【再建中】気まぐれビルダーのコメディ風、~剣神の記憶を添えて~ 作:シイナ リオ
いつもの戦い。
敵はトゲわなだらけの道を進んで傷つき、火を噴く像で焼かれ、
それをロロンドのおっさんたちが攻撃して倒す。
そんな倒される捨て駒を扱う上の奴らをゲレゲレに乗るピリンが倒す。
そして俺が敵の大将と一騎打ちでトドメを刺す。
いつも通りでありながら、最近は頻繁にくるようになった。
「……しかし、こうして攻めてくるって事は竜王軍も焦ってきているってことか」
ゆきのへのおっさんが腕を組みながら呟く。
「竜王が世界を牛耳って数百年……人間が巻き返しを図るチャンスかもしれん。
ビルドよ……もうそろそろこのメルキドにかかった空の闇を晴らすために、メルキドを支配する魔物の親玉を倒す準備を進めてもいい頃かもしれねぇぞ」
「親玉を……? でもどうやって? ただでさえ、あの巨大なストーンマン相手には歯が立たないのにか?」
「実はな、ワシが先祖から伝え聞いた『神鉄炉と金床』なる究極の炉がある。
その炉があれば『鋼』を加工し、強力な武器や防具が作れるはずなのだ」
「その話、僕からも良いでしょうか?」
ケッパーが会話に入ってくる。
「ケッパー?」
「戦いに備えて衣裳部屋に武器や防具などを揃えて欲しいんです」
「うーん、ならもう一つ衣裳部屋を作って、そこに装備を揃えよう。
武器や防具はゆきのへのおっさんが言う『神鉄炉と金床』で作った物を設置する」
「……強い武器か……お前さん、おおきづちの里の奥にある壊れた城塞に行ったことがあるってな」
「ああ、シェルターだろ」
「僕も一緒に行きました」
「聞くところではワシの先祖のひとりもあの城塞の中で暮らしていたらしくてな。
なんでもあの城塞の中では人間同士が争いを繰り広げていたらしい……。
お互いがお互いを信じられなくなり、やがては自分たちが作った武器を取り合って……」
「……だから、あんな死体だらけになったんですね……」
魔物じゃなくて、マモノがいるって言っていたのか……
「そんな人間をみて、メルキドの守り神だったゴーレムはどう思っただろうな。
ひょっとすると、そのあたりにメルキドの守り神だったはずのゴーレムが、メルキドを滅ぼした理由があるのかもしれん……」
「メルキドについていたという巨大なゴーレムの守り神が……?
かつてのメルキドの兵士たちがメルキドの町を守り切れなかったのはもしかして……」
ケッパーの頬に少し嫌な汗がツゥっと流れる。
……でもおかしな話だな。
シェルターに人々が逃げた時にはゴーレムがついて来たのに、なぜその後にメルキドが滅んだんだ?
……当時のメルキドにゴーレムがいるならシェルターに逃げる必要はなかった筈。
そしてシェルターへゴーレムを連れていく必要もなかったんじゃないか?
……いや、最初は本当に竜王軍によってメルキドは滅びかけたのだろう。
ゴーレムを連れてシェルターを作り、いつしか疑心暗鬼になった人々のシェルターにガンダルは訪れ、危険を感じてシェルターから出て行った。
その後、最後に人々はお互いを傷つけ合い、それに怒りを覚えたゴーレムによって滅ぼされたのだろうか……?
そんな事を考えながら俺達は『神鉄炉と金床』を完成させ、多くの武器と防具の生産、そして武器庫を作り出しているとロッシが訪れた。
「『神鉄炉と金床』か……とうとうこんなものまで作っちまったか……まぁ良い。
ビルド、お前に頼みたいことがある。
ここにオレが書いた遠くまで見渡せる見張り台の設計図がある。
この見張り台を設計図通りに作ってほしいんだ」
「ならこの専用に作った武器庫の屋根に作ろう」
この武器庫はいつも魔物が攻めてくる方向入り口付近に作っている。
簡単に言えば窪地にあるメルキドを蓋するよう1階に作っているんだが、(町自体は地下1階状態)
それより上なら見晴らしが良いだろう。
「ところで見張り台で魔物を監視してくれるのか?」
「ああ、そうだ……この町に“あいつ”が来たら、直ぐにここから逃げ出せるようにな。
……ゆきのへに聞いただろ? メルキドは守り神だったゴーレムに滅ぼされたんだって。
このメルキドで人間が栄えたら、必ずゴーレムがきて、全てを破壊する……。
オレはガキの頃からずーっとこの話を伝え聞いてきたんだ!
ビルド……ロロンドが言ってたぜ。
このメルキドを本当に解放するには、ここを支配する魔物の親玉を倒す必要があるって」
「……ゴーレムの事だな……?」
「ああ、間違いねぇ……その魔物の親玉こそ、メルキドの守り神である巨大なゴーレムさ!
もう、いつゴーレムが来てもおかしくねぇ。
オレたち人間じゃゴーレムには勝てねえぜ。
ビルド……悪いことは言わねぇ。 お前もいつでも逃げれるように準備しておけよ!」
「いいや、俺は戦う。
だって、例えデカいゴーレムだろうと倒さなきゃ、このメルキドの平和は戻らないんだろ?」
「ビルド……」
ロッシがつぶやく中、ロロンドのおっさんが声をかけた。
「ビルドよ!! 喜ぶがよい!!
吾輩はついにメルキド録を読み解き、『火をふく石像』を使った強力な防壁を編み出したのだ!!
吾輩が編み出した『はがねのまもり』なら、この町をさらにさらに、強固に守れるだろう!
さぁビルド! この設計図通りに『はがねのまもり』を完成させるのだ」
「でもこれ、『はがねの大とびら』なんてあるぞ?」
「む……おぬしなら思いつかぬか?」
「うーん、まぁできそうだな」
『はがねの大とびら』は『はがねのインゴット』を6つに『染料』でもあれば作れるだろう。
「よし、できた」
「ぬおおお! ついにできたかビルド!! これならどのような魔物が来ようと守れるぞ!!」
「でもよ、ゴーレムが来たらどうするんだ? 魔物の親玉になってるんだろう?」
「何を言っとるビルドよ、ゴーレムはこのメルキドの守り神だったのだ。
ロッシに何を吹き込まれたか知らぬが、ゴーレムが我らを滅ぼす筈がなかろう。
ましてやゴーレムがメルキドを支配する魔物の親玉など……吾輩は絶対に信じぬぞ!!
……まったく、根も葉もないウワサで、みなの不安を煽りおって……。
ああいう存在は町の発展の邪魔になる。 いずれ処置を考えなければならんかもしれんな……」
処置って……確かにロッシの話も、直に見たわけではないが……だが……。
「とにかく! よくやったぞビルド! 素晴らしい防壁ができたな! わーっはっはっは!!
そしてビルドよ、吾輩はついにメルキド録に書かれた、最強にして、最大の防壁の記録を見つけたのだ!
その名も『メルキドシールド』という! なんともおごそかで品のある名の防壁であろう!」
「そうか……?」
「これさえあれば、どんな魔物の攻撃からも町を守ることができる。
かつての城壁都市メルキドを完全に復活できるのだ!
しかし……だ……
その細かな製法まではメルキド録にも書かれてはおらぬようでな。
このままではせっかくのメルキドシールドも作り出すことはできぬ……。
そこでだ! 製法の断片だけはビルダーのおぬしに伝えておく。
おぬしならいつか『メルキドシールド』の作り方をひらめいてくれると信じておるぞ!」
それからも竜王軍が攻めてくる。
新しい武器や罠、そしてこの戦いに特化させた町のお陰で戦闘もしやすくなっていた。
そんな中、新しい人がやって来た。
「あらあらあら! ここはなんなの?
暖かい光が溢れる素晴らしい場所じゃない!!
……あなた随分と冷めた目ね。 いいえ……冷めすぎて逆に熱を持った目だわ。
……分かってるわよ? 今さら新顔かって、そう思っているんでしょう?
だってそう顔に……いいえ、全身に書きなぐってあると言って良いくらいだわ。
「いや、そういうわけじゃないが……」
「ここには建物もあるし、人もいる。
それでも住んでいる人たちは随分ピリピリしているみたいね。
でも私、数日前からここに光が溢れてるのに気付いてから、ずっと目指して歩いてきたのよ……
もう歩き疲れてヘトヘトなの……今日からここに住まわせてもらうわ。
私はチェリコ……何のとりえもないけれど、空気だけは読める女よ……よろしくね」
「あ、ああ……よろしく。 俺はビルドだ」
「あれ? お姉さん、新しい人?
わたしはピリンだよ、よろしくね!!」
「あらよろしく」
「あ、そうだビルド、最近なんだかみんなピリピリしてて怖いね……」
「まぁ、決戦を感じてるからだろうな……」
「うん、ロロンドにも聞いたよ。
もうすぐ、でっかい魔物との戦いがあるんでしょ?
わたしはただ、みんなで町を作って、楽しく暮らしたかっただけなのに、
どうして、こんなことになっちゃったのかな……」
「きっと竜王軍は、人間たちが仲良く暮らす事を願っていないんだろうな……」
「……ビルド……一つ、お願いしていい? 『やくそう』を5つ作って欲しいの」
「ん? いいよ。 ……ほら」
「ありがとう……実は、私も2つ作ってたの。 ビルドと合わせて7つだね。
はい、ビルド……決戦の時、これを使ってね」
「ぇ、なんで……」
「だってビルド、いつも皆の為に働いていて、自分の事は後回しだから」
「ピリン……」
「私、信じてる。 ビルドが、みんなを守ってくれるって!!」
「当たり前だろ」
「ふふ、じゃ。 おやすみなさい」
「ああ、おやすみ。
……ピリンに心配かけちゃったな……
「……空気を読んでいたけど、お姉さんちょっと居づらかったわ……男女仲良く、物作りして……」
「っ!? あ、すみません……」
「……ところであなた、あの可愛らしい子とどういう関係なのかしら?
二人っきりで一つのお部屋で一夜を明かしたような特別な関係なの?」
「いややややや、それは……その……」
「あらあら、良いのよ隠さなくても。 うふふ、私は大人の女だもの……」
「ぬ、ぬぁあああ……」
その夜、俺は中々寝れなかった。