Choose thy LOVE.Love thy choice 作:ぴぽ
光は自室にて頭を抱えていた。千聖のマネージャーが来て、数日。光はずっと悩み、寝れない夜を過ごしていた。その証拠に、目の下にはクマができており、表情も疲労の色が見えていた。
「やっぱり…。付き合うの…間違っていたのかな…?」
光はボソッと呟くが、そう呟く度に、脳裏には楽しく笑う千聖が出てきていた。
「…でも…。別れたくないなぁ。…でもなぁ…。」
光はずっと、この自問自答を繰り返していた。
「まさか、年の瀬にこんなに悩む事になるなんて…。これじゃあ、新年迎えられないなぁ。」
「光?入るよ?」
光がまた深いため息をつくと、ノックも無しに茜が入ってきた。
「わぁ!び、びっくしたぁ…。流石にノックはしようよ。」
「別に良いじゃない。うわぁ…。酷い顔…。」
「うるさいなぁ。…あーちゃんは何しに来たの?」
「お餅を持ってきたの。毎年恒例でしょ?…んで、どうしたのよ?って、まぁ、大体の話は今、おじちゃんから聞いたけどね。」
腕を組み、立ったまま茜は光を冷ややかに見下ろしながら言った。
「なんだよ。何か文句でもありますか?あーちゃん。」
悩みと疲労でイライラしていた光はぶっきらぼうに言った。
「はぁ。光?あんたは本当に…。」
茜はそう言うと、光の胸ぐらを掴んだ。そして、「バカー!」と叫びながら光の頬に激しくビンタをした。「バシン!」と大きな音が響き、光は重力に逆らわずに、崩れ落ちた。
「痛っ!な、何するんだよ!」
「バカ!光のバカ!本当にバカ!あんたの覚悟はそんなもんだったの?ちーちゃんと付き合う時点で、これくらいの事が起きるって予想できたでしょ?…あぁ。バカだから予想してないか。だからこんなに腐ってたんだもんね?はぁ。ちーちゃん可哀想。彼氏がこんなヘタレだなんて。」
「い、言わせておけば!……いや。あーちゃんの言う通りだね…。」
暴言を吐きまくる茜に対して、言い返そうとした光だったが、何一つ、言い返す事ができずに、力無く、笑いながら言った。
「はぁ。あんたって奴は…。な~んで、私がここまで言わないと分からないかな…。でも、そのマネージャーもマネージャーだね。言い方があるでしょ。防犯カメラで見たけどさぁ。」
「へ?父さん、そんなの保存してたの?」
「してたわよ。てか、光?ちーちゃんにこの事言ったの?」
「ううん。言ってないよ。いらぬ心配をかけたくなくて。」
光は叩かれた頬を擦りながら言った。それを見た茜は苦笑いしながら保冷剤を渡した。受け取った光は「最初からビンタするつもりだったんだ…。」と心の中で思った。
「ちーちゃんに言った方が良いんじゃない?光だけの問題じゃないんだし。…別れたくないんでしょ?その事もちゃんと言った方が良いわよ?」
「そう…だね。今からLINEするよ。」
光はそう言うと、スマホを手にした。その瞬間、光のスマホが着信を知らせた。スマホの画面を見ると、千聖からの着信であった。正に時の人からの着信に驚きながらも、電話に出た。
「はい?もしもし?」
「あっ?光くん。今、何してるかしら?」
「へ?特に何もしてませんよ?」
「今すぐ、事務所に来てくれるかしら?場所はLINEで送るから。待ってるわね。」
「え?ち、千聖さん?千聖さん?…切れちゃった。」
光は「ツーツー」と通話終了を告げるスマホを眺めていた。
「どうしたのよ?」
「えっと、なんか事務所に来て欲しいみたい。」
「そう。丁度良かったじゃない。」
「だね。行ってくるよ。」
よいしょと立ち上がり、光は支度を始めるのであった。
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時は少しだけ遡る。Pastel*Palettesの事務所内では、年内最後のレッスンが行われていた。
「白鷺さん。少し良いでしょうか?」
「あら?何かしら?」
Pastel*Palettesのレッスン終了後、千聖のマネージャーが声をかけた。何か新しい仕事でも入ったのかと、持っていたカバンから千聖はスケジュール帳を出そうとしていた。
「あっ。スケジュールとかじゃなくて…。」
「そうなの?何の用かしら?」
「彼氏…。えっと、橘光でしたっけ?」
「えぇ。彼がどうかしましたか?」
「別れたいとか連絡来ましたか?」
マネージャーは表情を変えずに、只の世間話のノリで言った。
「…いえ。…来てませんが。」
長年、芸能界にいる千聖は今の質問だけで、大体察する事ができてしまい、マネージャーを睨みながら呟くように言った。
「…そんな睨まないで下さいよ。」
「光くんになんて言ったの?」
千聖は、相当イライラしているのか、毛先を指に巻きながら言った。
「何って、迷惑だから別れろと言いました。白鷺さんに言っても別れないでしょ?だから、橘光に言っただけです。」
「何故、別れないといけないのかしら?」
「当たり前でしょ?白鷺さんはアイドルですよ?もし、スキャンダルになったらどうするんですか?全く、そうなって、色々と処理するのはこっちなんですよ?」
表情を変えずに話していたマネージャーだったが、話している内に興奮してきたのか、だんだんと声が大きくなっていった。
「…つまり、私が付き合っているのが世間にバレたら貴方が大変な思いをするから別れろって事ですね?」
「…まぁ。そうだよ。橘光には、バレたら千聖も、パスパレも終わると言いましたけどね。」
「貴方に、呼び捨てで名前を呼ばれる筋合いはありません!」
今まで誰も見たことがない、千聖の激怒した声が事務所内に響いた。
「ち、千聖ちゃん!ど、どうしたの!?」
「お、落ち着いて下さい!千聖さん!」
驚いた他のメンバー達が慌てて、やって来た。千聖が殴りかからん勢いに見えたのだった。
「丁度良い。他のメンバーにも言いたかったんだよ。あんたらは何で、千聖が付き合うって言った時になんであんなに歓迎ムードだったんだよ。」
ニッと口角を上げ、呆れたようにマネージャーは言った。
「何故って、めでたい事じゃないですか!」
「そ、そうっスよ。」
Pastel*Palettesのメンバーは反論するも、マネージャーは「はぁ。」とため息をつき、前髪を掻き上げた。
「なんだよそれ?バレた時の事、考えてないのか?大変な事になるんだぞ?俺も!お前らも!」
「お、終わらないもん!」
「はぁ?」
千聖の後ろでプルプルと震え、涙を目に溜めながら彩は言葉を続けた。
「終わらないもん!そ、そんな事でパスパレは終わらないよ!始めだってデビューの時に叩かれて、でも這い上がってきたもん!…確かに、最初は凄く心配でした。で、でも、千聖ちゃん、光君と出会ってから本当に楽しそうで、幸せそうで、羨ましいくらい輝いてた。それをあなたは奪うんですか!?」
彩は息を切らしながら叫んだ。
「そーだよ。大体、うち、恋愛禁止じゃないんだし。別に自由じゃん。」
日菜も続けて言う。
「だ、だからって、わざわざそんな危険な橋を渡らなくても良いじゃないか!…アイドルが恋愛して、バレたらファンは黙っていない!デビューの時の事と比べないでくれ!」
「もう良いじゃないかな?マネージャー君?」
マネージャーも彩に負けじと叫ぶと、レッスンスタジオの入り口から低くて、野太い声が響いた。
「おじさん、誰?」
日菜がキョトンとした表情で、言うと、マネージャーは焦った表情で
「し、社長だよ!社長!な、なんで知らないんだよ!?」
と言った。
「まぁ、マネージャー君の言い分も分からんでもない。でもね…。」
社長と呼ばれた、50代のちょい悪親父みたいな風貌の男性はPastel*Palettesの方に近づきながら言った。
「で、でも、社長…。」
「とりあえず、白鷺君?その彼氏とやらをここに呼んでくれないか?私も会っておきたいし、当事者も呼んだ方が良いだろ。」
低く、野太い声がまた響く。迫力がかなりある為、その場にいた全員が黙ってしまった。
「わ、分かりました。れ、連絡します。」
その中でも、千聖がなんとか言葉を出すと、社長は満足そうに微笑んだのであった。
─────────────────────
「ここ…だよね。」
千聖から送られた地図を頼りに、光は事務所の前までやって来た。
「は、入っても…良いんだよね?」
そう呟きながら、ガラス戸をそっと開け、目の前にあった受け付けに向かった。
「あ、あの!ちさ…。し、白鷺さんに呼ばれて来た、橘光…です。」
「君が、橘光君!?きゃ~!可愛い!」
受け付けにいたお姉さんが光の容姿を見ると、目をハートにし、叫んだ。決して恋愛感情ではなく、ペットショップで子犬を見るような目で…。
「光くん!」
「あっ。千聖さん。こんにちは。」
「どうしたの!?凄い顔だけど…。」
「え?あはは…。ちょっと、色々ありまして。」
頭を掻きながら光は苦笑いをしたが、千聖は眉を八の字に下げ「ごめんなさい…。」と呟いた。
「千聖さん?」
「何でもないわ。社長がお待ちよ?」
「…はい?」
光の脳は理解が追いつかず、訳の分からないまま千聖の後を着いて行くのであった。
「失礼します。」
「し、し、し、失礼しましゅ!」
そして、「社長室」と書かれた札が貼ってある部屋に入って行くのであった。
「あはは!光君。そんな固くならずに楽にして。リラックスだよ。」
「え?あっ…。はい。すみません。」
光が部屋に入ると、社長と呼ばれた男性が笑顔で、出迎えた。そして、その横には光を睨みながら座るマネージャーの姿もあった。
「まぁ、2人とも、かけてくれ。話はそれからだ。」
「はい。失礼します。」
千聖がペコっとお辞儀をして、ソファーに腰掛けた。光も真似をしながら、座った。
「すみません。まず、紹介をさせて下さい。私の彼氏の橘光君です。」
千聖は凜とした声で言った。
「は、初めまして、橘光と言います。来年から高校生です。よろしくお願いします。」
「よろしくね。私はこの事務所の社長の愛沢だ。」
社長はそう言いながら、光に名刺を渡した。初めて貰った名刺を見て、光は更に、緊張感を高めた。
「あはは!光君。楽にしてくれて構わんよ。…緊張するなって方が無理かもだけどね。…まずは謝罪をさせて欲しい。うちのマネージャーが君に失礼な事を言って、すまなかった。この通りだ。」
ニコニコしていた愛沢だったが、表情を引き締めると深々と頭を下げた。その光景に光も千聖も絶句するのであった。
「し、社長!?あ、頭を下げる必要なんて…。」
「君は少し黙ってようか?それで、光君。うちのマネージャーから何を言われたのかな?」
「あっ。それなんですが…。」
光は持ってきていたカバンからDVDを1枚取り出した。
「僕が喋るよりも、見た方が早いかなぁと…。家がコンビニを経営してて、防犯カメラの映像です。」
「なるほど…。」
愛沢は呟くと、ノートパソコンを取り出し、早速セットした。そして、すぐに再生されたのであった。再生されている間、千聖は拳をギュッと握りながら、画面を睨み、愛沢は無表情で見続けていた。そして、光はと言うと、最後に父親に担がれた姿を見て、恥ずかしくなるのであった。
「こんな…酷い…。」
全て、見終わると千聖は口を開いた。
「光君、ありがとう。そして、辛い思いをさせたね。改めて、すまなかった。」
「い、いえ。大丈夫…です。あ、あの!僕は、千聖さんの事が、そ、その。だ、大好きなんです。仕事と学業を両立している彼女の事を心から尊敬してます。そんな彼女の支えに、僕はなりたいとお、思っています!」
始めはしどろもどろになりながら喋っていた光だったが、最後は、愛沢を、そしてマネージャーを真っ直ぐ見ながら言った。
「だ、だから!そ、それが迷惑なんだよ!」
「マネージャー君?私は君の考えが間違っているとは思わないよ。仕事をしているんだから、いらない、そして厄介な仕事を避けたいと思うのは普通の事だと思うよ?だけどね。君の場合、言うところを間違えたね。なんで光君に最初に言ったんだ?まずは私に言うのが筋だろ?」
愛沢は怒っているのか諭しているのか分からない表情でマネージャーに言った。
「…そう、ですね。そ、それで、社長の考えを聞かせて下さい!このまま交際を認めるのですか!?どうなんですか?」
愛沢の言葉に焦りながらマネージャーは額に汗をかきながら言った。
「そうだね。光君はさっき、聞いたから…。白鷺君は、どうなのかね?交際を続けたいのかね?」
「もちろんです。別れるなんて絶対に嫌です。」
千聖は多くは語らなかったが、光と同様に目線は真っ直ぐ愛沢に向けて言った。
「そうか。良い関係じゃないか。」
光と千聖の熱意を愛沢は感じ、ニコッと笑って言った。
「し、社長!?」
「君、自分のしたこと分かっているのか?光君の表情を見て分からないのか?目の下のクマとか見て何にも思わないのかね?…光君。相当悩んだみたいだね。」
「そう…ですね。色々と考えちゃって、寝れなくて…。でも、それくらいでウジウジと悩んでしまう、自分の弱さを痛感しました。これから先、千聖さんを守れるくらい、強い心を持たないといけないと感じました。」
光は苦笑いしながらも、ハッキリと自分の気持ちを伝えた。
「あはは!そうか。光君はしっかりしてるね。そうやって気付くだけでも立派だよ。これからも、うちの千聖を支えてやってくれ。例え、スキャンダルが出ても、ちゃんと守るから安心してくれ。…まぁ、出ないのが1番だけどな?あはは!」
最後は冗談ぽく愛沢は言い、豪快に笑った。
「し、社長…。」
「マネージャー君。白鷺君は芸能界にいるが、まだ高校生だ。それを大人が支えないでどうする?」
「うっ…。す、すみませんでした。…橘さんも白鷺さんもすみません…でした。」
罰の悪そうな表情を浮かべながら、マネージャーは頭を垂れた。そんなマネージャーを見て、光と千聖は目線を合わせると、「ふふっ。」と笑うのであった。そして光は安堵感に包まれ、「ふー。」と息を吐くのであった。
この作品も20話まで来ました。
早かったような長かったような…。
そして、次回はいよいよ最終回となります。
次回更新は予定は未定です…。
すみません…。
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