銀の破片が老人の術式から全てを奪い取り、彼の渾身の式を破壊する。

 

「そんな・・・!」

 

「そんな・・に悲観するこ・・と・・・ない・・わ・・・只の・・我慢・・・比べよ」

 

倒れ伏しながら少女は老人を励ます。

 

「っく、もう・・・力が・・・」

 

「力が・・・・こって・・るだ・・・け・・・マ・・・シ・・・よ」

 

吸収が始まる前からすっからかんだった少女の体は簡単に膝を折り、その顔を泥で汚す。

 

無限である筈の闇の力も変換術式が組めなければ只のゴミ、加速してゆく吸収に自己回復が間に合うはずも無く、少女は体の力の全てを奪い取られる。

 

「あ・・・指・・・消え・・・ちゃった」

 

魂の奥深くに仕舞い込まれた神力や霊力は役立たず、いよいよ表の力が枯渇した少女に残るのは体のみ。

 

「僕の・・・勝ち・かな・・・ああ・・・・・どうせ・・・・・・引き・・・分け・・・・・・・か」

 

 




銀の破片はあくまで自然現象で、いくら魔法を極めたとはいえ、通常の魔法使いにはどうしようもない代物、術式宣言は言い換えれば封を破る様なもの。

んで、あれは吸い取り速度が加速するタイプの物なので始めはとてもトロイ。

だから無理矢理多量の魔力を吸わせて覚醒させる必要があった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。