怠惰な海兵は昼寝を好む   作:オハギ

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ついつい書いてしまいました。


1話 親は子供の夢を壊すな

 子供の頃、俺は魔法使いになるのが夢だった。

 

 きっかけは、父さんが何度も読んでくれた一冊の古びた絵本。

 その絵本の内容は、魔法使いの少年が世界を旅をするという至って在り来たりなもの。

 

 しかし、俺はその物語に惹かれた。

 

 色鮮やかな煌めく魔法の数々。

 子供の頃の俺はページをめくる度に胸が踊り、憧れが強まっていった。

 

 “俺も魔法使いになりたい”

 

 そう思って、父さんに聞いてみたんだ。

 

『魔法使いってどうやってなるの?』

 

『簡単にはなれないさ。厳しい修行をしなくちゃ』

 

 子供の俺の夢を壊さないように父さんは言ったのだろう。

 今になって振り返れば当たり前だが、子供は純粋なのだ。良くも悪くも。

 

 だから俺は父さんの言葉を鵜呑みにしてしまったのだ。

 

 当時5歳だった俺はまず、町を走り込むことを決める。

 修行と言えば走り込み!そんな印象があったから。

 

 ⋯⋯けど、1年経っても魔法は使えない。

 もう一度父さんに聞いてみた。

 

『他に何すれば魔法使いになれるの?』

 

『まずは体を鍛えなきゃだめだなー』

 

 そう言われ、俺は走り込みに加えて体を鍛え始めた。

 周囲の人達からは変な目で見られてた気がするけど、知ったこっちゃない。

 魔法使いになるためなら何だってやってやる。

 

 当時の俺はとにかく必死だった。

 

 

 ━━━更に2年が経つ⋯⋯が、魔法は使えない。

 

 

『鍛え方が甘いんだ。父さんが直々に鍛えてやろう』

 

 父さんはそう言って、俺に武術を教え始めたのだ。

 流石に8歳になった俺は疑ったよ、“これって関係あるの?”って。

 

 でも、父さんが嘘をつく筈がない。

 そう信じて俺はひたすら修行に打ち込んだ。

 

 

 ━━━更に5年が経つ⋯⋯が、魔法は使えない。

 

 

『人には覇気という力が存在するんだ』

 

 もはや魔法の“ま”の字も無くなってしまった。

 父さんは訳の分からないことを言い出して俺を更に鍛え始める。

 

 ⋯⋯しかし、まだ俺は信じていた。

 

 魔法使いになるにはこの修行が必要なのだと。

 これを乗り越えた先に夢の実現が叶うのだ⋯⋯と。

 

 

 ━━━更に5年経つ⋯⋯が、魔法は使えない。

 

 何故だ、何故だ⋯⋯何故魔法が使えない?

 俺には才能が無いのだろうか?

 

 毎日毎日修行をしたんだぞ。

 最近じゃ手合わせで父さんにも勝てるようになってきたんだ。

 覇気だって使えるようになったのに⋯⋯!

 

 それなのにどうして⋯⋯!

 どうして魔法が使えるようにならない⋯⋯!?

 

 俺はこの悩みを父さんに打ち明けた。

 しかし、返ってきたのは無情な言葉だ。

 

『お前も18歳になるんだ。いつまでも馬鹿な事を言うんじゃない。⋯⋯魔法使いになんてなれるわけないだろ?』

 

『は⋯⋯?』

 

『お前は俺と同じ海兵になるんだぞ。何時まで子供の気分でいるつもりだ?』

 

 父さんが何を言ってるのか分からなかった。

 いや、分かりたくなかった。

 

『⋯⋯嘘、だったのか』

 

 ずっと信じてたのに⋯⋯。

 父さんの言うとおりにすれば魔法使いになれるって⋯⋯そう思って今日まで⋯⋯。

 

『いいか?お前は既に中将である俺と同等の強さだ。何れは海軍を引っ張る存在になると確信しているぞ』

 

 父さんが何か言ってるが、俺の耳には届くことはなかった。

 聞く気もないし、興味もない。

 もう⋯⋯どうでもいい。

 

 その日、俺の夢と父さんへの信頼は消え失せた。

 

 

 

 

 ▽■▽

 

 

 

 

「⋯⋯!⋯⋯さ!」

 

「ん⋯⋯」

 

 何やら耳元が騒がしい。

 

 陽気な日差しを浴びながら昼寝してたんだが、何者かが邪魔をしているらしい。

 しかも激しく揺らしてくるときたもんだ。

 

 俺は重い瞼を少しあげてその犯人を睨む。

 

「起きてください!ロード大佐!!」

 

「⋯⋯アリスうるさい」

 

 太陽の光で輝く長い金髪が見える。

 今はそれすらも眩しくて鬱陶しくてやかましい。

 

「もうすぐ会議が始まりますよ!?」

 

「⋯⋯そう」

 

「⋯⋯そう、じゃないです!遅刻したら補佐の私も怒られるんですよっ!!」

 

 キンキンと高い声が耳に響く。

 せっかくの美人もこんなに騒いでちゃ意味ないな。そんな事を思いながら俺は体を起こす。

 

「⋯⋯懐かしい夢見てた」

 

「はいはい、そんな事より会議ですよ大佐!はい、コート!」

 

「⋯⋯ん」

 

 アリスが俺に白いコートを羽織らせる。

 背には“正義”の2文字があり、これこそが海軍将校としての証だ。

 

 まあ、だから何だって話だけど。

 

 俺は白くなった(・・・・・)髪をワシワシかきながら会議室へと向かう。

 

 あの日から、何事にも関心が湧かなくなってしまった。⋯⋯睡眠だけは必須だけど。

 

 父さんのせいだ━━━そう決め付けたい所だけど、俺自身が馬鹿だったせいでもある。

 てか、本当に馬鹿でしょ。

 

 何が魔法使いになりたい、だ。

 

 

 ⋯⋯結局、流されるまま海兵になって雑用から始まり、3年後には気付けば海軍本部大佐か。

 適当にやっても意外と出世できるもんだ。

 

「⋯⋯遅れました」

 

「お、遅れて申し訳ありません!」

 

「時間厳守だ、早く席に着け。ロード大佐、アリス中尉」

 

 扉を開けると既に他の海兵は揃っていた。

 皆が俺達を注目⋯⋯いや、睨んでるけど知らん。

 隣で震えているアリスを放っといて、俺は空いてる席に移動する。

 

「それでは始めるとしよう!」

 

 部屋の1番前で司会進行をするレイド中将━━━もとい父さん。

 

 

 チラチラこっち見るな気持ち悪い。

 

 

 

 

 ▽■▽

 

 

 

 

 まあ、会議が始まって直ぐに寝た訳だけど、アリスが代わりに聞いてたから問題ない。

 どうせ大した内容じゃないし。

 

「⋯⋯で、なんです?ガープ中将」

 

「会議中に寝ておる小僧に罰を与えに来たんじゃ」

 

 再び昼寝をしようとした矢先にこれだ。

 俺は目の前の筋骨隆々なパワフルじいさん━━━ガープ中将を見上げる。

 

「あなたも寝てたでしょう」

 

「わしは偉いからいいんじゃよ!」

 

「⋯⋯無茶苦茶だ」

 

 これが海軍の英雄と言われる男か。

 実力は身をもって知ってるけど、だからと言って自由すぎだ。

 

「という訳で、お前にはコイツらをしごいてもらう!入ってこい!」

 

「「は、はいっ!!」」

 

「⋯⋯はあ」

 

 勝手に話が進み、ガープ中将が呼び出したのは二人の少年。

 この英雄様に絡まれたら諦めるしかない。

 抵抗するだけ無駄なのは経験済みだ。

 

「で、君たち誰?」

 

「は、はいっ!雑用のコビーです!」

 

「お、同じく雑用のヘルメッポです!」

 

 ピンクの髪に眼鏡を掛けた少年がコビー。

 金髪のひょろひょろがヘルメッポ。

 二人とも雑用か。

 

 ガープ中将が連れてきたってことは見所あるんでしょ、きっと。

 

「そんじゃ、頼んだぞ〜」

 

「期間は⋯⋯?」

 

「わしの気分」

 

 それが一番困るんですけど。

 

 ガープ中将はさっさと居なくなり、残されたのは俺と雑用たち。

 ふむ、後は俺の自由ってことか。

 なるほど。

 

「それじゃ二人とも、最初の任務だ」

 

「「は、はいぃぃぃっ!」」

 

 そんなガチガチに緊張しなくても。

 俺ってそんなに怖いかね?

 階級差は途方もないくらいあるけどさ。

 

「昼寝しよう」

 

「「え?」」

 

「おやすみ⋯⋯」

 

「「ええ!?」」

 

 二人が凄い驚いてる気がするけど、眠くてそれどころじゃない。

 目蓋が自然と閉じ、意識がだんだんあやふやになる。

 

 そして、俺は眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 目を覚ましたら二人が隣で寝てた。

 度胸はそれなりにあるらしい。

 

 

 あとアリスにまた怒鳴られた⋯⋯雑用君達と一緒に。

 

 

 

 





親は子供の夢を壊しちゃいけません!
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