「ほう……ヘルメス殿は錬金術師の隠し職業を取得していると……なるほどなるほど。それでこの高品質ポーションという訳ですか……素晴らしいですね」
「ふふ……魔導極めし『大災厄の魔』と名高き貴方にお褒め頂けるとは、光栄の至り。他にもご所望の品があればいつでも伝言を……最高の品を提供する事をお約束します」
ヘルヘイム辺境の地、廃墟となった魔女の館で一人の悪魔と闇妖精が対面していた。
山羊頭の悪魔は顔の半分をペストマスクの様な仮面で覆い、一目で神話級と分かる黒と赤で統一された装備に身を包んでいる。
ヘルメスから受け取ったアイテムケースから赤色の上級治癒薬を取り出し、眺めている。
山羊類独特の横に広い瞳孔を金色に輝かせ、眺める様はそれだけで怪しい色香を放っていた。
「決戦の日は近い。……その他の品はどうなっている?」
「……使い捨てタイプの短杖、高位攻撃魔法を込めたものを数十。アンデッド系への治癒手段として《大致死/グレーター・リーサル》を込めた短杖を数十。それと、自然物オブジェクトの偽装エフェクトを施した罠アイテム数種を作成中です。気に入ったものがあれば増産しましょう」
「素晴らしいな。野良錬金術師として捨て置くのは惜しいくらいだ。データクリスタルの量も馬鹿になるまい……」
「我が錬金術の成果が発揮できるまたとない機会とあらば、出し惜しみする理由はありません」
「作成成功の暁にはそれ相応の礼を約束しよう……何か望むものはあるかね?」
「……事前の情報によれば今作戦で投入される人員は500とも1000とも聞いています。それらが返り討ちに遭い、阿鼻叫喚となる地獄絵図が見られるのなら……それこそが、これ以上ない最高の礼になるのではないかと」
悪魔と闇妖精は嗤う。
不気味な笑い声は魔女の館の外まで漏れ、周囲の木っ端魔物達をざわめかせた。
やがて悪魔は、漆黒のマントを翻らせ、禍々しい転移の門を開く。
「いいだろう。我がギルド『アインズ・ウール・ゴウン』に牙を剥いた愚者共の悉くを粉砕し、墳墓に広がりし髑髏の山をもってして、其方への礼とする事をお約束しよう」
「楽しみにしております」
「では、次の取引は7日後……また会おうヘルメス」
「場所についてはそちらにお任せします……また会いましょうウルベルト」
悪魔が姿を消し、闇妖精は一人その場に残った。
「ふふ……」
闇妖精は一人嗤う。
「ふ、ふふ……どうしよう。見栄張って格好つけちゃった……材料かき集めなきゃ……うぅ」
――随分と懐かしい夢を見た。
ヘルメスはバレアレ家二階に宛がわれた住み込み部屋で目を覚ました。
あれは例の「ナザリック地下大墳墓1500人襲撃事件」の二週間前くらいであったか、厨二ロールで意気投合したウルベルトとノリノリで悪の取引現場ロールに興じていた場面であった。
「ふふ……ウルベルトさん恥ずかし気も無くのってくれるから、つい熱が入っちゃうんだよね」
ヘルメスの提供したアイテムの活躍があったか否かはともかく、その襲撃事件はアインズ・ウール・ゴウンの完全勝利に終わり、かのギルドの知名度を確固たるものにしたのである。
後日、ウルベルトからは「これが約束の品だー」というコメントと共に、討伐隊が全滅しドロップアイテムが散乱した第8階層のスクショが送られてきて爆笑したのもいい思い出だ。
ふと、ヘルメスの心に寂しさが差した。
(ユグドラシルか……誰か知ってる奴に会いたいな。……もうこの際、あの覗き見野郎でもいいからさ。まぁもちろんしっかりと礼はさせてもらった上でだけど……)
煽りプレイを喰らった直後は、ただただ頭にくるばかりであったが、ここに来て軽いホームシックの様なものにかかっているヘルメスであった。
「それにしても、なんであんな夢見たかな……っと、あ」
思い出した。
昨日、ヘルメスが冒険者組合に出張販売に出ていた際、入れ違いで一人の女冒険者が赤色ポーションを持ち込んだらしいのだ。
結局、女はそのポーションを手放さなかったのだが、そのポーションをくれたのは、漆黒の全身鎧に両手剣を二本差しした見慣れない新人冒険者だったと言う。
(それって、もしかしなくても
ヘルメスの脳裏に浮かぶのは、冒険者組合で滅茶苦茶目立っていた全身鎧と美女の組み合わせだ。
そういえば、ヘルメスと長く目が合っていた気がする。
(俺と同じ様な状況に陥ったユグドラシルプレイヤー……その可能性は高いよな。更に言うなら俺に煽りプレイをしてきたプレイヤーという可能性も……アンデッドには見えなかったけど)
仕事が早いリィジーはすぐさまンフィーレアに、赤色ポーションの出所を探らせる為、カルネ村までの薬草採取の名目で二人に指名依頼をでっち上げた。
その依頼の出発日が今日だというのだから、本当にあの老人はヤリ手である。
ヘルメスも同行したかったが、リィジーから「ンフィーレアが不在の間、誰が助手をやるんだい」と尻を引っ叩かれた為、お留守番だ。
ヘルメスはため息を吐きつつ、着替えを済ませて一階の仕事場に降りていくと、既にンフィーレアは荷物をまとめ、出発の準備を進めているところであった。
「おはよう、ンフィー。早いねぇ出発は昼って言ってなかった?」
「あ。おはよう、ヘルメス。まぁ街を出るのは昼だけど、馬車や荷物の手配もあるから」
馬車。
いかにも中世な響きである。
いいなぁ、乗ってみたいなという欲求が湧いてくる。
ちなみに、ンフィーレアには昨日から呼び捨てで呼ぶように説得し、こちらもンフィーという愛称で呼ぶことを了承してもらっている。
「ンフィーレアはお前さんと違って、しっかりしとる。余計な心配はいらんよ」
リィジーは荷作りの手伝いをしながら言う。
今回の依頼、護衛には例の二人組と、あの「漆黒の剣」も同行するのだという。
最低ランクの銅級と銀級とはいえ、二つの冒険者チームを雇っての依頼であり、バレアレ家の豊かな懐事情が垣間見える。
(……そうだ。一応……渡しておこうかな)
ヘルメスは、アイテムボックスから銀細工で出来たネックレスを取り出すと、ンフィーレアに渡した。
銀の鎖に、円盤型のチャームの付いたネックレスである。
「ヘルメス?何これ?」
「何の効果も無いけれどお守り。闇妖精に伝わる旅の無事を祈るネックレスです。お貸ししますよ」
ヘルメスは右手人差し指と中指を立て、出鱈目に十字を切る。
「へぇ!うん、荷物にもならないし借りていくよ。ありがとう」
「ほぉ。効果は無くとも高く売れそうな銀細工じゃな」
ヘルメスは悪戯っぽく笑う。
「――では、行ってきます。おばあちゃん、ヘルメス」
やがて旅支度を終えたンフィーレアは、ヘルメスらに別れを告げて店を出て行った。
ヘルメスはエンリさんによろしく、と見送った後、リィジーからいつもの薬草を煎じる作業を命じられる。
――今日も一日、この異世界における錬金術師修行が始まる。
◆
「……見送りはいないのですか?」
今は漆黒の全身鎧を纏い、戦士モモンとして行動しているモモンガは、辺りをきょろきょろと見渡しながら集合場所に現れたンフィーレアに声を掛けた。
てっきり、ンフィーレアの祖母と、見習いとして居候しているヘルメスが一緒に来るものだと思っていたからだ。
「……?え、えぇ祖母達は店の準備がありますので。今日からよろしくお願い致します、モモンさん、ナーベさん」
「そうですか……。えぇ、よろしくお願いします」
モモンガは少し落胆しながらも返事を返す。
(ヘルメスさん来ないのか……色々と探りを……いやいや、話を聞くチャンスだと思ってたんだけどなぁ。まさか正体見破られてる訳はないよな)
魔法による探知は止めたものの、恐怖公の眷属の力を借り、ヘルメスがバレアレ家に転がり込んでいるという情報は既にナザリックで把握済みであった。
ンフィーレアが、自分達を指名で依頼をしてきた時は思わずガッツポーズしそうになったものであるが、そう上手く事は運ばないものらしい。
ナザリックの組織力を使った情報収集活動の結果、今現在ユグドラシル出身と思しきプレイヤーはヘルメスただ一人である。
モモンガとしては、なんとか友好的に接し、協力関係――あわよくばナザリックに加わって欲しいと考えていた。
(最初の接触がどうにも……まずったんだよなぁ。早い所謝ってしまって、信頼関係を構築したいところなんだが)
結果として煽りプレイをしてしまったあの時、逃げずに謝っておけばこんな面倒臭いことにはならなかったのであろうが、済んでしまった事は仕方ない。
「モモンさー…ん。如何されましたか」
黙り込んだモモンガを気に掛けたナーベラル・ガンマこと、魔法詠唱者ナーベが声を掛ける。
「いや、なんでもない。少し考え事をしていただけだ」
「……それは、例の
「……ナーベよ、まだ敵対すると決めた訳ではない。迂闊な発言は控える様に教えた筈だが?」
「!も、申し訳ございませんでした」
ナーベははっとした表情で顔を跳ね上げた後、すぐに頭を下げる。
(そしてこれだ……彼に対する部下からの反応はすこぶる悪い……ナザリック以外を見下す傾向もなんとかしないとなぁ)
例の一件の後、魔法による監視を停止させ、各階層守護者を集めてヘルメスの処遇について意見を求めたのだが、その結果は散々なものであった。
「脅威となる可能性があるのであれば、今すぐにでも殲滅してみせるでありんす」
「闇妖精ってのが気になりますけど、危ない奴なら先手を打って殺しちゃえばいいんじゃないでしょうか」
「え、えっと……僕もお姉ちゃんと同意見です……」
「ナザリックニ届キ得ル強者トアラバ、相手ニトッテ不足ナシ。斬ッテ捨テテミセマショウ」
「相手が一人という事を確認した後、捕獲し洗脳。ナザリックにおける生産部門を担わせるというのは如何でしょうか」
「所有する全てのアイテムを奪い、プレイヤーの蘇生実験に利用するのが一番かと」
血生臭いにも程があった。
モモンガは頭を抱え、この件は保留とするとだけ申し向けたのである。
「皆さん、お待たせして申し訳ありません!」
モモンガが思考の海に沈みかけていたタイミングで、快活な青年の声が掛けられた。
顔を上げれば、昨日出会い、今回の依頼を一緒に受ける事になった銀級冒険者チーム「漆黒の剣」のメンバーが集合場所に到着したところであった。
リーダーのペテルは第一印象そのままの好青年といった表情で、最後に到着した事を詫びる。
「いえ、遅れた訳でもありませんし、謝る必要はありませんよ」
「そう言ってくれると助かります。……では全員揃った事ですし、出立しますか」
自己紹介も既に済ませている為、漆黒の剣のレンジャーであるルクルットを先頭に、一同はエ・ランテルの門をくぐりカルネ村へとむかう旅路を歩き始めた。
◆
エ・ランテルからカルネ村までは拙いながらも街道と呼べるものが存在し、基本的にはそれに沿って歩いていけばいい。
街道は二種類存在するが、モモンガ一行はトブの大森林の外周に沿って東に向かうルートを選択した。
漆黒の剣が日銭稼ぎに必要だと話していた、街道沿いに漏れ出たモンスターを狩り、討伐報酬を稼ぐ為である。
道中、ゴブリンやオーガの群れに一度だけ襲われたが、見様見真似に両手剣を振るうだけで簡単に討伐する事が出来た。
正直なところを言えば、歯ごたえが無さ過ぎて気落ちしたのだが、漆黒の剣のメンバーからは称賛の嵐であった。
「オーガを両断とは……モモンさんは今までに一体どんな修練を積まれてきたのですか?」
戦闘の興奮が冷めやらぬといった様子のリーダーのペテルは眩しい位に真っ直ぐな瞳で、こちらを伺ってくる。
「別に大した事ではありませんよ。皆さんもすぐにこれ位こなせる様になります」
思った事を口にしたのだが、ナーベを除いた一同は引きつった笑顔を浮かべるに留まった。
ちなみにナーベは、当然、といった様子の薄い笑顔を浮かべている。
「ナーベちゃんも格好良かったよぉ。あれ本当にただの《電撃/ライトニング》?すごい派手に見えたけど」
「……」
軽薄な印象のルクルットが、ナーベに健気に話しかけるも無視される、といった流れも、この短い期間の間にパターンと化していた。
また、カマドウマがどうの、といった罵りに発展するのを危惧し、モモンガは話題を変える。
「……時に、皆さんは冒険者組合にいた闇妖精の彼とは親しいので?」
「え?ヘルメス……の事ですか?」
ンフィーレアが一番に反応した。
店の一番弟子とあれば当然かもしれない。
(呼び捨て……か。随分とこっちの世界に馴染んでるみたいだな。呼び捨てを許しているって事はやはり人間種に肩入れしているのだろうか)
「えぇ。闇妖精は初めて会いましたが、真面目で誠実な方ですよ。……なんというか少し不思議な方ですけどね」
「ほう。不思議、とは?」
ンフィーレアは馬車の手綱を握りながら、うーんと唸る。
「言葉では説明が難しいんですが、底が見通せないというか……一応うちの店には弟子入りという形で入ってきているんですが、異常に仕事を覚えるのが早いですし」
「なるほど。優秀なんですね」
「あ。それ、なんとなく分かります!」
――と、会話に割り込んできたのは漆黒の剣の魔法詠唱者ニニャであった。
「ニニャさんも彼と親しいのですか?」
「へっ……!い、いえ親しいという程の仲では無いですけど!魔法詠唱者としても優秀なんだろうなーって……その、なんとなく……ですね。すみません」
「彼は何位階魔法まで行使するのでしょうか?」
「えっと……そういえば聞いてみた事ないですね。あれ?なんでそう思ったんだろう……?」
イケメンだしなー、というルクルットの野次が飛ぶ。
会話から察するに、エ・ランテルでは実力を隠して暮らしている様だ。
「随分、ヘルメスの事が気になってるみたいですね。何かあったんですか?」
「え」
ンフィーレアからの逆質問に一瞬だけ動揺するが、すぐに精神抑制が働き、平静さを取り戻す。
「人里で暮らす闇妖精は珍しいですからね。少し気になっただけですよ」
「にしちゃー、随分熱心じゃない?まるで恋する乙女みたいだぜー?」
ルクルットの軽口に、隣のナーベが「カチリ」と剣の柄に手を乗せる音が聞こえてきたので、それを手で制す。
ヘルメスの話を少し探ろうとしただけなのに、なぜこんな忙しい目に遭うのだろうか、と若干の煩わしさを感じた。
――と、こちらを不思議そうな目で見るンフィーレアの首元に、ネックレスが装備されているのが目に入る。
この世界で見るアイテムにしては妙に凝ったデザインをしているのが気になった。
「……ンフィーレアさん。そのネックレスはどういった効果があるんですかね?」
「え?あぁ、これですね。旅に出るという事でヘルメスさんが貸してくれたんですよ。なんでも闇妖精に伝わる装飾品らしいのですが、何の効果も無いみたいです」
そんな訳はあるまい。
ヘルメスは十中八九ユグドラシルプレイヤーである。
であれば、何の効果も無い装備を貸し出すとも思えなかった。
モモンガは、ンフィーレアの了承をもらい、ネックレスを見させてもらう。
ネックレスは銀色の鎖に、細かな装飾の入った円盤型のチャームが付いており、目立たないがユグドラシルのロゴが彫りこまれているようだ。
よく見れば、円盤型のチャームは二つのパーツが組み合わさって出来ている。
(懐中時計みたいなデザインだな……中に何か入ってたりするのだろうか)
モモンガはさり気なく、力を入れてみるがビクともしない。
続いて、無詠唱化した《上位道具鑑定/グレーター・アプレイザル・マジックアイテム》をかけてみるが、――何も見えてこなかった。
しかし、モモンガはその兜の下で、笑う事の出来ない骨の身でニヤリと笑う。
(ただのガラクタアイテムか……と、普通であれば思うのであろうが……詰めが甘かったな)
そう、
この世界に転移してから行った数々の実験から、《上位道具鑑定/オール・アプレイザル・マジックアイテム》をかければ、どんな用途不明のゴミアイテムだろうと、「制作者」もしくは「入手元」が表示される事をモモンガは把握していた。
鑑定魔法をかけても何も表示がされない、つまりこれは、何らかの『効果の隠匿』がされているという事だ。
モモンガは謎解きをする気分で、《虚偽情報看破/シースルー・フォールスデータ》を唱えた後、《付与魔法探知/ディテクト・エンチャント》を続けて唱える。
案の定、ネックレスには複数の情報隠蔽系の魔法が付与されており、モモンガはそれを一つずつ解除していく。
『銀細工の首飾り/効果:%■×?□□☆!○/制作者:ヘルメス』
「ふふ……効果はいまだ不明だが、それ以外の情報は丸裸にしてやったぞ……。にしても、一体いくつのデータクリスタルを突っ込んで作ったんだこれ。凝りすぎだろう」
カウンターに注意しながら、複数の隠蔽魔法を解除していき、次第に鑑定魔法が通る様になってきた。
ンフィーレアのネックレスをいじくり回しながら、ブツブツと呟く
付与魔法を全て解除するも、このネックレスに秘められた最後の砦は魔法によるものでは無く、スキルを必要とする施錠ギミックであった。
(これは高レベルの盗賊でも無ければ解除できまい……。だがこんなこともあろうかと……)
モモンガは、アイテムボックスから『大盗賊の解錠術』の指輪を周囲にばれない様に取り出して装備する。
ギルドメンバーの一人、ぬーぼーが引退する際に譲り受けたもので、最高難度の施錠ギミックをも解錠するという盗賊スキルを一日に3度まで使用できるレアアイテムだ。
ぬーぼーに心の中で礼を言いながらスキルを発動させると、「カチリ」と音が鳴り、ネックレスの円盤がぱかりと開いた。
(厳しい戦いだったが、中々に面白かったぞ……どれ中身は……)
やはり懐中時計の様な造りになっていた様で、上蓋にあたる部分を開くと中には日本語でメッセージが書かれていた。
『効果は特にありません。お疲れさまでした!』
「くそがぁ!!!」
やりきれない怒りがモモンガを襲うが、すぐに鎮静化された。
突然大声を上げた為、ンフィーレアを含めた周囲の人間達が一斉に振り返る。
「ど、どうしましたかモモンさん!敵ですか?」
「あ、いや。すまない。勘違いだったようだ。気にしないでくれ」
「そ、そうですか。歩き詰めでしたからね……暗くなってきましたし、今日はここらで野宿としますか!」
おまけに変な気まで使わせてしまった。
リーダーのペテルは、仮宿設営の作業に入ると言って、ンフィーレアや仲間らと少し離れた位置で指揮を執り始める。
「モモンさー……ん、如何されましたか」
「いや、本当に何でもないのだナーベよ。少し考え事をしていただけだ」
「そうですか……承知しました」
ナーベは不安げな表情を浮かべていたが、それ以上追及してくる事は無かった。
ンフィーレアにネックレスを返してもらう様に伝えると、恭しく受け取った後、モモンガから離れていく。
(ふふ……してやられた。もしかして、こないだの煽りプレイの仕返しのつもりか?……いや、でも正体までは悟られていない筈だしなぁ)
モモンガは沈みかける太陽をぼんやりと眺めながら、