「タカミムスビ、対荒闇捕縛装置の準備が整いました」
白い翼の生えた貴婦人、カミムスビが青白く光る縄を伸ばして見せる。
「助かる。造化の者を一時とはいえ縛り上げられる天上界の宝だ、ここでぐらいしか出番がないだろうよ」
白い貴婦人は彼の言葉に首を傾げ、
「言われた通りに用意はしましたが、コレは単に彼女に対して相性抜群なだけで、ほかの神に対してはそこそこ強力な紐でしかないような気がするのですが?」
「まあまあ、ちょっと貸してみろ」
紐が彼の手に収まった瞬間、紐が虹色に輝き、徐々に発光が収まり、やがて光が失われる。
「俺は法の神でもあるからな、等価値なら大概なんでも造れる」
「なるほど、素晴らしい力ですね」
場所は移り、大空洞。
数千手にも及ぶ攻防の果て、辺りには精霊の残骸や砕け散った刀剣の類が散乱している。
「わずかな隙を突いて致命傷を与えても、次の攻撃までには全快されてしまう、一撃で消し飛ばそうにも、狙ったように対抗術式を組み上げて相殺されてしまう」
ボロボロになった虹色の鱗を全身に持つ龍は聞こえない程小さな声で呟く、
「強い、な。流石に」
俯いた頭を起こすと全身を炎上させながら凄まじい勢いで突っ込んでくる敵が目に入る。
「――――っ!」
ボロボロになった自らの鱗を振り落とし、突撃してくる敵に向かって射出する。
「そんなしょぼい攻撃が通用するわけないでしょ!」
左腕を前に突き出し、虹の鱗を掴み取り左腕ごと切り落とし、そのまま右手で龍の体をぶん殴る。
ごぼっっ、と曇った音が音が響くと同時に、龍の口から急流の河の如く血が吐き出される。
「零距離なら避けられないだろう、くたばれ『崩壊術式』!」
自らの体にめり込んだ敵の腕を崩壊させていく、左右の腕を失えば勝利が近くなると踏んだからだ。
「だからそんなしょぼい攻撃は通用しないのよっ!」
崩壊し始めた右腕を切り落とし、治ったばかりの左腕で再び殴りつける。
「っ『転移』!」
体の大半が吹き飛んだ龍がギリギリのところで敵から大きく距離を取り、体を休める。
転移により生まれた時間で炎上した体を消火し、逆流しかけていた魔力の流れを元に戻す。
「あと一撃でも殴られていたら絶命しているところだった・・・凄まじいな、闇神は」
千手にも及ぶ攻防のすべてを振り出しに戻す転移を少し惜しみながらも、最善の一手だったと冷静に分析する。
戦いによりのぼせていた頭が虚空により冷やされ、少々の脱力感と高揚感に包まれながら勝つための思考を回す。
「奴の近接戦闘能力は凄まじいが、戦いが進めば進むほど荒くなるね、恐らく本気を出せば出す程荒闇大妖の荒の力が強くなっていくから制御が効かなくなっているのだろうね」
「無限の闇を抱える奴は無限に強くなっていくのだろうけど、僕のような練達の士からすればある程度までならむしろやりやすくなる」
「勝機はそこに・・・というかそこにしかないね!」
「俄然、でいいのかな?とにかく――――やる気が出てきた」
龍の炎は再び燃え上がる。