私達を雁字搦めに縛り付ける粘土に向けて怒りを込めた涎を飛ばす。
「さっさと解放してくれないかしら・・・ホント」
「汚いから止めてやめてくれないかな?」
「私の体は無菌だから大丈夫よ」
「・・・そういう問題かい?」
「じゃあご褒美とでも思っておきなさい」
「・・・ところで今思いついたんだけど、お互いに不死だろう?自殺して余所で復活するのはどうだい?」
「情報遮断結界。これだけで分かるでしょ」
「成程、その方面に対する備えは考えていなかったな・・・」
「まぁ恥じる事は無い、どうせ我には勝てんのだから」
粘土に全身を縛られ、変わり映えのしない殺風景な海底の中で延々と続く無駄話に少年が槍を入れる。
「随分とお寝坊さんな主様ね、殺されたいのかしら」
「これが天之御中主神か・・・」
少女はこめかみをひくつかせ、老人は初めて目にする最高の神秘に声を失う。
少年は彼らを無視して話を進める。
「お前がこの闇神と互角に戦ったと言われる海神か」
「あ、ああ」
「うむ、素直でよろしい。いきなりだが龍神になる気はないか?」
腕を組み、偉そうにふんぞり返る少年が
「は?」
時が止まるとはこんな感じなのかしら?魔法で時ぐらいどうにでも出来るけど、言霊で時を操る事は出来ないわねぇ・・・
「龍神・・・龍とは最強の守護者を表す言葉。それを束ねる神になれとは――――」
「神々の階級は 我>造化三神≧龍神>その他 って感じだな。龍神に足る器を持つ者が生まれなかったので龍神枠は放置していたのだが、お前なら相応しいだろう。命令だ、お前、龍神に成れ」
「ッ!」
老人の体が一瞬光り、彼の空気が変わる。
「成功だな。正真正銘の不老不死に、強固な肉体、膨大な魔力、そして権力。精々楽しむが良い。じゃあの!」
少年は初めから居なかったかのように自然体で消えていった。
「一応私から補足しておくけど、あなたの役割は一つ『生きる事』よ。世界に流れるエネルギーの強力なパイプライン、それが龍神よ」
世界に流れる荒々しいエネルギーを龍神と言う器官を通して、より使いやすい滑らかなエネルギーに変えるのよ。
私にも一応世界のエネルギーの三割を使う権利が有るらしいんだけど、一度も使っていないわね、闇は無限だから必要ないのよ・・・
「そのために必要な式も、ラインも、全てタカミムスビが管理しているわ。あなたはその強靭な体を維持し続けるだけで良いの」
タカミムスビは本当にオーバーワークね、今度差し入れでも持って行こうかしら、
「随分と楽な仕事だね、こんなので良いのかい?」
「出世したのだから当然よ・・・で、どうする?」
「?」
「その龍の力を使って、"本気"の私と戦ってみる?」
龍神は少しためらった後、
「・・・止めておくよ、今はまだこの体を慣らす事が先だ」
「それも一つの選択肢ね、良いわ。それじゃあ周囲の時を戻すわね、超広域魔法は私に分があるわ」
「頼む」