Choose thy LOVE.Love thy choice 作:ぴぽ
「…しゃーせ。…あれ?珍しいお客さんですね~。」
「モカちゃんのバイト先のコンビニはここだったのね?」
千聖が光に出会ってからちょっと経った日曜日、千聖は散歩の途中に紅茶が飲みたくなりコンビニに寄った。
「そうなんですよ~。千聖さん、お久しぶりなのに、久しぶりな感じがしませんね~。」
「テレビとかで見ているから…かしら?」
「それもありますけど~。知り合いに千聖さんが大好きな人がいて~。よく話を聞くからですかね~?」
独特な口調で喋るモカに千聖は先週会った光を思い浮かべていた。
「そうなの?それは嬉しいわね。ありがとうって伝えて貰えるかしら?」
「了解です~。たっくん~!千聖さんがありがとうって~!」
モカは客が千聖しかいないことを良い事にバックヤードに向かって叫んだ。
「あ、青葉さん?お客さんがいないからって叫ばない…で…。」
ひょこっと顔を出した光はモカを注意する途中で固まった。
「あら?こんにちは。光君?」
「し、し、し、し、白鷺さん!?」
千聖の姿を見た光は目を丸くしていた。
「光君はここで働いてるの?…でも中学生よね?」
「あっ。僕の家、ここなんです。父親が店長で…。」
「お手伝いって訳ね。偉いわね。」
千聖に褒められた光は嬉しそうに笑った。
「いやぁ~。たっくん、なんか犬みたいだね~。尻尾が見えそう~。」
モカがニヤニヤしながらからかうと光は笑顔から急に頬をプクっと膨らませた。
「ふふっ…。光君は本当にコロコロと表情が変わるわね。彩ちゃんみたい。」
「そ、そんなに変わってますか?は、恥ずかしいです…。あ、彩ちゃんってパスパレの?」
「そうよ。ふわふわピンク担当の丸山彩ちゃんよ。」
千聖がニコニコしながら光を見る。光は千聖と目が合うと顔を真っ赤にした。「(また表情が変わったわ。)」と千聖は思っていた。
「なんか~。千聖さん、とても楽しそぉ~ですね?」
「そうかしら?そう見えるかしら?」
「そぉ~ですね。見えますね~。」
独特の口調でモカが言うと、千聖がニコッと笑った。
「あ、あの?し、白鷺さん?」
「何かしら?」
光が千聖に声をかけたところで丁度、お客さんが来た。
「しゃーせ。」
「いらっしゃいませ!あ、白鷺さん、すみません…。声かけたのに、お客様がいらしたので…。」
「良いわよ。お仕事頑張ってね。」
千聖は本来の目的であった紅茶を買う為にドリンクのコーナーに向かったのだった。
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千聖は「う~ん。」と悩んでいた。コンビニには様々種類の物が売っている。コーヒーや紅茶だけでも数種類は常に置いてある状況だ。
「(どれにしようかしら?)」
千聖は紅茶の前で悩んでいた。
「あれ?白鷺千聖?」
「はい?」
先程、入店したお客から声をかけられた千聖はその人物を観察した。茶髪にピアス。身長は170センチくらい。見るからにチャラ男といった風貌をしていた。
「マジか!芸能人じゃん!ちょっと、俺と遊びに行かね?」
ニヤニヤと笑いながら千聖にチャラ男が寄ってきた。
「すみません。これから仕事ですので…。」
千聖は笑顔で言った。しかし、普段、気の許せる人物に見せる笑顔とは違い、完全に作り笑顔だった。
「仕事なんてサボっちゃえば良いじゃん!俺と遊びに行こうぜ!」
「本当にすみません。大事な仕事なのでそれは出来ません。」
「チッ!なら、連絡先教えてよ!LINEで良い?」
「すみません。それも、事務所の方針でしてはいけない事になってるので…。」
千聖は絶えず笑顔で対応していた。
「(困ったわね…。どうしましょう。いや。どうしてやろうかしら?)」
千聖が物騒な事を考えていると千聖の後ろから「お客様。」と声が聞こえた。
「あぁん?」
「申し訳ございません。他のお客様のご迷惑になるので、辞めて頂けないでしょうか?」
声をかけてきたのは光で、深々と頭を下げて言った。
「別に迷惑かけてないじゃん?てか、店員さん男?女?どっち?」
「男ですが…。」
「小っさ。ガキがしゃしゃり出てくるんじゃねーよ!」
「申し訳ございません。しかし、他のお客様のご迷惑になるので…。」
「だから別に迷惑なんてかけて無いじゃん!引っ込んでろ!」
イライラした様子のチャラ男は光の胸ぐらを掴んだ。そして、右手をスッと後ろに振りかぶった。
「(殴られる。)」
光はそう思い、ギュっと目を瞑った。
「辞めて!」
千聖が叫ぶ。光がチャラ男とやり取りしている間に千聖はモカに腕を引っ張られ、離れた所にいた。
「(あれ?殴られない?)」
いつまでも飛んでこないパンチに疑問に思った光は恐る恐る目を開けた。そして、状況を確認すると「ふぅ~。」と息をついた。
「お客様、暴力は困ります。」
チャラ男の右手を2メートル近くありそうな身長で、がっちりした体型の男性が掴んでいた。かなりの強面で、思わずチャラ男も「ひっ。」と言った。ぱっと見はプロレスラーだが、このコンビニの制服を着ていた。
「す、すみませんでした!」
あまりの迫力にチャラ男はその場から急いで立ち去ってしまった。
「父さん。遅いよ。」
光が見上げて言う。
「え?お父さん?」
光の発言に千聖は驚いたように言った。
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「お邪魔します。」
「…ど、どうぞ。」
コンビニにて、光と千聖がチャラ男に絡まれてから数分後、千聖は光の父から「迷惑をかけたから」と店舗の裏にある光の自宅に招待されていた。緊張の面持ちな光に対して千聖は「ふふっ」と笑った。
「光君?光君の家なのに緊張しなくても大丈夫じゃないかしら?」
「む、無理ですよ。大ファンの白鷺さんが僕の家にいるんですよ?信じられないです。」
「ふふっ。それにしても、さっき、助けてくれた方は本当にお父さんなの?」
「は、はい。よく似てないと言われます。僕はお母さん似なので。」
光は千聖に説明すると、「僕もあれくらい大きくなりたいなぁ。」と続けて呟いた。
「前にも言ったけど、光君は光君でとっても可愛いわよ?」
千聖がニコッと微笑みながら言うと、光は顔を赤くした。
「か、かわっ…。で、でも、僕は男なので、可愛いより、やっぱり格好いいと言われたいです。」
「…やっぱり、男性はそう言う方が多いわね。でも、光君は女性にモテない?」
「…えっと、じ、自慢に聞こえちゃうかもですが、告白はたまにされます。」
光は恥ずかしいのか目線を反らしながら言う。
「そうでしょ?母性本能が擽られるから分かるわ。だから、気にしなくて良いと私は思うわよ?」
千聖は容姿を気にする光を励ましたくて言った。
「そ、そうでしょうか?」
「さっきも言ったけど、私はそう思うわ。」
「す、少しだけ自信がでました。…って、すみません!白鷺さん!ずっと立ったまま話をして…。こちらのソファーに座って下さい。」
「やっと気付いたかしら?」
「ご、ごめんなさい。」
「ふふっ。冗談よ。こちらこそごめんなさい。光君、表情がコロコロ変わるからつい、ね。」
「し、白鷺さん!?」
「千聖で良いわよ?」
「ほ、本当ですか?…じゃなくて!あ、あまりからかわないで下さい…。」
「ふふっ。気が向いたら…ね?」
千聖はイタズラが成功した子供のように微笑んだ。いつもテレビとは違う表情に光は再び、顔を赤くしてしまった。
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光をからかって遊んでいた千聖だが、今は慌てていた。さすが女優と言ったところか、表情には一切出てない為、その場にいる人は一切気付いていない。では、何故、千聖が内心、慌てているのかと言うと、現在、千聖の目の前では大男が頭を深々と下げている状況だからだ。これが土下座だったら流石の千聖も表情に出るほど焦っていたかも知れない。
「光君のお父さん?顔を上げて下さい!?」
「本当に当店でご迷惑をおかけして申し訳ありません!」
「大丈夫です。大丈夫ですから。顔を上げて下さい。」
千聖の言葉に光の父は頭を上げた。千聖はかなり上の方を見上げながら言葉を続けた。
「お店は何も悪くないじゃないですか?悪いのは絡んできたあの方です。なので、本当に気にしないで下さい。私は平気ですので…。」
「ありがとうございます。今後は女性の方に、更に安全にお買い物頂けるようにしますので…。」
光の父は再び頭を下げた。そして横にあった袋を取ると、千聖の前に出した。
「これはお詫びです。受け取って下さい。」
「いえ。受け取れません!さっきも言いましたが、お店にはなんの非もありませんし…。」
「いえ!受け取って頂かないと私の気持ちに整理がつきません!」
先程からこの平行線なやりとりがずっと続いていた。店に非は無いが、恐い思いをさせてしまったことに謝罪する店長である光の父に、芸能界にいるとはいえ、こんな大人な男性に謝罪されることに慣れてない千聖……だったが、だんだんと面白くなっている自分がいることに気付いていた。
「(凄く、大きな方なのに、一生懸命小さくなっているわ。)」
そうとはつゆ知らず、光の父は懸命に謝罪を繰り返す。
「父さん?白鷺さん困ってるよ?」
苦笑いしながら光は父に言った。
「白鷺さんも、その袋、頂いてくれませんか?パスパレの皆さんで食べて下さい。」
ちなみに、袋の中身は人気のあるお菓子の詰め合わせだった。
「…分かりました。では、頂きますね?ありがとうございます。でも、本当に気になさらないで下さいね?」
「「はい。ありがとうございます。」」
千聖の言葉に光と光の父は声を揃えて言った。
「そう言えば、光君?」
「はい?」
「千聖って呼んでと言ったじゃない?」
少しずつ緊張が解けてきた光だったが、再び表情を強ばらせた。
「よ、呼ばないとダメですか?…は、恥ずかしい…。」
「そうね。呼んで欲しいわ。」
「わ、分かりました。つ、次呼ぶ時は気をつけます。」
光は心の中で「(多分、無理。)」と思いながら言った。
「すみません。どこかで見たことあると思ってましたが、女優の白鷺千聖さんですか?」
「はい。そうですよ。」
「父さん?今更!?」
「わ、悪い。まさか本人とは思わなくて…。」
「いえ。大丈夫ですよ。」
罰の悪そうな表情で言う光の父に千聖は微笑みながら言った。
「知ってるとは思いますが、息子は白鷺さんの大ファンなので、良かったら仲良くしてあげて下さい。」
「父さん!?」
「えぇ。勿論です。」
「白鷺さん!?」
光は自分の父親と千聖のやり取りを驚きながら聞いていた。
「光君?」
「な、何ですか?」
「どうしても、白鷺さんって呼ぶのね?」
「…は、恥ずかしくて…。」
光はプイっと視線を逸らした。
「恥ずかしい…。でしたら、私と今からお出かけしましょう。」
「は、はい!?」
「恥ずかしいなら慣れるまで一緒にいたら良いかと思ったのだけれど…。ダメかしら?」
「だ、ダメじゃないです。…ホントに良いんですか?」
恐る恐る聞く光に千聖はニコッと笑って「勿論。」と言った。
「す、すぐに支度して来ます!」
光は自室に向かって走って行った。
遅くなりました。
ホントにすみません。
それと、遅くなりましたが、メリークリスマス。
今年も僕はボッチでした。