でもあんまり意味ないか?
雁夜おじさんが元気すぎて、序盤ちょっと空回りしてます。
雁夜は、その場にしゃがみ込んで、頭を抱えていた。
「おまえな……。」
「なに? 何か問題あったかな?」
「問題ありだ、馬鹿!」
急に立ち上がった雁夜が、冷蔵庫に食品を詰めているツツジに向けて叫ぶ。
「実質、アーチャーとの決闘を約束したようなもんだろうが! なんでそんなことしやがる!」
「ああでも言わないと、ずっとつけられそうだし、私と桜ちゃんの首を門に飾られるよりは……。」
「よし。アーチャー。殺す。」
「切り替え、早いね。」
っというわけで、雁夜は、アーチャーへの殺意を固めたのだった。
「おじさん…、戦いに行くの?」
「だいじょうぶだ、桜ちゃん。ちゃんと帰ってくるから。」
トトトッと近寄ってきた桜に目線を合わせ、雁夜が微笑んだ。
桜は、俯き、キュッと雁夜の服を掴んだ。
雁夜は、その手をやんわりと離させ、立ち上がった。
「じゃあ、ちょっと行ってくる。」
「今日の夕飯。カレーだから。」
「おまえは、マイペースだな。ツツジぃ…。」
「無事に帰ってきたら、トンカツ乗せるよ。」
「そういうのは、食わせてからにしろ。」
などと軽口を言い合いながら、お互いに笑い合い、雁夜は、ツツジと桜に見送られて出発した。
***
さて、出発したはいいが、雁夜にアーチャーの居場所が分かるわけもない。
なので、バオーの能力である、“匂い”を探知する能力を使うことにした。
すると、近場にサーヴァントらしき匂いがいるが分かった。
「近いぞ! バーサーカー!」
かなり近距離だったため、バーサーカーを実体化させ、雁夜は走った。
そして曲がり角で歩いてくる人影二つを見つけ、一息吸って叫んだ。
「来たな、アーチャー! 俺に喧嘩を売ったことを後悔……って…。」
しかし、雁夜の口上は最後まで続かなかった。
曲がり角から現れたのは、セイバーとアイリスフィールだったのだ。
お互いに、お互いの姿を見て、固まったが、その空気をぶっ壊したのは、バーサーカーだった。
バーサーカーは、セイバーを認識するや否や、襲いかかった。
「バーサーカー、よせ! 止まれ!」
「ーーーーーっ!!」
セイバーの眼前でバーサーカーは止まった。
そして後ろから雁夜が、兜に付いている毛を引っ張ってセイバーから引き離した。
ハーッと息を吐いた雁夜だったが、すぐにセイバーとアイリスフィールの視線に気づき、赤面した。
「さ…、さっきのは忘れてくれ……。」
顔を両手で押さえて背中を向ける雁夜であった。
セイバーとアイリスフィールは、お互いに顔を見合わせてから雁夜を見た。
「いきなりですまないが、話をしませんか? 私達はそのために来ました。」
「はっ?」
顔をあげた雁夜は、キョトンッとした。
***
その後、間桐邸から離れた場所にある公園に来た。
「間桐の家でも構いませんのに…。」
「いや…、ついさっき行ってきますって言ったばっかりだったから…。」
出発したばかりですぐに帰るのが気まずかったので、雁夜がそうしたのだ。
「で? 話ってなんだ?」
「単刀直入に聞くわ。あなた…、桜という女の子を匿っているわね?」
「…それが、なにか?」
「今日、遠坂から同盟を求められたわ。」
「知ってる。」
「あら? 盗聴でもしてたの?」
「いや…、家にすごい地獄耳がいて…、そいつから大体のことは聞いた。」
「バーサーカーのマスター。あなたは、桜という娘を監禁しているわけではないのですね?」
「そんなことするわけがないだろ。」
セイバーの問いに、雁夜は心外だと言わんばかりに答えた。
「桜ちゃんは、帰りたがってないんだ。何を今更……。」
「まったくもってその通りね。」
「はあ?」
「遠坂の当主は、桜という子を連れ戻すつもりよ。あなたを殺してでも……。」
アイリスフィールは、ヤレヤレという調子で言った。
「時臣が何を考えているのか分からないし、分かりたくもないが、桜ちゃんを渡す気はないぞ。」
「私達は、その子を連れて行くつもりはないわ。」
僅かに身構える雁夜にアイリスフィールが安心してくれという意味で言った。
「ただ、あなたと話をしたかっただけです。バーサーカーのマスターたる、間桐雁夜。」
「…はあ。」
「それともう二つ……。」
「なんだ?」
「一つ目、あなたは、この聖杯戦争において、何を願うのかしら?」
「それは……。」
それは、ライダーからも問われたことだ。
だが、今の雁夜は、ライダーと対談した時よりも意思はハッキリしていた。
「何もない。」
「まあっ。」
アイリスフィールが意外だと声を漏らした。セイバーも驚いて目を僅かに見開いている。
「俺は、時臣に聞かなきゃならないことがある。そして、桜ちゃんが、時臣に対して報復を望んでいる。俺は、その助けをするだけだ。聖杯の取り合いは、あんた達だけで勝手にしてくれ。」
「……それで、本当にいいの?」
「構わない。俺達は、俺達の戦いをして、時臣を引っ張り出すだけだ。それが終われば、俺はこの戦争から降りる。」
「なるほど。分かったわ。じゃあ、最後にひとつ……。あなたは、バーサーカーの真名を知っているかしら?」
「…いや。俺は知らない。バーサーカーは、見ての通り、狂化で言語がほとんど喋れないんだ。だから真名はおろか、他のことだって分からないんだ。」
「初めの戦いの時からずっと気になってたのよ…。どうしてセイバーを見た瞬間、急にセイバーだけを狙ったのかを。」
「それは、俺にも分からない。……さっきから、セイバーを見て襲いかかりそうな状態だしな。」
雁夜は隣にいるバーサーカーが、プルプルプルと震えて命令通り止まっているのを見た。
「……バーサーカーのマスター。私から頼みがあります。」
「なんだ?」
「バーサーカーと戦わせてくれますか?」
「はあ!?」
「セイバー? 何を言っているの?」
「バーサーカーの、憎悪と殺意でまみれたこの魔力…、これは私に向けられているモノです。だから、確かめたい。そして、なぜこれほどに憎しみを私に向けるのか、憎しみに囚われているのか知りたい。」
「……間桐雁夜。騎士王の頼み。聞いて頂けますか?」
「………分かった。けど、ここじゃマズい。場所を変える。」
「分かったわ。行きましょう、セイバー。」
「はい。」
***
そして、雁夜は、間桐邸に二人を連れて帰ってきた。
「おかえりー、雁夜さん。あれ? お客さん?」
「雁夜おじさん、おかえりなさい。」
「ただいま……。ちょっと離れの庭の方で、一戦するから、近づくなよ。」
「ん? もしかして……。」
「ちょっとな…。」
「ところで、バーサーカーのマスター。」
「なんだ?」
「この…良い匂いはなんですか? 腹の底に響く…。」
「? カレーの匂いだけど…?」
「カレー…、なんとも魅惑な響きを感じます。」
「あ、じゃあ、戦いが終わったら、一緒に食べます?」
「おおい、ツツジぃぃ…。」
「まあ、いいのかしら? 急に押しかけたのに…。」
「たくさん作ってるから、だいじょうぶ。」
「まあ、そうなの? ありがとう。セイバー、聞いたでしょ?」
桜と目線を合わせたアイリスフィールが、セイバーの方に顔を向けて言った。
「ええ…。では、速やかに用事を終わらせ、カレーを食しましょう!」
「なんか、目的変わってないか!?」
カレーという魅惑の存在に期待を膨らませている様子のセイバーに、雁夜はたまらずツッコミを入れたのだった。
***
そして、決闘をする場所を、アーチャーによっておあちこち破壊された部分の庭にした。
「ずいぶんと、荒れてますね…。」
「アーチャーにやられたんだ。」
「アーチャーが?」
「いきなり襲撃してきたんだ。おかげで、家も一部壊された。」
雁夜は、壊された間桐邸の部分を指差した。
「色々とあったようですね……。では、始めてもいいですか?」
「ああ。バーサーカー! 戦っても良いぞ。」
その瞬間、バーサーカーがすぐに動いた。
セイバーが手にする剣と、バーサーカーが手にする剣がぶつかる。
そして両者の凄まじい剣戟がぶつかり合う。
それは、まさに英霊達にしかできない、この世ならざる戦いの光景だった。
剣戟の最中、バーサーカーが体を回転させた間際にF15の機関銃を出現させた。
セイバーは、そのスピードで、放たれてる機関銃の弾を避け、身を低くし、F15の機関銃を手にするために防御が疎かになったバーサーカーの頭部めがけて、剣を振った。
バーサーカーが後ろにのけぞり、剣を避けようとしたが、避けきれず頭を覆う兜に接触した。
ピシリッと、バーサーカーの兜に亀裂が入った。
バーサーカーは、F15の機関銃を捨て、その辺に落ちていた瓦礫の棒を拾った。瞬間、ただの瓦礫の棒に過ぎなかった物が、魔力を帯び、宝具となる。
二刀流となったバーサーカーが凄まじい攻撃をセイバーに繰り出した。
セイバーは、それを両手で握った一振りの剣で迎え撃つ。
「その武練…、さぞや名のある騎士と見込んで問わせてもらう!」
お互いにいったん距離を取った瞬間、セイバーが声をあげた。
「この私をブリテン王アルトリア・ペンドラゴンと弁えた上で、挑むのなら、騎士たるものの誇りをもって、その来歴を明かすがいい! 素性を据えてまま挑みかかるは、騙し討ちに等しいぞ!」
「ーーーーっ!! ぁぁあ……。」
「バーサーカーが…。」
セイバーの口上に反応したのか、バーサーカーが声を漏らした。
すると、バーサーカーは、剣の柄で自らの鎧の兜を砕いた。
そして現れるのは、長い黒髪。
凄まじい美貌。
しかしその美貌は、いまや、憎しみと殺意によりやつれ果てている。呪詛の果てに全てを失った、まさに生きる亡者の顔だった。
その顔を見て、セイバーは、剣を落としかけた。
「貴方は……、そんな…!」
「セイバー?」
「そんなにも、貴方は……。」
震え、崩れ落ちそうになる膝を叱咤して立ち上がる。
「そんなにも私が憎かったのか! 朋友(とも)よ……、そんな姿になり果ててまで! そうまでして私を恨むのか、サー・ランスロット!!」
バーサーカーの正体…それは、湖の騎士にして、裏切りの円卓の騎士、ランスロットだった。
「ランスロット!?」
雁夜とアイリスフィールの声が重なった。
それなら合点がいく。アーサー王たるセイバーに執着していたのも。
「ぁぁぁああ、さぁぁあ……。」
狂化により狂い、そして抱えている怨嗟によって濁った声が、セイバーの名を呼ぶ。
ビクリッと震えたセイバーは、棒立ちになった。
「セイバー? セイバー!? しっかりして!」
「バーサーカー、やめろ! 止まれ!」
「ぐぅぅぅ…。あぁぁあ、さぁぁああ…。」
棒立ちになっているセイバーに向けて剣を振ろうとしたバーサーカーが、雁夜に命じられてすんでの所で止まった。
「うぅ…うううう!」
「セイバー…。」
剣を握る手をダラリとさせ、地面に膝をつくセイバーの呻きに、アイリスフィールは心配そうに声を漏らした。
そして、まるでセイバーの涙の代わりのように、ポツポツと雨が降ってきた。
「……決闘は中止だ。バーサーカー、霊体化してろ。…家に入ろう。」
「ええ。セイバー…、行きましょう。」
「……。」
「セイバー、立つのよ。泣くのはその後でいいわ。」
「………アイリスフィール…、私は…。」
「いいからセイバー。今は雨宿りしましょう。」
「……はい。」
セイバーは、なんとか立ち上がり、アイリスフィールと共に間桐邸に入った。
腹ぺこ王の片鱗が……って感じで書きました。
でも、バーサーカーの正体を知った時の衝撃には食欲は敵わなかった……。
原作小説のように、途中で雁夜が尽きないのでセイバーがやる気無いと一方的に負けるだけなので止めさせました。
けど、このままだとバーサーカーの狂化がそのままなので、どうしようかな?