後半は、アーチャーによる、間桐邸に襲撃。
金ぴかアーチャーの言葉遣いが迷子だし、バオーのことをなんと呼ぶか分からなかったので、とりあえず“ゲテモノ”と呼ばせています。
「切嗣……、あなたという人は!」
「……。」
アインツベルンの城に帰った切嗣と舞弥を待っていたのは、怒り心頭のセイバーだった。
セイバーは、切嗣が雁夜を殺しに行ったことをアイリスフィールから聞き出したのだろう。セイバーにとって、雁夜は、負傷していたアイリスフィールと舞弥を救ってくれた恩人だ。だから怒っているのだ。
切嗣は、アイリスフィールに、ツツジという少女に掴まれ、皮膚を溶かされ、ただれてしまった右手を治療してもらいながら、セイバーからの怒りの言葉を聞き流していた。
そして治療が終わった右手を確認する。
令呪は、ちゃんと右手の甲にあり、ただれた跡も残っていない。
しかし…、薄らと、掴まれた時の手形が赤く残っていた。
「時間が経てば消えると思うわ。」
そうアイリスフィールは言った。
しかし、切嗣には、これがあのボーイッシュな少女……確かツツジと呼ばれていた少女の…、の呪いのように思えた。
彼女からは、魔術師の気配はしなかったし、むしろそれ以上に恐ろしい存在に見えてしまった。
この手形の跡は、おそらくは警告だ。雁夜の命を狙うのならば、殺すという意味だ。
殺しに行ったのだから、相応に殺される覚悟はもっていた。だが、それ以上に……あのツツジという少女が恐ろしく見えたのだ。
なんと言ったらいいのか…、それは、第六感という見えない感覚によるものなのか。よく分からないが、とにかく戦いになればタダではすまないと思ってしまった。
実際、切嗣ですら気配を感じ取ることが出来ず、あろうことか令呪がある右手を掴まれて、危うく骨ごと溶かされかけてしまったのだ。
何をやって溶かしのかは分からないが、掴まれた時点で終わっていたのだと感じた。だからすぐに向こうからの言葉に応じて、帰ると言ったのだった。
……真っ先に殺すべき相手を間違えた。名前こそバレてないが、顔を見られたのも痛い。
切嗣は、己の判断ミスを悔やんだ。しかし、こればかりは実際に目の当たりにしないと分からないことだ。
結論からいくと、バーサーカー陣営には、二人…死徒モドキらしき者達がいる。その戦闘能力は、あの言峰綺礼を越え、ある意味でサーヴァントを越えるかもしれない。
つまり真っ先に潰すべきだが、戦闘能力が計り知れないため、攻め入ればこちらも甚大な被害を被る可能性が高い。ゆえに、下手に手を出すのは危険。
いまだ宝具が謎のアーチャーとぶつけ合わせて、隙を突く……。いや…それは危険な賭だ。だいたい、アインツベルンの森でキャスターと戦っていた雁夜を狙撃しようとして二発とも弾道を目視されて失敗したではないか。敵は、弾丸の軌道を目で追えるほどの感覚の鋭さを持つのだ。また、おそらくではあるが、遠くからの殺意にも敏感だ。だから狙撃がバレたのだろうか?
……どちらにしても、事を急いでバーサーカー陣営を襲ったのは間違いだった。それが切嗣が出した答えだった。
***
「…っくしゅん!」
「ツツジさん、風邪?」
「……誰かに噂されたかも。」
「お前の噂話なんて、誰がするんだよ? ……ああ、昨日の夜来たっていう襲撃者か?」
「名前は聞いてなかったけど、ヒゲの生えた男の人だったよ。」
「しかしお前も危機感無しだな…。もし相手がサーヴァントだったらどうしたんだよ? 相手がサーヴァントのマスターだったから、令呪のある右手を人質にできたけど、左手だったらどうしたんだ?」
「令呪が見えたから右手を掴んだだけで、左手だったら顔を掴む予定だったよ。」
「……おおぅ…。」
いくらもっさい男でも、顔を溶かされるなんてされたらたまったもんじゃないだろう。襲撃者は色んな意味で命拾いしたのかもしれない。
そもそも…。
「おまえ…、やっぱり人間じゃねぇだろ。」
「それは今更でしょう?」
「掴んだ端から人を溶かすなんて聞いたことがないぞ。」
「おじさんも、溶かしてたよ?」
「はっ?」
「……お爺さまの手を掴んで杖ごと溶かした。」
「俺が? 本当かい?」
「うん。」
「もしかして…、溶かす力ってのは、バオーの力か?」
「そうだね。バオーの武装現象の基礎みたいなものだよ。皮膚からあらゆるものを溶かす分泌液を出すのは。」
「威力はどれくらいだ?」
「数秒とせず、人間の頭なり手なり足なり、掴んだ部分をドロドロに溶かせるくらいかな。例えば、何か握ってたらそれごと溶かして一体化させちゃうとかできるし。例えば銃とかも、グニャグニャのグシャグシャ。」
ツツジからの説明を受け、雁夜は知らず知らず息をのんだ。
そんな威力のある溶解液を出すことが可能な体になってしまったのかと…、少し戦慄したのだ。
まだ実感はないが、改めて、自分が臓現以上の恐ろしい生物になってしまったのだと思った。
「おじさん…。」
「桜ちゃん。おじさんに触らないで。」
「いや。」
「桜ちゃんを溶かしちゃうかもしれないぞ?」
「……それでもいい。」
「ちょっ、桜ちゃん!? それはいけないから!」
「おじさん、桜から離れてどこか行っちゃうの?」
ギュッと服の裾を掴まれ、泣きそうな弱々しい声で聞かれて、雁夜は、グッと言葉に詰まった。
力の制御方法が分からない状態で、桜といたら、桜に何かしら影響が出るかも知れないという考えが浮かんだが、桜がどうしても離れそうにない。ここで突き放したら、取り返しがつかなくなりそうで、それが怖くなった。
「ど、どこにも行かないよ…。桜ちゃんを置いていかないから。」
「本当?」
「本当だよ。」
「よかった。」
桜は、雁夜に抱きついた。
「でも、お留守番だけはできるようになろうね? 桜ちゃんのお父さんを捕まえるためにも、雁夜さんには頑張ってもらわないと。」
「うん。分かってる。でも、ちゃんと帰ってきてね。」
ツツジの言葉に、桜はそう言って、雁夜を見上げた。
「……う、うん。」
桜からの視線に、雁夜はタジタジになりながら、とりあえず頷いたのだった。
***
一方その頃…。
「無様よのう。綺礼。」
時臣のサーヴァントであるアーチャーが、右耳と右腕を負傷し、治療跡が残っている綺礼を嘲るよう言った。
「貴様…、死徒のような“ゲテモノ”なんぞに、後れを取るか? しかも、聞くところによると、貴様、そのゲテモノから与えられる死を受け入れようとしたそうだな?」
「…代行者たる私が不覚を取ったことは認める。」
「そういう問題ではない。貴様は、“愉悦”を知らずして、目の前に置かれた死という俗な終わりの安らぎなんぞを選ぼうとしたことが愚かだと言うのだ。」
「アレ(※バオーの電撃)を避けるのはどうあがいても無理だったのです。」
「そうであっても、貴様は死という安楽を求めたのだぞ、綺礼。」
アーチャーの血のように赤い目が鋭く細められる。
綺礼は、ただ俯き表情を動かさない。
「……まあよい、過ぎたことよ。貴様に問う。そのゲテモノについて、どう考えている?」
「得体の知れない…。死徒でもない。何かだ。」
「…死徒…、吸血鬼でもない…か。」
アーチャーは、不機嫌そうに椅子に座り直し、ワインを飲んだ。
「ふん。だが所詮は、雑種をちとばかり弄くっただけのゲテモノよ。そんな物がこの戦争に参加しているだと? 世迷いも甚だしい。」
「だが、事実なのだ。」
「言わんでも分かっておるわ!」
アーチャーは、乱暴にワインの入ったグラスを机に置いた。
「時臣は、関わり合いにならぬことを望んでおるが、我が直々に駆除してくれよう。」
「よいのですか? 王よ。」
「聞けば聞くほどに、まったく、首筋がむず痒くなるのよ! 早々に駆除せねば我は不愉快でならん!」
「そこまで……。」
アーチャーの不機嫌ぶりに、綺礼は、ちょっとだけ愉悦を感じていたのだった……。
「では、間桐邸に?」
「この我が自ら足を運んでやるのだ。女子供であろうとも、間桐の当主であろうとも、出てくるのならば、あのゲテモノを庇うならばゲテモノ共々殺すまで。」
アーチャーは、そういうと椅子から立ち上がった。
綺礼は、アーチャーの不機嫌により、巻き込まれることになった間桐の家を思い……、愉悦を感じた。
***
アーチャーが、雁夜を殺すために間桐邸を目指そうと決めた頃……。
ツツジは、目を閉じ、その“匂い”を感じ取っていた。
「雁夜さん。」
「ん? どうした?」
「桜ちゃんを避難させた方が良いかも。」
「どういうことだ?」
「ここに…、サーヴァントが一人来ようとしてるみたい。」
「なんだって!?」
「狙いは、あなた。相手はすっごい不機嫌みたい。」
「…分かった。桜ちゃーん。」
「なーに?」
「どうしようか…。間桐邸の地下に……。桜ちゃん悪いけど、地下室に…、蟲蔵じゃないところに隠れててくれるかい?」
「…おじさん。何か起こるの?」
「この家が吹っ飛ばされるかもしれないんだ。頼む、桜ちゃん。」
「…分かった。鶴野(びゃくや)おじさんは?」
「あいつは、放っておけ。」
鶴野は、雁夜の兄である。だが魔術師としての才がなく、臓現に命じられるまま桜を蟲蔵に放り込んでいた人物だ。罪悪感により、酒に溺れており、また臓現を雁夜が殺したことを感じ取ったのか、こちらに関わろうとしていないので今までずっと放っておいたので、間桐邸が吹っ飛ぶ事態が起ころうとしていても放っておくことにした。
「ツツジも地下室に行けよ。」
「私も戦えるよ?」
「いや、サーヴァントが相手だ。なら、バーサーカーのマスターである俺とバーサーカーが相手をする。」
「……分かった。でももしものことがあったら…。」
「その時は、桜ちゃんを頼む。」
「あなたが死んだら、桜ちゃんは、もたないよ。それを忘れないで。」
「分かってる!」
その時だった。
バーサーカーが雁夜の指示無しに実体化した。
「バーサーカー? っ!?」
すると、間桐邸の一角から爆発音というか破壊音が聞こえた。
「来た。」
「クソッ! 霊体化して移動してきたか! 行くぞ、バーサーカー! 頼むぞ、ツツジ!」
「分かった。行こう、桜ちゃん。」
「うん。おじさん、負けないで。」
「…分かってるよ。」
ツツジに手を引っ張られながら、雁夜に手を振る桜に、雁夜は微笑んで見せたのだった。
いきなり、ラスボス戦みたいになりそう…。(自分が書いたんだろうが)
あっちこっちの二次で使われてる有名なゲートオブバビロンって……、結局のところ、金属入ってますよね?(フラグ)
まあ、宝物庫の物によるだろうけど、多くは…?
なんか、書いてて、桜→雁が強くなってきたような気がしてきた…。あれ?