オーバーロード~死と天使~   作:にょきにょきえのき

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なんとか投稿に間に合った……

それでは続きをどうぞ


1 カルネ村虐殺

 陽光聖典隊長ニグンは恐怖を目の前の光景に覚えていた。

 任務は佳境を迎え、後は獲物を刈り取るだけの簡単な作業だったはずだ。それがどうしたことだ。目の前には倒れ付す部下達、消えていく天使達。

 それを目にして彼は懐の中から国より賜った秘宝を天高く掲げる。人類救済の名の元に、神に反する者共を駆逐するために。

 

 

 

 ~時は少し遡る~

 

 

 ナザリック地下大墳墓。その一室にて目の前に浮かんだ鏡に何やらパントマイムのようなことを行っている者がいた。

「お? これで拡大か! やっと操作に慣れてきたか」

 遠隔視の鏡(ミラー・オブ・リモートビューイング)を操作するモモンガは操作に一段落すると、後ろに控える執事に声を掛ける。

 

「確かに人影やモンスターは確認できないな。セバス。もう少し先は偵察したか?」

「いいえ。モモンガ様。私が確認したのは地表部から数キロ程でございます。もう一度探索に向かいましょうか?」

「それには及ばん。むやみに戦力を分散するのは今の段階では得策ではないからな。」

 ヒラヒラと手を振ると再び鏡に視線を戻し操作を続ける。

 

 

「モモンガ様。失礼ながらそろそろ御休憩されてはいかがでしょうか? 我々シモベに御命じ下されば……」

「皆が頑張ってくれている中で自分だけ休むわけにもいかんさ。それに何かしている方が気が紛れ……ん? これは集落……祭りか?」

 おおよそ10キロ程南西にようやく集落を見つけたモモンガは首を捻る。

 

「いえ、これは違います。」

 鋼のような声音に嫌なものを感じながら徐々に拡大していくと

「チッ!」

 それは騎士達による一方的な殺戮だった。

 

 

 

 

 

 

「あ! やっと村っぽいもの発見! 良かったぁ。」

 草原に蹄の跡を見つけて追ってきたアリスはホッと溜息をつきながら村に歩みを進めながら、とりあえず情報収集だな、と考えていた。

 

「? 何か騒がしいけど……! あれは?」

 その瞬間、空に人が吹き飛ぶありえない光景が目に付いた。

「うっ……」

 村に足を踏み入れたアリスの前に広がっているのは地獄絵図だった。

 頭から股にかけて真っ二つに、首と胴体が、潰されたかのようにミンチになっている……そんな騎士達の死体と広場の真ん中で震え上がる人々、それに

 

「あれは死の騎士(デスナイト)?!」

 震える騎士達をまるでいたぶるかのように睥睨している異形の化け物。ユグドラシルでは見慣れたモンスターの姿だった。

 

「これはアイツがやったのか? でも村人には手を出さないで騎士とだけ戦ってるようだけど……使役されてる? ! くっ!」

 広場に足を踏みいれた瞬間、今まで騎士以外目もくれてなかったモンスターが急にこちらを振り向くとフランベッルジュを振りぬいてきた。

 

「くそっ! 倒せなくはないけど……ここで戦うと……」

 震える村民達を巻き込まないとも限らない。ここはヘイトを引き付けて村の外に誘うべきか。そんなことを考えながら攻撃を避けつつ後退していると

 

死の騎士(デスナイト)! そこまでだ!」

 広場に声が響きその動きを止める死の騎士(デスナイト)は、まるで王者を迎えるように膝を折る。

 

「大変申し訳ないことをしました。村を襲っている騎士だけを狙うように指示していたのですが……申し遅れました。私の名はアインズ・ウール・ゴウン。旅の魔法詠唱者(マジックキャスター)です。」

 大柄な身体にローブを羽織った仮面の男がガントレットに包まれた手を差し出している。

 

(アインズ・ウール・ゴウン?! それに嫉妬マスク?! )「いいえ……怪我もしていませんし、お気になさらず。あ、私はアリス・キャロライン・リーデといいます。」

 自分の知っている人物かは定かではないが、顔を隠しているのは理由あってのことだろう、とこの場では問いかけずに差し出された手を握ろうと一歩前に出た瞬間、自分とアインズの間に一本のバルディッシュが土煙を上げながら突き刺さった。

 

「っ! アルベド! どういうつもりだ?!」

「申し訳ございません。アインズ様。しかし、この娘は危険です! 御身の盾となるのが我々シモベの役目! ……正体を現せ! 私の嫌いな匂いがプンプンしてるわ! 天使(エンジェル)!」

 

 造型的に女性であろう漆黒の鎧に身を包みながら殺気の篭った視線を投げつけてくることに一瞬たじろぎながらも、コクリと頷きながらアリスは目を瞑る。その背には

 

「な、なんと!」「あ、あれは!」「お姉ちゃん! 見て見て!」「天使……様?」

 村人達が動揺するのも仕方がない。少女の背には純白の羽根、頭上には金色に輝く環が浮かんでいる。

 余談だが、王国の教会勢力は、かの法国と違い、天使(エンジェル)は神の使いではなく、召喚されたモンスターの一種だという姿勢を貫いているが、辺境の村ではそんなことは知られず、単に物語に出てくる存在と認識していたのだ。

 

 

「確かに私の種族は天使(エンジェル)です。でもあなたがたに危害を加えようとは……」

「黙りなさい! その神聖な空気が至高の御身に仇なすと知れ!」

 

 アインズが纏う「絶望のオーラ」と相反するスキル「希望のオーラ」

 これはユグドラシル上では天使種族等が持つパッシブスキルの一つで、周囲に軽度なバフ、Lv5になると微量な回復効果を持つものだ、ようはリジェネーション効果なのだが、絶望のオーラ等で相殺されてしまう面があった。

 

 

「あぁ! すみません。でもこれパッシブスキルなので消せない……あ、消せた」

 アタフタと手を振りながら無意識に発動していたスキルをなんとか意識的にコンントロールする。

 

(なるほど……スキルのオンオフが出来るのか、意識がそのままコマンドになるということか)「これでどうでしょうか? でも希望のオーラを嫌がるということは貴女は悪……」

「黙りなさいと言ったはずよ! 今さら無害なふりをしても遅いわ!」

 

 言うやいなや地面を陥没させるほどの力を篭めて飛び出したアルベドに対して、迎撃のために腰を落としかけたところで

 

「いいかげんにしろ! アルベド! 私は友好的にと言ったはずだ!」

 空間が歪むほどの気配を漂わせながら一喝した仮面の魔法詠唱者(マジックキャスター)は力を篭めてアルベドの肩を掴んだ。

 

「も、申し訳ございません! この失態、私の命をもって償いいたします!」

「よい。私を守ろうとしてくれたのだろう? そのことは嬉しく思っている。今回は不問とするが次はないと思え。」

「ハッ! ご温情感謝いたします!(くふーーー! アインズ様が私の肩に御手を! それにあのオーラ! マジカッケー!)」

 

「私の部下が重ね重ね大変迷惑をおかけしました。許して頂けるといいのですが。」

「いえ、頭を上げてください。何もなかったのですから。それに私も迂闊に刺激してしまったので……」

 二人でペコペコと頭を下げる姿は正に日本人といったところだ。

 

「あのー……魔法詠唱者(マジックキャスター)様とて、天使様。この村を救って頂いてありがとうございます。よろしければ私の家においでください。少しですが御礼を……」

 おずおずと声を掛けてきたのはこの村、カルネ村の村長と名乗った。私は何もしていないと固辞するアリスだったが、先程の希望のオーラで怪我をしていた村民の傷がみるみる塞がったらしい。

 

(あの程度の回復効果で全快するなんて……HP低すぎないか? 騎士達も死の騎士(デスナイト)一体に壊滅させられていたし……)「わかりました。少し聞きたいこともありますし、お邪魔いたします。」

 アリスはこの世界の一般市民はユグドラシルより圧倒的に弱いことに気付きつつ首を縦に振った。

 

「私もお邪魔させていただきます。今回の報酬……の話もしたいですし。」

 もちろん金品など要求する気はない。対価として情報を引き出すつもりだった。それに目の前の天使、恐らく自分と同じ境遇のプレイヤーかNPCであろう存在と友好的に接したかったのだ。

 

 

 その言葉にホッとした様子の村長に、こちらですと連れられ村長宅であろう家屋の方へ少し進んだところで、アリスはアインズに恐る恐る声をかけた。

 

「……あのー。アインズ・ウール・ゴウン……さん?」

「アインズで結構ですよ。私もアリスさんと呼ばせて頂きます。 それでどうかしましたか?」

「わかりました。アインズさん。私の話は後で時間を取って頂くとして……いいんですか?」

 何がいいのだろう? 時間を取ることはむしろ情報交換もためにも大歓迎だ。もしかするとお互い協力出来るかもしれない。ギルドに不都合がない範囲でなら条件も飲むつもりだ。

 だが何やら違うらしい。アリスの問いかけは視線がアインズの後方を指しているのだ。振り返ったアインズは「あ……忘れてた」と少々間の抜けた声を出してしまった。

 

 

 アインズの後方には広場の真ん中でいまだイヤンイヤンと頬に両手を添えながらクネクネ身を捩っているアルベドの姿を戦々恐々と見つめる村民達の姿があった。

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