原初の御伽噺は神話へ至る   作:黒樹

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二千文字いかんかった。


ストラウス

 

 

夜の帳が下りたマグノリアの街並みを懐かしそうに眺めながら、隣にいる少女は呟いた。

 

「懐かしいわね」

 

街の入り口から–––否、旅の始まりからずっと。

手を握り、時には腕を組み、片時も離れず。

おはようからおやすみまで、お風呂もベッドも一緒で。

初めてのことに緊張しながらも、恋人としての生活を始めた。

 

そんなミラであるが、彼女はそれ以上に緊張したように魔導士ギルド《フェアリーテイル》の前に立ち尽くしている。

 

繋いだ手からは、僅かな動揺が伝わる。

心配かけたとか、どんな顔して帰れば、なんて不安が思い浮かんでいるのであろう。

ミラの足を止める理由を察しながら、俺は一度彼女を抱き寄せる。

 

「大丈夫だ。俺が側にいる」

「クスッ。なんだか似合わないわね、ローゼンが言うと」

「……もう言わん」

「あぁ、ごめんなさい。拗ねないでよ、ね?」

 

励ませば笑われ、俺は二度と言わないことを誓うと、慌てたようにミラが俺の腕をぎゅっと胸に掻き抱いた。

 

「もういい。ほら、いくぞ」

 

ミラの揶揄いに嫌な気分になったわけではない。

それで緊張が解れたならいいか、と帯同してギルドに入る。

 

夜でもなお賑わうギルド。ナツとグレイの喧嘩、樽で酒を飲むカナ、もはや名物であるその二つや他の面々を眺めていたところ、目敏く姉の気配に気づいたエルフマンが此方を見た。

 

「姉ちゃん!?!?」

 

野太い叫び声に喧騒が止む。ギルド内の視線が一斉に俺とミラヘ。ぽかーん、と呆けた顔の後、信じられないものを見たような顔に変わり、

 

「「「「なんかローゼンが知らない女とイチャイチャしてるうぅぅぅぅぅ!?!?!?」」」」

 

–––ギルドさえ破壊しかねない大声量が響き渡った。

 

「え、うそ、もうミラちゃんは諦めちゃったの!?」

 

一番に詰め寄ってきたのはシャドウ・ギアというチームの紅一点、レビィという少女。誰よりも恋バナに興味があったのか、そんな見当違いな発言をして、あわあわと慌てている。

 

「まるで俺がミラのことを忘れられずに追い駆けて行った、みたいな言い方やめろ」

 

隣で本人が聞いているのだ。思わず否定したくなってしまうが、客観的にはレビィにはそう見えていたのかもしれないと感じて、冷や汗を流した。

 

「諦めた、というよりもう捕まえたものね」

 

私も離さないと言わんばかりに胸を更に押し付けて、柔らかく微笑むミラに俺は視線を向けられなかった。

 

そんなことをしている間にも、興味津々に聞き耳を立てる群集を掻き分けてエルフマンが飛んでくる。レビィを押し退けて、姉を真っ直ぐに見ると泣きながら捲し立てた。

 

「姉ちゃん心配したんだぞ!急に霧の中に飲み込まれたと思ったら姿が消えて!そんで少ししたら兄ちゃんから先に帰っとけって連絡が念話で飛んでくるし!」

 

その言葉にレビィは雷を撃たれたように固まり、そして再び俺の隣にいる美女を見つめた。上から下まで見定めるように見て、わなわなと震えて確信を口にする。

 

「うそっ、まさかミラちゃん!?」

「なにっ!?ミラだと!?」

「あれがっ!?」

「嘘だろ別人じゃねぇーか!?」

 

その声に釣られて他の面子もミラと俺を取り囲む。「あ、本当だミラの匂いだ」とか言った火蜥蜴男は誰にも悟られないようにデコピンで弾き飛ばし、昏倒させておく。

 

「もう、ローゼンったらそんなに嫌なの?私の匂い他の人に嗅がれるの」

「少し手が滑っただけだ」

 

見えていなくても俺の仕業だと認識したのかミラにそう窘められて、俺は言葉を濁しながら目を逸らした。

 

「ただいまみんな。心配かけてごめんね?」

 

苦笑したままミラがそう告げると、口々に帰還の祝いの言葉が掛けられた。隣にいる俺とセットで取り囲み、マカオとワカバが余計な口まで挟みはじめる始末。

 

「まぁ、一番心配してたのはローゼンだけどな」

「本当にな。そんな心配するなら早く捕まえときゃいいのによぉ」

「だよなぁ。それもこんな美女になって。もうローゼンなんて見向きされねぇんじゃねぇのか?」

 

酔っ払いの口は留まるところを知らず、巨乳になった、尻がエロいなどの猥談が繰り広げられる。

 

「ミラジェーン・ストラウス」

「あら、ロキ?」

 

そっちに気を取られている隙に、何処からか花束を持ってきたロキが床に跪く。花束を差し出し、彼は爽やかな笑みを浮かべて堂々とこう宣った。

 

「–––僕と結婚してくれ!」

 

–––突然の告白。

 

ミラはびっくりしたようだったが、その首は縦に振られることはなかった。

 

「ごめんなさい。私ね、もうストラウスじゃないの」

「ど、どういうことだよ姉ちゃん!?」

 

『ストラウスじゃない』と言われて、エルフマンが動揺する。そんな弟の慌てっぷりにクスクスと小さく微笑みながら、本当に嬉しそうにミラは言った。

 

 

 

「ミラジェーン・フラメル。それが今の私の名前。つまりね、エルフマン。私はもうローゼンと結婚したのよ」

 

 

 

仲の良さを主張するように、ミラが俺に抱きついた。

 




最強夫婦爆誕☆

このあと、ロキが強制送還されそうになったとかならなかったとか。
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