全ての生物が倒れ伏し、完全な静寂に包まれた水の枯れた海底に突如巨大な光源が現れる。
巨大なそれは現れるだけで海底を漂う無数の銀片を吹き飛ばし、辺り一面を神気で埋め尽くしてしまった。
「ぬ・・・一足遅かったか、我とした事が・・・あー、やっちまったなぁ」
姿に変化は無いが、どことなく悲壮感が漂う巨大なそれ。
内心は多分、もっと早起きすれば良かった・・・、とかそういう具合だろう。
「ま、悩んでも仕方ない。取り合えずいつまでも球体のままでは千業万善全てに示しが付かん」
直ぐ前の失態を記憶の彼方へ放り投げ、自分のファッション?を気にしだす巨大なそれ。
「見た目はとてもとても大切だ、大事じゃなくて大切だ。だから、変身しよう」
巨大なそれは収縮し、やがて少年と思われる程の大きさにまで縮み、その感触を確かめるように手足をぶらつかせる。
「久しぶりの体だが、悪いところは無さそうだな。さて・・・」
少年は大世界をジャックし、勝手に自宅と腕を同化させる。
「あの娘は放置していても勝手に復活するだろう、だがあの娘と互角以上に戦えるあの神を逃すのは惜しい」
少年は腕から虹を織って作られた羽扇を取り出し、軽く振う。
「橋を架ける虹よ、過去へ橋を創れ」
最上の神の命を帯びた扇は奮起し、瞬く間に先端が過去の世界に繋がっている橋が出来た。
「もうひとこえだな」
少年は手を擦り合わせて粘土を創る。
「ぽいっとな」
虹の果てに粘土を放り投げ、その場に座り込む少年。
「あー、これで二人ともこの次元まで生き残れるはず。駄目なら全知全能にものを言わせてやろう」
「神滅『悪魔神殿』」
銀の槍が砕け散り、破片が周囲に漂い始めたその時、突如時空が歪み、中から小さな粘土が飛び出した。
「なんなの・・・?私の全知の智識にこんなものは存在しないわよ?」
「果てしない時を生きてきたけど、ここまで意味不明、解析不能な物質は始めてみるね」
謎の粘土に困惑する二柱を尻目?に粘土はうねりながら体積を増やす。
「ッ!」
「解析不能――――主神の御業って訳か」
光を突き放す程の速度で粘土の触手が伸び、二人を纏めて締め上げる。
「魔法の行使――――否、術式の行使が抑えつけられているわね」
「僕らをいともたやすく無力化出来る兵器を所持する怪物なんて一人しかいないよね」
「言われなくても分かるわ、主神の仕業ね」
「破壊とは言わない。脱出の算段は?」
「零よ」
「僕もだ」
彼らは唯一自由に動かせる顔を苦く染めた。