【再建中】気まぐれビルダーのコメディ風、~剣神の記憶を添えて~   作:シイナ リオ

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アレフガルドの料理を復活せよ

 今回の竜王軍はいつも以上にあっけなく終わった。

石の守りによる防御により大半の敵は町に辿り着いた時にはボロボロで、軽く叩けば直ぐに倒せるほど。

しかし敵の数は多かったので夜の帳《とばり》は降りて、町に設置された『たいまつ』が頼もしい時間帯だ。

 

 そして赤い扉も手に入れたので早速設置してみる事にした。

 

 「とびらを設置っと」

 「いったい、どこに繋がってるんだろうな……ん?」

 「何か来た!?」

 

 

 「こ……ここは……? ここはまさか、噂に聞いた町というものでしょうか!?」

 「あ、ああ。 俺が作ったんだ」

 「おお!! ということはあの伝説のビルダーなのですね!?

うおおおおお!これは何という感動、なんという興奮だ!!

なるほど、ここは巨大なゴーレムを守り神として栄えたメルキドの跡地なのですね!

私の名はショーター。途方もなく長い間、歩き続けてきた旅のものです」

 「ふむ、ショーターとやら。 と言うことはそなたは情報通ってことか? それは頼もしいぞ」

 「はい、ぜひとも役立たせてください」

 「ビルドよ、吾輩がショーターから話を聞いておくからひとまず休んでおると良い」

 「わかった。 流石にもう夜だし、飯食ったら明日聞くよ」

 

 言葉通り俺は食事の後、とっとと眠ってしまった。

 

………………

…………

……

 

 

 どうやら夢を見ているらしい。

 

 「彼女といつまでもこうしていっしょにいたい。

こんな僕の気持ちも、魔物たちに踏みにじられる日が来るのでしょうか

ああ!!でもきっとあなたなら竜王を倒してくれる!僕はそう信じています!」

 「彼と一緒にいると世界を闇が覆うなんて嫌なことも忘れられるわ。

でも、それは嘘……世界が滅べば、私たちの愛も終わってしまうって彼がそういうんです。

だけど……きっとあなたならなんとかしてくれる……。

だってあなたは伝説の勇者の子孫なんですもの!」

 カップルの男女が言った。

 

 「闇の竜、翼広げる時ロトの血をひく者来りて闇を照らす光とならん。

……これ、僕の祖父の口癖なんです。

おお神よ!古き言い伝えの勇者となりえし者****に光あれ!!」

 緑の服を着た男が言った。

 

 遠い記憶のようだ……

 そして……

 

 《流石、伝説の勇者の血を引く****モジャ!! 僕も勇者になりたいモジャ!!》

 また別の、遠い記憶。

 

 どちらが自分自身の記憶なのか、それとも両方とも誰かの記憶なのかわからない。

 ただ、二つの記憶は混ざり合いながらも……責任の重さに圧し潰されそうな感情と、冒険を楽しいという感情は決して交わる事はなかった。

 

 

 「朝だよビルド!! おはよう」

 「おはようピリン……ってロッシ!? どうしたロッシぃぃいいいい!!」

 「び、ビルド……危険……だ」

 「危険? まさか魔物が……」

 「ち、違う……ピリンの、ピリンの料理だ……。

キメラのくちばしにバッタとモモガキを入れて青い油と土で煮込んだ……。

あんなの料理じゃねぇ……!! 食ったら死ぬ!! ……ガク」

 ロッシは息絶えてしまった……さらば、ロッシ……。

 

 「ロッシぃぃいいいい!!

……と、まぁ残りはロロンドのおっさんに食わせるとして_「なぬ!?」なぁピリン、そんなの作ってどうしたんだ?」

 「私この頃、料理にこってるの!

最近は新しい料理を開発したくってうずうずしてるんだ!

私が考えたのは駄目だったみたいだけど……」

 「いや、まず自分で味を確かめてくれよ……。 しかし、料理を考えてみるか……」

 今日は『赤い旅のとびら』の先に行く、その時に何かあればそれで考えよう。

 

 出発の時。

 

 「ビルドさん、この旅のとびらの先……ドムドーラには伝説の鍛冶屋ゆきのふの子孫とされる男がいます」

 「町に鍛冶屋がいれば、より強い武器や町を守る設備も作り出すことができるであろう。

ビルドよ、この旅のとびらの先でその男を探してきてくれ!!」

 「ああ、わかった。 了解だよ」

 「料理♪ 料理♪ 土と青い油を煮込んで♪」

 「ロロンドのおっさんに食わせとけ」「吾輩が!?」

 そんなおっさんのツッコミを背に、俺とピリンは赤い扉の先へ向かった。

 

 

 

 

 

 そこは砂漠地帯。

 「これは……【死の砂漠】?」

 ふと、何故か思い浮かんだ言葉を呟いた。

 

 「ショーターはドムドーラって呼んでたよ?」

 「ドムドーラ? 聞いたこと無いな……メルキドの周辺の砂漠は【死の砂漠】としか伝わらなかったし……」

 なんだかこの世界に残ってる記録と俺の記憶にズレが生じている気がしたが、まぁ先に向かうとしよう。

 

 ここで手に入れた目新しい物は

 

 『砂』はそこら中にある。 これから『ガラス』が作れそうだ。

 『砂の草切れ』は枯れたような草から手に入れた。 何に使えるだろうか……?

 『サボテンフルーツ』はサボテンの頭や、丸いサボテンやから手に入れた。 食べれる。

 『サボテン果肉』はもちろんサボテンから。

 

 そう思ってると兎と蠍の魔物『いっかくうさぎ』と『おおさそり』がこちらへ向かってくる。

 

 【いっかくうさぎ】からは『くすりの葉』と『生肉』。 くすりの葉は『やくそう』になるし、生肉は『ウサギステーキ』が作れそうだ。

 【おおさそり】からは、『きずぐすり』と、なんと『やくそう』を手に入れた。 殆ど絶滅してしまった『やくそう』が手に入るのは良い。

 

 「ビルド、あっちにおおきづちがいるよ」

 

 【ニンゲン!コッチだ!】

 「おおきづちじゃないか」

 【君が長老がいっていたビルドってニンゲンだね。

僕はニンゲンが大嫌いだけど、長老が君を助けてやれってうるさいんだ。

長老の命令じゃ仕方ない、君に道案内だけしてあげるよ。

ここはドムドーラって言ってね、もうずーっと前から何もない場所なのさ】

 「やっぱりドムドーラ……? 死の砂漠じゃないのか……。

 そういえば墓場を作ってるおおきづちがここに墓作りができるブラウニーがいるって言ってたな……」

 【ああ、あいつも僕と同じくニンゲン嫌いだね。

……ここは何にもないけど、おおきづちの里には無い、いろんな素材がある。

案内は終わりだ、さぁとっと行け】

 「ああ、ありがとう」

 嫌いって割には嫌悪感を抱いてる訳でもなく、単に流されて嫌っている程度なんだろう。

おおきづちに別れを告げ、俺は進む……

 

 が……

 

 進んでいると……あれは【ストーンマン】?3匹の群れ……しかも1体はかなりデカい。

この装備じゃまともにダメージを与えられそうにない、逃げようとするが奴は追ってきた。

 

 【おーいニンゲン!! こっちだ!!】

 アーチ状の岩場にもおおきづちがいた。

梯子をかけて上に登ればストーンマンもあそこまでは追ってこれない。

 

 【長老から話は聞いてるよ!!

眠たそうな顔をしたニンゲンたちが来たら助けてやれって】

 「眠たそうって……」

 「確かに……」

 ピリン、否定してくれないの……。

 

 【……それにしても、おおきづちの里があるメルキド地方から来たなんて、随分と長旅をしたんだね!】

 「そんなに遠くなのか此処!?」

 「私達、『旅のとびら』で来たんだよ」

 【んあ!? そりゃまた、ツゴウのいいドウグじゃないか! ……いいなぁ、オイラも早くおおきづちの里に帰りたいなぁ……

『旅のとびら』の許可が下りてる郵便係の仲間が羨ましいぜ……】

 「ねぇ、なんであなたはここにいるの?」

 ピリンが不思議そうに問う。 確かに俺も気になる。

 

 【……オイラたちは竜王さまの命令で、ピラミッド作りにかりだされてたんだ。

毎日毎日、素材集めをさせられて……もうクタクタだよ……そうだ、お近づきの印にオイラの宝物をやるよ】

 そういって『命の木の実』をくれた。

 ストーンマンの一団が諦めて去った後、礼を言って別れを告げる。

それから『鉄』を求めて山を掘っていると、ピリンが何かを発見した。

 

 「ねぇビルド、こんな砂漠なのに緑と水があるよ?」

 「ん? あれは……オアシスか?」

 目の前には海水ではない水が沸いているのか木が生え、一部分だけ緑々《あおあお》とした大地がある。

近づいてみると……男がこんなところでおしゃれなテーブルで食事をしていた。

 

 『ふんふふんふん♪ ……へぇ、君は私の姿が見えるのかい? これはなんとも珍しい」

 「って事はあなたは、幽霊?」

 『そう、私は幽霊。 私が見えるとは君は少し他の人間とは違うようだな……』

 「ビルド……何しゃべってるの……? あれ? 薄っすらとだけど、人がいる……?」

 ピリンも見える?

 

 『ふむ、どうやらそこの女の子も少し違うのかな?』

 「あんたはなに者なんだ?」

 『私かい? 私は生前、料理の研究をしていた美食屋でね。

長年の研究の末、ついに至高の調理器具『レンガ料理台』を作り出せたと思ったら、

美味しい料理を求める魔物に襲われ、命を奪われてしまったというわけさ、

料理というものは魔物をも狂わせる。 君も気をつけたまえ……』

 

 その時だった、二匹の【てつさそり】が現れる。

 

 「っきゃ!?」

 「サソリだらけだなこの砂漠!!」

俺は『トゲわな』をまきびし感覚で地面に設置しながら距離を取り、追ってくる奴らがピリンによって殴られ、床からのダメージを受け、ピリンへ意識が向いた瞬間に俺がどうのつるぎの回転斬りで簡単に倒せた。

 

 「ふう」

 『……おや? 魔物を倒してしまったのかい? 君たちもこちらの住人になれる所だったのに……』

 「なんてこと言うんだあんた!?」

 「ところでその『レンガ料理台』ってなあに?」

 怒る俺をさて置き、ピリンはさっきの言葉に疑問を問う。

 

 『まぁせっかくだし良いだろう。

私が長年続けてきた、料理の研究とその極意を受け継いで、これからこのアレフガルドの世界で、

最高の料理人を目指してくれるなら教えてやろう。

どうだい! 悪い話じゃないだろう!?

アレフガルドの料理を復活せよ! って奴さ!』

 「いやタイトル変わっちまうぞ!!」

 思わずツッコミを入れる。 って勢いで言ったは良いが、タイトルってなんだ、タイトルって……。

 

 「それに俺達は物作りで忙しいんだ、最高の料理人は別の人に任せてくれ」

 『だーーーー!! 料理だって立派な物作りじゃないか!このオタンコナスめっ!!

料理はただ、空腹をみたすだけでなく、人の心に光をあたえるものなのだ。

君がもし、この世界を救おうとするなら、私の料理を継承し、作り出していってほしい!!』

 「誰がオタンコナスだ!! それで、『レンガ料理台』の作り方は?」

 『『料理用たき火』に『レンガ』5つ、『鉄のインゴット』だ』

 「そうだ、ここに建物作るから、ピリンはここでレシピを教わると良いよ(っていうか教わってくれ)」

 「レシピを?」

 「さっき攫われたばっかりだからちょっと不安だろうけど、いざとなったら『キメラの翼』を使ってくれ」

 そしてピリンと別れ、俺は目的地へ向かう。

 

 

 それからしばらく……

建物のような物が見えてきた頃、一人の上半身全裸の男がいた。

 

 「ん? あのおっさんが鍛冶屋か?」

俺が時たま夢見る『記憶』にある知識に存在する鍛冶屋もこんな感じだった。

……何故か剣を使っているのにも関わらず、鍛冶屋がメンテナンスする事のない剣を使っていたけど……。

手入れせずに最後の戦いまで使うなんて、どんな剣だろうか……?

 

 そんな事をぼやきながら男に声をかけた。

 

 「おーい、あんたが伝説の鍛冶屋ゆきのふ の子孫か?」

 「む? ……ああ、いかにも」

 「よかった、実はあんたに_うゎ!?」

 足を踏み出した途端、足元の土が崩れた……。

 

 「な、なんだこれ……? 毒、沼?」

 崩れた土の下には毒沼があり、じわじわと体力が減っていく。

 

 「なぁ、ちょっと手を貸して_っが!?」

 見上げた時、鍛冶屋が斧を振るっていた。

 

 「ふはははは、間抜けな人間め。 もうこの姿は必要ないな」

 鍛冶屋は高らかに笑いを上げると、姿は闇の霧に包まれて【あくまのきし】へと姿を変える。

 

 「変身魔法のモシャスか!!」

 【ふはは、ご名答だ。

 ガイラから『ひびわれ土岩』を輸入してこの周囲一帯の毒沼を隠し、お前を落とすようにおおきづち共に作らせていたのだ!!

ふはははははは……_ごふっ!?】

 「足元がお留守だ。 ……俺もだったけど」

 奴がだらだら話している内に、トゲわなを設置してダメージを入れていたんだ。

 

 【バカな……きさまぁ!!】

 あくまの騎士が再び斧を振りかざした時、水平に切り裂いた後、縦に切り裂く……。

 

 「十文字『悪魔斬り』!!」

 悪魔系へ特化させた斬撃を喰らわせる。

それと共に『どうのつるぎ』は耐久力がなくなったのか、バラバラに砕け散った。

 

 【お、おのれ人間め……そのような技を……!!】

 鍵を落として奴は消えた。

まぁ、咄嗟に思いついた技だったんだけどな。

しかし、とうとう武器が無くなっちまった。

 

 所でなんのカギだ? そこの建物のか?

そう思って建物に近づくと声がした。

 

 「おーい、そこに誰かいるのか?」

 「ああ」

 鍵を開け、扉を“回収”して入る。

そこには先ほど、あくまの騎士が化けていた男がいた。

どうやらこの人が本当の伝説の鍛冶屋の子孫なんだろう。

 

 「お前さん、その扉を開けたって事はまさか【あくまのきし】を倒したってのか?」

 「ああ、俺はあんたを探しに来たんだ。 あんたが伝説の鍛冶屋の子孫なんだろ?」

 「俺を……? 確かに俺が伝説の鍛冶屋の子孫、ゆきのへ だ。

お互いの話は道すがらするとしよう。 まずはお前さんの町に……_『残念だがそれどころじゃないよ』

 

 「っな!?」

 俺は驚いた。

何故なら目の前にいたのは料理人の幽霊だったからだ。

 

 『お嬢さんが攫われた』

 ピリンが誘拐された……そんな言葉が告げられたのだ。


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