雁夜と時臣。この二人の心境状況が逆手しているのを書きたかったのと、戦闘能力の差が大きく開いてしまったことを書きたかった……。
ただの時臣のキャラ崩壊になってしまったかも。注意。
あと、感想欄で指摘があった、バーサーカーからの謝罪がなかったことについて、前半でしてます。
ジャパニーズ・DO・GE・ZA。なんて言った人はすごいと思うなぁ…っと雁夜はしみじみ思った。
目の前には、狂化が解けてるバーサーカーことランスロットがきれーーーーいに自分に向かって土下座している。
「マスター…、貴方の心の臓を我が剣で刺し貫いてしまい…、申し訳ありませんでしたああああああああああああ!!」
「いや…、あの、もう治ったし…、顔あげろよ。もういいから。」
「いいえ!! ツツジ殿に言われるまで気づかなかった私は貴方に顔向けなど!!」
実は、この土下座の図……、ツツジがふいに。
「ところで、雁夜さん、剣って言っても、サーヴァントの宝具に心臓刺されてたけど、だいじょうぶ?」
って言ったことから、ハッとしたバーサーカーが、残像が見えるほどのスピードで披露したものだ。
「だから、もういいって。俺、怒ってないからさぁ。」
「いいえ! いいえ!」
「だー、もう! 令呪使ったろうか!?」
「おじさん、さすがにそれはもったいないと思う。」
「いいえ! いっそ令呪をもって私を罰してください! 私を狗以下の存在と詰ってください!」
「おまえ、全力で、ガチでそういうことを言うな! なんか俺が変な性癖のある奴みたいになる!」
「あの~、アーサー王様…、元忠臣の人がこんな状態ですけど、どう思われます?」
「……言葉が…見つからない。」
「セイバー…。」
ツツジから聞かれ、別の意味でうまく言葉が出ないでいるセイバーに、アイリスフィールが同情のまなざしを向けた。
***
その後、しばらくして、セイバーとアイリスフィールが帰って行った。
「ん? おまえ、なんで狂化してんだ!?」
二人を見送った後、隣にいたバーサーカーを見たら、また黒い魔力を纏って兜をしっかりと被った状態…、まあつまり狂化状態に戻ったバーサーカーがいた。
しかし、バーサーカーは、身振り手振りで何か伝えようとしてくる。
すると、なぜだか。
「は? この方がステータスがグンッと上がるから…って…、なんで解るんだ、俺!?」
「うーん。ってことは、狂化の呪いが完全に解けたわけじゃなかったのかもね。」
「すっごく強引に解いたもんね。」
「うっ!」
あんなやり方で強引に解いたのが、こんな形で残るとは思わず、言われて雁夜は呻いた。
狂化を操れるようなったなら、それはもうバーサーカークラスと言えるのか?っとは言えない…。
「まあ、バーサーカーとしては、さっさと私達の戦いを終わらせて、セイバーさんに罰してもらいたいんだろうけど。」
「……そう思ってんのか? えっ、違う? まあ、確かに…、あのアーチャーに対抗するためには、狂化によるステータスアップは必須だけど、いいのか? は? いいって? んー、じゃあ、頼むわ。」
「あ、違うんだ。じゃあ、よろしくね。」
「バーサーカー、これからもよろしくね。」
二人からよろしくと言われ、バーサーカーは、コクリッと頷いた。
……これじゃあどっちがマスターなんだか…っと、雁夜はちょっとだけ思った。
その時。
「!?」
強烈な敵意の“匂い”を感じ取った。距離はある。だがそれが近づいている。
「ツツジ!」
「匂うね!」
「?」
匂いとして物事を感じ取れるようなっている雁夜とツツジに対して、そういうことができない桜はキョトンッとした。
二人の様子に反応したバーサーカーが臨戦態勢になる。
「ツツジ! 桜ちゃんを避難させろ!」
「……空…。空から来る!」
「分かってる! 早く行け!」
雁夜がバーサーカーを連れて走った。
そして雁夜とバーサーカーは、かつてアーチャーを迎え撃った壊れた庭の方へ行った。
すると、雁夜とバーサーカーを大きな陰が覆った。
「来てやったぞ。ゲテモノと狂犬。」
それは、舟だった。
黄金とエメラルドで形成された、この世ならざる代物だった。
その舟の船首に片足を乗せ、自分達を見おろしているのは、アーチャーだ。舟に負けないほど、その美貌と黄金の鎧が輝いて見える。ハッキリ言って趣味が悪いように思えるが、これほど美しい存在の持ち物ならばなんとなく納得がいってしまえるのだから不思議だ。
アーチャーが降りてくる前、アーチャーの後ろの方の下にあった物を左手で掴んで、それと共に飛び降りてきた。
「時臣!?」
アーチャーが掴んでいたのは、時臣だった。後ろの襟首を掴まれている。
パッと手を離され、尻餅をついた時臣は、ゆらりと立ち上がった。
幽鬼を思わせる、なにやら不穏な気配に雁夜は、思わず息をのんだ。
すると、時臣が手にしていた杖をいきなり雁夜に向け、方陣を発動し、火炎を発生させて放った。
「なっ!?」
驚く雁夜。するとバーサーカーが盾となり、火炎を防いだ。
「おい、時臣。今回は、ゲテモノの相手は貴様に譲ってやろう。我は暇つぶしにでも、狂犬の相手だけはしてやる。」
「…ありがたきお言葉。」
「おい、時臣? どうした、お前…?」
俯いていた時臣がやがて顔をあげた。
その顔は、やつれているように見え、その目にも暗い影がさしている。
優雅さを家訓としていた彼からは想像も出来ない。憎しみや絶望でやつれたような……、そんな顔だ。
そんな時臣の変わりように、雁夜は一瞬引いた。
「……貴様が…。」
「はっ?」
「貴様がすべてを狂わせたのだ、雁夜!!」
優雅さとはかけ離れた叫びと同時に、虚空に描かれた攻撃の魔方陣から凄まじい炎が発生した。
バーサーカーが前に出る。
すると、アーチャーが時臣の後ろから王の財宝を発動した、鎖を出してバーサーカーの腕に絡めて引っ張り、そのままアーチャーの後ろの方へ放り投げた。
「バーサーカー!」
「雁夜ぁぁぁああああああああああああ!!」
「!?」
火炎を纏った杖を手に、時臣が雁夜に向かって突撃してきた。
すんでの所で、雁夜は、炎の杖を躱したが、服に僅かに炎が着火した。
「っつ! てめ、時臣!」
「ガント!」
「うわっ!」
パンパンと炎を払うと、直後無数の宝石が、魔力を纏って弾丸のように飛んできたのでこれも躱す。
距離を取ろうとすると、時臣が執念の塊のようなって距離を詰めてくる。しかし、身体能力が寄生虫バオーにより強化され、普段の姿でも武装現象が表面化しだした雁夜の身体能力にはついていけず、やがて距離が空く。
「話を聞けよ! おい!」
「死ね!!」
ゴウッと炎が勢いを増し、瞬時に虚空と足元に描かれた方陣が強く輝いた。
デカい一撃が来ると感じた雁夜は、背後の間桐邸から離れるため、横に移動した。すると炎を発生させ続けかき集めていた時臣の体も、釣られて雁夜の方を向く。
「時臣! てめぇには、聞きたいことがあるんだ! なんで桜ちゃんを間桐に養子に出した!?」
「死ね…、死ね死ね、死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね!! 雁夜ぁぁあああ!!」
「おい、聞けよ!!」
時臣は、聞かず、憎しみを込めて魔術の詠唱を続け、やがて巨大な炎の蛇のようなモノが雁夜に向かってきた。
雁夜は、走り、間桐邸に炎が行かないよう移動しつつ、時臣に向かって行った。
しかし炎の蛇のスピードは早く、やがて雁夜を飲み込んだ。
「ふ…、フフ、フハハハハハハハ!!」
炎に飲まれて姿を消した雁夜を見て、時臣が狂ったように笑った。
直後。ボンッと炎の中から、無傷の雁夜が飛び出し、時臣に飛びかかろうとした
すると事前に時臣がかけていた、防御陣が発動し、炎の壁が発生するが、そんな炎など構わず雁夜は、飛び込むように跳び、体勢を整えて、ドロップキックを時臣に食らわした。
「聞け、っつってんだろうが!!」
キックをくらったせいか、炎が消え、吹っ飛んで倒れる時臣に向かって雁夜が怒鳴った。
倒れていた時臣がゆらりと立ち上がる。しかし、さっきの一撃が効いたのか、ガクッと片膝をついた。
「時臣、悪いが、おまえじゃ俺には勝てないぞ!」
雁夜は、時臣からの攻撃や、先ほどのドロップキックで確信した。自分と時臣との戦闘能力の差を。そして拳を握って開いて、実感した。バオーの力。これがいつも自分を支配していた時に発揮されていた、寄生虫バオーがもたらした力なのだと。
「か、り…や…!!」
「動くな、時臣!」
「桜は……、かえして…もら…う、ぞ!!」
「それは出来ない!!」
「かり、やああああああああああああ!!」
再び時臣が炎を発生させた。だが、勢いが先ほどより若干弱い。
「桜ちゃんは、お前のところには帰らないって言ってんだよ!!」
「嘘…だ…。」
「本当だ! むしろお前を憎んでる! 間桐に養子に出されたことをな!!」
「嘘だ、嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ、嘘をつくなぁぁぁぁあああああああああああああああ!!」
「てめぇは生かして捕まえる! それが約束だからな!! それで罰を受けろ! 桜ちゃんが受けた、痛みと屈辱をその身をもって!!」
「雁夜ああああああああああああああああああ!!」
「ときお…、っ!?」
炎が放たれる直後、遠くから投擲されてきた黒鍵が、雁夜の背中に刺さった。
炎が雁夜を包むが、それを身を振って払う。
黒鍵を筋肉の萎縮で強引に抜いて前を見ると……。
「お前…!」
そこにいたのは、言峰綺礼だった。
ぐったりとしている時臣を抱えて、アーチャーの方に行き、アーチャーの舟に飛び乗った。
「待て!」
「待てと言われて、待つ奴はおろんわ。」
アーチャーは、鎖で全身をこれでもかと、がんじがらめにされているバーサーカーを残して、自身も舟に乗った。
そして舟が浮き上がり、空へと猛スピードで飛んでいった。
「っ…、くそっ!!」
舟が去った後、悪態を吐きながら、雁夜はバーサーカーを拘束している鎖からバーサーカーを解放するため、バーサーカーの傍に走ったのだった。
バーサーカーを拘束している鎖をひとつずつ千切りながら、雁夜は考えた。
「……桜ちゃんに、なんて言って伝えたら良いんだよ…?」
時臣のあの変わりようをどう伝えるか…、悩んだのだった。
結局、強引なやり方で狂化を解いたけど、完全には解けていなかったという風にしました。自分の意思で狂化を解いたりできるようなったという、バーサーカークラスとしては、それどうなの?って感じにしました。
……すみません。単純に、バーサーカーの本来のしゃべりが小難しいので、喋らさない方が楽だったからです。
時臣は、やることなすことが上手くいかないことを雁夜のせいにして、逆恨みをしています。
アーチャーも綺礼も、時臣が雁夜に負けることは見越していました。そのため落ち着いてたし、死なない程度か、あるいは拘束されそうになるまで傍観に徹していました。
時臣の炎の魔術がどの程度強いのか分からなかったので、この程度にしてますが、もし、もっと強いのなら書き換えも検討します。でも…、バオー化を制御しつつある雁夜に負けるけどね。