会話のみ。
雁夜おじさんの初恋とか、それ以外についてツッコミとか。
あと、桜ちゃんが、親に対してあまり良い感情をもってません、注意。
恋愛観とか、そういうことについては、筆者は経験が無いため、あくまで筆者の考えとか突発的な何かです。ご注意を。
間桐邸の縁側で、雁夜とツツジは、お互い一メートルほど距離を置いて座っていた。
二人は、空を見上げてたり、縁側から眺められる、草木を見つめていたりした。
二人の心に影を落とすこと……、それは、ランサー陣営を救えなかったことだ。
結局、ツツジの偽善も、雁夜のその偽善への手助けも、意味を成さなかった。
分かっていたはずであった。この聖杯戦争というものが、どれほどに理想を掲げようとも、結局は血塗られていて、愚かで、欲望にまみれ、多くの悲劇を生み出すのだということを。
「……だから、魔術師は嫌いなんだ…。」
黙っていた二人だったが、やがて雁夜が独り言を呟いた。
「自分達の研究だとか、理想だとか、願望のためになら、どんなことだってするんだ。そして、そのためなら差し伸べられる手すら振り払う。」
「……大馬鹿者って言われたもんね…。」
「平気で自分の子供すら間引きし、お家のためなら、いかなる残虐な行いすらも平気で行う。そういう奴らだ。」
「…雁夜さんは、間桐の魔術が嫌いだったんだよね?」
「そうだ。そうだよ! 俺は恐ろしくかったんだ! あのジジイが!! 魔術が!!」
雁夜は、頭を抱え喚いた。
「資格を捨てた、たったそれだけで、ジジイも時臣も! 俺を落伍者だと言いやがった!! だからぶっ殺してやるって決めてたんだ……、決めて…たんだ…。」
大声で喚いていた雁夜だったが、最後の方は弱々しい呟きに変わっていった。
「なのに……、ツツジ…お前に助けられてから、俺は分からなくなった。ジジイは死んだ。時臣を殴ってやった。……そのせいか、あれほど殺してやりたいって思ってた時臣に対する憎しみの気持ちが薄らいでいるのが分かるんだ。俺は、どうしたらいい? 何を理由に戦えばいいんだ?」
「…まだ時臣さんに、思い知らせてないよ。桜ちゃんの痛みを。」
「それについだが…、実は、あんな目に遭わせるなら殺してやった方がマシなんじゃないかって、慈悲なんだか同情なんか分からん感情があるんだ。」
「なるほど。」
「桜ちゃんが受けたことを思い知らせるのは、確かに殴るよりも、殺すよりももっとも良い方法だと思う。それを後悔しながら死んでくれりゃ…、なんて、以前の俺なら喜んで受け入れただろう。なのに…。」
「時臣さんって、雁夜さんにとって、どういう関係?」
「…間桐が遠坂と盟約を組んでたから、ある意味じゃ幼なじみだ。あと、葵さん…の夫になった男。」
「その葵さんって、雁夜さん、もしかして好きだった?」
「ブッ!」
ずばり言われ、雁夜は吹き出した。
「だって、桜ちゃんを葵さんのところに帰すって言ってたし、時臣さんへのその感情も、もとを辿れば、葵さんって人にあるんじゃないかって容易に分かるよ。何かしら愛情とかそういうのを葵さんって人からもらいたかった。あわゆくば、旦那さんの座を時臣さんから奪いたかった。違う?」
「そ、そこまでじゃねーよ! 何が嬉しくて間桐の魔術を知らせるなんてこと…。」
「なるほど。間桐の魔術に巻き込みたくなかったら、身を引いたわけだね。で…、あなたは、そういう色恋沙汰が上手くいかなかった腹いせとか、そういう人間味ある感情が時と共に、身を引くきっかけになった魔術…、魔術師、そして魔術師である時臣さんへの憎しみに変わった。ああ、あとジジイって人にも。」
「うぅ…。」
「あなたが、どんな気持ちで身を引いて、その後、どう生きてきたかは分からないし、知らない。赤の他人の私が言うのもなんだけど……、空回りしすぎじゃない?」
「ぐはぁっ!!」
「まあ、それが人間として普通っちゃ普通なんだろうけど。だいたい、そんな特殊な環境で、まともな感性持った人間が耐えられるとは到底考えられないし。」
「……それは、俺が弱いって言いたいのか?」
「それを弱さって言ったら、他の普通の人間が、みーんな弱いって事になるよ。あなたは、恐ろしいことに好きな人を巻き込むくらいならって、ちゃんと考えて行動した。私が言うのもなんだけど、それはよく頑張ったと思う。けど、皮肉なことに、その人の娘さんが、恐ろしいことに巻き込まれてしまった。そのせいで、あなたの中でくすぶっていた、好きだった葵さんへの思いが変な形で再熱してしまった。ある意味で、桜ちゃんを利用して…、葵さんって人に近づこうとしたんだ。」
「……ああ。そうだな…。そうだったのかもな。」
「私は、まだ誰かを好きでいるという経験がないから、あなたの恋に対する思いは分からないし、知らない。……なんて言ったらいいんだろうね。その恋心をうまく捨てられたり、うまく過去の物として昇華できたらよかったのに。けど、たぶん、そういう気持ちって、簡単にはどうこうできないんだろうね。器用とか不器用とかいう以前に。ドラマみたいに、やたらご執心したり、逆にキッパリ諦めたりなんて現実じゃ無理だと思うよ。」
「俺…、11年以上も引きずってんだぜ? ほんと、どうしたらよかったんってんだよ?」
「……そうだ。」
「ん?」
「葵さんって人も、立ち会ってもらおう。」
「はぁぁぁぁぁ!? お前何言ってんの!?」
「蟲蔵で、間桐の魔術がどんなものだったのか、そしてそんなど畜生に愛娘を放り込んだ夫さんの所行を知ってもらう、一番の近道だよ。雁夜さんの言い分から察するに、その葵さんって、人、魔術については全然っぽいしね。桜ちゃんがどうして間桐に行ったのかだって全然分かってないんじゃない?」
「で、でも! でも!」
「よし、決まり。辛いだろうけど、現実を分からせるのも良いことだよ。」
「あの人に余計なトラウマ植え付けるのはぁぁぁぁぁ!!」
「それ、良い考え。」
「桜ちゃん!?」
「あれ? 聞いてた?」
「うん。」
「桜ちゃん、賛成?」
「うん。賛成。」
「そっか…。」
するとツツジが、頭を抱えている雁夜に近づき、その耳にヒソヒソと話しかけた。
「たぶんね…。桜ちゃんの怒りとか憎しみとかそういう感情……、あなたは考えてなかったかも知れないけど、すっさまじいよ?」
「!?」
「どうする? 昔の恋を優先するか…、今を生きている桜ちゃんの復讐に加担するか。」
「何だ、その究極の選択!?」
「今更、桜ちゃんを捨てるの?」
「いや、それは…。」
「おじさん…。私のこと、嫌い?」
「さ、桜ちゃん…。」
言葉を詰まらせる雁夜に、桜の顔が僅かに曇った。
「やっぱり…、嫌いなんだね。お父様とお母様のこと嫌いな桜のこと…。」
「桜ちゃん…、そこまで…。」
「私も、魔術師なんて嫌い。だって、痛くて苦しくって、どんなに泣いたって喚いたって、助けてくれないんだもん。」
「……ごめん。ごめんよ、桜ちゃん!」
雁夜が桜に駆け寄ってその小さな体を抱きしめた。
「ごめん。おじさん、全然桜ちゃんの気持ち…考えてなかったよ。いっつも自分の気持ちばかり優先して…、桜ちゃんを理由に、あの人の気持ちを…。それ以前に、結局こんなことになるなら……。おじさん。酷い人だ。桜ちゃんは、そんな俺の傍にいちゃいけない。」
「ううん。おじさんのせいじゃない。だから…泣かないで。」
嗚咽を漏らしながら、桜の肩に顔を埋めて震えている雁夜の頭を、桜は撫でた。
***
その後、雁夜は、時間をくれと言って、部屋にこもってしまった。
「ねえ、ツツジさん。」
「なぁに?」
夕飯の用意を二人でしながら、会話を交わした。
「ツツジさんは、どうして私達に協力してくれるの?」
「私には、私なりの理由がある。それは詳しくは言わないけど、二人に協力する十分な理由だからだよ。理由の大きさの大小って、結局その人の都合とかそういうことだと思うし。」
「ふーん。そうなんだ。でも、よかった。ツツジさんがいてくれて。」
「そう?」
「だって、おじさんの気持ちとか、どうして聖杯戦争に参加したのか、それが分かったんだもの。」
「…雁夜さんに失望したりした?」
「ううん。…むしろ……。」
桜はそれ以上は言わなかった。しかし、手元で野菜の皮を剥くピーラーの動きが速くなった。
「頑張ろうね、桜ちゃん。もし、あなたの報復が終わったら……、その先のことをちゃんと考えようね。」
「うん。」
「だって、桜ちゃん。まだこんなにちっちゃくって、しかもメチャクチャ可愛いんだもん。きっと将来、すっごい美人になるだろうし、すべてを受け入れるほどの器のでかい、いい男の人見つかるかもしれないし?」
「桜…、おじさんがいいなぁ。」
「あらぁ…、そう来る?」
こりゃ帰る気ゼロだなぁ、っとツツジは思ったのだった。
桜→雁夜が、どんどん強くなってきているような?
臓現が死んだとかで圧力がなくなり、蟲蔵にも放り込まれなくなったから、桜は桜で色々と考えるようなりました。結果、自分を間桐にやった親に対してあまり良い感情を抱かなくなってしまいました。また親に選ばれた姉の凜に対しても……。
時臣さん、ちゃんと理由はなさいと、確実に殺されるより恐ろしい目に遭いますよって、状態。