雄英高校サポート科 発目兄妹の日常 作:オティンティン大明神
魯鈍無常な鴉の声が未だ動き出していない街に響き渡る。明け方の太陽が街を照らし始め、朝を知らせる都会のタフな小鳥達が仕事を初め、街がゆっくりと覚醒した。
普段と変わらない日常。街の住民達は1日の始まりと共に目を覚まし、身支度し始める。少しずつ人々の喧騒で騒がしくなっていく街、そんな平穏な日常に相応しくない爆音が響き渡った。
とある一軒家、敷地面積は他の家の2倍近くあるその家屋から何かが爆発した音と共に黒い煙が漏れ出し始める。すわ何事かと思い、窓からその家を眺めた者達は黒い煙が出ている場所を確認し、溜息をついた後、何事もなかったかのように自分達の日常に戻っていく。
「明ィィィッ! そんな『取り敢えず馬力重視でいきました。機体が持つかぶっちゃけ考えてません! テヘッ☆』みたいなもんをつくったらこうなるって考えたら分かるだろうが! 」
「兄さん! それは違います! かの発明王トーマスアルバエジソンはこう仰いました!失敗は成功の母と! つまり今回の失敗は次なる成功へと繋がる第1歩であり、新たなる発明品への糧となったのです! 」
「そのせいで機材がぶっ壊れたら意味ないよねぇ!? 学校のなら幾らでも壊して良いけど家のは俺が直さなきゃ駄目なんだから少しくらいさぁ! 」
そして、その煙が立ち篭める家から二人の子供達が飛び出し大声で話し出す。彼等は発目家の双子の兄妹、大声で怒鳴るように少女を問い詰めている少年の名前が発目京。そしてそれを半分聞き流しながら持論を展開しているのが発目明。この辺りに住んでいる者ならば彼等を知らぬ者はいない、理由は……察してやって欲しい。
「そんな事よりさっきの爆発で思いついたアイデアがあるんですが! 兄さん! 早く学校に行って新しいベイビーを作りましょう!そうしましょう! 」
さぁ行こうと言わんばかりに明が京の手を引っ張る。そんな妹の姿を見て兄は落ち着けと言わんばかりに、逆に自分の元へと妹を引っ張り話し出した。
「おバカ、俺達の格好を見ろ。灰だらけ、油まみれ煤だらけ。オマケに作業着だろうが。学校に行くんだから制服を着なきゃならんし汚れも落とさなあかん。分かったらとっとと家に戻ってシャワーでも浴びてこい。お前が入ってる間に俺は片付けをしておくから」
そんな兄の言葉を聞き。妹は何かを考え込むように呻いた後、名案を閃いたといわんばかりにバッと兄の手を引き家へと足を進める。
「うーん……はっ!そうですきてますワタシ! 二人で入って二人で掃除をすれば効率が良いのではないでしょうか! そうと決まればはやくシャワーを浴びましょう! 善は急げ、さぁ早く! 」
「んな効率が悪い事をするくらいなら俺がとっとと片付けて……って明? 聞いてるか? ちょっと? 俺の言葉聞いてる? 」
「フフフフ……早く学校でこのアイデアでベイビーを作りましょう。楽しみですねぇ! 非常に楽しみです! ええ! 」
兄の言葉など耳に入っていないと言わんばかりにズルズルと引きずりながら家へと戻っていく。そんな彼等の様子を見て、痴呆が入った彷徨癖のある近所のお爺さんが
「若いって良いのぉ……ワシだって若い頃は……はて、婆さんや。飯はまだか? 」
そう言いながら彼等が家に入るまでを見守っていた。
「──んで。そっからも何やかんやあって普通に遅刻してしまったと? 」
「すいませんパパ先生……悪気はなかったんですが」
そして時間は経ち、場所は雄英高校サポート科の実験室。そこで頭を抑え、これ以上は勘弁してくれと言わんばかりに頭を振るパワーローダーと発目京の姿がそこにはあった。
「パパはほんとにやめて……まぁ別にそれは良いんだがな? 発目兄妹。お前らは大切な事を2週間ほど忘れてるんだが、何か分かるか? 」
疲れが分かる声色で問うパワーローダーの言葉を聞き困惑する京、因みに明の方は教師の話など知らぬと言わんばかりに既にアイテムの製作を行っている。京1人が答えを出すために何度か唸るとハッとしたように指を鳴らし言葉を発した。
「分かりましたパワフル先生! 確かに大切な事ですね! 」
「おお……最早パワしか合ってないが、お前が分かってくれたならもうそれで良いや。それで、お前……いや、お前達は何をするべきだ? 」
思わず感激で涙が溢れそうになったパワーローダーは目元を手で抑えながら京の言葉を促した。確かに彼も自分本位な所があるが妹である発目明と比べたら遥かに常識がある。そんな彼が理解したと言えば自分の言葉は伝わった筈だ、そう思い京の言葉を待つ。
そして京は笑顔で自分が作業を行っていた場所に戻ると、先程作り上げたと思われる物体と紙束をパワーローダーへと手渡した。
「これが先程家で作ったサポートアイテムと設計書、序でに記入済の申請書です! どうぞご確認ください! 」
満面の笑みで手渡される物を受け取った後。パワーローダーは真顔で京の頭を拳でグリグリと力と怒りを込めてあてがい、色々と絞り出すような声で呟いた。
「違う。そうじゃない」
京の悲鳴が実験室に響き渡り明がすわ何事かと言わんばかりに立ち上がり二人の元へと駆け寄る。その姿を確認したパワーローダーは京から手を離し2人へと言葉を掛ける。
「お前ら……入学して1回でも教室に入ったか? 」
「「教室? 」」
パワーローダーの言葉に理解が出来ないといった様子で発目兄妹は互いに顔を見合わせ、頭を捻る。その様子を見てパワーローダーはそっと胃薬を飲むと、まるで幼児に教えるかの如くゆっくり、丁寧に話し出した。
「良いか? 学校に来て一番最初に行かなきゃならない場所は何処だ? 」
「「作業室か実験室 」」
「うん。違うな」
トンチキな兄妹の答えを聞きフラリと倒れそうになるも必死に耐えパワーローダーは言葉を続ける。
「ほら……小学校とか中学校とかで授業を受けてた場所があっただろ? そこは何処だった? 」
その言葉を聞き閃いたかのように明の目が輝き、その快活な声を響かせた。
「……やはり作業室ですね! 」
「うーん……やだこの子。興味無いことをホンットに覚えるつもりないっぽい」
それを聞きようやく正答を理解したのか、京は納得したように何度か頷くと心の底から嫌そうな顔をしてパワーローダーへと言葉を掛けた。
「そんなの時間の無駄じゃないですか。ここで作ってる方がよっぽど有意義です」
「やだ凄い……学校生活を無駄で切り捨てたよこの子。最近の義務教育の情操教育は一体どうなってるんだ? ちゃんと仕事しろ」
「俺達は一応高等教育と〇〇大学で学べる程度の事なら小学校で全部収めてます。やる必要とか……ないですね? 」
「えぇ……」
そう2人が話していると、明が頭から疑問符を出し会話に乱入する。
「……兄さんはなにか分かったんですか! ? 気になります! 教えてください! 」
「お前ら教室に行ったことないからさっさと来いだって。どうする明? 」
「お断りします! それじゃあベイビーを作る作業に戻りますんで! 」
ハッキリと拒否の意志を見せた明の言葉を聞き、京も同じように自分の作業へと戻ろうとする。そんな二人の背中にパワーローダーはニヤリと笑いながら言葉を掛けた。
「あーあー!今日の授業は特別に警察庁からお借りした個性無効化捕縛器具を弄れるチャンスなのになぁ! 特別に設計図も借りてるんだけどなぁ! あーあー! 惜しいなぁ! 来ないなら残念だけ『『興味あります! 』』……顔をそんなに近づけるな。ビックリしただろうが」
両目を子どものようにキラキラと輝かせてくる兄妹を見てパワーローダーはニヤリと笑い、彼等と共に作業室を後にする。教室へと向かう中で
「あの捕縛器具には昔から興味があったんだ! 個性無効化のプロセス!をそれを応用出来れば様々なアイテムに使える! しかも設計図まで見れる!? 完璧じゃないか! 」
「実物を触った事がなかったのでこれはチャンスです! 無効化のプロセス! とても興味があります! 」
まるで幼児のように楽しそうに語る兄妹の声が、廊下中に響き渡っていた。
それいる?みたいな設定
彷徨癖のある痴呆のお爺ちゃん
御歳98歳
妻とは5年前に死別済み