莫名灯火   作:しラぬイ

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真恋天下の香風(覚醒)。
アクティブスキルを使うと、斧をぐるぐる回すんですよ。
その時僅かですけど空を飛ぶんですよ。

見たときはね、なんというかね。
感動した。嬉しかった。運営神様って思った。


ワイ「さて、今日もデイリーこなしますか~」
運営「聖夜コスのキャラ追加したよ!」 → 香風(聖夜)


( ゚д゚)

(゚д゚)






始まります。(すんません、今話は恋も香風も出ないです)


File№05

やせい の 趙雲 が あらわれた!

 

「おや、莫殿。そこはかとなく馬鹿にされた様な気がしたのだが、私の気のせいだろうか」

 

「イエ、ナンデモアリマセン」

 

目の前で武器を構える趙雲に対して、ただ遠い目で空を眺める。

 

どうしてこうなった。

 

 

 

今朝も変わらず朝食を作り、香風や恋、ねねと共に美味しく頂き、普通に城にやってきた四名。

朝の評定を終えて各自持ち場にてそれぞれの実務を行っていた所、仕官者がやってきたとの一報が。

今日一日は詠の執務室で彼女の補佐をしながらの業務予定だったが、仕官者が来たとなれば軍師である詠が動かない訳にはいかない。

 

主だった将のほとんどが外に出ているタイミングでの出来事。

仕官者というのは偽りでどこかの刺客と言うのも考えられたので、武術にも心得のある灯火に同行をお願いした。

 

「詠、もし怪しいと思ったら俺の後ろに。力量次第だけど兵が囲むくらいの時間は稼ぐから」

 

「わかった。昨日の今日でいきなり文官の枠から外れちゃったけど、お願いするわ」

 

「仕方ない。みーんな、外に行っちゃってるんだからさ」

 

今日は模擬戦ということで主だった武将とつい先日客将として入った香風は外に出ている。

月もまたその視察も兼ねて恋を護衛に同行している。

となれば詠からすれば灯火に護衛を兼ねて同行させるのは当然だった。

 

「賈文和様。仕官者三名、連れてまいりました」

 

「よし、謁見の間に通しなさい」

 

「はっ!」

 

この時灯火は完全に気を抜いていた。勿論詠を守る気が無いという意味ではない。

仕官者三人は自身の知らぬ者だろうと思い込んでいたのだ。

 

前世の記憶も明確に覚えている訳ではない。

史実の三国志などほぼ忘れていると言っていい。

そして恋姫の記憶でも董卓軍に名のある者というのは、現在外で演習をしている将達しか知らない。

つまりこれから現れる者が例え前世の史実において名のある将校であったとしても、灯火には反応のしようがない。

 

「…………は?」

 

そう思っていたからこそ、謁見の間に入ってきた者達を見たときは、詠の隣に待機していた事も忘れ、思わず言葉を発してしまった。

そしてそれを聞き逃す詠でもない。

 

が、今は入ってきた三名の身元を確認するのが先だ。

 

「三名とも面を上げなさい」

 

「「「はっ」」」

 

玉座の椅子の隣に立つ詠が三名の顔を見降ろした。

その斜め後ろで気を取り直した灯火が無言で顔を確認する。

 

(………なんでいるんだ?)

 

「まずは名を名乗りなさい。………そちらの貴女から」

 

灯火の内心を他所に指名された青髪の女性が一歩前に出る。

 

「姓は趙、名は雲、字を子龍と申します」

 

「趙子龍………、分かったわ。では次」

 

一礼した趙雲が下がり、隣の眼鏡をかけた女性が一歩前へ。

 

「私は戯志才と申します。訳あって今はこの名を名乗っております故、お許し下さい」

 

「ふぅん………、まあいいわ。最後の人」

 

戯志才の名乗りに少し眉を顰めたものの、何も言わず最後の少女へ。

 

「私は姓を程、名を立、字を仲徳と申します。お見知りおきを」

 

どこか間延びした語調で一礼した。

一通りの自己紹介を終え、改めて三名に確認する。

 

「それで三人とも。兵からは客将として仕官したいと聞いたのだけれど、まずはその理由から問いましょうか」

 

「では僭越ながら私から」

 

三名のうち青髪の女性、趙雲が一歩前に出て経緯を語った。

 

「我らは現在どこにも仕官せず旅を続けております。隣二人は見分を広める為、私もまた似た様な理由です。その為この大陸を渡り歩いているのですが、ただ放浪しているだけではいずれ金は無くなります。金が無くなれば食は買えず、宿を取る事もできますまい。多少の不便ならまだしも、我ら三人とて女子。いつまでも野宿というのは頂けない。その為自身の才を元手にこうして客将として仕官し、金を承りたいと考えた次第」

 

「なるほど、路銀目的ね。その路銀は旅の為、と。………単に路銀を稼ぐのであれば別に仕官する必要は無いハズ。貴殿らはなぜここへ仕官しようと思った?」

 

「二つございます。一つは見分を広めると同時、仕官先を探してもおります。実際仕える者の人を見、知を見、徳を見る。ここの主、董仲穎殿がこの街で善政を敷いているのは見て取れた。ですがそれだけでは分からない。故にこうして客将の身として仕官し、ここの主、延いてはここの将達を見極めさせていただくべく」

 

趙雲の物言いに眉が細まる詠。

自分達に相応しい主ならば正式に仕えるが、そうでなければ路銀だけ貰ってさっさと出ていくと言っているのと同じ。

 

客将として仕官したいと申し出てくるのであれば相応の実力者なのだろう。

だがそれに対して三人の名前に聞き覚えはない。

先日仕官した香風と後ろに控える灯火は詠も聞き覚えがあった。実績もあった。身内の知り合いでもあった。

故に仕官させるのに抵抗はなかった。

 

目の前の三人は違う。知らず、聞かず、何もない。

そんな者が此方を見極めると大言するのだから、流石の詠も気付く。

つまるところ、趙雲の言い方に対する反応すらも相手は見ているという事だ。

 

(現代社会だと失礼とか言ってそのまま落とされそうだ)

 

灯火もまたその意図を理解していた。

何ともまあ凄い言葉だと思い、納得する。

 

詠と灯火に違いがあるとすれば。

それは相手を知っているか知らないかの違いである。

 

「それで、もう一つは?」

 

「都で噂になった『聖人』を探しに」

 

「「…………は?」」

 

簡潔に終わった趙雲の言葉。

これには詠と灯火も同じ反応だった。

ここへ仕官した理由が灯火であるというのだから当然だ。

 

「我らは元々都・長安へ仕官するつもりでした。ここ最近少しではありますが長安にて良い政策をしていると噂がありました故。恐らくは朝廷のある洛陽以上に。我らの才を以てすればその後押しになるかと思い長安へ上京した次第。………が、いざ長安に着き情報を集めてみればその政策は『聖人』と呼ばれた役人が大元と言うではありませんか。しかもその『聖人』は我らが長安に着いたその前日に『涼州』へ出立したという。賊討伐で名を馳せた徐晃将軍と共に」

 

「………それでこの『涼州』に?」

 

「元より我らの旅路は大陸を見て回る事にあり、宛のある旅路ではありませぬ。目的地に着いたから終わりの旅ではなく、着いた先が目的地であるかを吟味し決める旅。………長安は我らの目的地にならなかった。であれば、長安を仮の目的地と定めた理由を持つ『聖人』が向かった『涼州』を仮の目的地として訪れても不思議ではありますまい。そして先日、その『聖人』と徐晃将軍と思わしき人物がこの城にいるという事を突き止め、こうして参った次第」

 

「………なるほど」

 

二つ目の言い分には、まあ一応納得する詠。

都にこの『主を見極める』と豪語する三名の御眼鏡に合うような気性の持ち主がいるとは思わなかった。

 

言い終えた趙雲が一礼し、一歩下がる。

それを見届けた詠は口元に手を当て、思案する。

 

「莫、貴方はどう思う?」

 

“莫”という言葉を聞いた三名がピクリと反応し、檀上に立つ女性の後ろに控える男を見据えた。

腰には武器らしきものを携えた黒髪の男。

 

「どう思うとは?」

 

「仮にも貴方目当てにやってきた三人みたいじゃない。さっき入ってきた時も反応してたし、知り合い?」

 

その会話で下に立つ三名は理解した。

つまり今こうして名を名乗らない女性の後ろに控えている男こそ、都で『聖人』と呼ばれていた者である、と。

 

「───知り合いではないよ。そちらの三名も知らないだろうし。所感については………そうだな。雇って問題ないだろう」

 

「どうして?」

 

「………北方常山の趙子龍と言えばその槍で有名だ。漢全土を見ても武の上位に位置する事は間違いない。同様に戯志才、程立。彼女らは武ではなく智に長ける者。文和といい勝負すると思うぞ。─────そんな才気溢れる三名が客将とは言えこうして訪れたんだ。相手はこっちを見極める気満々らしいし、こっちはこっちで彼女らの武・智を以て内外の戦力増強の糧にすればいい」

 

趙雲・戯志才・程立の名は知っている。

特に趙雲については“恋姫”だけでなく前世の史実知識においても有名な将である。

『曹操』『劉備』『孫権』以外で名を上げろと言われればすぐに出てくるレベルだ。

 

「私はそんな噂聞いたことがないけれど。何、この三人そんなに凄いの?」

 

自身といい勝負する、と信の置ける灯火から言われ、一つ目の理由の時に感じた不遜を保留にする。

 

「俺も実際目にした訳じゃない。あくまで俺の知っている『趙雲』『戯志才』『程立』は、という話だ。………登用試験はするんだろ? 少なくとも門前払いをする相手じゃない。実力はそこで測ればいいと提案する」

 

「………ふぅん」

 

詠も門前払いをする事は考えていない。

自身の考えと灯火の評価、提案を合わせ、この後どうしていくかを考える。

 

が、下に立つ三人は疑念だらけだ。

 

(あれが『聖人』、ですか。聞き及んだ通り腰に武器を携えている。………にしても)

 

(ああ、私の事ならまだしも稟や風の事まで知っている様だ。二人を武ではなく智に長ける者と評した事から、確実だな)

 

(星ちゃんも知られるほど名は広まっていないハズですけどねー。常山あたりに知り合いでもいたのでしょうか。それに風達にいたってはどうやって知ったのかまるで見当がつきません)

 

三人六眼の視線が灯火へ突き刺さる。

そのうちの趙雲と視線があった灯火は何も言わずに瞼を閉じた。

護衛が眼を閉じるなど普通ならあり得ないが、灯火からしてみればこの三人が詠を謀る事はないと確信したため。

必要な情報は伝えたし、後は軍師である詠が決めることだ。

 

「………いいわ。莫の評価も高いみたいだし、先ずは登用に足るものかを見させて貰う。貴女達三人はどの役を望み?」

 

「私は武官、戯志才と程立については文官を所望する」

 

趙雲の発言に頷いた詠に、灯火が問いを投げる。

今、この城の現状についてである。

 

「………仲穎殿に確認は取らなくていいのか?」

 

「確認はするわよ。ただ帰ってくるまで何もしない訳にもいかないでしょ」

 

「そうか。………登用試験の相手は? 文官は文和が試せばいいんだろうけど、武官は対応できる将は外じゃないか? 警備隊から誰か連れてくるのか?」

 

「そんな訳ないじゃない。というかアンタの言う事が正しいなら警備隊じゃ正しく測れないでしょ」

 

「………まあそうだけど」

 

あの趙雲が街の一警備隊員に負けるとは思わない。灯火もそんな趙雲は流石に見たくない。

むしろアッと言う間に倒してしまうだろう。

 

「じゃあ、誰が?」

 

「いるじゃない、ここに」

 

普通に、何でもない事のように、当然であるかのように。

平然と灯火の顔を見て言う詠。

 

対して灯火は黙るしかない。

眉間に皺を寄せて強めに瞼を閉じる。

 

「………そういうのって、武官の仕事じゃない?」

 

「来るときに言ったじゃない、『昨日の今日でいきなり文官の枠から外れちゃったけど、お願いする』って」

 

「これも含まれてんの!?」

 

「当たり前よ。公明と莫が入って来てくれたとは言え、人不足は人不足。今は皆外なんだから。“呂奉先の武の師”が対応しないで、誰が対応するのよ」

 

「ちょっ………!」

 

 

「ほう………?」

 

 

詠が何気なく言った言葉に慌てた灯火。

が、時すでに遅し。

 

ばっちりと下三人に聞かれてしまっていた。

特に反応を示したのが誰かは言う必要ないだろう。

 

「………?………あっ」

 

気付いた詠だが、今更である。

特別大きな溜息を吐き、ジト目で詠の顔を見つめる。

 

「………っ。な、何よ………」

 

「………いや、何も。………まあ、いいさ。とは言っても武官の登用試験なんかやり方分からないから、そこは教えてくれ。それでいいから」

 

「わ、わかったわよ。………その、………ごめん」

 

「いいよ、別に。人の口に戸は立てられないって言うし」

 

「………それじゃボクがまるでおしゃべりみたいじゃない」

 

口を尖らせて詠が呟くが灯火は何も言わない。

決して思った事は口にしない。

 

「………ごほん。それじゃまずは趙雲の登用試験をさせてもらうわ。ついて来なさい、三人とも」

 

 

 

以上、ここまでが顛末である。

 

相手が文官と油断してくれたらまだしも、目の前の趙雲を見る限り惚れ惚れする程やる気だ。

これでは華雄戦の時の様なことは起きないだろう。

 

かと言って適当にやれば『見極める』と豪語した彼女にマイナスイメージを渡すことになる。

灯火自身が他人からどう思われようとどうでもいいが、今現在灯火は董卓軍の武官として立っている。

余りに情けない戦いだと今ここに居ない月や恋、香風達に申し訳ない。

 

「ふむ。心ここにあらず、と言った様子ですが。それで果たして登用試験は上手くいきますかな」

 

「………言われずとも仕事。やるからにはしっかり致しますので、ご心配なく」

 

瞳を閉じて一つ深呼吸。

思い出すは恋との、香風との鍛錬。

二人ともが強敵。決して心乱れた状態では追いすがる事は出来ない。

 

ましてや此方は速さ命。

乱れていてはその繊細さはあっという間に失われる。

平静を保ち、余分な力を抜き、自然体。

雑音は消し、思考は水底に沈めていく。

 

「む………」

 

今までの雰囲気が変わった、と知覚する。

さらり、という音さえ聞こえてくるかの様な自然体。

目の前に佇む男にはあまりにも敵意がない。

 

「─────」

 

趙雲も今までの気を顰め、眼前を見抜き、槍を構え直す。

対してそんなモノは知らぬと、鞘から銀色の刃が姿を見せた。

 

日本刀。

否、日本刀擬きと言った方がいいだろう。

この時代に日本という国は存在せず、刀の作りも細部まで日本刀と同じという訳ではない。

あくまでこの時代この大陸の武器職人に、灯火が記憶を頼りにオーダーメイドした刀。

 

『折れず、曲がらず、よく斬れる』の三つのみを追求。

曰く『恋の食費以外で最も時間・お金をかけたもの』。

 

構えは正眼。他の全ての構えにスムーズに移行できる。

すなわち攻撃にせよ防御にせよ、状況の変化に応じて対応できる基本にして最強と称される戦いの体勢。

 

深くは考えない。

有り様は水面に立つが如く。心は

 

ただ─────

 

「………始め!」

 

─────斬るのみ。

 

「っ!!」

 

先ほどまでとのあまりの変わり様に様子見を、と迎の構えを取っていた趙雲が息を呑んだ。

 

刀を持った両腕が跳ね上がり、掲げられた刀はそれ以上の速さを以て振り降ろされていた。

 

思考よりも速く体が防ぐ。

甲高い音が場に響き、思考が追い付いた。

 

趙雲の腕にかかる重さは、それほどない。

受け止めた際の腕への負担は驚くほどに軽微だ。

 

その“軽い”と言って差し支えない重さ。

 

「─────」

 

気が付けば既に相手は“薙ぎ”の体勢に移っていた。

 

防御か回避か。

息つく暇どころか、そんな思考を回す暇もない。

 

始まった際、距離は十二分にあった。

少なくともお互いが踏み込めば先に槍の間合いだった。

だが気が付けば槍の間合いは当に詰められ、灯火の間合いに入っている。

 

趙雲とて武人。

思考が追い付かなくとも形勢の不利、状況の仕切り直し、相手の攻撃範囲。

それらを本能で理解し、一跳で間合いを離す。

 

斬撃が奔った場所に趙雲は居ない。

振り抜きは最小限。体は─────

 

「はぁぁああっ!!!」

 

最小の動き。

 

振り抜きの隙を見越して、刺突する槍を最小の足捌きで避ける。

 

「っ!はっ!やっ!てぁあああ!!」

 

渾身の初撃を避けられた。

表情は能面の様に動かず、見切っているかの如く。体は流れる水の様に。

息を呑んだ趙雲が、裂帛の気合を以て鋭い攻撃を一度二度三度と降り注ぐ。

 

切っ先が交差し、金切り声が木霊する。

時折火花が散り、その苛烈さが埒外の速さを伴っている事を証明していた。

 

 

槍の撃は稲妻。点の攻撃は遊びが無く、的確に苛烈に攻め立てる。

対し刀は疾風。しなやかな軌跡は逸らし、往なし、悉く受け流す。

 

そうして返す刃は速度を上げ、突風の如く翻ってくる。

直線的な槍に対し、剣筋は曲線。

ならばそれは趙雲が有利であるハズなのに、描く弧はその差をゼロにする。

切り返す刀に腕を引く槍が追い付かない。

ならばその刃を受け止めると、初撃の様に軽い攻撃は障害物を避けるか如く無防備な側面へと軌跡を変える。

 

「ふっ─────!」

 

繰り返す事数合のち、跳躍し後退した。

 

なるほど、と趙雲は考察する。

呂布の武勇に戦場の華という言の葉を聞いた覚えがある。

 

如何様なモノかと漠然と思っていたが、恐らくは目の前のそれがそうなのだと確信する。

見惚れるほど美しい剣筋は、同時に見届ける事が困難な程の速度。

目の前の男が呂布の師だというのであれば、当然その子である呂布もそれを体得している。

弧を描く剣筋と、自身が放つ点の撃の速度が同等………或いはそれ以上。

 

不可解な現象は相手の技術の高さ故か。

僅かに口角を吊り上げる。静かに、それでいて確かに、自身のボルテージが上がっていくのを感じていた。

 

静寂に包まれた場は、それを観戦していた三人まで広がっていた。

華雄と霞に勝った所を見ていた詠は、改めて灯火が武官でも十分通用する者と認識。

というより先の二人の戦いについてはどちらも一瞬で終わってしまったので、強いと分かっていても実感しにくかっただけに今更ながらに驚いていた。

 

戯志才と程立は、共に旅をしていた趙雲と同等以上に打ち合える男に驚きを隠せない。

かつて都で『聖人』にまつわる武を聞いたことがあった。

どうせ尾鰭がついたモノだと思っていたが、目の前の光景を見ては認めざるを得ない。

 

「………というより、彼は本当に文官ですか、文和殿?」

 

「ええ。あれでも文官よ」

 

「星ちゃんとあそこまで戦い合えて、文官なのですかー………」

 

互いの有効射程外で手癖の悪い子供の様に槍を回し、構える。

引いた趙雲に灯火は追いすがらず、始まりと同じ正眼の構え。

 

相手の攻撃は“軽い”。力の押し合いになれば必然の形で趙雲が押し切る。

 

確信があった。

 

そんな事は分かっている(・・・・・・・・・・・)

 

軽いが故に押し負ける。

完全に腕を止められれば、力で押し返される。

上手くそれを反動に転換できればいいが、体勢を崩されれば如何に灯火と言えど次撃は防げない。

 

故に真正面から受け止めない。

相手の防御への打ち込みは最小限に、衝撃を相手ではなく自分への反動に。

元より斬り合う等考慮していない。力で劣ると悟った時点で捨てて、全てを託した。

その全て、恋に託した。

 

だからこそ刀を取った。

力で叩き切る斧ではなく、速さと技で断ち切る刀を。

 

だが。

 

「………ふぅ」

 

張りつめていた空気を斬り捨てる様に、構えを解いた。

一呼吸置き、構えていた刀を鞘に戻すその光景は、趙雲の眉を顰めるには十分すぎた。

 

「………なぜ収めたのか」

 

「そちらの熱が上がってきているが、残念ながら此方は文官。武官の様に強者を求めて血が騒ぐ体質ではないし、目的を違えるほど盲目にもならない」

 

あくまでこれは登用試験。

どちらかが負けを認めるまで行う決闘でもなければ、相手が死ぬまで戦う死闘でも戦場でもない。

ただ相手の力量を測るためのモノ。

 

「この程度で十分でしょう。文和も趙雲殿の力量は分かったハズですし。───お疲れさまでした」

 

先ほどまでの雰囲気はどこへやら。

謁見の間で出会った時と同じ調子で趙雲に頭を下げ、すたこらさっさと観戦していた詠達の元へ戻っていく。

 

「………………むぅ」

 

始めは呆然と、次第に何か言いようのない感情が湧き始めた。

いや、確かに理屈は言う通り。どちらかが負けを認めなければならないというルールは設けていない。

そもそもこれは登用試験なのだから、自身の実力を示せればそれでいい。

 

しかし。

不完全燃焼である。

 

切っ先を下ろした星が後に続くように此方に向かってくるのを確認し、観戦していた三人も一息ついた。

 

「で? 終わりってことでいいのね?」

 

「そうだね。実力はさっき見た通り。もしまだ不安があるなら帰ってきた武将に相手して貰えばいいよ。俺の基準では合格」

 

「………まあ一応確認は取るわよ。どちらかと言えばアンタがそこまで出来るのに驚いたんだけど」

 

「頑張った」

 

というよりそもそも灯火にとって趙雲が相当の実力者であることなど戦う前から知っているのだ。

ただその根拠が武人みたく『見ただけで相手の力量が分かる』というナニソレ理論ではなく、前世の知識から来るもの。

根拠の説明になんて使えたモノじゃない。

 

「莫殿!次は登用ではなく、手合わせを願います!」

 

「えぇー。ワタクシ文官ですので、そういうのはちょっと。代わりに呂布を紹介いたしますので」

 

「………それはそれで頂きますが、私は貴方と手合わせしたい」

 

「呂布に勝てたのなら考えましょう」

 

「………いいでしょう。約束ですぞ」

 

「そちらこそ」

 

灯火、恋に丸投げ作戦。

後で恋にお願いして、勝ったらめいいっぱいお礼しようと誓う。

恋が負けることなど1ミリも考えていない。

 

「………アンタ、面倒だから恋に丸投げしたわね」

 

「あーあー、聞こえない」

 

詠も恋が負けるとは思っていないため、趙雲の約束が果たされる事はないだろうと理解していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




感想、評価、お気に入り登録ありがとうございます。
流石にこの時期は忙しいですね。
皆さまも風邪や事故にはお気を付けてよいお年をお迎えください。



ワイ「香風、香風、香風………。絶対当てる当てる当てる………」

確定ガチャ5000円 → すり抜け
貯めたガチャ22連 → あたらず
1万円課金 → すり抜け
1万円課金 → あたらず
1万円課金 → はおー様(聖夜) ごめんなさい、貴女様じゃないのです
1万円課金 → 香風(聖夜)「サンタのお仕事、行ってくる~」


  (無言の勝利宣言)

ワイの香風ガチャ成功率は100%や。




香風も恋も出ない話とか俺が許さないから続きます

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