もしも、SS16『偽善』で、ツツジがソラウを助けるなどの手を出さなかったら?というIFのIF?
ランサーこと、ディルムッドが復讐の悪鬼と化し、汚染された聖杯に選ばれてしまい令呪を与えられた子士郎をマスターにする話。
匂いで、知っていながら助けに行かなかったことを後悔するツツジ。
一応回収していたソラウの右手を悪鬼と化したディルムッドに見せ……?
ディル→子士郎? オチ無し。
士郎は、名前すら出てない。
そもそも、士郎でやる意味あったのか?って感じです。注意。
鬼。
意味合いは、様々だが、大体の場合、あまり良い意味を持たない。
頭に角がある架空の妖怪として描かれることが多く、生まれながらにそうであるとか……、時に地獄において罪人を裁く側である場合もある。
この島国において、鬼とは、良い意味を持たない。
その理由のひとつとして、人に対して略奪を行うとか、人を食らうとか……。
そして……、人間が強すぎる憎しみで変化してしまった姿だともされるからだ。
この島国で、四回目となる、英霊、あるいはサーヴァントと呼ばれる、伝説上の強力な魂達を呼び寄せ、殺し合わせる儀式が行われている。
そこに、ランサークラスと呼ばれる、槍を操る騎士のサーヴァントがいた。
彼の真名は、ディルムッド。
ケルト神話に描かれる、フィオナの騎士団の随一の戦士である。
しかし、彼は、異性を魅了してしまう呪いを持っており、それゆえに異性をめぐる争いの末に見捨てられて死んだという話が残っている。
生前、つまり英霊の座に座る前の不義と後悔の念により、主(マスター)に仕え、忠義を果たすことを目的にこの聖杯戦争と呼ばれる儀式に参じたのだ。
ディルムッドには、聖杯に託す祈りはない。だが、彼の目的を達するためには、聖杯は不可欠という矛盾を抱えていた。
そして、その矛盾と、マスターとその婚約者の間に走ってしまった亀裂は、最悪の形でディルムッドを敗走させる形になってしまった。
ディルムッドの魔貌に魅了されてしまった、マスター・ケイネスの婚約者ソラウが、切嗣との戦いの末に下半身不全となってしまったケイネスから強奪する形で、ランサーとを繋ぐ令呪を自分自身に移してしまったのだ。それまでは、令呪を分割して管理することで、聖杯戦争を戦い抜こうとしたケイネスの策により、半分だけがソラウにあったが、すべての令呪を一度にソラウが奪った。ちなみに、その後、新たな令呪を教会の聖杯戦争の管理者からもらい受けたケイネス。
結果、ソラウは、切嗣の策略により令呪を刻んでいた右手を切り離され、意識のないまま人質にされて、ケイネスは切嗣の要求に従い、令呪を全て使い、ディルムッドを自害させたのだ。
切嗣は、聖杯戦争の勝者となるため、完全無欠な形で勝利を収めようとしたのだ。その結果が…、どのようなことをもたらすかも知らず、まさかそんなことになるなどとは考えず……。
「貴様らは…、そんなにも……。
そんなにも勝ちたいか!?
そうまでして聖杯が欲しいか!?
この俺がたったひとつ懐いた祈りさえ、踏みにじって、貴様らは!
何ひとつ恥じないというのか!?
赦さん!!
断じて貴様らは、赦さん!!
名利に憑かれ、騎士の誇りを貶めた亡者ども!
その夢を我が血で穢すがいい!
聖杯に呪いあれ!
その願望に災いあれ!!
いつか地獄の釜に落ちながら、このディルムッドの怒りを思い出せ!」
美しい顔を憎悪に歪め、血涙とともに、吐き出された呪詛。
それは、彼を“鬼”へと変えるには十分すぎた。
令呪の強制力により、自らの誇りである槍で、自らの手で自らの心臓を貫かされた神話の英霊は、このときをもって、堕ちた……。
***
「っ……。」
ツツジは、庭にこっそりと埋めようとした、ソラウの右手を見つめた。
綺麗な手。若い女性の手。その手の甲に、まるで呪いのように刻まれた令呪。
魔術師ではない、ツツジにはどうすることもできない、ただの宝の持ち腐れでしかないモノ。
ツツジがソラウの手を拾ったのは、気まぐれだった。
すぐ近くに連れて行かれる瀕死のソラウがいた。
だが、何もしなかった。
匂いで、感じていた。
ランサー達がいかなる形で、残酷な最後を迎えたかを。
マスターたる二人の魔術師がいなくなり、その跡地に、誰もいなくなったあと、朝の夜明けと共に、一人の悪鬼が現れたのを。
だが、感じていただけで……、ツツジは何もしなかった。
何か行動を起こしていれば、あの結末を変えることは、少しは出来たかも知れない…。だがそれは、魔術師ではないツツジが手を出していいことではない。だから何もしなかった。見ない振りをしていた。
そして、見ない振りをして、隠すように拾ったソラウの右手をこっそりと埋めて葬ろうとした。
匂いで感じた。
悪鬼となった、かつての英霊は、新たなマスターを得て、動き出そうとしているのを。
その新たなマスターが、純粋無垢、桜と同じぐらいの歳の子であることも。
放っておけば……、まず間違いなく、バーサーカーを抱えているこちらにも被害は多少なり出るだろう。
まだ、雁夜は気づいていない。彼は、まだ成長の途中過程だ。だからツツジほど匂いを感じていない。
ツツジは、ハンカチでソラウの右手を包み直し、懐にしまって音もなく間桐邸から出た。
***
ディルムッドは、夜の闇に紛れ、幼い新たなマスターを腕に抱えて移動しようとして立ち止まった。
走り抜けようとした道の先には、凜々しい顔立ちをした……少年、いや、少女がいた。
時間帯的にも、十代中頃の少女が出歩く時間じゃない。
もちろん……、ディルムッドが十にもならない幼い少年を抱えて戦いに行こうとするのもおかしい。
「ランサー…さん。ですね?」
自身の召喚された時のクラスを、少年のような少女にしては少し低めの声で言われ、眼前にいる少女がただ少女でないことをすぐに察した。
つい最近、自身の心臓を貫いていた赤い槍を握り、もう片腕で抱えている少年を抱え直して、ディルムッドは、眼前にいる少女を睨んだ。
相手の少女は、辛そうに、眉を寄せた。
「気づいてないの?」
小首を傾げ、少し悲しそうに聞く。
「…なんのことだ?」
思わず問い返した。
「気づいてないんだね。その顔……。すごく酷い。」
「それが…、どうした?」
「よく、その子に怖がられなかったなぁ、って思って。」
少女は、ディルムッドが抱えている、意識のない幼い少年を指差した。
「……俺の新たなるマスターは、快諾してくれたのだ。」
ディルムッドは、夜の闇に隠れている顔をうっとりと、歪めた。
「あの憎き怨敵の首級を取るために…、俺はここで立ち止まるわけにはいかない。娘、そこをどいてくれ。」
すると、少女は首を横に振った。
「こうしている間にも、あの怨敵は、誇りを踏みにじり、その穢れた手で、今なお聖杯を求めているだろう。あの怨敵に聖杯を手にさせてはならない。」
「知ってる。あなたが、どんな風に殺されて…、そんな有様になったのか、全部…。」
「知っている? ならば、なおのこと、道を譲ってもらいたいな。」
「これ。」
すると、少女は懐から血濡れたハンカチにくるまった何かを取り出し、ハンカチを取った。
それを見た時、ディルムッドの目が大きく見開かれた。
「それは!」
「拾ったの。」
それは、ディルムッドにとって、忘れようもない令呪。女の手。
「ねえ、無駄だって分からないかなぁ? 貴方が怨敵と定めた敵を倒しても、貴方は永遠に報われないってこと。」
「それを…、渡せ…。」
ディルムッドの声色が恐ろしい響きのあるモノに変化した。
「貴方にとっての、前のマスターとの関係については、私は、知らない。けど、そんな小さな子をマスターにしてまで戦いたい?」
「返せ……。」
ディルムッドが、ジリッと少女に近寄った。
「何かの意図を感じない? それとも、もう……、そんなことも分からないほど壊れちゃった?」
「が、え…せええええええええええええええええええ!!」
ゴウッとディルムッドが、槍を突き出して突進してきた。
そのスピードは、普通の人間では決して避けられないほどだ。
だが、少女は、諦めたように目を閉じ、ヒラリッと横へずれて突進を避けた。
避けた直後、少女は、ディルムッドのもう片腕から、幼いマスターを奪い取った。
「なっ!?」
「隙だらけだよ。そんなんじゃ…、怨敵には勝てない。」
少女は、幼いマスターを抱きかかえ、ディルムッドから離れ、塀の上へ跳躍し、家へ屋根へ跳んで走った。
「待てぇぇぇぇぇぇぇええええええええええええええええええ!!」
少女は、後ろから、かつて美しい騎士にして、この聖杯戦争に呼ばれた伝説上の英雄達の魂から、悪霊…悪鬼と化してしまった英霊・ディルムッドが追いかけてきても、恐れることなくディルムッドの新しい小さなマスターの少年を抱えたまま跳んで、跳ねて、走った。
永遠に続くような凄まじい追いかけっこは、やがて終わりを告げる。
「ここだよ。」
とある土蔵の近くに着地した時……。
「ランサー!?」
「ぁ…、あぁぁぁぁああああああああああああああああああ、せい、ばぁぁぁぁぁ!!」
土蔵の出入り口を守っていたセイバーを見て、ディルムッドが咆吼する。
セイバーは、戦慄した。
かつて、魔貌とまで言わしめるほど美しかった顔を凄まじすぎる憎悪で歪ませ、血涙のあとを生々しく残し、目を赤く血走らせたディルムッドの有様に。
「セイバー?」
すると、土蔵から、衛宮切嗣が姿を現わした。
すると、ディルムッドがピタッといったん止まった。
「は…、ハハハハハハハハハハハハ!! 見つけた、見つけた、みつけたああああああああああああ!!」
切嗣を認識したディルムッドは、今度は狂ったように笑い出した。
「…ら、ランサー…だと? 馬鹿な…。」
「ねえ、貴方。」
「はっ?」
土蔵の横に立っている少女に声をかけられ、そちらを見た切嗣。
直後、セイバーが動き、切嗣に襲いかかろうとしたディルムッドを剣で止めた。
「コレ……、貴方のせいだからね?」
「なにを…。」
少女は、ディルムッドの新しいマスターを片腕で抱えたまま、もう片手を伸ばして、ディルムッドを指差した。
「始末は、ちゃんとしなきゃ……、貴方はもっと酷いことをすることになるよ?」
「君は…、なにを…。」
「だから、ちゃんと後始末はして。」
その直後、カランッと音が鳴った。
「あ…。」
見ると、いつの間にか目を覚ましていた幼いマスターが、何かをディルムッドの方に投げたらしい体勢になっていた。
「それは!?」
セイバーが、見覚えのあるソレを見て、驚いた。
「おお…、おおおおお! 我がマスターよ!!」
ディルムッドが飛びつくように、ソレを拾い上げ、手で確かめ、しっかりと握った。
それは、キャスターを倒すため、セイバーの左腕の呪いを解くために自らが折った、ゲイ・ボウだった。だがよーく見ると、微妙に本物とは違う。なぜなら、この槍は、何者かの意思に動かされ、知識を与えられた幼いマスターの少年が創り出した模造品なのだから。
だが、そこに宿る力は、本物とさほど変わらない。違うのだとしたら、槍を創った少年が本物を見たことがなかったために、微妙に形が創作となってしまった部分だけだろう。
「……ホントに…、後始末はちゃんとしてよ。」
これから始まる泥沼の戦いを思い…、少女・ツツジは、辛そうに目を閉じた。
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※オチはない
pixivで、ディルムッドを従える士郎の話見て、自分で書きたくなったのに……、なぜこうなったのか、分からない。(自分で書いといて)
結局、ツツジもなにがしたかったのか分からない…。悪霊(悪鬼)化したランサーという後始末をちゃんとしろと、切嗣のところに持ってきて始末を付けさせようとしたら、聖杯を汚染しているアンリマユに投影魔術の知恵を与えられ、夢遊病みたいな状態で操られた子士郎が、セイバーを苦しめた呪いの槍ゲイ・ボウを復活させてしまったため、セイバーが倒させる可能性が浮上して、あ、やべ…ってなってしまったみたいな…。
なんだ、コレ…?
最初は、ツツジが偽善を発揮しなかったら、ランサーが原作通り呪詛を残して死んだことを後悔する話だったのに……。