人形西部劇-ドルフロウェスタン-   作:neocy

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カルカノ姉をお迎えできたので初投稿です。
この物語の中においては「彼女」はおっかない枠です。


第1話「グリフィンタウンの一番おっかない女」

ここは荒野のウェスタン、2062年。

 

その晩、変な夢を見た。

「ほーら※※※、お前の大好きなコーラだぞー。今日はたくさん飲んでいいからなぁー」

「わーいコーラだぁ☆※※※、コーラだーいすき☆アムアムアムアム……」

「バッカおめぇ、コーラを缶ごと食うやつがあるか!ペッしなさい!ほら、ペッ!」

 

……な、変な夢だろう?

 

「確かに変な夢ですね……。念の為、頭の病院に行ったらどうです?」

「お!辛辣ゥー!」

「辛辣もなにも、心配してるんですよ。保安官のこと」

その晩の夢の内容を話したら、M590にもの凄く心配された。

 

3000万の賞金首を捕まえてから数日後、連邦司法局の職員から懸賞金を受け取った俺達は開拓都市「グリフィンタウン」に戻っていた。

都市なんて言えば聞こえはいいが、普段は砂埃が酷く、雨が降れば泥濘で四駆でも脚が取られてしまう悪路の「自称メインストリート」と、「自称上等な建物」の改造コンテナやプレハブ建屋、「自称住宅街」と言う名のトレーラーパークが町の南にある程度の片田舎、いや西部の辺境である。

町を興した退役軍人の現町長が私財を投じたお陰で最低限のインフラが確保されている分、他の開拓都市に比べれば幾分かマシと言うところだ。

 

そして俺たちが寛いでいる建物はプレハブ造りとは思えない程の立派な内装で知られる町一番の酒場、その一室であった。

「お待たせしましたわ。確かにきっかり3000万頂戴しましたですわよ」

そう言ってホクホク顔を浮かべながら部屋に入ってきたのはスプリングフィールド、野良の戦術人形でありながら、この酒場「サルーン•ド•スプリングフィールド」を切り盛りしている敏腕経営者である。

「それでは保安官事務所の権利書と鍵をお渡ししますわ。保安官のお仕事頑張ってくださいね」

スプリングフィールドは手にしていた書類と、この町の保安官事務所の鍵を微笑みながら俺に渡してきた。

 

なぜ彼女が保安官事務所の鍵を持っているのか。

それについては、俺が保安官として就任する前の出来事を説明しなければならない。

 

ある日、グリフィンタウンの保安官(前任者)が死んだ。

なんでも町近郊の砂漠で蛇に噛まれたのが原因だそうだ。

 

彼は典型的な人形差別主義者であった。確かに保安官としての責務は全うしていたそうだが、彼は常に人間びいき、人形軽視の選択をとっていた。

ある日、彼はスプリングフィールドの店でトラブルを起こした。

給仕の自律人形に無理矢理手を出し、あろうことか暴力を振るったのだ。

これに対しスプリングフィールドは正式な謝罪と法の定める内での賠償を保安官に要求するが、保安官はこれを無視するどころか「人間への反逆である」と罪をでっち上げようと脅迫しだした。

これに業を煮やしたスプリングフィールドは保安官に不満を抱いている住人を煽動し、保安官事務所の焼き討ちを決行。

火炎瓶、手投げ弾、機銃、ロケット砲を持ち出して徹底的に破壊行為に及んだ。

流石に肝を冷やしたのか、保安官は命からがら逃げだすも、先述した通り、蛇に噛まれて死んでしまった。

「正直ヤり過ぎましたわ」

そう言って反省の色を見せたスプリングフィールドは巨額の私財を投じて保安官事務所の修復を行う事で咎を受けずに済み、俺たちがやってくるまでの間、鍵の管理をしていたのである。

 

「それにしてもあっという間だったのですね。戻って来るまでに一週間はかかるんじゃないかと予想してましたのに」

「普通なら捜査込みで一週間は必要だろうさ。だが、あそこまで無防備な奴なら朝飯前だ」

「私も驚きました。あの男性、護衛の人形をつけていたと言え、全く警戒心が無かったものですから」

そう、3000万の賞金首、アンドレイ某は無防備その物だった。あれ程の悪事をやってきた男だ。足跡の消し方も一流かと思いきや見つけてくれと言わんばかりに痕跡を残しているし、現場でも戦術人形一個小隊との交戦の可能性も考えていたが、箱を開けてみればデリヘルの従業員と不運な自律人形のみとお粗末なものであった。

今思えば異常としか言いようがない、まるで自分が狙われているという自覚が無いほどの無防備っぷりだった。

 

「おまけ3000万なんて、海賊漫画の影響を受けてるんじゃないかって金額の掛かり方も可笑しなもんだ。スプリングフィールドさん、この話を俺達に持ってきたあんたなら何か知ってるんじゃないか?」

「さぁ、なんの事でしょうかねー、オホホのホー」

 

試しに問いただしてみると、スプリングフィールドはワザとらしく誤魔化す。

しかし、それだと「あなたのご想像通りでしてよー、オホホのホー」って言ってるのと変わらないだろう。

 

これは俺の想像ではあるが、アンドレイ某はスプリングフィールドのビジネスに悪い意味で関わったに違いない。

恐らく町の外でスプリングフィールドが手掛けているビジネスのシマに手を出し、その報復として賞金を懸けられたのだろう。

しかし、スプリングフィールドと言えど個人で懸けられる賞金にも限度がある。それにあれだけの罪状、明らかに司法局やその手の団体に情報をリークして「賞金を懸けさせた」ものだろう。仕上げに巨額の賞金首の情報が漏れないように独占すればマッチポンプの準備は完了となる。

 

この仕掛けを整えるには高度な情報収集能力とコネクションが必要なはずだ。

この話自体も、彼女は「保安官としての資質を見定める個人的なテスト」と言っていたが、もしかしたら俺たちが町に来ることすらも計算の内で、このマッチポンプを実行に移したのではないだろうか。全く油断できない相手だ。

 

「………!……!」

「……!……!」

スプリングフィールドの手腕に一人感心していると、にわかに外が騒がしくなっていた。

「酔っ払い同士の喧嘩でしょうかね?」

「俺が仲裁に入ってこよう、保安官としての初仕事だ」

そう言ってドアを開けた先には大声で喚く一人の男と彼を複数掛かりで抑える酒場の給仕がいた。

「ミズ•スプリングフィールド!頼む、後生だ!やつの落とし前で足りないならアンタが望むだけの額を支払う用意はある!だから頼む!あれだけは、アレだけは勘弁してくれぇっ!」

「落ち着いてください、ミスター•カッポネ!オーナーは現在取り込み中ですので、今しばらく別室でお待ちください!ミスター、落ち着いて!ミスター!ステイ!」

 

喧嘩ではなさそうだし仲裁も不要と判断した俺はドアをそっと閉じた。

「すみません保安官。何ともお見苦しいものをお見せしてしまって……」

「カッポネって、アルベルト•カッポネか?暗黒街の帝王の?一体何だって……、いや、説明は結構。好奇心は時として人をも殺すと言うしな」

アルベルト•カッポネ、裏社会に通じるものならだれでも知っているビッグネームだ。

そんな大物がどうして都会から遠く離れた辺境の町にいるだろうか、いやいるわけがない。

たぶんそっくりさん、物まね芸人の地方営業だろう。いやー、裏社会の有名人の物まねとか度胸あるなー。最高だ、きっと大物になれる。こんなところで燻ってちゃダメだ。

 

「ほ、保安官。そろそろ事務所に行きませんか?私、新装されたという事務所の中を確認したいなーって思うのですが」

危うくスプリングフィールドの暗部に踏み込もうとしてたところでM590が助け舟を出してくれた。

「お、そ、そうだな。じゃあスプリングフィールドさん、とても有意義な時間であったが、俺たちは事務所で仕事の準備をするのでお暇しよう、逃げだしたという保安官補たちも探さないといけないしな。M590、事務所の書類はきちんと持ったな」

「えぇ、保安官。スプリングフィールドさん、今日はありがとうございました」

「いいえお気になさらず。私も有意義な時間を過ごせて楽しかったですわ。良ければ保安官事務所までご案内しましょうか?」

 

「「いいえ、ご心配なさらず」」

 

暗黒街の帝王ですら震え上がらせる女、スプリングフィールド。

この日学んだのは、彼女はこの町で一番おっかない女である事だった。

多分ガチでキレたM590よりもおっかないだろう。

「あの人だけは敵に回したくないですね」

「あぁ、全くだ。彼女を敵に回すくらいなら正規軍相手にドンパチやったほうがマシだな」

「流石にそれは言い過ぎじゃ……。ところで保安官、あの人と私、どちらがおっかないかなんて考えてませんよね?」

「え、あ、あはは。ばっかお前、そんな事考える訳……」

「へぇ……」

「……すいません、ちょっと考えました。やっぱあなたがナンバーワンです」

この後無茶苦茶折檻された。




M590に折檻されたい……されたくない?
先生!西部劇要素さんの容態が悪化してます!このままじゃ怪文書になります!

本作では第三次大戦やらで失われてしまった旧世界の物資を回収したり、文字通り開拓を行うグリフィンタウンのような都市が点在しているという設定になります。
こうした都市に流れ着くのはスプリングフィールドのような山師や保安官(主人公)のように中央での生活に嫌気がさした人、居場所を失い新天地を目指す人など様々です。

▼登場人物
・スプリングフィールド
みんな大好き☆4戦術人形。カスタムマッチ弾装備で世界が変わる。
半〇直樹の如く、やられた分はn倍返し(ただしnは自然数とする)でやりかえす。
「お金が好き」というよりは「儲かる過程を楽しむ」ゲーム感覚で商売をやっている。

・前任者の保安官
本作を書くにあたって必ず死亡する事が決まっていたモブ。
ドルフロの世界には武力行使する反戦団体や過激な人権団体がいるので、人間優位を唱える「人形差別主義者」なるものがいてもいいのでは?と思った。
本作ではこの手の人間が犠牲になることが多いと思います。

・暗黒街の帝王
シカゴ在住梅毒王とは何の関係もない2062年存命のオーガニックギャングスタ。
スプリングフィールドの盛り立て役として適当に登場させたが、使い切りは勿体なさそうなので、今後もどこかで登場させたい。
多分碌な目には合わない。

・※※※
「保安官ンンンンン!!!コーラは好きかぁーーーー?????」

・蛇
学名「テッケツツインテ―ルゲーマー」
噛まれると死ぬ。
一緒にゲームをしてやると機嫌が良くなり見逃してくれる。
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