エクラ「異世界召喚されたwww」   作:ソウキ

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 俺達の眼前で”有り得ない戦い”が起きていた。それは歴史に名を刻んだ英雄同士の戦い。時代も世界も違う生まれの彼等が、戦っている。

 エフラムとマークスが激しく撃ち合う。エフラムがジークムントを振り回し、何度も仕掛けるがその度にマークスはジークフリートを振るい退ける。どちらも強い。

「...援護するよ!」

 二人の戦いを唖然と見ていた俺の横でクレインが矢をつがい放つ。連続して二射。

 一本の矢はジークフリートが放つ衝撃に落ち届かず、もう一本の矢はマークスの顔の横に飛んで言った。

 動く的を的確に狙うのは難しいのだろう。それでもクレインはまあ矢を構える、と、騎馬上からこちらを睨んだマークスと目が合った。

 背筋に恐ろしいものを感じ、俺はたじろぐ。と、同時に、

 

「邪魔だ!」

 

 強い衝撃波が俺の横をかけていった。ジークフリートは遠くの敵にも反撃出来る神器。先ほどの魔力で出来た刃のような衝撃波もあの黒剣の力というわけだ。

「うう...」

 呻く声が聞こえ、顔を上げる。

 俺の近くにいたクレインが地に伏せていた。先程の攻撃を受けたのだ!肩の辺りから血が出ている!

 急いでクレインの所に行こうとしたが、エンブラ兵が武器を手に俺の前に立ちはだかる。

 

「お前を殺せばヴェロニカ様から報酬が貰えるかもしれない」

「戦う事も出来ない軍師風情が、ここで死に散らせ!」

 

 や、やばい。コイツ等、非戦闘民も手をかける気満々だ。アスク王国を助ける、英雄を解放するって誓いを立てたんだ!こんな所で終われない。

 だが無力な俺はエンブラ兵を睨む事しか出来なくて...、

「エクラさん!エンブラ兵の相手は私達に任せてください!」

 耳に飛び込んで来たのは戦場には似つかわしくないほどに明るいシャロンの声。この声を聴くと不思議と力が湧いてくる。

「エクラ、クレインを連れて一旦安全な所まで引くんだ」

 襲いかかって来たエンブラ兵を蹴散らしながらアルフォンスが助言してくれる。

 確かにそうだ。ここを退けば勝機は必ず見えてくる。ひとまずマークスはエフラムに任せて、シャロンとアルフォンスがエンブラ兵と戦う。

 多勢に無勢だがエンブラ兵の奴等、英雄に依存しっぱなしで鍛錬してないのか兵士としてはアルフォンスとシャロンよりずっと劣る。

 二人で十人くらいはいけそうだ。

 

「エクラ、絶対無理な事をしちゃ駄目だからね!敵の前に立ちふさがるとか、危ない事はしないでね!」

「はい!」

 

 二人を信じ、肩を抑え立ち上がり尚も弓をつがえようとしているクレインの所へ向かった。

 アルフォンスにミネルバとの戦いでの事を未だに注意されるとは思わなかった。確かにあれは夢だと思い込んでいた俺が大体悪かったのだがちょっと過保護過ぎないか。

 多分、アルフォンスも自身の目の届かない所に俺をやるのが気掛かりなのだろう。ブレイザブリクを使えるのは俺だけだし解らなくは無いが...、

 それよりは負傷したクレインだ。

 

「下がろう!弓兵としても前に出過ぎだし血が...!!あああ、止血しないと...」

「大丈夫です、弓を引くのに支障はない。まだ戦えます」

「そ、そんな事言っても...ほら、腕だって痙攣してるから!」

 

 なんとか説得して止血の処置を行う。ここで倒れられては困る。

 誰も死なせたくないというのもあるが、アンナが言っていたのだ。

 

『契約した英雄は戦場で死んでしまっても召喚士とブレイザブリクの力で暫くしたら元に戻るわ。けれど、忘れないでね。例えあの英雄達が記憶が肉体を有して存在するものでも、死の痛みを受ける事は変わりないのだから』

 

 呼んだのは紛れも無い俺だが、死の苦しみや痛みを何度も受けさせたくない。ファイアーエムブレムの世界じゃ、戦争があったり日常的に死が近くにあるが、俺のいた世界は違う。

 死は恐ろしくて悲しくて怖いものだ。そんなものを好きだったファイアーエムブレムのキャラクターに何度も味あわせてられるか!

 それに消耗品のように扱ってしまったらそれこそ嘗ての会社の上司やエンブラ帝国のやり方と同じになってしまうような気がして、とても厭だった。

 

「待って、エクラ!」

 

 肩を貸そうとした俺をよそにクレインは痛みがあるだろうに弓を構え、隠れてこちら側を攻撃しようとしていた魔道士が持つ魔道書を撃ち抜く。

「アルフォンスに貴方の身の安全を任されている身。出来る事は全うする...治療ありがとう。だいぶ楽だよ」

 そう優雅に微笑むと今度は斧を振り上げて俺達の所に突進して来ようとする戦士の腕を矢で射った。

 痛かったのかたちまち戦士は斧を捨て逃げていく。先程の魔道士もそうだが、英雄との戦いに戦意を失っているものも少なくないのだろう。

 戦うつもりがないものは追わない。彼等にも家族や兄弟が居ると思うから、無駄に命を散らせる気にはならない。

 俺の考えに気付いたのかクレインも無駄撃ちはしなかった。とても有り難いことだ。

 気付けば殆どの敵は逃げだしている。まだエフラムとマークスは戦っていると思われるが、辺りを見回す俺の耳に、馬の蹄が土を蹴る音が聞こえて来た。

 まずい、騎馬隊か!?ここまで進撃して来たのか!?焦る俺を見て緊張した表情でクレインも頷く。

 矢をつがえ、こちらに走ってくる騎馬を射ようとした刹那。彼の身体が固まった。

 

「クラリーネ」

「お兄様!!」

「あまり驚かさないでくれ、また射そうになったじゃないか!」

 

 なんと現れたのは妹君。トルトバールの機動力でここまで走って来たのか?でもなんでクラリーネ?アンナは一体どこに。と、考えているとクラリーネの背後から声がする。まさかの二人乗りか。

 

「ごめんなさい、パオラの話を聞いたらクレインを助けるんだって聞かなくて...」

 

 呆れ顔のアンナがクラリーネの馬から降りる。うーん、やっぱりそうなっちゃったか。

 やはり英雄の性格を考えて作戦立てた方が良いな。

「ちょっとお兄様、お怪我なされているじゃない!!召喚士は何をしていましたの!!」

「ひぃっ、ごめんなさい!」

 例えそれが少女でも気が強い異性に強く言われるとブラック会社時代を思い出し縮こまってしまう。

「エクラ殿は自分に出来る事をしただけだよ。僕の負傷とは関係無い」

「そ、そうですが...。...ふ、ふん。応急処置をしてくれた事は感謝しますわ」

 つんとした態度だが、どうやら許されたらしい。良かった。あのクラリーネがデレデレしながら感謝してもなんか怖いなと思った。

 

「あ、アンナさん。あっちの戦場はどうなってる?ミネルバ達は無事か?」

「ええ、首尾は上々。エンブラ兵達の殆どはミネルバ達が倒したわ。言われた通りエイリークにも手を出していない。...こっちは大変そうね。ミネルバ女王も暫くしたらこちらに加勢出来そうよ」

「よしっ、あとはマークスの攻略法か...」

 少し予定とは違うところが沢山あったが、なんとか暗夜の異界は解放出来そうだ。

 

「あっ、あとエイリークの契約はどうなったんだろう...。まだエンブラ側に居るとなるとヴェロニカに何をされるか...」

 

「その心配はありませんよ」

 

 聞き慣れない女性の声に、俺とアンナは驚いた。眼前にはエイリークが立っているのだ。

「貴方達の場所が解らず、トルトバールを追って来たのです」

 と、エイリークは説明してくれた。

 なるほど二人乗りのトルトバールは目立つな。

 

「兄上とマークス王子が戦っているようですが、殆どのエンブラ兵は撤退、もしくは戦闘不能。そのような状況で宜しいですか?」

 

「そうだ」

 

「兄上は確かに貴方達を槍を預けて良いと、決断なされたのですね。私の契約はまだ切れていません。ええ、ですが、兄上が貴方達を認めたならば私も貴方達と共に在りたいと思います」

 

「それは有り難いけれど、エンブラとの契約は...?」

「先程の質問で力は示されました。撤退や怪我をした兵士を見逃すこと。甘いと思われがちですがその甘さを私は素晴らしいものだと思います。...ふぅ、やっと心の底にあった蟠りが消えました。厄介なものです」

「あ、あの、そんな簡単に契約って解かれるの?」

「戦場では生かす力より殺す力の方がずっと強いし簡単です。ですが貴方は苦難やリスクが大きい敵兵ですら生かす事を選んだ。刃を交えなくとも、私には充分過ぎるほど貴方の信念...強い意志、力は示されていますよ」

 俺の質問にエイリークが首を傾げ、考えながら話してくれる。

「それに元の異界を制圧されて契約させられている方が多いですからね。私達に兄妹にされていたものも比較的に軽い縛りでした。ですが英雄によっては、直接的な戦いでしか力を示せない者も居るようです。加護を与えられた方々とかも、また特別なのでしょう」

 

 うーん、まだ契約と解放のシステムが解らない。出来れば戦う事なく力を示したい。

 それと、恐ろしい疑問が頭を横切る。

「アンナ、例えばヴェロニカが俺達の仲間に力を示して成功したら、俺と英雄達との契約は消えるのか?」

「ブレイザブリクがある限りそれは無いわ。その神器は英雄の召喚と契約に対して絶対的な権限がある。エンブラが行なっている英雄召喚とはまた違うの」

「なるほど、寝返りは...無い」

「旧い昔話では悪どい身勝手な召喚士が英雄に追放された。って話もあるけど、あなたはそんな事するような人じゃないし、気にしなくて良いわ」

 

 アンナが説明してくれたか。やはり俺以外の召喚士がアスクにやっぱり居たんだな。上手くやってげなかったみたいだが。

 英雄との交友関係はしっかり円滑にやろうと心に決めた。暗殺とか裏切りはされると心が折れそうだし。

 

「疑問は晴れましたか?」

 

 エイリークが聞く。凛とした力強い声に俺は深く頷いた。彼女はそのまま緊張した面持ちでマントを翻し進み始める。

 

「では、争いを止めます」

 

 その美しくも凛々しい姿に見惚れてしまった。

 一度歩み始めたエイリークは迷う事なく前を歩み続ける。

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