怠惰な海兵は昼寝を好む   作:オハギ

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2話 嵐には要注意

 

「あと30周!男なら根性見せなさい!!」

 

「⋯⋯ぜぇっ、ぜぇっ⋯⋯は、はいぃぃっ!」

 

「⋯⋯ふ、ふぇい⋯⋯」

 

 竹刀を片手に怒鳴り散らすアリス。

 そして訓練場のグラウンドを走り込んでいる二人の雑用。いや、徒歩より遅いなあれ。

 

「がんばれ〜」

 

 俺はベンチに座って眺めており、時々こうして応援している。

 

 ガープ中将に頼まれた手前、無視するわけにもいかないし。かといって鍛えてやるのも面倒だ。

 そんな暇があったら寝たい。

 

 こんな時はアリス中尉の出番だ。

 

 頼れるアリスを雑用君達の教育係に任命。

 当然ギャーギャー騒がれたけど、実際やってみれば満更でもなさそうに見える。

 

 『責任もってちゃんと見ててくださいよ!』

 

 アリスにそう言われてベンチに座って眺めてるけど、問題無さそう。

 よし、そうと決まれば⋯⋯。

 

「一眠りしよう」

 

 俺はベンチに横になる。

 ちょっと固いけど問題ない。俺は基本的にどこでも寝れる男なのだ。

 

 目を閉じ、夢の世界へ旅立とうとする俺だが⋯⋯どうもそうはいかないらしい。

 

 

「変わらんな、ロード」

 

 

 随分聞き覚えのある声だ。

 俺は片目だけ開けてその声の主を見る。

 

「お互い様です、ボガード大佐」

 

 スーツで身を包み、ハットを深く被った彼。

 腰には一本の刀があり、“正義”を背負ったコートを羽織っている。

 

 ガープ中将の副官であり、俺が世話になった人達の一人だ。

 

「敬語はよせ、もう立場は対等な筈だ。そうだろう、大佐?」

 

「俺、年上には敬語を使えって教わったので」

 

「ふっ、そうか。お前らしい」

 

 ベンチから立ち上がり、ボガード大佐と握手する。

 相変わらずクールな人だ。

 この人にタメ口とか俺には無理。

 

 あ、それよりも彼に言いたいことがあるんだった。

 

「ボガードさん」

 

「なんだ?」

 

「ガープ中将をちゃんと制御してください。俺の睡眠が妨害されます」

 

「無理だ」

 

 そんな即答しなくても⋯⋯。

 

 

 

 

 ▽■▽

 

 

 

 

「どうだ、あの二人は?」

 

「まだ全然弱いですけど、度胸と根性はあるんじゃないですかね」

 

 竹刀を振り回すアリスに追いかけられている雑用二人を見ながらそう答えた。

 てか何してんの、アイツら。

 遊んでるの?

 

「そうか」

 

 ボガードさんは隣で一言そう言った。

 表情は見えないけど、少し嬉しそうなのは気のせいか。

 その後も一緒に訓練を眺めていると、懐かしむようにボガードさんが話し掛けてくる。

 

「ここに来ると3年前を思い出すな」

 

「最悪な思い出ですよ⋯⋯」

 

 俺はうんざりしたように答えた。

 この訓練場は思い出の場所なのだ。勿論悪い意味で。

 主にガープ中将が原因である。

 

『小僧の腐った根性をわしが叩き直してやる!』

 

 そう言って事あるごとに俺を連行し、訓練場で襲われていたんだ。

 もう意味がわからない。

 ただ雑用をサボってただけなのに。

 

「あの時は心底驚いたものだ。ただの雑用がガープ中将の攻撃を全て避けるのだから」

 

「そりゃ全力で避けますよ。当たったら普通に死にますし」

 

 あの人、絶対殺す気だった。

 武装色の覇気を纏ってたのが何よりの証拠。

 

「だが、今のお前ならばガープ中将とも渡り合えるんじゃないか?」

 

「それもう人間辞めてますって。化け物ですよ、化け物」

 

 

「ほう、わしが化け物だと?」

 

 

 ━━━━一瞬心臓が止まった。

 

 

 おかしい。

 何で今まで気が付かなかった⋯⋯この気配に。

 確かに眠気はあったけど、そこまで気は抜いてなかったぞ。

 

 俺はゆっくり後ろを振り返る。

 

「あ、どうも⋯⋯お元気そうで何よりです」

 

「そう言う小僧は元気が無いな。どれ、久しぶりに相手をしてやろう!」

 

 そこには素晴らしい笑顔のガープ中将がいた。

 俺はボガードさんに助けを求めようと目を向けるが、ニヤニヤされて終わってしまう。

 

 まさか⋯⋯嵌められた?

 そんな馬鹿な。

 

「俺、書類残ってるんで⋯⋯お先します」

 

「待てィ!あからさまな嘘じゃろ!」

 

 はい、嘘です。

 くそ、仕方ない。ここは逃げの一択だ。

 

「⋯⋯(ソル)

 

「逃がすか小僧ッ!!」

 

 ちょ、普通に追い掛けてきてるし。

 速さには自信あるんだけど、どうやら化け物(ガープ中将)には通用しないらしい。

 

 

 そして、何だかんだでアリスや雑用君達も巻き込まれて━━━巻き込んだのは俺だけど━━━ちょっとした騒ぎになったのだった。

 

 

 

 

 ▽■▽

 

 

 

 

「じゃ、わし帰る!」

 

「精進するんだぞ、お前ら」

 

 嵐が去った。

 

 俺はガープ中将とボガードさんを見送り、訓練場をゆっくり見渡す。

 ただ一言⋯⋯悲惨だ。

 

「これ、誰が直すの」

 

 グラウンドはあらゆる箇所にクレーターが出来ており、付近の建造物も滅茶苦茶。

 しかも負傷者多数。

 

「あれが⋯⋯伝説のガープ中将⋯⋯凄かった」

 

 アリスが倒れながら目を輝かせている。

 確かに凄かったね。

 でも憧れるのはやめた方いいよ。絶対。

 

「君たちも大丈夫?」

 

「「⋯⋯」」

 

 雑用のコビーとヘルメッポは完全に気絶。

 

「はぁ⋯⋯面倒だ」

 

 流石に二人をこのまま放置する訳にもいかず、医務室へ連れていくことにする。

 

 アリス?

 アイツは頑丈だから放置で大丈夫。

 

 まったく⋯⋯ガープ中将が絡むと碌なことがない。疲れるし、物は壊すし、規格外だし、昼寝出来なくなるし。

 

 

「ほんと、面倒な人だ」

 

 

 俺は少しだけ笑みを溢し、雑用達を医務室へ担いで行くのだった。

 

 

 

 





ボガードさんは大佐という設定です。


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