Choose thy LOVE.Love thy choice 作:ぴぽ
「千聖ちゃんの意気地無し!!」
「か、花音?」
電話を無理矢理切った花音は切った途端に目をウルウルさせ、顔を赤くして叫んだ。千聖は見たことがない友人の姿に驚いていた。
「千聖ちゃんの、バカ!ドジ!美人!ベース上手!」
「お、落ち着いて花音…。」
千聖が花音に近づき、花音の肩を掴んだ。
「落ち着いてるよ!千聖ちゃんなんて知らない!」
肩でハァハァと息をしながら花音は頬を膨らませ、プイっとそっぽを向いた。そんな花音の表情に千聖は「(可愛い…。)」と思っていた。
「千聖ちゃん。謝るって言ったよね?」
千聖はハッとして慌てて思考を戻した。
「あ、謝るわよ。で、で、でも…ひ、光君が…。」
「光君があんな性格って分かってるよね?なのに、怒って、光君を脅して何が面白いのかな?そんなにすぐに変われるとか思っているのかな?」
ジリジリと壁に千聖を追い込みながら花音は言った。
「か、花音?わ、わ、私が悪かったわ。だ、だから落ち着いて!」
「だから落ち着いてるよ!第一、私がどれだけ千聖ちゃんの気持ちを気付かせようと会話してたと思う!?なんで気付かないの!?なんで素直にならないの!?なんで分からないの!?」
とうとう壁まで追い詰められ、花音はドンッと壁を叩いた。
「(は、初めて…壁ドンをされたわ…。)」
千聖の顔の横に花音の両手があった。
「千聖ちゃん…。聞いてるかな?」
「き、聞いてるわ。」
「なら、今からどうするのかな?」
花音はなおも壁ドンしながらニコニコして言った。ただ、いつものニコニコとは違い、覇気が籠もっていた。
「で、電話で今すぐ謝るわ…。」
「うん。はい。スマホ。あっ。一応、スピーカーにしてね?」
いつ持ったか分からない千聖のスマホを花音は手渡した。
「(花音って怒ると恐い…のね。私が怒る時もこんな感じなのね…。)」
はぁ~。と千聖はため息をつきスマホをタップした。
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「…まだ…かな?」
なかなかかかって来ない電話に光は呟いた。さすがに正座は止めて胡座を組んでいた。
「松原さん…どうして電話切ったのかなぁ?」
光は電話を切った理由を考えてみたが、さっぱり分からなかった。まさか花音が千聖に説教をしているとは誰も思わないだろうが…。
「う~ん。LINEしてみようかな?」
光がスマホを持ち、操作をすると、画面が着信に切り替わった。光は「やっとかかってきた。」と呟き、通話をタップした。
「もしもし。」
「…あっ!光君?さっきはごめんなさい。」
「私も、急に切ってゴメンね。」
「あっ。またスピーカーなんですね。えっと、こちらこそごめんなさい。以前、千聖さんから言われてたのに…。」
どんよりとした光の声を聞き、千聖は花音を見ると、花音は「早く謝って。」と言いたげな視線を送っていた。
「光君、私の方こそごめんなさい。光君からLINEがなくて、さ、寂しかったみたいなの。だからあんな言い方して…。」
「ち、ち、千聖さん?ま、ま、また僕をからかってるんですか?」
「からかってないわ。本音…よ。」
「え?は、はい。で、でもだったら尚更、ごめんなさい。」
「ううん。光君は何も悪くないわ。でね。お詫びがしたいのだけど、光君が暇な日に会えないかしら?」
「お、お詫びなんて良いですよ!…で、でもまた会いたいです…。」
光の声は、嬉しいやら恥ずかしいやらで、少しずつ、尻つぼみして言った。
「いいえ。それでは私の気が済まないわ。だから気にしないで。それで、光君はいつが暇かしら?」
「僕はいつでも暇ですよ?」
「そう…。ちょっと待ってね?」
千聖はそう言うとスケジュール表を開いた。光の耳にはページを捲る音が聞こえてきた。
「明日の17時くらいはどうかしら?夕ご飯、一緒に食べましょう。…明日になれば雪も大丈夫よね?」
「わ、分かりました。あっ!松原さんもどうですか?」
「わ、私!?う、う~ん…。今回は止めとくよ。また誘ってね?」
「なら、決まりね。明日はよろしくね?光君。」
「はい。よろしくお願いします。松原さんも次は是非…。では、また。」
光がそう言うと、電話を切った。
「ふぅ~。き、緊張したぁ…。千聖さん、なんか凄く優しかったような?いや、優しい方だけど、なんかいつもと違ったような?」
千聖の変化に気付く光であったが、「たまたまだろ。」と片付けてしまった。自分の大ファンである千聖に恋心を向けられつつあるとも知らずに…。
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光との電話を終えて、千聖は大きくため息をついていた。しかし、最近よくつくため息とは違い、安堵のため息だった。
「(良かったわ。嫌われてはなかったみたいね。)」
千聖がそう思っていると、横から「パシャ」っとシャッター音が鳴った。千聖が慌てて、音のした方向に顔を向けると微笑んでいる花音がいた。
「か、花音!?」
「千聖ちゃんが可愛かったから撮っちゃった。」
「可愛くないわ…。どんな風に撮れたの?」
千聖が言うと、千聖のスマホが「ピコン」と鳴り、「送ったよ~。」と花音が言った。届いた写真を確認すると、スマホを操作しながら頬を赤く染め、優しい表情で微笑んでいる姿が映っていた。
「これが私?確かにホッとはしたけれど…。」
「そうだよ?」
「私って、こんな表情も出来たのね…。」
更にマジマジと自分の映った写真を見ていた。「(次のドラマの撮影で使えるかしら…。)」と思いながら…。
「それで、千聖ちゃん?光君の事、好きって分かったかな?」
「…ごめんなさい。これが好きっていうのか、やっぱり分からないわ。」
「そっか。大丈夫だよ!ゆっくり考えたら良いよ!でも、千聖ちゃん?光君と話している時の千聖ちゃんは本当に幸せそうだったよ?」
花音がふふっと笑いながら言った。
「そう…なのね。自分では分からないものね。」
「なんか、千聖ちゃん見てたら、私も恋したくなっちゃうな。」
「花音は優しくて可愛いからすぐに出来るわよ。…それと、さっきは怒ってくれてありがとうね。変かも知れないけど、怒られて何だかスッキリしたわ。」
「ご、ゴメンね。言い過ぎた…よね?」
花音が苦笑いしながら言うと、千聖はそんなことは無いと首を振った。いつの間にか、外からは暖かい日差しが入り込んでいた。まるで千聖の心を表すかのようだった。
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翌日、雪も半分以上溶け、通常通り授業が行われた。しかし、相変わらずの寒さで、登校するだけで心が折れそうになっていた。光は何とか1日の授業を受け終わり、下校しようとしていた。
「(千聖さんとの予定は17時。今は15時半か…。ちょっと時間あるな…。そういえばお礼って何だろ?)」
光は考えながら下駄箱から靴を出し、履き替えていた。そして、外に向かい1歩踏み出した時、「光君ー!」と声をかけられた。光が声のした方に目線を向けると、幼なじみである茜が走って光の方に向かってきていた。
「たまには一緒に帰らない?」
茜が光に追いつき、笑顔で言った。ちなみに、光と茜は保育園からの仲で、家も近所であった。小学生の頃は一緒に帰ったり、遊んだりしてたが、中学に上がってからはお互いに忙しくなかなか会えずにいた。
「あれ?塾は?」
「この雪だよ?無理に決まってるじゃん!」
茜は受験生になってから塾に通っていた。学校が終わったらすぐに向かい、夜遅くまで勉強をしているみたいだった。忙しくなった理由の1つでもある。
「そっか。う~ん…。今日…かぁ。うん。まぁ。良いよ?」
「…煮え切らない態度だけど、何か予定があるの?」
「うん。ちょっとね。でも、まだ時間あるから1回、家に帰る事にしたから大丈夫だよ。」
「そう?なら良かった。ほら、早く行こう!」
話ながら、靴を履き替えた茜は光を急かした。光はそんな茜を見上げながら「待って!」と言い、追いかけるのであった。
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一方、千聖も放課後になっていた。学校終わったからすぐに帰宅とはいかず、仕事に向かっていた。スケジュール表を見ながら千聖は今日の予定を確認する。
「今日は、バンド練習で間違いなしと。時間は16時40分まで。あまり時間ないわね。」
Roseliaの主催ライブのゲスト出演の為、最近は事務所で練習漬けだったPastel*Palettes。しかし、今日は、珍しく(?)彩に仕事が入っていたので、早めに終わる事になっていた。千聖は時間があまりない為、急いで事務所に向かった。
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「それで、塾はどうなの?」
「うん。難しいけど、なんとか、ついて行けてる…かな?」
茜は歩きながら「う~ん!」と背伸びをした。ちなみに、光は寒さからポケットに手を入れて、縮こまっており、いつも以上に小さくなっていた。
「そう言えば、光君に聞きたいことがあったんだ。」
「なに?」
「数日前の夜に、一軒家から出てきてたよね?女性と。あれ誰なの?」
茜は怪訝そうな顔で光に聞いた。
「え!?見てたの!?」
「うん。塾の帰りに。で、誰なの?」
「……。信じて貰えるか分からないけど、Pastel*Palettesの白鷺千聖さん…だよ。」
光がボソッと言うと、茜は目を丸くさせた。そして、数秒固まった後、ため息をついた。
「はぁ。あんたが千聖さんのファンって知ってるけど、妄想と現実の区別も出来なくなったの?」
茜は呆れたように言い、再びため息をついた。
「本当…なんだけどなぁ。」
光も呟き、ため息をついた。
「はいはい。分かったから。じゃあね。また明日ね?」
光と茜はT字路に差し掛かったところで左右に別れた。
「茜!今、喋ったこと内緒にしててよ!?」
「…分かったよ。私も幼馴染みが妄想癖がある人と思われたくないから言わない。」
ふんと鼻で笑い、茜は光の方を振り返らず、自宅に向けて歩いていった。
「ホントなのに…。」
残された光はまたボソッと呟くのであった。
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「ありがとうございました!」
練習を終えた千聖はロッカールームに急いで向かった。
「(ちょっと長引いたわね。でも、急いだら間に合うかしら。)」
千聖はLINEを打つために、スマホを取り出した。
「(えっと、少し、遅れる、かも、知れない…。)」
「すみません。白鷺さん。良いですか?」
LINEを打っていると、マネージャーから声をかけられた。
「(急いでいるのに…。)何かしら?」
「実は、急にインタビューが入ってしまいまして…。今から向かいますので準備して下さい。」
「…え!?」
「…何か予定がありましたか?」
「…いいえ。大丈夫です。…わかり…ました。」
千聖の返事を聞き、マネージャーは出て行った。
「はぁ~。」
「チサトさん。どうしましたか?なんだか元気ないです。」
「イヴちゃん。何でも無いわ。急いで行かないと…。」
千聖は練習着を脱いで、急いで制服に着替えていた。
「チサトさん、本当に大丈夫ですか?体調が悪かったりしますか?」
明らかに落胆した様子の千聖にイヴは困惑しながら言った。
「ごめんなさい。心配かけて…。本当に大丈夫だから。」
千聖は力無くニコッと笑うと、マネージャーが待つ車に向かった。
「(鞄は持ってこなくて良いわよね。また事務所に戻ってくるだろうし。)」
思考を仕事の方に向けるが、どうしても頭から光の事が抜けなかった。
「(ダメよ。仕事に集中しなくちゃ。)」
そう考えていると、気がつけば、車の前まで来ていた。
「では、白鷺さん。乗って下さい。」
「…はい。」
千聖が乗り込むのを確認して、マネージャーも運転席に乗り、車を発進させた。
「(そうだ。光君にLINEしなきゃね。)」
どうしてもがっかりした気持ちを隠せず、千聖はポケットに手を入れた。しかし、どこを探してもスマホは見つからなかった。
「(え?嘘!?ス、スマホ忘れてきちゃった?)」
千聖は焦りながらあちこち探すが、スマホはどこにも無かった。
「(どうしましょう…。)」
良い考えも浮かばないまま、車はインタビューが行われる場所に千聖の気持ちとは正反対で軽快に向かっていた。
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集合場所である商店街の一角で、光は千聖を待っていた。
「遅いな…。」
スマホで時間をみると、集合時間である17時を優に超えていた。
「寒っ。」
周りには雪がまだ残っており、その寒さから歩く人は周りに気を止める事もなく急いで家路に向かっていた。空は夕焼けのオレンジから真っ黒な闇に変化していた。よく見ると雲が出始めており、月を隠そうとしていた。
「(う~ん。どこかで暖をとりたいけど、来るかも知れないし、どうしようかな?)」
光は先程から何回も千聖に電話やLINEをしているが、千聖から返信が来る事はなかった。
「(まぁ、もうちょっとこのまま待とうかな?)」
冷たくなったスマホをポケットに入れて、空に向かい、ふぅ~っと息を吹くと、白い息が中に浮いて行った。
「(タバコ吸ってるみたいだなぁ。)」
とこの時の光は呑気に考えていた。
皆さんは冬の寒空の中、どれくらい待てますか?
次回、話に進展があるかも?
感想&評価お待ちしています。
ポピラジの新コーナー「りみりん、あのね。」を聞きました。可愛すぎて僕のライフを削っていきます。