雄英高校サポート科 発目兄妹の日常   作:オティンティン大明神

2 / 4
パワーローダーの憂鬱

雄英高校サポート科、そこは未来のエンジニア達が己の発想力と技術を掛け合わせて様々な逸品を作り上げる為の学科。それ故にサポート科の担当教員は開発に特化した教師が担当している。

 

「クケケケ……あー腹痛てぇ」

 

「大丈夫ですかパワーローダー先生。顔色が悪いですが」

 

廊下を二人の教師が歩く。1人は余り大きくない体格と独特の笑い方、そして彼の象徴とも言えるショベルカーのショベルを彷彿とさせる鉄製のフェイスアーマー、そんな彼はプロヒーロー パワーローダー。埋島千狩、卓越した建築技術と己の為に培ったサポートアイテム制作技術を見込まれ雄英高校サポート科の教員としてスカウトされた一流のプロである。

 

もう1人は一般教科を教える教員でありながらも、セメントを操るという希少であり万能性の高い力を見込まれ日々、様々なトレーニングルームが崩壊しているこの雄英高校の直し屋。彼がいなければヒーロー科の生徒達が満足に修練に行えないと言っても過言ではない存在。プロヒーロー セメントス。異形の肉体を持った彼は自身が操るセメントに良く似た肉体を大仰に動かし、顔を真っ青にし、腹を抑えながら歩くパワーローダーを心配するように話し掛けた。

 

そんなセメントスの態度を見てパワーローダーは心配はいらないと何度か手を振り言葉を続ける。

 

「あー……ウチの学科に新しい1年坊に特別推薦で入った天才児が二人程いるんだが、コイツらがほんっっとにクセモンでな。昨日だって試運転で爆発起こしたらしく、実験室を担当してた教師から泣き付かれたんだよ『パワーローダーさんの所の生徒はどうなってるんですか! またやらかしましたよ! 入って一月も経ってないのに色んな意味で余りにも酷くないですか!? 』ってな」

 

「あー……発目兄妹でしたか? 確か双子の兄妹でしたよね。同じ学校、同じ学科、作った物をコンクールに出せば二人揃って賞を取ってたとかいう噂の天才兄妹」

 

凄い兄妹もいたものですねぇ。と呑気に笑うセメントスを見てパワーローダーはポケットに常備してある胃薬を飲み、言葉を続けた。曰く、あの餓鬼共は凄いとかそんなんじゃないと。

 

「……俺もアイツら見るまではそう思ってたんだが。初めてアイツらを見た時に、その感想は吹き飛んだね。ありゃあ変態の類だ、しかも狂がつくタイプのな」

 

マッドサイエンティストと言えば良いか?と独特な笑い方をしながらパワーローダーは言葉を続けた。そんな姿を見たセメントスは彼がそこまで言うのは珍しいと思い、驚いたように何度か頷く。

 

「アイツらが入って……まだ2週間かそこらだな? その間にアイツら2人して幾つ制作してると思う? 」

 

「そうですね……2週間ですし、試運転、安全確認も含めて2つか3つが良い所でしょうか? 」

 

パワーローダーから出された問題にセメントスはこれだけ出来れば上等だろうと思いその問いに答えた。だが、その答えを聞いたパワーローダーは愉快そうに笑い正答を言い放つ。答えを聞き信じられないと言わんばかりに絶句するセメントス、それを見て笑うパワーローダー。

 

「そうだな……アイツらが入学してきた時も酷かった……いやホントに酷かった」

 

そこから愉快痛快と言わんばかりにパワーローダーは話し始める。今年の期待のルーキーとの初遭遇を。

 

 

──ウチの学科はサポート科。つまりはまぁ発明家って奴らが集まる場所だ。何奴も此奴も癖のある奴ばっかりでな、今年も今年で変な奴ばっかり集まったんだよ。毎年絶対にいるミサイル狂がいれば精密な人型ロボット……というかメイドロボットを作りたいって奴もいたし、なんなら唯の機械に欲情する変態もいた。ん?生徒を変態呼びは不味い?クケケケ、気にする事ねぇよ。アイツらも本望だろうし。

 

んまぁ、そんな未来の変態でも入りたての奴らだ。何奴も此奴も入学式ではガチガチに緊張してやがった。やっぱ一年坊は見てて可愛いもんだ。

 

んで、学科主任でもある俺は生徒が全員集まってるのか他の教員に聞いたんだが、なんか二人ほど来てないらしくてな? いやIDは通されてたらしいから一応学校には来てたらしいんだが、そいつらが何処に居るのかさっぱりだったらしく、一応探してた教員も時間が時間故に途中で切り上げて教室にいる生徒達を体育館を移動させたらしいんだ。

 

普通に考えて問題発生だ。という事で、俺は学年主任であるミッドナイドの奴に話を通し、急いでその2人を探しに向かった。何かあったら学校の傷に掛かるし、何より生徒の安全にも関わるからな。

 

んで探せど探せど見つかりやしねぇ。教室、トイレ、図書室に他の体育館。見つかりそうな所は大概探したんだがさっぱりいなくてな。んで最後に回してた所、ぶっちゃけそこがビンゴだったんだよ。

 

俺も彼処だけはないと高を括ってた事もあり、正直見るまでは信じられなかった。彼処には入るまでに3回のパスワード入力が必要だし、序でに教員専用のパスカードも必要な筈なんだ。

 

そこが何処かだと?クケケケ……聞いて腰抜かすなよ、仮想ヴィラン置き場さ。あんのだだっ広い、ロボット置き場。彼処にアイツらはいたのさ。

 

何をしてたのかって……?そりゃあ

 

「兄さん!これがこれが雄英高校が誇る技術の結晶の一つ、仮想ヴィランですよ! 凄いです! どれもかれもスケールが段違いです! 出力に動力、どれもかれもがまるでコミックに出てくるロボットと同じレベル! これなんてガン○ムに出てくる某MAと同じくらいエネルギー消費量が激しいですよ! 地域1つくらいの電力なら平然と食い潰しますよコレ! 」

 

「あー……すげぇデケェな。でも……うん? これ……アレ? 」

 

生徒達を探してた右往左往し、ここだけはないだろうと高を括っていた俺の視界に広がっていたものは、雄英高校が誇る技術の結晶の一つでもある仮想ヴィラン。それのデータを目を輝かせて眺める少女と、コンソールを操作して頭を捻ったりしている少年。つまりは俺が探していた存在がそこにいた。

 

「(ハァッ!? アイツらここまでのパスとカードをどうしやがったんだ!? いやまぁ俺だってやろうと思えば無くても入れるが……それにしたってこれは可笑しいだろ! それに道中の機材が壊された形跡はなかった……あり得るとすれば

、前にここに入ってた職員がなんかやって、自動で閉まる筈の扉を全部手動設定に変えていたままでここから出ていった……いや無理があるな)」

 

正直想定してない出来事というか。有り得ない状況だったから俺の頭も混乱して動けなかった、まぁ現実は俺を於いて進んでいくものらしく。

 

「……どうしたんですか兄さん! 何か気にある事でもあったんですか!気になります!教えてください! 」

 

「……いや、これを見ろ。エネルギー効率が結構おざなりだ。なんていうか……その『雄英高校って金があるしそこまで面倒な作りしなくても良いよね! こうしたほうが作るのも楽だし設計図描くのも楽だし! これで行こう!』っていう製作者の考えがバシバシ伝わるというかなんというか……」

 

「む……確かに、言われてみればそうですね。途中で力尽きた感が拭えない造りですね」

 

どうやら仮想ヴィランに文句があるらしく二人してあーでもないこーでもないと話し始めた。まぁ目標を見つけた事だし、後は焦らずアイツが満足するまで待ってやろうかと考えてた俺の耳に、現実を疑ってしまうような言葉が聞こえてきた訳だ。

 

「だろ? だからこの部分をこうして……ここの回路を……」

 

「おー……出力は変わらずの15%の効率アップですね……このベイビーを作った人は最後の最後で完璧に作り上げる事を放棄したんでしょうか? 」

 

「……お前だって似たような所あるだろうが。飽きたら俺に押し付ける事が良くある癖に、人の事言える立場か? 」

 

「兄さんなら絶対作り掛けのベイビーを途中で放り投げないって確信がありますので! これは兄さんに対する信頼です! 」

 

「くっそ可愛い妹め! そんな事を言って誤魔化せると思うなよ!」

 

その会話を聞いて、正直今すぐに出ていってアイツらの話に混ざりたくなった……だって、しょうがないだろ?まだ入りたての一年坊がウチの叡智の結晶に文句を付けて、尚且つ改善点を叩き出すなんて、詳しい内容が気になって仕方ない。というか技術職としては、混ざって議論したくなったんだ。

 

そろそろ声を掛けるべきだと判断し、アイツらに声をかけようとしたその瞬間、それは起こった。

 

「なぁ明。見えるか?」

 

「えぇ……まぁバッチリ分かります。どうするんです兄さん? もしかして……」

 

「そりゃまぁ……気になったしなぁ。乗りかかった船だし最後までやらないと気分が悪いよな」

 

そしてアイツらは……

 

「──んで……おっと、もうこんな所か。じゃあなセメントス」

 

「いやいや。そこまで話したんですから最後まで言ってくださいよ。凄く気になるというか、それ色んな意味で校長先生に通すべき案件では? 」

 

目的地前まで辿り着いたのか、パワーローダーはそう話を閉めてセメントスへと別れの言葉を告げる。セメントスはそれに待ったを掛けるが、パワーローダーは対して気にする様子もなく。

 

「クケケケ。もう話してあるよ」

 

と一言だけ残し、鉄の扉を開き中へと入っていった。納得がいかないと言わんばかりに眉を細めセメントスも自分が向かうべき場所へと足を進める。

 

そして、鉄の扉を開いたパワーローダーを待ち受けていたのは。

 

「パワパワーローダー先生! 兄さんとの合作ベイビー19号が出来ました! 是非確認をして頂きたいのですが! 」

 

「……これで2人合わせて合計60個目か。申請する側も受け取る側もてんやわんやで大変だな」

 

笑顔で新作と思われるサポートアイテムを渡してくる発目明の姿。そんな発目明からサポートアイテムを受け取りパワーローダーは言葉を続けた。

 

「……でだ、動作確認及び安全確認は誰がした? 」

 

「草案が兄さんでデサインは私が担当し、二人で制作した後、最後の動作確認と安全確認を兄さんが行いました! 」

 

「よーし、良く俺の言葉を覚えてくれていた。成長したな発目妹」

 

「いえ……?兄さんがどうしても自分がやると言ったので任せただけですが? 」

 

「ヒェェェ……びっくりするくらい病的自分本位。普通、先生の話くらいちゃんと聞かない? 」

 

「いえ……? なにか仰られていましたっけ……いたっ! 」

 

お前の話など聞いてないと言わんばかりの態度に思わず慄くパワーローダー。そんな状況下で平然としている発目明に拳が振り下ろされた。

 

「俺が前に説明したのにもう忘れたのか、少しくらいで良いから興味無いことにも少しくらい脳の容量を割く努力をしろ明。すいませんパパ先生」

 

「……いやまぁ、別に良いけど。君達、先生の名前。ちゃんと覚えてる? 」

 

明の頭を軽く叩いた京の言葉を聞き、疲れたような顔をして問いかけるパワーローダー、2人は互いに見詰め合い首を傾げる。そして得心が言ったように頷くとその問いに自信満々な態度で明が答えた。

 

「勿論です! ちゃんと覚えてますよパワパワローダー先生! 兄さんは略して先生を呼んでるだけだと思います! 」

 

「すいません……パワパワローダー先生。パパ先生があまりに呼びやすくてつい……」

 

「いや……うん。なんでも良いから取り敢えずパパだけは辞めてね。生徒達からそう呼ばれ始めたら先生の教師生命とヒーロー生命がマッハだから」

 

 

パワーローダーはそっと胃薬を飲んだ。

 




どうでも良い設定

パワーローダー
サポート科主任であり発目兄妹のクラスの担任。病的自分本位な兄弟に振り回されたり時たま兄の方だけでもギャフンと言わせたりする予定のお方

発目兄妹には名前を覚えて貰っておらず
発目明 パワパワローダー先生
発目京 パパ先生

と呼ばれる事がある。彼がサポート科のパパとなるのも近い
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。