Choose thy LOVE.Love thy choice 作:ぴぽ
光は今、ヤバい状況にある。千聖さんに「本当の気持ちを教えて欲しい。」と言われ、口を開いたまま固まってしまった。
「(ど、ど、ど、どうしよ!?千聖さんは何も言わずに待ってるし…。な、なんて言えば良いだ!?気持ちは決まっているけど…。口に出せない!?)」
書かなくても分かるだろうが光は焦っていた。
「(ま、まずは落ち着こう。そうだ!思い出そう。この気持ちに至るまでの過程を…。)」
光は開いていた口を閉じ、目を瞑った。
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「はぁ~。緊張した…。」
クリスマスの後、千聖の家にお泊まりはせず、無事に家に帰ってきた光は、自室にて、椅子に座っていた。時刻は22時半になっていた。そして、キスをされた頬を擦り、キスされた事を思い出し、また恥ずかしくなるのであった。
「うぅ~。あれは反則だよ~。しかも、自分からキスしたのに、した後、なんで恥ずかしがってるの?」
光はキスの後の千聖の表情を思い出していた。
「いや。…まぁ、可愛かったけどさ…。」
光は「はぁ。」とため息をつき、立ち上がった。そして、ベッドに仰向けに寝転がった。
「(確かに、キスされた時は心臓が飛び出るかと思った。でもそれと同時に凄く嬉しかったなぁ。やっぱりこれって…。千聖さんの事好きなんだろうな…。)」
光はそう思いながらもまた、ため息をついた。光自身、千聖のことが好きだとは前々から薄々感じていた。しかし、相手はアイドル。あまりの身分の違いに、困り果てていた。
「(千聖さんは大丈夫って言ってたけど、やっぱりアイドルなんだからマズいよね。でも…。)」
光はガバッと起き上がると、千聖のポスターを見た。
「やっぱり…。付き合いたい。…けど…。」
ボソッと呟く。光は何度目か分からないため息をついた。これまでで1番深い深いため息であった。光があーでもない。こーでもないと考えていると「光!ちょっといいか?」と声が響いた。
「はーい!何だろ?」
光は首を傾げながら、下に降りた。
「父さん。何?」
「ほい。これ。お母さんに頼まれた。洗濯物だよ?」
「あー。ありがとう。」
「光、どうした?また悩み事か?」
光の父親は首を傾げながら言った。
「ま、まぁね。で、でも大丈夫だよ。」
「はぁ。お前は隠すのが下手だなぁ。良いからこっちに来い。話、聞くから。」
光の父親は光の肩を掴むと、無理矢理リビングに光を連れて行った。リビングに行くと、光の母親もソファーに座ってテレビを観ていた。
「あら?どうしたの?」
「光がなんか悩んでるみたいだから連れて来た。」
「そうなの?光の悩みは千聖さんの事かしら?
」
光の母親がクスッと笑って言う。
「うっ…。正解だよ。」
「え?母さん!なんで分かったんだ!」
光は罰が悪そうに、父親はビックリした表情で言った。
「なんでって、光が悩む事ってこれくらいしかないでしょ?で、千聖さんの事で何に悩んでいるのかしら?そこまでは分からないわよ?」
母親はテレビから目線を外し、光の方を向いた。
「えっと、ち、千聖さんから、こ、告白されたんだけど…。千聖さんと付き合って本当に平気かなぁって…。千聖さん、あ、アイドルだから、ぼ、僕と付き合うのはダメなんじゃないかなぁって。」
光は目線をあちこちに向け、しどろもどろになりながら答えた。
「そっか。そんなの気にしたらダメだろ?男ならバーンと行け!バーンと!」
「光?このバカなお父さんの発言は気にしたらダメよ?無視しなさい。」
冷ややかな目線を母親は父親に向けた。向けられた父親は大きな身体を小さくしていた。
「光?あなたはどうなの?付き合いたいの?」
「え?それは…もちろん。」
「なら、その気持ちを大切にしなさい?アイドルだからとか、どうでも良いじゃない?本当にダメなら、千聖さんも光に好意を向けないはずよ?だから、周りの事は一旦、置いといて、まずは、光がどうしたいか決めなさい。」
母親は慈愛に満ちた表情で言った。
「僕がどうしたいか…。」
「そうよ。まぁ、答えは決まっているわよね?」
「う、うん!次、会った時にい、言うよ!」
「…無理はしなくて良いわよ?今の光が言おうとしても緊張で固まるだけでしょ?」
母親が言うと光は苦笑いをした。
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「(そうだった。言うって決めてたんだった。こ、ここで逃げたら男じゃない!で、でも、き、緊張するなぁ。)」
光は顔を上げ、千聖を見た。長考をしていた光だったが、千聖は未だに、光の発言を微動だにせず、待っていた。
「(ち、千聖さんを待たせてる…よね?はぁ。なんで言えないかなぁ。)…「好き」って。」
「え?」
「へ?」
千聖が素っ頓狂な声を出すと、光も、負けないくらい素っ頓狂な声を出した。
「あ、あれ?い、今、僕、こ、声に…出してましたか?」
「えぇ。出してたわよ?好きって言ったわ。」
「ま、マジですか?え?あっ?」
声に出して言った事実を告げられ、光の顔は燃えるように赤く染まった。
「本当に?本当に私の事、好きなの?」
「…は、はい。」
驚きの表情を浮かべたまま千聖が言うと、光は小さく頷きながら言った。
「良かった…。本当に良かったわ。」
千聖がそう呟いた。目からは涙がポタポタと流れて、床を濡らしていった。
「ち、ち、ち、千聖さん!?な、泣かないで下さい。こ、これ、ティッシュです。」
「…ありがとう。ごめんなさい。みっともない姿を見せて。本当に嬉しくて。」
千聖は涙を隠そうともせず言った。
「ま、待たせてごめんなさい。実は、ちょっと前、いや好きって気持ちに変わった時期は、僕も分からないのですが…。本当に好きって思ってました。でも、千聖さんアイドルだから、僕と付き合ったらダメって思ってて…。千聖さんは大丈夫って言いましたが、それがずっと引っかかってました。でも、やっぱり、自分の気持ちに正直にならないとダメだって思って…。な、なんか中途半端な告白の返事になってしまって、ご、ごめんなさい。」
少しだけ、落ち着いた光は自分の気持ちを一気に喋った。
「…ありがとう。…本当にありがとう。嬉しいわ!」
涙を止めどなく流しながら千聖は言った。
「千聖さん。泣かないで下さい。…はい。」
光は困ったように笑いながら、両手を広げた。
「え?」
「ぼ、僕の胸で良ければ…。貸しますよ?」
照れながら言う光に、千聖は驚いたが、直ぐに微笑み、光の胸に飛び込んだ。千聖が飛び込むと、後ろにひっくり返るのをなんとか耐えて、ギュッと千聖を抱き締めた。
「光君…。大好きよ。本当に大好きよ。」
「は、はい。ぼ、僕も、その…大好き…です。」
明るかった空が少しずつ、薄暗くなっていた。寒さも身にしみる時間帯になっていたが、2人の間には春のようなポカポカとした暖かさが広がっていた。
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しばらく抱き締め合った2人だったが、名残惜しそうに離れた。
「そろそろ帰らないと…。帰りたくないわ。」
「…またすぐ会えますよ。家まで送りますよ?」
「…そう…ね。そうよね。」
千聖は眉を八の字にしながら言うと、ゆっくり立ち上がった。そして、階段をゆっくりと降りる。
「そうそう。送ってくれるって言ってたけど、大丈夫よ。」
「え?」
「あっ!勘違いしないでね。私も、少しでも長く一緒にいたいわ。でも、記者とかいると困るから…。」
千聖が困ったように言うと、光は納得した表情をする。
「そう…ですよね。分かりました。」
「ごめんなさい。普通の付き合いが出来なくて…。」
「いえいえ。大丈夫ですよ。僕は全然気にしません。」
光がニコッと笑う。2人は喋りながら階段を降りていたが、当に降りきっており、1階で会話を続けていた。
「あら?千聖さん?いらっしゃい。」
リビングから廊下にひょこっと光の母親が顔を出した。
「あっ。光君のお母さん、お邪魔してます。あの私…。」
「光と付き合う事になったみたいだね。光の事よろしくね?」
ウインクをしながら光の母親が言う。2人はキョトンとした表情を浮かべた。
「あぁ。会話、ぜーんぶ丸聞こえだったわよ?あれだけ大きな声で喋ってたら嫌でも聞こえるわ。いやぁ~。若いって良いわね。」
ニヤニヤしながら言う光の母親に対して、2人は顔を真っ赤にした。
「お、お母さん。よ、よろしくお願いします。」
照れながらも、千聖は頭を下げた。
「もぅ、そんな堅苦しくしなくても。そうだ。千聖さん、あっ。千聖ちゃんって呼ぶわね。帰りたくないって雰囲気で合ってるかしら?」
「え?あっ。はい。そ、そうです。」
矢継ぎ早に飛ぶ質問に流石の千聖も、タジタジになっていた。
「千聖ちゃんが良ければ泊まる?」
「はい?母さん、何言ってるの?ダメに決まってるじゃん!」
「よろしくお願いします。」
「千聖さん!?」
光を置いてけぼりにして、話がどんどん進む。
「光君、嫌なのかしら?」
「へ?い、嫌じゃないですよ!?」
「なら、決定ね!千聖ちゃん。夕飯の支度、手伝ってくれるかしら?」
「はい!」
2人は台所に向かって行った。そんな2人を見ながら光はため息をついた。
「これって…。僕は将来、父さんみたいになるのかなぁ…?」
光は小さくなっている父親の姿を想像していた。
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「ねぇ。光君。」
「な、な、な、なんですか?」
晩ご飯を食べ、入浴(もちろん、別々)を終え、2人は今、光のベッドに入っていた。光は別の部屋に布団を敷こうとしたが、母親に阻止され、この状況になっていた。
「なぜ、背中を向けているのかしら?」
「は、恥ずかしくて…。」
「そう。」
千聖は小さく呟くと、2人にかかっていた掛け布団を全部自分の方に手繰り寄せた。
「ち、千聖さん!?さ、寒いですよ。」
光は慌てて、千聖の方を向く。すると、チャンスとばかりに光に抱きついた。
「やっとこっちを向いてくれたわね。」
「ち、千聖さん…。は、恥ずかしい…です。」
「あら?光君と私はお付き合いをしているのよね?なら、慣れて貰わなきゃ。」
ふふっと笑いながら、まるでイタズラが成功した子供の様な表情で千聖は言った。
「が、頑張ります。で、でも、恥ずかしいけど…う、嬉しいです。」
「私もよ?とっても幸せよ。」
千聖は光の胸に顔を埋めた。光は擽ったさを感じながらも、微笑んだ。
「千聖さん。えっと、年下で頼りないかも知れませんが、あ、甘えたい時は思いっきり甘えて下さい…ね?」
「言われなくてもそのつもりよ?光君にくっついてると安心するもの。…そうだわ。少しだけ真面目な話をしても良いかしら?」
千聖が顔を上げて言った。光と千聖の顔は物凄く近かったが、暗闇のお陰で、光は冷静に「何でしょうか?」と返事をすることが出来た。
「さっきも、チラッと言ったけど、普通の子と違って、なかなか普通のデートとかするのは難しい時もあるわ。」
「それなんですが、出会ったばっかりの時に買い物に一緒に行ったじゃないですか?あれは平気だったのですか?」
「…危なかったわ。あの時はまだ友達として仲良くしたいと思っていただったから、そこまで思っていなかったのよ。」
苦笑いをする千聖に光は「なるほど。」と呟いた。
「あれ?でも、マフラーを2人でカップルみたいに巻いて帰ったような…。」
「…ごめんなさい。あれも、私の気が動転してて…。」
「なる…ほど?」
「私は光君といると、普段なら気をつけて出来る事が出来なくなるみたいなのよ。だから、外で、デートとかは暫くは難しいわ。…本当にごめんなさい。」
「大丈夫ですよ。気にしないで下さい。…でもいつかは色々な所に行きましょうね?」
光が言うと、千聖は「もちろんよ。」と言った。そして、千聖は光の胸の辺りにあった顔を伸ばした。「チュッ」と言う軽い音が光の部屋に響いた。
「ち、千聖さん?今のって…。」
光が自分の唇を触りながら言った。
「キスね。」
暗闇のせいで光には千聖が淡々と答えたように聞こえたが、千聖は顔を赤く染めていた。
「ふ、ファーストキス…でした。」
「私も…よ。」
2人が言うと、静寂になった。しかし、光は千聖の顎を軽く掴み、顔を上げると、自ら唇を落とした。今度は軽いキスではなく、深くて、長いキスだった。
「ぷはっ。」
「…ふう。光君。驚いたわよ。」
「す、すみません。」
「でも、嬉しいわ。ありがとう。」
機嫌良く言う千聖に光はホッとした。
「そうそう。前にも言ったけど…。」
「はい。何ですか?」
「私はいつでも大丈夫だからね?」
何が大丈夫か理解が出来なかった光だったが、その意味を理解すると、顔を真っ赤にした。
「ま、まだ無理です…よ…。」
「ふふっ。そう言うと思ったわ。あんなキスは出来るのに。…不思議ね?」
「うっ。それを言われると…。で、でも、無理なものは無理です。」
「ふふっ。いつまでも待ってるわ。告白の返事を待つ事を思ったら、これくらい、いくらでも待てるわ。」
光をギュッと抱き締めながら千聖は言った。光は千聖には絶対に適わないと思うのであった。ちなみに、その後、千聖は「すーすー」と可愛らしい寝息を幸せそうな表情をしながら立てていたが、光はそんな千聖を見て、寝れない夜を過ごすのであった。
遅くなって申し訳ありませんでした。
やっと2人が付き合うことになりました。
しかし、まだ物語はもう少し続きます。
タイトル通り2人は汝の愛を選び、汝の選びを愛しました。さて、この選択は正しいのか、それとも間違っているのか…。
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