Fate/zero×バオー来訪者 ネタ   作:蜜柑ブタ

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バーサーカーのことを素で忘れてた雁夜おじさんがいます。注意。


SS4  従順

 間桐の屋敷の縁側に雁夜は座っていた。

 ツツジから告げられた事を考えていたのだ。

 間桐の蟲とは全く異なる寄生虫バオーなるもの。

 それを作ったドレスという闇組織。

 ドレスにバオーを寄生された(というか寄生させられた)自分の存在がバレれば、自分の命のみならず、身近にいる人間も危険だということ。

 ツツジが言っていた寄生虫バオーのことは、まだよく分からないし、蟲蔵と間桐臓現を自分が破壊し、殺したという実感も無い。

 ツツジは、己のことと話そうとしないし、名前だって偽名の可能性がある。

 表面上は、ドレスを潰すことに協力する代わりに、桜の身の安全を守るってもらうと約束したが……。

 

「……勢いで言ったが、あいつにそんなことできるのか?」

 

 よく分からないが体を治してもらったらしいし、桜から聞いた話によると、臓現を殺す直後に蟲蔵から桜を脱出させたのはツツジらしい。

 そもそも、寄生虫バオーという異種を扱っているのだ。おそらく素人ではないだろう。そして、どれほどの規模なのかは不明だが、秘密機関ドレスを滅ぼすと言っていたあの顔も声も本気だと感じ取れた。

 その問題のツツジは、今、桜と一緒に食事を作りに台所に行っている。さっきから、ほんのりと、和食特有の出汁と醤油の匂いが小さな風に乗って鼻をくすぐる。

 ……まともな食事を摂るのは、いつぶりだろう?

 ここ数ヶ月、まともな食事を取れた記憶がない。だが生きていた。いや、ギリギリの状態で生かされていた。

 前は、吐き気はあれど、食欲が湧くことはなくなっていた。だが、今は体が治ったおかげか、匂いを嗅いだだけで口の中に唾が湧いてくる。

 献立はなんだろう?っと少し胸を躍らせていた雁夜は、ふと気づいた。

 

 なんか……、黒いモヤがいつのまにか自分の横にいる。

 

「!?」

 まさか襲撃か!? それとも臓現がまだ生きていたか!?っと身構えて横を見て、雁夜は、すべてを思い出した。

 

 バーサーカー。

 己が喚んだ、サーヴァント。

 黒い鎧を全身にまとった、狂戦士。

 

「あ…。」

 なぜ忘れた。っと雁夜は、アホな自分を恥じた。

 しかし、すぐに異常に気づく。

 バーサーカーは、その特製故に、狂化によってステータスを大幅に強化された代わりに、理性などをを奪われている。

 つまり、戦闘に特化しており、大人しくさせるのはよっぽどの魔術師でないとできない。即席の魔術師である雁夜には、制御が困難だったはずだ。

 そんなバーサーカーが、なぜか自分の横で、実体化せず大人しくしている。

 あと、急激に吸われていた魔力の感触もない。体調は相変わらずすこぶる良い感じだ。

 まさか…っと思いつつ、雁夜は、バーサーカーに命令した。

「姿を見せろ。」

 すると、黒いモヤのような姿だったバーサーカーが庭の方に移動し、忽ち黒い騎士の姿になって雁夜の前に跪いた。

 その形になりすぎてるくらいの美しい跪きに、雁夜は、ポッカーンとしていた。

 

「わっ、なんかいる。」

「あれが、サーヴァントだよ。」

 

 そこへ、ツツジと桜がやってきた。

「おじさん。ごはんできたよ。」

「あ、ああ…。」

「へ~、それが噂で聞いたサーヴァント…英霊か。すごく禍々しいけど?」

「そりゃ、バーサーカークラスだからな。」

「強いの?」

「ああ。バーサーカーは、サーヴァントでももっとも強いんだ。狂化のおかげで、すべてのステータスが高くなってて。」

「その代わり、マスター殺しって言われるほど燃費が悪いの…。」

「へ~。じゃあ、雁夜さん、だいじょうぶ?」

「ああ…。おかしいぐらいなんともないんだ。これもバオーの力なのか?」

「違うと思う。でも、雁夜さんを支える生命力を与えているのはバオーだよ。」

「そのバオーだが…、そもそもそれが俺の体を治したんだよな?」

「そうだよ。」

「……あのジジイを殺す力をどこから出してる? どうすれば扱える?」

「それは…。」

「ねえ。ご飯冷めちゃう。」

「えっ? ああ、そうね。雁夜さん、食卓に行きましょう。」

「分かった。バーサーカー。消えてろ。」

 実体化していたバーサーカーに命じて、バーサーカーが消えてから、雁夜は、二人と共に食卓に行った。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 白ご飯、鶏の照り焼き、ほうれん草のおひたし、味噌汁…。

 普通の食事が食卓に並んでいる。

 手を合せて、久しぶりに食べた固形物を噛みしめ、味わって、飲み込んで雁夜は思わず涙ぐんだ。

「美味しくなかった?」

「ち、違うんだ…。すごく美味しいよ。美味しくって…。」

 少し心配そうに言う桜に、雁夜は涙を手の甲で拭って慌てて言ったのだった。

「おじさん…。ずっとお粥しか食べれてなかったから…。」

「ほとんど全部桜ちゃんが作ったんだよ。」

「そうなのか? 美味しいよ、桜ちゃん。」

「……ありがとう。」

 桜が小さく照れくさそうに微かに頬を染めて微笑んだのだった。

 雁夜は、桜のその表情の変化に驚き、そしてダーッと泣き出した。

「ちょっ、雁夜さん!?」

「桜ちゃんが…桜ちゃんが……!」

「分かった、分かったから、とりあえず、ご飯冷めるから先に食べよう、ね?」

「うう…。美味しい美味しい…ちょっとしょっぱい…。」

「それ涙のせい。」

 ツツジにツッコまれつつ、泣きまくりながら、美味しい美味しいとご飯を食べ続ける雁夜であった。

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 お腹がいっぱいになり、そして泣き止んだ雁夜は、色々と試したいと言って庭に出た。

 ツツジと桜に見守れながら、姿を消しているバーサーカーを呼び出す。

 あっという間に姿を現わした黒い騎士は、雁夜の前に現れると、またも美しく形になりすぎている跪きを見せた。

 その姿だけで、『さあ、命令を…』っと言っているように見えるぐらいだ。

 バーサーカークラスとは、こんなにも従順だったか?っと首を捻りつつ、色々と命じてみる。

 言葉を喋ることは出来ないが、例えば近くにあった植木を切れとか、足元にある小石を拾えとか、投げたモノを持ってこさせるとか……、犬猫じみた簡単な命令はしっかりと聞いて実行してくれた。

「……なんか、犬みたい。」

「それを言うな。」

 っと、率直に言ってのけるツツジに、雁夜がそう返した。

 雁夜は、バーサーカーに視線を戻し、顎に手を当てて考える。

 これだけ従順なバーサーカー…、そしてこれだけバーサーカーを動かしてても魔力を消耗しているという感覚がない。

 それもこれも全ては、ツツジに寄生させられた寄生虫バオーによるものだろうか?

「……分からん。」

「雁夜さんが分からないことは、私にも分からないよ。」

「ツツジには、聞いてない。」

「おじさん。魔力回路が開いてるんじゃないの?」

 そこに助け船。まさかの桜である。

 言われて雁夜は、ハッとした。

 確かに自分は、一応はこの間桐の家を継ぐ権利を持っていたうちの一人だ。

 実際、桜を解放する取引として、自分の間桐の血肉を提示したのだ。修行こそしていないが、閉じていた回路が寄生虫バオーのおかげで開いたのなら、つじつまが合うかもしれない。

「寄生虫バオーは、宿主に危険が迫れば助けてくれるよ。」

「それは、人間の潜在能力も引き出すことができるってことか?」

「たぶん。筋肉や骨を異常に強化して、怪我も回復できるから。もしかしたらその魔力回路っていうのも活性化させた可能性は高いよ。そもそも私は、魔術師については何も知らないから、桜ちゃんの方が詳しい?」

「うん。」

「そういえば、聞いてなかったな。どうすれば、あのジジイを殺したり、蟲蔵を破壊する力を使えるんだ?」

「それは……、今の状態じゃ、ピンチになるほど怪我しないと使えないかも。」

「なんだそりゃ。」

「バオーは、まだあなたの中に住み着いたばかり。日が経てば経つほど、バオーの力はあなたに浸透していく。時間が経てば経つほど強くなる。そのジジイって人と、あの蔵を壊したことを雁夜さんが覚えてないのは、バオーが雁夜さんの意識を完全に乗っ取ってたから。あなたの代わりに、“敵”を排除するために動いたから。」

「つまり…、俺の意思じゃその力を使えないってことか?」

「時間が経てば、自分の意思で使えるようなるはずだよ。それまで少し辛抱して。」

 ツツジは、そう答えた。

 雁夜は、歯がみした。自分の意思であのおぞましい老人を殺したという手応えや記憶が無いのは、惜しかったが、自分の意思でやるよりも“人間ではない”寄生虫バオーの意思でやった方がよっぽど良かったのかもしれない。なぜな、人間でないものには、人間でないものをぶつけた方がよっぽどいいだろうから……。

 だが……。

「俺は……、人間じゃなくなったってことだな…。はは…ハハハハ。」

 あれほど妖怪だのと罵ってきた老人をも越える力を望まず(?)に手にしてしまったのだ。

 あれほど嫌っていた魔術師になるよりも恐ろしくおぞましいことではないか。

「おじさん。」

「…桜ちゃん。おじさん、もう人間じゃないんだってさ。」

 いつの間にか自分の傍に来ていた桜から離れようと雁夜が動こうとした。

 すると、桜は手を伸ばし、雁夜の服の端を握った。

「桜ちゃん…。触っちゃダメだ。おじさん、人間じゃないんだぞ?」

「……。」

「桜ちゃん。桜ちゃんは、帰るんだ。あの家に…、葵さんのところ…、っ?」

 そう言っていた雁夜だったが、桜は、俯き首を横に振っていた。

「桜ちゃん? どうしたんだい? まさか…、帰りたくないなんてこと…。」

「いっしょがいい……。」

「えっ?」

「おじさんと……いっしょがいい…。」

「だ、だから、桜ちゃん…、おじさんは…。」

「それでも、いい。」

 桜は、そう言って雁夜の服を握る力を強くし、顔を上げた。

「桜ちゃん…?」

「おじさんも…私を捨てるの?」

「そんなことない! そんなことするはずがないじゃないか! 何を言ってるんだ!?」

「じゃあ…離れないで…。」

「桜ちゃん…。」

 桜が微かに震えていることに気づいた雁夜は、膝を折って、桜の小さな体を抱きしめた。

 

 

「……あなたは、どう思う? って答えられないんだよね?」

 ツツジは、黙って二人の様子を眺めているバーサーカーに問いかけたが、答えは返ってこなかった。




なんとなく、現段階で、すでに桜の中のヒエラルキーの上位は、雁夜おじさんです。
桜→雁夜?

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