「誰だ僕を呼んだのは...」
現れたのは弓を携えた青年...俺は彼を知っている。白夜王国の第二王子、神器風神弓を扱うタクミだ。
どうやらオーブは英雄を召喚すると消えるらしく、残り四つしかない。
「やりましたね、エクラさん。英雄を召喚出来ましたよ!」
「やったね、エクラ」
シャロンが嬉しそうな声を上げた。アルフォンスも感情を表には出して居ない様だが嬉しそうだ。
「えっーと...?」
「アンタが僕を呼んだんだろ、何の用だよ」
「は?」
とりあえず何か一つの課題を乗り越えられたのようなのでホッとする俺をよそにタクミが言う。うーん、このぶっきらぼうで素直じゃない感じの言い方、正にゲームのタクミまんまだ。
そんな言い方されるとキチンの傾向がある俺はちょっと尻込んでしまう。
「君が召喚した英雄だから、君が指示をするべきだよ。それに、幾ら契約に縛られているとは言え、英雄にも自由意思はあるから、召喚士がちゃんと指示を伝えてあげないと、自分のしたい事をしだすよ」
「えっ!?えーと、タクミ、これから俺達は戦闘しなきゃいけないんだけど戦力が必要なんだ。一緒に戦ってほしい」
「わかった」
もたついている俺を心配に思ったのか、アルフォンスが助け船を出してくれる。優しい。
いや、侵略者を倒す為に呼んだ人間が何も出来なかったら困るのはアルフォンスだし当然かもしれない。
しかしタクミのやつ、ゲームの時と違ってすんなりと了承してくれた。これが契約とやらの力なのだろうか。
それとも元の世界の環境に縛られてないから、ひねくれる事もなく付き合ってくれるのか、...気になる。
だが、せっかくアルフォンスがフォローしてくれたんだ。気持ちを切り替えよう。今はエンブラ帝国が召喚したとされる紅の竜騎士をどうにかするのが先だ。
「シャロン、紅の竜騎士が飛んで行った方向を教えて欲しい」
「はいっ、しっかりと目に焼き付けているので案内は任せて下さい」
そう言ってシャロンは元気に駆け出した。身を案じたアンナが叱言を言いながら追いかける。
「エクラ」
俺も後から行こうとしたが、アルフォンスに声をかけられた。
「これから行くのは戦場だ。その...、召喚士自身戦う能力が無い者が多いと文献で読んだ事があるんだけど、君は戦えるのかい?」
「戦えない、です...」
うっかりブラック企業でモラハラをされて居た事を思い出し素面で敬語になってしまった。
例えやった事がない事でも出来ない。なんて言えば怒られた。
俺は戦った事など一度もない。あの女上司からも逃げて、逃げた先で現実からも逃げて、これ以上何もしたくないと閉じた敗者だ。
夢の俺が大英雄だろうが救世主だろうが、現実の俺は何一つ為す事も戦う事もしなかったクズだ。
望んだ召喚士が兵士でも戦士でもなくてアルフォンスは失望してしまっただろうか。
「そうか、なら君の事は僕が守ろう。僕から離れないで」
想像していた言葉とは全く違うリアクションに俺は思わず笑ってしまう。それは女の子に言う台詞なんじゃないだろうか。
どうせ夢ならシャロンに言われる方が良かったけれど。まあ、失望されなくて良かった。
ここまでハッキリと言われると安心する。頼る気になった。
「ああ、俺じゃなきゃダメなんだろう。俺の命、あんたに預けたぜ。戦う事は出来ないけど指揮を飛ばす事なら出来る」
「そうか、なら心強いね」
ファイアーエムブレムはシリーズ通してずっと遊んでいる。飛行ユニットが弓に弱いなどと言う設定が活きている世界なら三竦みや他兵種の特攻も存在する筈だ。
戦闘を有利にするアドバイスなら俺にも出来る。
俺達二人は視線を交わすと拳を突き合わせた。そして先に行くシャロン達を追いかける。
目指すは山岳地帯。紅の竜騎士を追って。