※冒頭に、設定+挿絵を追加いたしました。自己満ですが興味ございましたら覘いてみてください。設定にあっては随時更新します。(目次からどうぞ)
「いい朝だなぁ」
名残惜しくもナザリックを出て数日。
ヘルメスは、バレアレ家2階に宛がわれている弟子部屋の腰高窓を開け放ちながら呟く。
空には雲一つない青空が広がり、吹き込む風は心地よく、通りにはまばらではあるが早くも人の通りが出来始めていた。
自然環境が壊滅していた現実世界ではありえない、そんなのどかな光景に、ヘルメスはもう何度目かも分からない感動を覚える。
「おはよう。
ヘルメスは、窓から差す陽射しで生まれた自身の影と、天井に向かって笑顔を浮かべ、新たな同居人達に挨拶をする。
いずれも、モモンガからの指示でヘルメスの下に派遣された隠密能力に長けたモンスター達である。
モモンガ曰く、『ヘルメスさんには危機意識が圧倒的に欠如していますので、外に戻るのであれば最低限の僕を護衛に付けます。拒否権はありません』という事らしく、まぁ視界に入らないのであれば騒ぎになる事もあるまいと了承した次第である。
「おはようございます。ヘルメス様」
しかし返礼を受けたヘルメスは眉根を顰める。
「その……”様”って言うのはやめないかい?俺――私はそんな大層な身分の者ではありません」
ヘルメスの言葉に、八肢刀の暗殺蟲を含めナザリックから派遣された者達が一斉にざわついた。
「なりません!ヘルメス様は、至高の御方々と肩を並べられる御友人!モモンガ様からも、至高の存在に捧げるものと同等の忠義を以て、御身に仕える様言われております!」
「……そう」
ナザリック配下の者達の、異常なまでの忠誠心。
モモンガから聞いてはいたものの、正直これ程までとは思っていなかったヘルメスは若干以上に引いていた。
御身の盾となり死ぬ事をお約束します、と言われた時は頭を抱えたものだ。
(これは……モモンガさんの心労は想像以上のものだったという事か……)
ヘルメスは咳払いをすると、アイテムボックスから
グラスを片手に、部屋の隅に設置した『幽便ポスト』から何かが印字された紙の束を取り出した。
ネズミ色がかった紙の束は、一見すると新聞のようにも見える。
幽便ポストとは、ユグドラシルにあった設置型のコミュニケーションツールである。
正月シーズンのログイン率低下を嘆いた運営が、「ユグドラシルで年賀状をフレンドに出そう」というコピーと共に年末期に配布した設置型アイテムだ。
可愛らしい赤色をしたレトロなポストであり、フレンドユーザー間での手紙のやり取りが出来るというもので、画力に心得がある者は、自分で描いたイラストを取り込み、ゲーム内ハガキにプリントして送ることが出来るという代物であった。
しかし、ココはユグドラシルでは無く、今はお正月でもない。
モモンガに設置する様に言われ、昨日部屋に設置したのだが、一体何が届いたのだろうと紙の束を広げ、その見出しを見る。
そして、口に含んでいた水を盛大に噴き出した。
「『日刊・なざりっく創刊号』……?」
恐ろしいことに、週刊でもなく月刊でも無く、日刊とある。
恐怖の大魔王然とした骸骨様は、これを毎日発行するつもりなのだろうか。
紙はこの世界では貴重品の筈であるが、こんなことに貴重な資源を割いても大丈夫なのかとギルドメンバーでは無いにも関わらず不安になる。
「ふむ。なになに……ナザリックの運営状況に、収集した現地の情報、ユグドラシルとの仕様の違いについて……か。」
まだこの世界の情報に疎いヘルメスにとって、有益な情報のオンパレードである。
ただナザリックに関する記事については、もはや機密の漏洩といってもいいのではないか。
「……信頼してくれているのは嬉しいけれど、大丈夫かこれ……。あと、四コマ漫画が付いていたら完全に新聞だ。」
今日の『日刊・なざりっく』の見出し記事は、召喚術における触媒の有無による効果の違い、であった。
その他にも、ナザリック地下大墳墓で起きた些細なイベントについての記事、ナザリック地下大墳墓の景観の良いスポットについてのレポート記事が載っている。
窓から吹き込む暖かな風を感じながら、ヘルメスはベッドに腰かけ新聞に目を通す。
「……ほぉ。死体を触媒にした場合、召喚されたアンデッドモンスターは留まり続けるか……。これはすごい……エイトさん、知ってました?」
挨拶を済ませ、天井に戻ろうとしていた八肢刀の暗殺蟲は、困惑する。
エイトさん、というのが自分の事を指したものなのだろうかと。
しかしその逡巡も一瞬――至高の御方の友人の言葉を無視するなど、不敬の極みである。
「……寡聞にして存じ上げません。至高の御方の御業は、我々の想像の範疇を超えております故……」
「そうですか。ユグドラシルとのシステムの差異は、私の持つ世界級アイテムと同じで様々な可能性を秘めていますね……うーん、この記事も中々に面白い」
世界級アイテム、という単語に八肢刀の暗殺蟲はヘルメスの指に装備されている虹色の指輪に注目した。
末端の存在であっても、世界級アイテムの貴重性とその圧倒的な力は知識として持たされており、個人で世界級アイテムを管理するヘルメスは、やはり至高の御方々の友人に相応しい存在なのだと再認識させられる。
「成程成程。この新聞を読めば、ナザリックの外にいても状況が分かるって事か……」
後日、ヘルメスは『錬金術師ブランド・アイテムカタログ』1冊を返礼として進呈し、モモンガに大変喜ばれることになるのだが、それはまた別の話である。
ふと、日刊・なざりっくの下の方に、ミシン目のついたクーポン券のようなものがくっついているのに気が付く。
「なんだこれ?」
ヘルメスはクーポン券の説明書きを読む。
『ただいまキャンペーン中。クーポンを切り取って持参すると、スパリゾートナザリック入場券+Barナザリックの特製ドリンク1杯無料券と引き換えできます。』
「ノリノリだな……モモンガさん」
ヘルメスは、僕達に隠れて新聞を執筆する死の支配者の姿を想像し、笑顔を浮かべた。
◆
「……へぇ。そんな事が起きてたんですね」
「そうなんです!モモンさんがいなければ今頃どうなっていたのか……」
店番としてカウンターに肘をつくヘルメスの眼前には、興奮冷めやらぬといった様子で、あの夜の出来事を語る魔法詠唱者ニニャの姿があった。
ヘルメスの体調が漸く回復したという報せを受け、わざわざ店まで顔を出しに来てくれたのだ。
現在、店には二人しかおらず、リィジーとンフィーレアの二人は、別の街までポーション材料の買い出しの旅に出ている。
病み上がりの自分一人残して出掛けるとはなんとも薄情な、と最初は思ったが、店を一人で任せられるというのはそれなりに信頼されている証とも言える。
「いやぁ、なんだか大変な事件に巻き込まれていたんですね」
「そうですね。本当……あの血の海を見た時はもう助からないかと思いました」
モモンガ曰く、自分を襲った女戦士の本来の狙いは、ンフィーレアの持つ「あらゆるマジックアイテムを使用可能」というタレントだったらしい。
死霊術師の集団、ズーラーノーンという秘密結社に属し、叡者の額冠を使ってエ・ランテルを死の街にしようと企んでいたという話だが、モモンガさんに瞬殺された後、蘇生後にあらゆる情報を吸い上げられ、現在もナザリックで有効活用されているらしい。
どう有効活用されているのか非常に気になる所ではあるのだが、触れてはいけない気がする。
(しかし、あの一件を壮大なマッチポンプに仕立て上げるとは……ナザリックはスケールがでかいね)
叡者の額冠に囚われたヘルメスとモモンガの戦闘の余波は凄まじく、エ・ランテルの墓地周辺は更地になっていたそうだ。
モモンガはそれを利用し、地形の一部を森司祭の魔法で改変、更に自前のアンデッドを召喚し、ズーラーノーンの計画を踏襲する形で実行。
エ・ランテル中が混乱に陥るなか、突如現れた謎の新人冒険者『漆黒』が、これを撃滅。
一夜にして銅級冒険者は、英雄としてその名を世に知らしめた訳である。
マッチポンプとはいえ、急なアクシデントを、この世界への足掛かりとなる冒険者モモンの名声を高める計画に利用するとは、さすがの一言に尽きるだろう。
自分がのんびりと寝ている間に、そんな後片付けと偽装工作が行われていたとは知らなかったヘルメスはため息を漏らす。
「それで、ヘルメスさんの身体の方はもう大丈夫なんですか?」
「えぇ。ご心配おかけしました。ゆっくり休ませてもらいましたからね。もう大丈夫です」
ヘルメスの言葉に、ニニャはよかったと安心したように頬を緩ませる。
まるで女の子の様なその表情に、思わずどぎまぎしてしまうが、彼は男だ。
ちなみに、ヘルメスがナザリックで堕落した生活を送っている間、影武者としてモモンガの派遣したドッペルゲンガーがベッドで狸寝入りを決め込んでいたそうだ。
体調が悪いふりをしていれば、あまり勘繰られる事もないという訳だ。
黙って遠出をする際にはまた使いたい手段である。
「そうだ。あの、ヘルメスさん。こないだくれたポーションなんですけど!」
ニニャが思い出したように、声を上げる。
初顔合わせした際に渡したポーションの事だろう。
確か、ニニャからタレントを学んだ「お礼」として渡した品だったはずだ。
「あの夜、墓地から漏れ出てくるアンデッドの対処に僕たち漆黒の剣をはじめ、多くの冒険者達が当たったんですが、その際に腕をやられまして……」
「え!?怪我したんですか?」
「え、えぇ。暗かったこともあってアンデッドの爪で少し……でも、ヘルメスさんがくれたポーションのお陰で助かったんです。本当にありがとうございました」
怪我をさせたのは遠縁ながら自分の責任であるのだが、そんなことを口にする訳にもいかない。
罪悪感を感じながらも素知らぬ顔で言葉を紡ぐ。
「……いえいえ。貴方の身を守れたならよかった。……って事で、もう一本サービスでお渡ししましょう」
罪悪感をポーションで誤魔化すことにする。
「えぇ!?ちょ、ちょっと……さすがにこんな高価なポーションを何度ももらう訳には……!そ、そういえば頂いたポーション、傷が一瞬で塞がる凄い効能だったんですけど……これ本当に貴重なポーションですよね!?」
この世界の並みのポーションというのは、効果はすぐに現れないのが普通らしい。
そんな質の低い品を渡したのでは、錬金術師の名が廃るというものだ。
幸い、ポーションにあってはユグドラシル製のものでも量産可能なので、渋る必要もない。
ニニャの手に、青色に染色済みのヘルメス製ポーションを無理矢理握らせる。
……なんだか随分と小さく柔らかな手で変な感じがする、本当に男なのか怪しいとすら感じる程だ。
「以前にも言いましたが、これは投資です。上級冒険者に出世した暁にはうちのお店を御贔屓に」
「……分かりました。本当にありがとうございます」
――と、ニニャは渡されたポーションを大事そうにポーチに仕舞うと、上目遣いに此方を伺う。
そんな目で見るのはやめて欲しい。
彼は男だ。
男の筈なのに、何故顔を赤らめるのか。
ヘルメスが勝手にどぎまぎしていると、やがて、意を決したようにニニャは口を開く。
「あの……ヘルメスさん、それでですね……今週末の、夜……空いて……ますか?」
「……ふぇ?」
◆
スレイン法国。
人類が支配する国家群の中で最も力を持つ国である。
人類守護を国是とし、他の国家と異なり四大神信仰ではなく六大神信仰を国教としている。
そんなスレイン法国の最奥――神聖不可侵の領域に7人の影があった。
国のトップたる最高神官長。
神の数と同じくする、6人の神官長。
彼らは国の最高意思決定機関であると共に、敬謙な信者である。
人類を救い、国を興した六大神に絶対の信仰を捧げ、彼らの意思を継ぎ、人類守護の為の様々な活動の指針や方策を指示、実行している。
「――急な招集で申し訳ないが、事は急を要する。議題は連絡を絶った陽光聖典についてだ」
最高神官長は陰鬱な表情で口を開く。
この会議の場で明るい話題があがる事はほぼ無いのだが、最近は特に悪い報せが建て続いている為か、その声には覇気がなかった。
最高神官長に促される形で、土の神官長が言葉を継ぐ。
「……陽光聖典を率いていたニグンの所在が判明した。標的であった王国戦士長に連行され、現在は王都の牢獄に監禁されている。部下達は全滅とのことだ」
土の神官長から告げられた言葉に、他の神官長達は息を飲む。
「なんという事だ。ガゼフ・ストロノーフの実力を甘く見ていたという事か?」
「そんなバカな。第三位階を行使する神官部隊だったのだぞ」
法国は人類守護の観点から、常に数世代先を見据えて行動している。
広大な肥沃の大地を持つ王国は、強い国を作り人類を発展させる予定であった。
しかし、豊かな土地は国を堕落させ、停滞どころか低迷の一途をたどっていた。
計画は大幅に変更、修正され、優秀な帝国に王国を併合させるプランへと軌道修正をしていた。
その目的の為の布石として、王国戦士長暗殺計画が立案され、実行されたのである。
白羽の矢が立ったのは法国の持つ特殊部隊のうち、殲滅戦に特化した陽光聖典。
戦力分析ではむしろ、戦力過多。
十二分に戦士長を殺しきるだけの戦力をもって作戦に当たらせた筈であったが、結果は陽光聖典からの連絡の途絶という予想を大きく裏切るものであった。
「それで、例の神殿で起きた爆発は一体どんな手品だったんだ?特殊なマジックアイテムがあの国にあるとは到底思えんが。あっても戦士長に持たせる様な殊勝な連中ではあるまい」
水の神官長が疑問を口にする。
土の巫女姫がニグン達を監視しようと魔法を発動したところ、巨大な爆発が二度発生し、巫女姫とその護衛を含めた高位魔法詠唱者数十人が死亡、神殿は蒸発、周囲一帯が軒並み更地になるという甚大な被害が発生したのだ。
タイミング的には、ニグン達に向けて発動した監視魔法に対するカウンターと考えられるが、この様な規模の魔法等聞いた事が無い。
そもそも、王国が法国の魔法に対抗できる程の力を持っているとも考えられず、神殿自体に仕掛けられた別勢力によるテロの可能性が検討されていた程だ。
「……まず、誤解を正しておきたいのだが……今回の件、王国戦士長によるものではない。別の存在の介入が全ての原因と考えられる。」
質問には答えず、言葉を続ける語る土の神官長の表情は険しい。
その額には脂汗が滲んでいる。
「錬金術師『ヘルメス』。その者が今回の件の中心人物だ」
錬金術師という突然登場した単語に、全員の表情に困惑の色が広がるが、皆一様に押し黙り、土の神官長の次の言葉を待つ。
土の神官長は、一度大きく息を吐いてから語りだした。
「使い魔を通じて、獄中のニグンと連絡がついた。今から話す内容は全て奴から告げられたものだ。……当然、敵の手に落ちた者の言葉であり、洗脳下にある可能性もある……それを踏まえて聞いて欲しい」
「……随分と慎重な物言いだな」
信頼性に欠ける情報である、と強調するという事は、今から告げられる内容は余程信じ難いものなのであろう。
「王国戦士長を誘き出すところまでは計画通りであったらしい。……が、カルネ村なる王国の辺境地において、錬金術師ヘルメスを名乗る闇妖精が現れ、見た事もない魔法一つで部隊員を殲滅。隊長ニグンは、持たせておいた魔封じの水晶を使用し第七位階による主天使を召喚。しかし、その闇妖精は主天使の攻撃を受けても傷一つ負う事は無く、魔法一撃のもとに屠った――との事だ」
報告を聞いた神官長達に生まれた感情は様々なものであったが、共通しているのは、「あまりにも馬鹿げている」というものであった。
まず、第三位階を行使する高位魔法詠唱者の集団を魔法一つで下したという点。
そして、魔神すら消滅させたという第七位階魔法によって召喚させた主天使を屠ったという点だ。
「……にわかには信じ難いな。長い前置きをした理由はそれか」
「しかし、仮に囚われのニグンが洗脳下にあるとして、そのような洗脳を施す理由も分からん」
「それに闇妖精とは……確かあそこはトブの大森林が近いが、かつて住んでいた種の近縁種だとでも言うのか?」
「錬金術師を名乗ったというが……ヘルメス……ふむ、聞かん名だな」
錬金術師とは薬師や魔道具製作者の総称である。
高位の魔法詠唱者である事がほとんどだが、そもそも戦闘職では無い。
告げられた内容はあまりにも現実離れしたものであるが、ニグンは仮にも法国の実力者なのだ。
齎された情報を吟味せず、一笑に付す事など出来ない。
「……これは」
議論を交わす神官長達の様子を黙って見ていた土の神官長が口を開く。
「……これは、そのニグンから告げられた言葉の一つなのだが……彼の者は……『ぷれいやー』である可能性が高い、という事だ」
告げられた言葉に、皆が一様に絶句し、室内が沈黙で包まれた。
ぷれいやー。
それはスレイン法国の中でも最重要機密にあたる存在である。
国を救い、国を興した六大神。
その神と同等の存在をぷれいやーと呼ぶのだ。
ぷれいやーは、善であれ悪であれ、人類には太刀打ちできぬ程の強大な力を持ち、突如としてこの世界に現れる。
そして、ニグンより齎された情報が全て正しいと仮定した場合、彼の闇妖精がぷれいやーであるという話には信憑性が伴うのだ。
規格外、という意味でだ。
「……なんという事だ。『神人』では無く、ぷれいやー……間違いないのか?」
「分からぬ。だが、他ならぬ本人が告げたそうなのだ。ぷれいやーであると」
「馬鹿な……もし、そうであるなら我々は神と敵対した……そういう事か?」
「八欲王の様な存在かもしれん。神と断定するのは早計だ」
「呼び方などなんでもよい!神に等しき力を持つ存在、それが陽光聖典と敵対したことが問題だ」
「……仮にその者が善なる者だったとして……人々を殺して回る集団を目撃したぷれいやーか……どの様な心証を得たか、想像に難くはないな」
「そもそもエルフの奴隷制を認めている我々を、近縁種である闇妖精はどう思うか……」
神官長達は難しい顔を更に険しいものにする。
「ニグンによれば、法国の心証はかなり悪いであろうとの事だ。招致を促したが断られたそうだからな。積極的な敵対はしないが、ちょっかいを出せばそれ相応の対応をすると、そう告げられたらしい」
「ふむ……なんというか。随分と人間臭いぷれいやーだな……」
「きちんとした使者を用意し、我々の事をよく知ってもらえれば協力関係は結べるのではないか?」
「いずれにせよ、強大な力を放置する事は出来ん。決裂した場合には『ケイセケコゥク』による支配も視野に入れねばなるまい」
「……それは最終手段であろう。事は慎重を要する。幸い、話は出来る相手の様なのだからな」
ぷれいやーは脅威であると同時に、味方に付ければこれ以上心強いものは無い。
引き合いに出すのも癪であるが、かの八欲王はあの強大な真なる竜王達ですら屠ったのだ。
人類の繁栄圏拡大に、強者はいくらいても困らない。
多少乱暴ではあるが、協力関係の構築に失敗した場合でも、六大神より賜った至宝『ケイセケコゥク』を使用する価値は十分ある。
ニグンが最後にヘルメスと接触したのはカルネ村だという。
議論の末、神官長達はカルネ村やトブの大森林を中心とした捜索部隊の派遣を決定した。
トブの大森林は、元々破滅の竜王復活が予言されている地でもあり、部隊の派遣が既に決定していた為、部隊の再編制を経て、竜王とぷれいやーの捜索を並行して当たらせることとなった。
議会を終え、席を立った最高神官長は大きく息を吐く。
「……第九席次の裏切りから、陽光聖典の敗北……そして竜王の復活。彼の者は我が国にとって善となるものか悪となるものか……」
ぽつりと呟く言葉には、僅かな願望が込められていた。