オーバーロード~死と天使~   作:にょきにょきえのき

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 ギリギリ今日中……全てはサビ残のせいだ。

 リアルにヘロヘロさん状態です。


VSニグン

「あれは……炎の上位天使(アークフレイム・エンジェル)監視の権天使(プリンシパリティ・オブザベイション)?」

 

 アリスの視線の先、戦士団が戦っている異形の集団は確かにユグドラシルのモンスターだった。どちらも低位のモンスターだが、この世界においては脅威といえるのだろう。

 その証拠に、まともに戦えているのはガゼフだけだ。

 

「相手も戦い慣れている様子だし……とりあえずアインズさんに言われた通りに危なくなるまでは遊撃と情報収集しますか。」

 

 敵の包囲は完璧。術者は前に出ず複数の天使で各個撃破を基本としている。天使を無視して術者を倒そうとすると、すかさず天使が援護に入る。天使を相手にすると術者の遠距離魔法が飛んでくる。

 後衛の乏しい戦士団は徐々に体力を削られて壊滅することになるだろう。いくら王国最強といえどガゼフとて人間なのだ。疲労もすれば怪我もする。陽光聖典の勝利は明白だった。

 

 ……アリス・キャロライン・リーデというイレギュラーな存在さえこの場にいなければ。

 

 

 

 

「ガゼフ・ストロノーフぅぅ。憐れなものだなぁ。万全の状態なら少しは勝負になっただろうに。」

 常に武技を使い続け、数えるのもバカバカしいほどの天使を相手取り、ガゼフは立っているのがやっとだった。

 気を抜けば倒れてしまいそうな疲労感、握っている剣がこれほど重いとは、だが

 

「ハァハァ……俺は王の剣。髪の毛一本まで国に捧げている。いたずらに王国の民を害したキサマらを許すわけにはいかん!!!」

 獲物を射抜くように睨み付ける眼光はこの段においても衰えることなく刺し違えてでもという決死の覚悟が覗える。

 

「ハッ。あんな農民たちと王国戦士長の命、どちらが重いかわかるだろうに。くだらん。いくら吼えようと虫の息ではないか。」

 そう言いながら炎の上位天使(アークフレイム・エンジェル)に弄らせる。

 

「ガハッ! ……キサマが直接トドメを刺しに来ないのか?」

「そんな手に乗るかぁ。 無駄な足掻きを止め、そこで大人しく横になれ。せめてもの情けに苦痛なく殺してやる。まぁキサマが死んだ後であの村やキサマの部下達がどうなっても知らんがなぁ。」

 下卑た笑いを上げるニグンに対してガゼフは愉快そうに声をあげて笑った。

 

「ハハハッ。 あの村には俺より強い御仁がいるぞ。それにもう一人俺より強い少女が部下達を守ってくれている。虎の尾を踏む前に逃げたほうが賢明だと思うがな。」

「なーにを戯言をぉぉ。ならばキサマもろとも皆殺しにしてくれるわ。」

 やれ。と傍に控える術者たちに指示を出し、天使たちが殺到した瞬間

 

「な……に?」

 光輝く粒子となって上位天使達は一体残らず消え去ったのだ。

 

 

「一体何をしたぁぁ! ええい! 再召喚だ! 急げ!」

 陽光聖典隊員たちが慌てて召喚していく中、ガゼフは薄く笑う。彼らなら後のことを任せられる。あの優しそうな少女には人殺しなど出来ないだろう。せめて……

 

「……血に汚れるのは俺みたいな人間だけで十分だ!」

 最後の力を振り絞ってニグンに向かって突撃する。天使共の召喚はギリギリ間に合わないだろう。だが、

 

「ぐあっ……クソッ! こんな時に!」

 限界を迎えていた身体は言うことを聞かず、気付けば地面に転がっていた。ここまでか……ゴウン殿、アリス殿……あとはよろしくお頼みします。そう覚悟を決めた時、

 目を閉じ小声で呟いたガゼフの耳に鈴のような声が響いたのだ。

 

 

「あなたはまだ死ぬべきじゃありませんよ。……少し休んでいてください。」

 いつの間にか倒れたガゼフの横に屈み、剣を握る手をそっと掌で包み込む少女。

 あぁ……暖かい。まるで陽の光りだ……。 そこでガゼフは意識を手放した。

 

 

 

 

「ふぅ。なんとか希望のオーラで少しは回復出来たかな。」

「き、き、きさまぁぁぁぁ どこから現れた! 魔法詠唱者(マジックキャスター) か!いや、まだガキではないか! そこをどけ!」

 動揺から一足先に立ち直り、わめき散らすニグンだったのだが、少女はそんなこと気にも止めずに空を見ながら何かを叫んでいる。

 

 

「アインズさーん! 見てるんでしょー? ガゼフさんと戦士団の方々の回収をお願いしたいんですー! 最低限回復させてるのでー!」

「はいはい、そんな大声出さなくても聞こえてますって。はい異界門(ゲート)。とりあえずカルネ村の倉庫に繋げておきましたので。」

 グニャリと闇が広がったと思うと現れたアインズは、そう言うやいなやポイポイと戦士団を異界門(ゲート)に放り込んでいく。

 

「援軍か?! 奇怪な仮面の魔法詠唱者(マジックキャスター)め! 各員! やつらを一匹たりとも逃がすな! ガゼフ共も村人共もだ! 匿うヤツは全て人類の敵だ! そこの魔法詠唱者(マジックキャスター)2人など囲んでしまえば問題ない!」

 ニグンが叫んだ瞬間、辺りの温度が下がった気がした。

 

「……黙って聞いていれば人間如きが好き放題言ってくれるな。俺が手ずから救い、名を出してまで守ると約束した人々を殺すだと? ……ちっ。沈静化されたか……ここはアリスさんにお任せします」

 無意識に漏れ出た絶望のオーラが陽光聖典を恐怖に陥れるが、震える者はいるが逃げ出したりする者はいない。さすがは特殊部隊のエリートたちだ。 

 意識を集中させ互いに連携し、まずは敵陣ど真ん中にいる2人の魔法詠唱者(マジックキャスター)を屠る。そう動き出そうとしたところで、パリンと空間が割れた。

 

「ふん。何者かが覗こうとしていたみたいだな。攻勢防壁に引っかかったようだ。……まぁ広範囲化した爆裂(エクスプロージョン)だし、この程度では諦めないだろうが多少時間は稼げるな」

 アインズにとっては非常に弱い魔法による反撃だが、この一撃でニグンの様子を探ろうとしていた土の巫女姫は爆発に巻き込まれて死亡、土の神殿の儀式の間も壊滅という大きな被害が出ていた。

 

「ではアリスさん。住民が不安がっていると思いますので説明と戦士長たちの傷の手当をお願いして来ますので。」

 そう言うとアインズは頷くアリスに会釈をすると異界門(ゲート)に消えていく。

 

 

 

 

 アインズを見送ったアリスは改めてニグン達に向かい合いポツリと、しかしハッキリと聞こえるように呟いた。

 

「……私も少し怒っていますよ? この世界にはこの世界のルールがあるんだろうけれど、自分達の目的のために見ず知らずの弱者をいたぶる集団には」

 カルマ値が+だからか、はたまた天使という種族に魂が引っ張られているからか。アリスの胸中にはモヤモヤと不快感が渦巻いていた。

 

「小娘がぁぁ! 神の代弁者たる我々のぉぉ! 崇高な志に犠牲は付き物なのだぁぁ! わかればさっさと消えうせろ! 今ならキサマだけは許してやらんでもないぞ!」

 その言葉にピクリとアリスの眉が動く。

 

「……神? 神なんざこの世にいないさ……もしいるなら俺が殺してやる。 どんなに希ってもアイツを救ってくれなかった神なんて……」

 その呟きは小さすぎて誰の耳にも届かなかっただろう。ニグン達はもちろんアンデットと化したアインズの聴力でも拾うことは叶わなかった。

 

「何をブツブツ言っている? 祈りでも捧げていたか? 邪教徒どもの祈りなぞ我が神は聞いては下さらないぞぉ?」

 たった一人、しかも相手は子供だ。自分達が負けるはずがない。もしこの娘が生まれながらの異能(タレント)を持っていたとしても懐には切り札が残っている。

 そんな自身満々な様子はアリスを冷静にさせるには十分だった。

 

 

「……ふぅ。ま、あんたたちのやってることを正当化するような神ならどっちにしろ願い下げだけどね」

 おどけながら首をすくめるアリスに対し、とうとう我慢の限界を迎えたニグンは憤怒の表情でその手を振り下ろし、数十の上位天使達が一斉に少女に向かって刃を走らせたのだった。





 長くなりそうなので一旦切ります。
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