人形西部劇-ドルフロウェスタン-   作:neocy

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私は今月もネゲヴを製造できなかった敗北主義者です。
(ひとまず切りの良いところまで書けたので前後編に分けて投稿です。の意)


第2話「コーラ☆モンスター」(前編)

ここは荒野のウェスタン、2062年

 

あ奴の事か?

うむ!もちろん知っているぞ!

まぁ、話せば長いんじゃがな。

 

ところで知っておるかの?強い人形は3つに分けられるのじゃ。

性能に恵まれた人形

経験を積んだ人形

自我に生きる人形

この3つじゃ。もちろんわしは経験豊富な老兵じゃぞ!

え、わしの話はいいからあ奴の話をしろ?

と、年寄りはもっと大事に扱うのじゃあ!

はぁ……、まぁそうじゃな。あ奴は……

 

あ奴は自我〈コーラ〉に生きる人形じゃった……

 

「うんうん、わかったよおばあちゃん。このアメちゃん持って行っていいからお家にお帰り」

「な、なぁ!?お主ら逃げた保安官補たちを探しておるんじゃろ!?だったら情報提供者は大事にするんじゃあー!」

「俺も人形の専門家じゃないからわからないけどな、流石にコーラに生きるってのは無いと思うぞ?」

 

グリフィンタウンの保安官事務所での仕事が始まって数日が経った。

荷解きを終えた俺たちは、町のパトロールなどの通常業務を行う傍らで逃げた保安官補たちの捜索を続けていた。

元々グリフィンタウンには5人の保安官補が居たが、スプリングフィールドによる焼き討ち事件に乗じて暇を取り、行方をくらましているのだ。

しかし、そのうち1人はすぐに見つかった。

リー•エンフィールド、狙撃担当の戦術人形である彼女が居たのは隣町の留置所であった。

隣町の保安官曰く、酒場で働く彼女の料理を食べた住人がひとり残らず気を失ったので、事件性の確認する為身柄を拘束していたのだという。

結果、彼女の料理からは毒性や違法薬物の類は検出されず、只々クソ不味いだけの料理と判断された。

そして町の利益にならないという理由から、古巣のグリフィンタウンに引き取って欲しいとの要請がでたのである。

また、リー•エンフィールドと町に戻って来ると、町中が阿鼻叫喚に包まれ、あのスプリングフィールドが酒場の入口に武装した給仕とバリケードを構えて出禁通告をするという珍百景を見る事ができたのは、彼女のメシマズが今に始まったことではないという証左だろう。

 

その最中に事務所を訪れたのが目の前にいる戦術人形、通称「ナガンばあちゃん」だ。

 

「保安官、まずは話を聞いてあげてはどうですか?ちょうどお茶を煎れたところですから、ナガンさんもどうぞ」

「おお、かたじけないなM590。全く、こやつには過ぎた相棒じゃな」

「へいへい。じゃあ前置きは短めで頼むぞ」

 

ナガンばあちゃん曰く、保安官補の中でも一番の腕を持つガンスリンガーの知り合いが町の北で野盗狩りをしているとの事だった。

ガンスリンガーの名はコルトSAA。グリフィンタウン創成期から知られる有名人であり、多くの伝説を残しているそうだ。

6発の弾丸で10人を倒したり、物陰に隠れた悪党を跳弾で狙撃したり、一度に3人を相手にした早撃ち勝負に勝利したり、と枚挙に切りがない。

 

「まるでダイムノベルのカウボーイだな」

「あー!信じておらんな保安官!あの鬼畜で知られた前任者ですら、あ奴の前では顔色を変えてコーラを1ダース献上しとったんじゃからな!町のものに聞けばみんな首を立てに振るぞ!」

「あの、さっきも気になったんですが何故コーラとコルトSAAが結びつくのですか?」

「え?何故かって、そりゃコルトSAAだからじゃろ?」

「「いやその理屈はおかしい」です」

 

M590とリアクションがちょうどハモったところで、緊急事態を知らせる警鐘が事務所内に鳴り響いた。

『保安官!町の北で救援要請を知らせる信号が上がりました!武装援助を求める赤の信号弾です!』

俺が受話器を取るとリー•エンフィールドの切迫した声が鳴り渡る。

「了解した、こっちはすぐに出動の準備にかかる。お前が降りてきたら出発だ。ナガンばあちゃん、今は一人でも助っ人が欲しいところだ。歴戦の老兵の手を貸してくれないか?」

「がってん承知じゃ!久々に腕が鳴るぞ!」

「ありがたい。ついでにコルトSAAが現場にいた時は、彼女の説得も頼みたい」

「なるほどのぅ。であれば秘密兵器を持ってこねばならんな」

そう言うと、ナガンばあちゃんの目が微かにキラりと光った。

 

ような気がした。

 

M590、リー・エンフィールド、ナガンばあちゃん、そして俺の4人は信号弾の上がった地点を目指して四駆を走らせた。

先任のリー・エンフィールドと地元民のナガンばあちゃん曰く、該当地域は先の大戦で生じたクレーターや雨風で浸食した地形が入り組んでおり、ギャングの襲撃を受けやすいためほとんどの隊商や旅人が避けることで有名なポイントなのだという。

 

『保安官、信号弾が打ち上げられたと思われる地点を発見しました。大型トレーラー1台と護衛車両が複数。人間の傭兵が多数確認できますが、目視できる範囲に自律人形の姿はありません。これから座標情報を送ります』

偵察の為に降車したリー•エンフィールドから報告が入る。

「わかった。引き続き観測を行ってくれ。……だそうだ、連中はクロかな?」

「演習中にトラブルが発生した正規軍の線もありそうですが……、恐らくクロかと」

「ううむ、自律人形を引き連れてないとなると人形狩りの連中かもしれんな。最悪銃撃戦は免れぬやもしれん」

「どちらにせよ都会のチンピラ以上の厄介者である可能性が大って事か……腹ぁ括るぞ」

改めて気を引き締めると、送られてきた座標を目指し運転を再開した。

 

運転を再開して1時間、信号弾の打ち上げられた地点に到着した。相手はこちらを警戒しているのか、物陰から殺気を放っていた。まずは車載スピーカーを使って所属と目的を明らかにする。

『こちらはグリフィンタウン保安官だ。武装救援を要請する信号弾を確認し、当地域に出動している。そちらの責任者を出して欲しい』

すると間もなくして相手側から返事が返ってきた。

『保安官殿、私は隊商責任者のブラウンだ。先程の信号弾は部下の操作ミスで発射された物だ。大変申し訳ない。御足労のところ悪いがこちらにはトラブルは無いので、お帰りいただいて問題ないですよ』

『ミスター•ブラウン、隊商の責任者である貴方ならご存知の通り、救援不要の判断は現場の法執行官またはレスキュー隊責任者が下すものだと遭難救助法に定義されている。これから臨検要員とともにそちらに向かう。すまないがそちらの人員を下げてもらいたい』

ここまでは予定通りの展開だ。念の為ナガンばあちゃんに町に来る隊商か確認すると首を横に振った。どうやら彼らは余所者らしい。

 

『了解だ保安官、こちらの人員は引かせよう。ただこちらの予定もある。手早く済ませてくれ』

『ご協力感謝するミスター。手早く終えられるよう努力はしよう』

ブラウンと名乗る隊商責任者から返事を受け取った俺は一度無線を切った。

 

「さて……、とりあえずM590は俺と来てくれ。で、ばあちゃんは合図をしたらこのスイッチを押してくれ」

「わかった。それで合図はどうするんじゃ」

「ドンパチで賑やかになりそうになったら大声でジェロニモーって叫ぶ。それと、リー。聞こえてるか?」

『聞こえてます、なんでしょうか?』

「そこから見る限り伏兵の状況はどうなってる?」

『先程の呼びかけで殆どは引いてますが、それでも左右の高所に観測手付きで二組残っています』

「わかった。交戦が始まったら、まずは狙撃手を無力化してくれ。そしたらこっちに移動して近接援護だ、頼んだぞ」

『了解です!通信終わり』

 

リー•エンフィールドの元気な返事を受け取ると、相手側から臨検を受ける準備ができた旨の信号が上がった。

「それじゃ、本格的な初仕事と行きますか」

今一度アサルトライフルとバックアップのリボルバーを確認し、隊商の臨検を開始した。




ようやく緊張感ある話が始まるといったところで、後編に続く!

■登場人物
ナガンばあちゃん
みんな大好きな☆2戦術人形。
公式アンソロのばあちゃんいいキャラしてたね。
ばあちゃんのドヤ顔とか好き。

リー•エンフィールド
大正義英国長銃戦術人形。
メシマズ設定はダウンロード時の4コマ漫画より。
本人的には「気を失うほど旨い」らしい。(絶対ウソだゾ)
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