VSアーチャー。
時臣召喚のアーチャー(ギルガメッシュ)が、果たしてここまでやれるのかどうか分かりませんが、とりあえず、ここまで書きました。
一部倒壊した間桐邸の瓦礫を踏みつけ、アーチャーは、腕を組み、フンッと鼻息を漏らす。
「出てこい、ゲテモノ! 我が直々に来てやったのだ。出てこなくば、この邸をすべて吹き飛ばしてくれようぞ!」
「それは困る。やめろ。」
雁夜がバーサーカーと共に、走ってきた。
雁夜を見たアーチャーは、不機嫌に歪めていた眉間を、ますます歪めた。
「雨風を防げないと、生活するのに困るからな。」
「そんなことでか……。俗よのう。」
「全身金ぴかの成金みたいな野郎に言われたかないぜ。」
「我が財を愚弄するか? ゲテモノが!」
「バーサーカー!」
雁夜が命じると、バーサーカーが前に出た。
「ほう? 飼い主にえらく従順になっているではないか? 令呪…ではないな。」
「俺にもよー分からん。だがマスターもいないおまえが、勝てると思うなよ?」
「ふんっ。貴様のみを滅すならば、赤子の手を捻るよりも簡単なこと。」
「俺をゲテモノ呼ばわりしておいて、簡単に言ってくれるな。」
「ほう。ゲテモノがよくほざく。」
「ゲテモノって言うな! バーサーカー!」
命じられたバーサーカーがうなり声をあげながら、アーチャーに迫った。
「貴様には用はないは、狂犬!」
アーチャーの後ろから、無数の宝具が現れ、投擲される。
それは、すべてバーサーカーの後ろにいる雁夜を狙っていた。
バーサーカーが跳び、全ての武器をその手で掴む。すると、血管のように赤い筋がアーチャーが投擲した武器に走った。
それを見てアーチャーは、ますます顔を歪めた。
「また…その汚らわしい手で我が宝具を…!」
その様を見て雁夜は確信する。
このアーチャーに自分のバーサーカーは勝てると。
しかし、アーチャーが黙っているわけがない。そして、攻撃も単調ではないのだ。
アーチャーの後ろから投擲されていた宝具の出現位置が雁夜とバーサーカーの周囲に変わり、一斉に飛んでくるそれをバーサーカーが奪い取った宝具ですべてたたき落としていく。
「うわっ!」
「ほう? 運の良い奴よ。」
次の瞬間、足元から伸びてきた剣の刃を雁夜は咄嗟に避けたので、アーチャーは、少し感心したように呟いた。
次々に足の下から、伸びて飛んでくる武器をステップを踏むように避けていた雁夜だったが、このままでは埒があかないと、バーサーカーの背中に抱きついた。
「行け! バーサーカー!」
バーサーカーが背中に雁夜を貼り付けた状態で走り回り、地面から次々に出てくる武器を避けていく。
腰に手を当てて、武器を投擲することに集中していたアーチャーに向かい、バーサーカーが走る。
「ええい! ちょこまかと!!」
自分の背後からの投擲に変えたアーチャーが宝具を更に展開し、投擲を行ってきた。
バーサーカーは、それを手にしている武器ですべて弾き飛ばしていく。
眼前にバーサーカーが迫ったとき……。
アーチャーは、口元を僅かにあげたのだった。
「言ったであろう? 赤子の手を捻るより簡単だと。」
「っ! ぐぇっ!?」
次の瞬間、雁夜の首に後ろから伸びてきた鎖が絡まり、バーサーカーの背中から剥がされた。
そして、アーチャーは、円を描くように周囲に宝具を展開し、自らは、高く跳躍して間桐邸の屋根の上に上がった。
バーサーカーは、周囲から飛んでくる宝具を弾きながら、鎖に捕われている雁夜を救うべく武器を振ろうとする。
雁夜は、ジタバタと暴れ、鎖から、そして四方八方から飛んでくる宝具から逃れるために体を捻るなどした。
だんだんと呼吸が出来ず、目の前が暗くなってくる。
それに伴い、バーサーカーの動きも悪くなってきた。
その直後、足元から鎖が飛んできて、雁夜の片足に絡まった。
そして鎖がグンッと、上から下から引っ張られ、ゴキッという嫌な音が聞こえた瞬間、雁夜は、ガクンッと首をあり得ない方向に垂らして口から血の泡を吹いた。
雁夜が、ダラリッと動かなくなって数秒後、鎖は消えて雁夜の体が地面に落ちた。
それと同時にバーサーカーが力尽きたように膝をついた。
「フッ…、たわいもない。」
そう嘲りの笑みを浮かべながら、間桐邸の屋根から飛び降りたアーチャーであったが、すぐにその笑みを消した。
ピクピクと僅かに痙攣していた雁夜の体から、確かな…何かが動いたのを感じたのだ。
「“ソレ”か……、ソレが我を不快にさせるのだ!」
アーチャーは、宝具を展開し、倒れている雁夜に向けて投擲した。
だが宝具は、当る直後で、止まった。
それを見たアーチャーは、不愉快そうに眉を寄せた。
背中の力だけで起き上がった雁夜の動きに従い、浮いていた宝具も動く。
バチ…バチッと、音が鳴る。
力尽きたように膝をついていたバーサーカーが弾かれたように動き出し、雁夜の前で止まっていた宝具をすべて弾いた。
「ウォォォォォォォム! バル…、バル、バルバルバルバルバル!!」
死に瀕する痛手を負わされた雁夜が、バオー・武装現象へと変じた。
アーチャーの顔が不機嫌で歪む。
「なんたる醜い姿よ! その姿を我の前にさらすな!」
死ね!っと、号令をかけるように今まで以上の凄まじい数の宝具が展開された。
しかしその宝具が消える。
「おのれ…、時臣め、真(まこと)につまらん男だ!」
時臣からの魔力吸収が限界に達し、アーチャーは、不機嫌のあまりに悪態を吐いて消えようとした。
その直後、雁夜が一瞬にして距離を詰めていた。
「あ?」
アーチャーが一瞬その速さに呆けた瞬間、アーチャーの喉が綺麗に切れて、大量の血の雨が雁夜に降りかかった。
アーチャーの血が雁夜を完全に赤く染める前に、アーチャーは霊体となり、消えた。
アーチャーが消えた後、雁夜は、顔や上半身をアーチャーの血で赤く染めた状態で、咆吼をあげたのだった。
その咆吼の意味が、敵を取り逃した事による悔しさによるもなのか、痛手を負わせることができたことによる勝利の物なのかは、寄生虫バオーに支配され、自我意識がない雁夜には分からないことだった。
***
綺礼は、魔力切れで倒れている時臣を見つめていた。
アーチャーが勝手な行動を取っていることは、時臣も知っていたが、まさか戦いが発生し、そして魔力が切れて死にかけるほどだとは予想外だったらしい。
視覚共有もしていなかったため、アーチャーが何と戦っていたのかは分からないが自分のアーチャーがこれほどまで苦戦するのだ。相当な強敵だったのだろうと想像できた。
綺礼に介抱され、霊体となって戻ってきたアーチャーの状態を見て、時臣は別の意味で大きなめまいを感じた。
ギリギリで死んではいないが、アーチャーの首は、無残にも切り裂かれ、大量出血の跡がある。
「王よ…。一体…何があったのです?」
しかしアーチャーは、答えない。喉を切られたため、言葉が出せないし、出す余裕も無いのだ。
「まずは、魔力の回復と、王の治療を。」
「分かっている…!」
綺礼に言われなくても、そんなことは時臣自身が一番分かっていることだ。
魔力を少しでも回復させるため、常備している霊薬を飲ませてもらい、なんとか動けるようなってから、アーチャーの治療を始めた。
治療され、なんとか口がきける状態まで回復したアーチャーは、時臣からの質問に答えず、不機嫌丸出しの顔で、どっかりと座り込んでしまった。
「王よ、せめて…血の跡だけでも拭きましょう。」
そう言って濡れタオルを渡そうとしても、アーチャーは、動かない。
これ以上話しかけても無意味だと判断した時臣は、ここに置いておきますとテーブルに濡れタオルを置いておき、綺礼と共に部屋を出た。
「…単刀直入に聞く。綺礼。何があった? アーチャーは、何と戦っていた?」
少々早口で、時臣は、綺礼に聞いた。
「死徒です。」
「しと? 馬鹿な。王たる彼が“そんなもの”に後れを取るはずが…。」
「ただ死徒ではありません。そもそも死徒なのかすらも、分からぬ存在です。」
「それは、死徒だと呼べるのか?」
「……おそらくは人為的に、何かしらの方法で後天的に人ならざる力を得た者でしょう。それ以上でもそれ以下でもありません。」
「ならば、死徒とそう変わらないだろう。だが、なぜ、その程度の者が、サーヴァントと渡り合える?」
「それは、おそらく、彼の者が、魔術師であるからです。生物として外れていながら、魔力を使いこなすため、サーヴァントにもその力が通じるのではないかと。」
「それは…、綺礼、おまえに怪我を負わせた青白い怪物のことではないのか? アーチャーは、それと戦っていたのか?」
「彼の者の名は…、間桐雁夜、です。」
「かりや…だと?」
時臣は、その名を聞いて、複雑な心境になった。
時臣にとって雁夜は、同じ魔術師の家に生まれ家督を継ぐはずだった者だったが、なぜか11年前に魔術の道を捨てた愚か者だった。
間桐の魔術の現状を知らない時臣にとって、魔術の道を捨てることは、愚かで、虫けら同然の落伍者のすることだったのだ。
アーチャーに言わせれば、骨の髄まで魔術師である時臣にとって、雁夜はそう映ったのだ。
「雁夜…、どういうことだ? なぜ彼が戻ってきた? なぜ、そんな怪物に?」
「それは、まだ分かりません。」
「……綺礼。早急に調べろ。雁夜が本当に、アサシンと君が見た青白い怪物なのかどうかを。どうやってそんなモノになったのかを。そして、この聖杯戦争に加わる理由を。」
「はい…。」
額を押さえてそう命じる時臣に、綺礼は一礼しながら返事をした。
***
「……じさん。おじさん。」
「…………ハッ!」
目を覚ました雁夜は、飛び起きた。
傍らには、桜がいて、心配そうに見ている。
「やっと起きたね。」
「ツツジ…。俺は…?」
雁夜は、自分の顔や上半身に赤黒く変色した血がかかっているのに気づいた。
「家がちょっと壊されたけど、それ以外はだいじょうぶ。あなたは、勝ったんだよ、雁夜さん。」
「勝ったのか…。いや…、勝利と言っていいのか?」
雁夜は、再び意識を支配されてしまったことを理解し、頭を押さえた。
「勝ちは勝ちだよ。」
「そうだよ。おじさん、勝ったんだよ。」
「……そうか。」
雁夜は、自分が時臣のサーヴァントであるアーチャーに勝ったのだと、そう思うことにした。
「なあ、ツツジ。いつになったら俺は自分の意思でこの力(バオー)を使えるようなるんだ?」
「うーん。それは個人差があると思うから…。」
「なんだそれ。つまり場合によっては一生使えない可能性もあるってことだろ?」
「そういう見方も出来るかも。」
「おまえな!」
「ねえ、おじさん。お風呂で血を洗い流そう。ね?」
「…分かった。ツツジ、風呂入った後で話の続きするからな。」
「分かってるよ。」
三人はそう話し合って、ちょっとだけ壊れた間桐邸に入ったのだった。
果たして、天の鎖(エルキドゥ)が、ピンポイントで首を狙えるかどうか分かりませんし、ここまでゲートオブバビロンを展開し続けてだいじょうぶなのか?っていう疑問がありますが、序盤の戦闘でバーサーカー相手にかなり武器を投擲しているようだったので、たぶんだいじょうぶかな?って思ったのでこうしました。
あと前回の後書きで書いたフラグで、電気による磁石効果で宝具の剣やその他金属製の武器を防ぐに至ってますが、原作漫画でも育郎が爆弾(手榴弾)を防いでますから、可能かな?って思って書きました。
アーチャーが霊体化直後に首切られてるのは、彼の慢心とか油断ですね。完全に。まさか一瞬で距離詰めてくるとは思わなかったから…です。