アサシンの群れと、綺礼との戦闘。
流血、残酷表現注意。
綺礼が時臣に通信をする前。
時は、少し遡る。
「バーサーカー?」
いきなり実体化したバーサーカーに雁夜が驚いていると、ツツジが叫んだ。
「雁夜さん。何かいる。いっぱいいる!」
「なに!?」
雁夜が周囲に目を配ると、暗闇から、白い仮面が無数……。
その数は…、十人? それ以上…、数十人?
「匂いがおかしい。これ…、サーヴァント?」
「さあな! だが、サーヴァントは、一人につき一体のはずだぞ?」
「我らは、アサシン。群にして個のサーヴァント。されど、個にして群の影。」
「そんなのアリかよ! 何の用だ!?」
「この家に、遠坂の娘がいよう?」
「!?」
「お前の首…。」
「そして、そこな娘の首…。」
「それらを渡せば…。」
「遠坂の娘の命だけは…。」
「取らぬ。」
無数のサーヴァント、アサシンが口々に言った。
「桜ちゃんをどうする気だ!? 事と次第じゃ、容赦はしない!」
「……交渉は決裂とみた。死ぬがいい。」
「バーサーカー!!」
アサシン達がそれぞれ武器を手に、襲いかかってきた、バーサーカーが前に出て剣を一振りする。たったそれだけで、数名のアサシンが吹き飛び、体が真っ二つになった。何人かのアサシンは、飛び退きその攻撃を避けた。その素早さに驚かされる。
すると、バーサーカーは、F15の機関銃を出現させ、弾を発射しながらグルッと体を回転させた。
魔道兵器と化した近代兵器の弾の嵐が、凄まじい数のアサシン達を撃ち抜く。
その時、『キャー』っという悲鳴が聞こえた。
「! 桜ちゃん!?」
ハッとして上を見ると、桜を抱えたアサシンの一人が、屋根から塀の方へ飛ぶのが見えた。
慌てて走り出そうとした雁夜を、ツツジが手で制した。
「私が行く。雁夜さんは、戦いに専念して。」
「ツツジ!」
「安心して。必ず取り返すから。」
「…無事でいろよ!」
「雁夜さんも。」
お互いの拳を合せ、そして、ツツジがその体からは想像も出来ないスピードでアサシン達の群れをかいくぐり、高い塀を飛び越えていった。
それを見送った後、アサシンがクナイのような物を投擲してきた。
それを雁夜は素手で掴み、止める。
アサシン達がそれを見て驚く。
「……桜ちゃんに手を出したこと。地獄で後悔しやがれ!」
それと同時に、バーサーカーの斬撃と銃撃がアサシン達を襲った。
まるで雁夜の怒りに同調するかのように凄まじく、アサシン達は逃げる間もなく殺されていく。
あっという間に、庭はアサシンの血の海になった。
「こ、これほどバーサーカーを操ってなお…魔力が尽きんだと!?」
アサシンの一人が驚愕していた。
バーサーカーは、使えば使うほどマスターの魔力を食い潰す。それは確かな情報だし、これまでの聖杯戦争での歴史を振り返ればそうなって当たり前なのだ。
「おい!」
「ひぃっ!」
足を撃ち抜かれて動けないでいたアサシンを捕まえ、仮面を被っている顔をガッと雁夜が掴んだ。
「お前らのマスターの居所を言え…。あぁん?」
「い、言えるわけがないだろう! 我らには我らの…、ぎ、ぎやあああああああああ!!」
「おら、顔全部溶かさないでやるから、ちゃっちゃと吐け。」
アサシンの一人の顔をジワジワと溶かしながら、尋問をする雁夜は、アサシンの群れに紛れて背後に回り込んできた一人の男に気づかなかった。
「……あ?」
“匂い”の変化に気づいた雁夜が振り返ったとき、黒鍵の一本が雁夜の片目を貫いた。
「この魂に憐れみを……。」
とんでもない速度で振られる無数の黒鍵が、雁夜の首をかき切った。
大量の血を噴出し、後ろへ倒れる雁夜に追い打ちをかけるように、心臓に無数の黒鍵が突き立てられて、貫通して地面に縫い止められた。
雁夜が倒された直後には、雁夜に捕まっていたアサシンは、ピクピクと顔を押さえて虫の息だった。
雁夜を倒した者…、言峰綺礼は、動かなくなった雁夜を見おろし、そして、他のアサシンをすべて殺し終え、自分に襲いかかろうとするバーサーカーの攻撃から身を翻して逃れた。
「うぉぉぉおおおおおおおム…。」
背後でその声が聞こえて、綺礼は、ハッと雁夜の方を見た。
「バル……、バルバル、バルバルバルバルバルバル!!」
起き上がった雁夜から、刺さっている黒鍵が筋肉によって押し出されて抜け、地面に落ちた。
瞬く間に雁夜がバオー・武装現象を発動し、傷が癒えた。そして、片目に刺さっていた黒鍵を掴んで引き抜き、黒鍵を地面に捨てた。
綺礼が雁夜のその変化を見て、わずかに目を見開いた直後、ガチャンッと音がした。バーサーカーがF15の機関銃を構えたのだ。
発射された直後、綺礼は跳躍し、屋根の上に上った。すると雁夜も同じく跳躍していて、綺礼に向けて手を伸ばした。
綺礼は、その手を素手で弾く。
「っ!」
すると、綺礼の手が僅かに溶けて焼けた。
「素手で触れるのは…、危険か。」
瞬時に雁夜の素肌が溶解液にまみれていることに気づいた綺礼は、距離を取る。
距離を取れば、雁夜が距離を詰める。やがて、間桐邸の屋根の端まで綺礼は追い詰められた。
その足を下からよじ登ってきたバーサーカーが掴む。それでふらついた直後、雁夜の手が綺礼を掴もうとして……。
直前に綺礼が蹴り上げた屋根の瓦が雁夜の顎にクリーンヒットし、雁夜が後ろにのけぞった。それによって完全に体制を崩した綺礼が、バーサーカーと共に、下に落ちた。
バーサーカーの手がいまだに綺礼の足を掴んでいたが、掴まれたまま器用に体を回転させた綺礼は、バーサーカーの頭に一撃入れた。
綺礼の凄まじい打撃は、サーヴァントにも通用する。
鎧の上から頭を揺さぶられ、バーサーカーは、綺礼から手を離した。
雁夜が脳しんとうから回復し、屋根から飛び降りてくる。
綺礼は、振り下ろされてきた腕の刃を転がって避け、地面に刺さっている黒鍵と、転がっている黒鍵を拾った。
「バオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」
咆吼と共に、雁夜の体が放電を始めた。
綺礼は、雁夜の周囲に黒鍵を投擲して地面に刺した。
すると放電が黒鍵に吸われるように散る。
一本の黒鍵を残していた綺礼が、放電のために集中していた雁夜に接近し、その顔を…、目を…、脳を狙った。
「やらせないよ。」
雁夜の目を黒鍵が貫こうとした直後、綺礼の横からツツジが跳び蹴りがして、綺礼が吹っ飛び、間桐邸の塀に突っ込んだ。
ツツジは、脇に桜を抱えていた。
「おじさん!」
ツツジに地面に下ろしてもらった桜が、雁夜に駆け寄った。
ガラガラと崩れる間桐邸の塀から、綺礼が起き上がった。
蹴られた脇を押さえ、ゴホッと血を吐いた。折れた肋骨が肺を刺したのだ。
雁夜が咆吼をあげる。強さを増した放電が周りで避雷針の役割を果たしていた黒鍵を吹っ飛ばす。
ツツジが慌てて桜を抱えて逃れ、その直後、雁夜は、バオー・ブレイク・ダーク・サンダーを綺礼に放った。
魔力により威力を増した莫大な電量による爆発が起こり、塀がえぐれた。
もうもうと上がる土埃が晴れたときには、綺礼の姿はなかった。
「……倒したの?」
「ううん…。逃げた。」
抱えていた桜を下ろしながら、ツツジは、首を横に振った。
綺礼を追おうとしてか、雁夜が動こうとしたので、ツツジが雁夜に向けて片手をかざした。
すると、ビクンッと雁夜が震え、みるみるうちに元の姿に戻った。
「…う…うぅ…。俺は…、ツツジ?」
「おじさん…。」
「桜ちゃん! よかった…。どこも怪我はない? だいじょうぶか?」
「うん。だいじょうぶ。おじさん…、血がいっぱい…。」
駆け寄ってきた桜を抱きしめ無事を確認してから、離すと、桜は、雁夜の服の破れ具合と出血の跡を見て心配した。
「おじさんは、だいじょうぶだよ。ツツジ…。」
「桜ちゃんを攫ったアサシンだけど……、あれでちゃん死んだのかな? 一応念入りに首を切り落としておいたけど。」
「おまえ! エグいことするなぁ!? その場に桜ちゃんいただろうが!」
「えっ? ダメだった?」
「いや…、サーヴァントは、首と心臓が弱点なんだ。潰した箇所としては適切だ…。けど、もうちょっとやりようがあっただろうし、桜ちゃんがいるところでやるなよ…」
「だって…、桜ちゃんから目を離したら、また攫われるかもしれなかったし…。ごめん。」
「ツツジさん、すっごく強かったんだよ。」
「そうか……。サーヴァント相手に五体満足でいられるんだから、ホントすごいな。」
「…どうも。」
「ともかく…、桜ちゃんを助けてくれてありがとう、ツツジ。」
「どういたしまして。」
雁夜の近くに来たツツジは、雁夜と拳を合せ、お互いに微笑んだ。
バオーに支配されているため、桜が傍にいても電撃を止めなかったんです。それよりも綺礼の不快な匂いを消すことを優先しました。
なんか戦友っぽくなってきた、雁夜とツツジの関係。
実は、今朝ぐらいにツツジとの関係を恋愛まで進めようかという案が浮かびましたが、それは無い!って思い直して、戦友にしました。
書いて思ったけど、やっぱり恋愛にしなくてよかった…って思いました。
綺礼は、電撃食らいましたが、前回の最後で通信しているように、ちゃんと生きてます。